新 三好春信は勇者である   作:mototwo

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この話にはキャラ崩壊成分、および誤解を招く表現が含まれます。
ご注意ください。



雪花さんと春信くん

「突撃!いきなり家族訪問!夏凜ちゃんハッピーバースデ~!!」

 

「あれ~、夏凜のお兄さん?」

 

「へ。。。?」

 

夏凜の部屋へいきなり訪ねた春信。

呼び鈴も鳴らさず、サプライズを仕掛けようと飛び込んだのだが、

しかし部屋で出迎えたのは夏凜ではなく、雪花だった。

 

「どうしたの?夏凜なら今は留守だよ?」

 

「。。。」

 

「ん?どったの?めずらしく間の抜けた顔して?」

 

サプライズを返されたような気持ちで思考が停止していた春信は慌てて取り繕う。

 

「こ、これは秋原(あきはら)雪花(せっか)様、本日は夏凜の部屋に遊びにいらしてたんですか?」

 

「え?ま、まあね、ちょっとゆっくりさせてもらってますよ」

 

「それにしても夏凜はどこへ。。。お客様を放っておいて。。。」

 

「あ~、違う違う、私が来た時から留守だったのよ、夏凜」

 

「えっ、それでは鍵もかけずに外出を?なんて無用心な。。。」

 

「ああ、そっかぁ、お兄さんには言っといた方がいいかな?」

 

「はい?」

 

「これ」

 

部屋の合鍵を取り出し、顔の横でプラプラとぶら下げる。

 

「そ、それはまさか。。。」

 

「そ。ここの部屋の合鍵。夏凜から預かってるの」

 

「えええぇっ!」

 

「いや、そんなに驚くとこ?」

 

「う。。。ウチの妹が秋原雪花様と同棲。。。」

 

「え?」

 

「友奈さんや風さんだけでなく、遂に過去の勇者様にまでその手を。。。」

 

「ちょ、ちょっと、お兄さん?」

 

「秋原雪花様!」

 

「はい?!」

 

「なんというか、女の子同士とはいえ、まだ皆さん子供なんですから、

もっと節度のある交際をですね。。。」

 

「交際って…」

 

「部屋に自由に出入りして(ただ)れた関係になるなんて、そんな事。。。そんな事。。。」

 

「爛れた…?」

 

「お兄さんは許しませんよ!」

 

「…」

 

「。。。」

 

しばしの沈黙の後

 

「ぷっ…あははははははは!」

 

雪花の大笑いが部屋に響いていた。

おなかを抱え、目尻に涙まで浮かべて笑っている。

 

「な、何を笑って。。。」

 

「あははは、おにーさん、面白いわ!」

 

「な、何が面白いというのですか!私は雪花様のことも思って。。。」

 

「いやー、部室で見たときはもっと堅物かと思ってたけど、大分愉快な人だわ、こりゃ」

 

「愉快って。。。」

 

「あー、入って来たときの反応からすると、まだちょっと隠してる部分とかありそうだけど…」

 

雪花は値踏みするように春信の顔を覗き込んでいる。

 

「え。。。」

 

「うん!いいや!おニーさんからは敵意とか全然感じないし、事情を教えてあげよう!」

 

「事情。。。ですか?」

 

「まあ、大した事情でもないんだけどね。

私が一人になりたい時の為に部屋を自由に使っていいって、夏凜が合鍵くれたのよ」

 

「お一人に。。。?」

 

「ほーら雪花さんってば人気者でしょ?部屋で一人でいてもみんなが押し寄せてきちゃうのよ」

 

「あ。。。」

 

「それはそれで嬉しいんだけど、

たま~に一人になりたいな~ってぼやいたのを夏凜が聞いてたのよ」

 

「それで夏凜が合鍵を。。。はっ!」

 

「ん?」

 

「も、申し訳ありません!そうとは知らず、ご無礼な物言いを!」

 

春信は赤面し雪花に頭を下げている。

 

「あらあら、顔赤くしちゃって~、おニーさんたら可~愛い~」

 

だが、雪花の方はまるで気にしていない様子だ。

 

「あ、あの。。。」

 

「ん~?何かな~?」

 

「怒っていらっしゃらないので?」

 

「怒る?なにを?」

 

「先程、私は大変ご無礼な物言いを。。。」

 

「無礼?あんなのが?あれくらい、無礼でもなんでもないわよ。あっちに比べたら…」

 

「あっち。。。?」

 

「ああっ!なんでもない、なんでもない!おニーさんは夏凜と私のこと心配したんでしょ?」

 

「は、はい」

 

「じゃあ、それは気遣いってもんでしょ、無礼なんかじゃないわ」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

「それとも何?『無礼だ!大赦の使いを別の者に代えよ!』って言って欲しい?」

 

「い、いえ、そういうわけでは」

 

「じゃー、その話はここで終了、いいわね?」

 

「はあ。。。あ、いえ、ありがとうございます」

 

「ふふ、それにしても…」

 

「え」

 

「さっきのアレは傑作だったわね」

 

「アレ。。。?」

 

「『おニーさんはゆるしませんよー』ってね!」

 

「ぶっ!!」

 

「お、思い出すとおなかが…」

 

雪花はまたおなかを抱え、声を殺して笑っている。

 

「あ。。。秋月雪花様?」

 

「ふぇ?なに?」

 

「先程のことは皆には黙っていていただけますか?」

 

「えー、どっしよっかなー」

 

「雪花様!」

 

春信は口をへの字に曲げ、真剣な面持ちでズイッと顔を寄せる。

 

「ち、近い近い…わかった、わかりました。皆には内緒ね」

 

雪花の言葉に春信は小さく溜息をつき距離を戻した。

 

「ありがとうございます」

 

「あ、でも」

 

「はい?」

 

「そうなると、私とおニーさんだけの秘密って事になるのかな?」

 

「そう。。。なりますね?」

 

「むー…」

 

キョトンとした顔で返す春信に雪花はわざとらしく不機嫌そうな顔を向ける。

 

「こーんな美少女と二人っきりの秘密を共有するのに、つれないわねー。おニーさんは」

 

「え。。。?

ああっ!も、申し訳ありません」

 

「ふふっ、冗談よ。本気で自分の事、美少女とか言う程、自惚(うぬぼ)れてないわよ」

 

慌てて姿勢を正す春信に今度はイタズラっぽく笑いかけた。

 

「いえいえ、秋月雪花様も間違いなく美少女だと思いますよ」

 

「ありがと。でも『も』って付けてる時点でねー」

 

「は、はははは。。。」

 

「そこで誤魔化そうとしないなんて、正直だねぇ、おニーさんは」

 

「申し訳ありません」

 

「まあ、私も皆の中で特別だなんて思ってはいないけど」

 

「勇者様も巫女様も一人ひとりが特別だとは思いますが」

 

「それはそうなんだけど、ちょっと浮いてる気もするんだよねー、私って」

 

「そうなんですか?」

 

「あー、皆の真っ直ぐさに当てられて目立たなくなってきてるのかなぁ?」

 

「それは。。。北海道での勇者活動がなにか?」

 

「あんまり…思い出したくないんだけどね…」

 

「そうですか、では聞かないでおきましょう」

 

「って、あっさりしてるわね。そんなに私に興味ない?」

 

「いいえ、興味はとてもありますが、嫌がる乙女から話を聞きだすほど無粋でもありませんよ」

 

「そういう言い方は初対面の時のまんまね。調子取り戻しちゃったかな?」

 

「からかい甲斐がないですか?」

 

「ちょっとね」

 

「お話したくなったらいつでも話してください。私でも、夏凜でも、他の誰かでも」

 

「そうね、いずれは…ね」

 

「では、私はこれで」

 

「えっ、夏凜を待たないの?」

 

「今日訪ねてきたのは、ちょっとしたサプライズのつもりでしたので」

 

「サプライズねぇ…確かに一日遅れのバースデーとかビックリだけど」

 

「え?」

 

「え?」

 

思わずキョトンと返事を返す春信に同じように返してしまう雪花

 

「は、ははは。。。何を仰ってるんですか、夏凜の誕生日は6月12日ですよ。。。」

 

「え?」

 

さらにキョトンとした顔で返す雪花

春信はハハーンとわかったような顔で返す

 

「なるほど、またからかっておいでなんですね、残念ですが妹の誕生日を間違えるほどウッカリしてませんよ。夏凜の誕生日は間違いなく6月12日です」

 

「ええ…そうよね」

 

「?」

 

雪花の反応に首を捻る春信

雪花は申し訳なさそうに

 

「今日って…13日よ?」

 

「。。。え?」

 

「ほら」

 

雪花の取り出したスマホの画面には6月13日の日付と現在時刻が表示されている

春信はそれを見て一瞬で真っ白になった思考を最速で復帰してめぐらせ

フゥ。。。

と溜息を吐くと

 

(大赦中でカレンダーにイタズラした奴らがいる。。。)

 

最適解に辿り着き、冷静さを取り戻すと、さっきと同じ台詞を繰り返す

 

「では、私はこれで」

 

「ええっ?いいの?勘違いだからって」

 

「いえ、勘違いではありませんでした。サプライズは失敗ですが。。。」

 

あたまに疑問符を浮かべる雪花ににこやかに返す

 

「部屋で待ち構えてたら充分なサプライズにはなると思うけど」

 

「こんな美少女と二人っきりでいたと知ったらサプライズでは済まないでしょうから」

 

「言ってくれるわね」

 

調子を取り戻した春信に呆れたように言い放つ

 

「別に嘘やおべっかで言ってる訳でもありませんよ、本当に」

 

「でも、そういうのは特別な誰かに言う台詞よ」

 

「なるほど、軽口が過ぎますか」

 

「大切な言葉は伝える相手も選ばなくちゃね」

 

「気をつけます」

 

「素直で余裕があるとホント、イケメンだにゃあ。面白味はないけど」

 

「。。。褒められたと思っておきます」

 

「ふふっ、じゃあね」

 

「はい、失礼します」

 

深々と頭を下げ、夏凜の部屋を後にする春信。

 

(いつか。。。雪花の話が聞けるといいな。。。)

 

おそらく愉快な話ではないだろう

そう予想しながら彼女の話が聞けるその日を待とう

そう思いながら空を見上げると

 

「だが!今は大赦に戻って犯人をぶっ飛ばす!」

 

雰囲気も何もぶち壊しで駆け出す春信なのでした

 




さあって、次回は!

<次回予告>

タマだ!

最近、春信の奴が良く部室に顔を出す
夏凜の兄貴って言ってるけど、タマにはわかる。アレは春信だ!
仮面の赤い勇者も戦闘に参加してるしな!
タマの勘は良く当たるんだ!

え?ああ、さて次回は…
「タマと春信」
「土居球子と兄貴」
「タマっち先輩と赤い勇者」
の3本だ!

次回もまた見ろよなー!
ジャン・ケン・パー!
うふふふ、ふははは、うわーっはっはっは!

<ホントは1本だけどね>

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