新 三好春信は勇者である   作:mototwo

38 / 47
この話にはキャラ崩壊成分、および誤解を招く表現が含まれます。
ご注意ください。

あと、37話の直後です。



38話 球子と春信

千景が部室を出て行った後、頭を掻きつつぼやいている春信。

 

「しっかし、どうしたものかな。。。僕の責任じゃないとはいえ。。。」

 

「おーっす!誰かいるかー!?」

 

「あ」

 

そんな中、いきなり部室へ飛び込んできた球子に

春信は振り向きざま、間抜けな声を漏らしていた。

 

「あれ…?春信?」

 

「は、はい、土居(どい)球子(たまこ)様、ご機嫌麗しゅう」

 

「ん~~~?」

 

球子は春信の顔をジロジロと睨みながら首を捻っている

 

「ど、どうかされましたか?」

 

「オマエ、ホントにこっちの『春信』かぁ?」

 

「。。。」

 

「んんん~~~~~?」

 

「何を仰っているんですか、(わたくし)は私です、他の誰でもありませんよ」

 

涼しげな顔でにこやかに話しかける

 

「そうかぁ、一瞬、あっちの『春信』の顔に見えたんだけどなぁ…」

 

「あっちの。。。と仰られるのは西暦の時代の『三好春信』さんのことですか」

 

「そうだ!タマの知ってる春信はそっちの方だからな!」

 

「土居球子様は西暦の『春信』さんと私の見分けがついてるんですか?」

 

「タマはって…誰かに春信のこと聞いたのか?」

 

「ええ、先程郡千景様にも。。。」

 

「千景が?」

 

(いかん!千景には誰にも言うなって口止めされたのに。。。!)

「。。。」

 

「どうした?」

 

「い、いえ、千景様にも顔をあわせた途端、怪訝な表情をされましたので、そうなのかな?と」

 

「そっか!千景は春信のこと大分嫌ってるみたいだもんな!」

 

「そのようですね。。。土居球子様は『春信』さんのことは。。。」

 

「キライだぞ!」

 

「そ、そうなんですか。。。」

 

「まあ、アイツ自身が嫌いって訳でもないんだけどな~」

 

「と、いいますと?」

 

「アイツ、大人のクセにタマよりアホだからな!」

 

「土居球子様はそれほど頭がよろしくないとも思いませんが。。。」

 

「いやいや、タマだって自分の事はよく分かってるって、タマは勉強が嫌いだからな~」

 

「その分、体を動かされるのはお好きと聞き及んでおりますが」

 

「まあな!でも、勇者としての鍛錬とか毎日続くとイヤになることもあるしな~」

 

「なるほど。。。」

 

「正直、若葉や夏凜の修行好きには感心もするけど呆れるぞ…」

 

「ふふ。。。妹がご迷惑をおかけします」

 

「ん?迷惑なんかじゃないぞ?二人がああだからタマも頑張らなきゃって思うしな!」

 

苦笑いで答える春信にあっけらかんと返す球子。

 

「それはよかった」

 

「あっちだと、ひなたを入れても6人しか丸亀城の学校にいなかったからな…」

 

「お友達が少ないのは寂しいですか」

 

「いや、杏もいるし、寂しいとかじゃないんだけど…

タマと一緒に遊べるのが友奈や春信くらいだったからな~」

 

「高嶋様と。。。」

 

「ああ!友奈は誰とでも仲良くできる奴だからな!タマにも色々付き合ってくれるんだ!」

 

「こちらの友奈さんと同じようなタイプですね」

 

「そうだな、アイツら二人もほとんど見分けがつかないけど」

 

「伊予島杏様とは遊ばれないのですか?」

 

「杏とは…一緒に遊ぶっていうか、いつも一緒にいるって感じだな!

タマはアウトドアグッズをいじってて、杏は本を読んでる!」

 

「なるほど、別の事をしていても一緒にいて苦にならない…

心が繋がっていられるんでしょうね」

 

「おう!杏はタマの妹みたいなもんだからな!」

 

「『春信』さんとは。。。」

 

「アイツはアホだからな!大人のクセにタマに本気でかかってくる!面白い奴だ!」

 

「そ、それは大人気(おとなげ)ないということでは。。。」

 

「大人気ない!そうだな!それだ!春信の奴は大人気ないんだ!」

 

「随分と楽しそうに話されますね」

 

「アイツ、何やっても本気だから」

 

「本当に大人気ないですね。。。」

 

「まあ、最初は大人ぶって余裕見せるんだけどな」

 

「ほほう?」

 

「途中からムキになって本気になるんだ!」

 

「中身は子供ってことですね」

 

「ああ!遊んだり歌ったり鍛錬したり!」

 

「えっ。。。勇者の鍛錬にも参加されていたんですか?」

 

「ああ、なんでも若葉が春信の所作が気になるって言って、訓練に参加させた事があったんだ」

 

「それはまた。。。」

 

「まあ、タマたちも変身しなけりゃ普通の女の子だからな

何かあっても多少怪我する程度だろって見てたんだけど」

 

「違ったわけですか?」

 

「アイツ実は凄い達人じゃないかってその時は思ったな!」

 

「意外と出来る男だったわけですか」

 

「でぇも、そん時だけだな」

 

「というと?」

 

「アイツ、まともに戦うと若葉でもちょっとヤバイ位強かったのに

こっちが不意を突くと簡単に攻撃食らうんだ」

 

「油断してしまうタイプなんですか」

 

「一番酷かったのはアレだな、タマもやりすぎたってちょっと反省してる」

 

「アレ、と申しますと?」

 

「丸亀の城壁だったかなー、春信と杏が見えたんで声かけようと思ったら杏が泣いてたんだ」

 

「え。。。」

 

「だからタマも頭に血が上って一気に駆け寄って飛び蹴り食らわせたんだ」

 

「そ、それは。。。」

 

「後で聞いたら春信に泣かされた訳じゃなかったらしくてなー

若葉とひなたと友奈にこっぴどく叱られたぞ」

 

「。。。」

 

「春信なんだから、城壁から落ちたくらいじゃ大した怪我もしてなかったけど

さすがにタマもアレはまずかったかなーって」

 

「は、ははははは。。。」

 

「お前はどうなんだ?『春信』なんだから城壁から落ちたくらいなら平気か?」

 

「や、やめて下さい、土居球子様。

私は一般人ですから、城壁から落ちたら死んでしまいますよ、多分。。。」

 

「そっかぁ?一度くらい試した方がいいと思うんだけどなー」

 

「やらないで下さいね」

 

「わかってるわかってるって」

 

「本当にやらないで下さいね」

 

「知ってる知ってる。フリってやつだろ?」

 

「違います。絶対にやらないで下さい」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

そんなやり取りを続けている所へ割って入る一人の乙女の声

 

「タマっち先輩、三好さん!」

 

いつの間にか杏が勇者部部室へ来ていた

 

「おうっ、杏!やっと来たのか!」

 

「伊予島杏様、本日はご機嫌麗しゅう」

 

(うやうや)しく礼をする春信に対し、少し苦笑いで挨拶を返す杏

 

「こんにちは、珍しいですね、二人でいるなんて」

 

「タマが一人で来たら、タマタマな」

 

「楽しそうだね、何話してたの?タマっち先輩」

 

「あー、向こうの『春信』の話をちょっとな」

 

「向こうの『三好さん』?まさか…タマっち先輩?」

 

「だーいじょうぶだって、あの事は話してないから」

 

「あの事?」

 

「あっ、いえ、なんでもないんです!」

 

「そうそう、特にぶっタマげるような話はないぞ!」

 

「そ、そうですか。。。」

 

「ふう…あぶないあぶない…」

 

「え。。。?」

 

「あー!そうそう!私も三好さんに一度お聞きしたい事があったんです!」

 

話を逸らすようにいきなり声をあげ、杏が春信に聞いてくる

わざとらしいなと春信も思いながらも特には突っ込まず、杏の話を聞いていた

 

「私にですか?構いませんよ、何でも聞いて下さい」

 

「え、あ…えっとぉ…」

 

にこやかに顔を向ける春信に、なぜか顔を赤らめモジモジしながら何かを迷う杏

 

「杏…?どうしたんだ…?」

 

そんな杏の様子に不安げな表情を見せる球子

杏は意を決したように春信に向かい、たどたどしく口を開いた

 

「み…三好さんは…その…」

 

「はい?」

 

「こっ、恋人とかいた(・・)んでしょうかっ?!」

 

「ええっ?!」「がーーーーん!!」

 

「こ…恋人がいる(・・)か尋ねるなんて…そんな…杏がぁ…」

 

「ど、土居球子様。。。?」

 

「だから春信はキライなんだぁーーーーーっ!!」

 

半べそかきながら部室を飛び出す球子

取り残された二人はあっけに取られたままその後姿を見送る事しかできなかった。

 

(球子のキライはコレだったわけか。。。)

 

脱力したまま杏へ目をやる春信だったが

 

「あれ、どうしたんだろ、タマっち先輩?」

 

杏はまるで分かっていない様子で首を傾げるだけだった。

 




さあって、次回は!

<次回予告>

伊予島杏です。

タマっち先輩どうしたんだろ?
私が夏凜さんのお兄さんに話しかけてるといきなり飛び出して行っちゃった。
ああっ、でも今は、折角の機会だからあの話を三好さんに聞いておきたい!
ラブコメは乙女の生きる糧だもん!

さて次回は…
「文学少女と大赦のお兄さん」
「伊予島杏様と三好さん」
「ワザリングハイツ伊予島と赤い勇者忍者」
の3本です。

次回もまた見て下さいね。
ジャン・ケン・チョキ!
うふふふ

<ホントは1本だね>

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。