新 三好春信は勇者である   作:mototwo

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この話にはキャラ崩壊成分、および誤解を招く表現が含まれます。
ご注意ください。



31話 ホワイトデー・その2

園子と春信が大暴れし、それを実況する風と夏凜

そんなホワイトデー間近の勇者部部室へやって来た若葉

 

「今日はまた一段と騒がしいな、何かあったのか?」

 

「あ、若葉」

 

「これはこれは乃木若葉様、本日はご機嫌麗しゅう」

 

先程までとうって変わってキリリと顔を整え若葉に対応する春信。

 

ズザーッ

 

それまで一緒に駆けずり回っていた園子(中)は滑り込む様にずっこけ

 

「…」

 

「うわ…若葉見た途端、キャラ切り替えてきた…」

 

夏凜は兄のその切り替えの早さに呆れかえっていた。

 

「春信っ?!いかん!逃げ…」

 

「どうしたんですか、若葉ちゃん?」

 

「ああっ、遅かった…」

 

「お久し振りです、上里ひなた様、その節はお騒がせを」

 

「あらあら春信さん、来ていらしたんですね」

 

落ち着いた様子で挨拶を交わす二人に、オロオロしていた若葉の頭に疑問符が浮かぶ。

 

「あ、あれ…?」

 

「なんです、若葉ちゃん、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をして」

 

「ひ、ひなた、春信を見ても平気…なのか?」

 

「当たり前じゃないですか、春信さんはあの男とは違うんですよ」

 

「そ、そうか、やっと誤解が解けたんだな、良かった、本当に良かった…」

 

「ホッとしすぎて泣きそうになってるわよ、若葉…」

 

「…」

 

「ところで…そこでうつ伏せになってる園子は何をしているんだ?」

 

「おや、園子嬢、暴れていたかと思ったら、もう疲れて寝てしまったんですか?」

 

そらぞらしい説明をする春信だが

 

「なんだ、またひと暴れしていたのか、いい加減に学習しろ、園子」

 

「…」

 

「すまないな、春信。ウチの子孫が迷惑を掛けて」

 

若葉はその言葉を素直に信じきっていた。

 

「いえいえ、園子嬢も思春期ですから、じっとしていられない時もあるのでしょう」

 

「…」

 

「ふっ、流石に大人の余裕を見せるな、あの男とは大違いだ」

 

「いやはや、お恥ずかしい」

 

にこやかに言葉を交わす二人

その傍らで無言でうつぶせになっている園子に誰も声を掛けられないでいた。

話題を切り替えようと風がひなたに問いかける。

 

「そ、それにしても、あの勢いで飛び出して、よく誤解が解けたわね…」

 

「本当ですね、あの時はもう春信さんの命はないものと思ってましたが…」

 

「ええっ!そうなの?東郷さん!」

 

「一体そのときに何があったの、お姉ちゃん…?」

 

「それは…」

 

「アタシと東郷もひなたが生太刀(いくたち)持って、飛び出したところしか見てないから…」

 

「生太刀を?!」

 

「一体どうしてそんな事に…」

 

「よく生きてたわね、兄貴…」

 

「はははは。。。」

 

「うふふ、お恥ずかしい」

 

「実際、あの後どうやって誤解を解いたんだ?」

 

「そうですね、ちょっと再現してお見せしましょうか、手っ取り早く」

 

「再現。。。ですか。。。」

 

「若葉ちゃん」

 

「なんだ?」

 

「生太刀を」

 

「うむ」

 

何のためらいも無く、すんなりとひなたに生太刀を手渡す若葉

 

「若葉…もはやそこまでひなたの(しつけ)が行き届いちゃってるのね…」

 

「はっ!つ、つい…」

 

風のツッコミに若葉が我に返るが、ひなたはまるで気にもせず生太刀をスラリと抜き身にし

「春信、死ねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!!」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

袈裟懸けからまっすぐ春信の脳天に振り下ろす

 

「う、上里さま。。。」

 

目をみはる者、そむける者、それぞれの中

ハッシと生太刀を素手で挟み込み、春信はひなたを見上げている。

 

「こ、これは…っ!」

 

「真剣白羽取りっ?!」

 

「ほほう、なかなかにやるものだな」

 

「あ、あまり驚いていませんね、若葉さん…」

 

「西暦の世ではこれくらい普通だったのかしら…?」

 

「西暦、すっごーい!」

 

それぞれが呟く中、春信とひなたの攻防は続く

 

「あ、あの。。。」

 

「何をしているんですか、春信さん。さあ、あの時の再現を!」

 

そういいつつ生太刀に体重を乗せていくひなた

 

「し。。。仕方ありませんねっ!」

 

押し切ろうとするひなたと刀の重みを右手側へ逸らし、生太刀の峰を右のつま先で

コンッ

と蹴り出すと、バランスを崩したひなたは刀の柄を手放し、前につんのめる。

 

「きゃっ」

 

そのひなたの前腕(ぜんわん)(すね)に手を当て、空中でクルリと回転させると

仰向けになったその背中と膝裏に腕を回し、抱え上げる。

所謂(いわゆる)お姫様抱っこ状態である。

そのまま右手を伸ばし、回転力を落として降ってくる生太刀の柄を掴む。

 

「え?あれ?今どうなったんですか…?」

 

その挙動に頭が追いつかない樹は目をパチクリさせ

 

「白羽取りから一瞬でお姫様抱っこに…」

 

「しかも生太刀も落さないなんて…」

 

風と夏凜はその動きの無駄のなさに感心していた。

 

だが、ひなたは尚も左手は生太刀へ右手は春信の延髄へ伸ばし、抵抗する。

春信はその左手から逃れるように右腕を膝裏からスルリと抜き、ひなたを直立させ、

延髄を狙う右の抜き手は左肩で上腕を弾く様に押さえ、

そのまま両腕をひなたの両腕ごと背中まで巻きつけた。

 

「こ、今度は抱きしめちゃったー」

 

あっけにとられる友奈と

 

「見ちゃダメよ!友奈ちゃん!」

 

その目をふさごうと友奈の前に立つ東郷

 

しかしひなたはその状態からも首をしならせ、春信の胸板へ頭突きを繰り出していた。

その勢いを殺そうと春信は胸を引いて受け止めつつ叫ぶ

 

「う、上里ひなた様!私は『三好春信』ではありません!」

 

その言葉にピタリと動きを止めるひなた

 

「違…う…?」

 

その隙に頭を左手で包み込むように左肩へ抱え込む

 

「はい、この世界は神世紀300年の再現、あなたの時代の『三好春信』という人はいません」

 

「いない…」

 

「そうです、もうその人はいないんです、私はただ顔が似ているだけの別人です」

 

「もう、いない…」

 

「大。。。丈夫ですか?」

 

その言葉にふいにひなたは春信から離れる。

なぜかその顔は少し紅潮して目尻に涙が浮かんでいるようだった。

 

「そ、そうですか、それは失礼しました。私は神樹様の巫女、上里ひなたと申します」

 

「はい、存じ上げていますよ、私は。。。」

 

名乗ろうとして春信は一瞬戸惑う

 

「?」

 

「あ~。。。落ち着いて聞いていただけますか?」

 

「はい?ああ、はい、もう大丈夫ですよ」

 

「私も、偶然!偶々(たまたま)!何故か!『三好春信』。。。という名前なんです!」

 

ひくついた笑みで名乗るその名に一瞬、ひなたの体が硬直するが

 

「そっ、そうなんですね、おかしな偶然もあるものですね!」

 

乾いた笑いを浮かべたひなたは思いの外、落ち着いていた。

ポスポス

 

「…というわけです」

 

「なんか…凄い攻防が行われたのね」

 

ポスポス

 

「いえ。。。実際はもっと殺気と勢いと力に満ちてました」

 

「アレよりもって、ホントよく生きてたわね、兄貴…」

 

ポスポス

 

「ふふふ、お恥ずかしい限りです」

 

「ひなたさん…さらりと笑顔で言ってますけど…」

 

ポスポス

 

「まったく、普段はまるで運動は苦手なのに、春信に対しての切れ味の鋭さには感心するな」

 

「若葉さんも落ち着いてよく見ていられますね」

 

ポスポス

 

「愛と信頼の成せる(わざ)だね!」

 

「ところで。。。」

 

ポスポス

 

「なぜ園子嬢は先程から私のお尻を殴っておられるのでしょうか。。。?」

 

「う~~~」

 

ポスポス

 

「滑り込んでずっこけた自分をずっと無視してひなたとイチャイチャしてたからじゃないの?」

 

「イチャイチャって夏凜。。。今のやりとりのどこにそんな要素があったと。。。」

 

ポスポス

 

「う~~~」

 

「いやいや、お姫様抱っこしたり」

 

「背中に腕を回して抱きしめたりしてましたよね…?」

 

「それは誤解です。ただの緊急回避です。双方が傷つかないやり方が他になかっただけです」

 

ポスポス

 

「う~~~」

 

「大体、あれだけ構ってたそのっちをいきなり放置してたのは事実でしょう…」

 

「はっはっは、あれは床で寝てしまった園子嬢を起こさない様、気遣っただけですよ」

 

「やさしいんだね、お兄さん!」

 

ポスポス

 

「う~~~!」

 

「友奈もそろそろ流れを見て突っ込む事を覚えなさいよね…」

 

「む?今の流れになにか突っ込みどころがあったのか、夏凜?」

 

「ありませんよ、私は常に乃木家のお嬢様を気遣う立場にいますから」

 

「うわ…いけしゃあしゃあと…」

 

ポスポス

 

「う~~~!!」

 

「そろそろ乃木も涙目になってきたから、相手してあげたら?おにーさん」

 

「私も、なんだか可愛そうになってきました…」

 

「ふふふ、風さんと樹さんはお優しいですね、分かりました」

 

ポスポス

 

「う~~~!!!」

 

「園子嬢」

 

「!」

 

くるりと反転して園子の方へ向くとその腋へ手を伸ばし

 

「ほーら、たかいたかーい!」

 

「…」

 

仏頂面の園子を高い高いしだした。

 

「あ、兄貴…なにやってんの…」

 

「何って、子供をあやすならこれだろう?」

 

「うわ…どこまでも空気読まないわね…おにーさん」

 

「で、でも…心なしか園子さんの表情が少し和らいだような…」

 

「あら、本当、段々にこやかになってるわね、そのっち」

 

「なんだかすっごく楽しそう!よかったね、園ちゃん!」

 

テキトーな扱いになぜかキャッキャと喜ぶ園子

その姿をみんなは優しい笑顔で見守っているのでした。

 

「いや、その流れ、おかしーでしょ!」

 

「夏凜、気持ちは分かるけど、ナレーションに突っ込むのやめなさい…」

 

風も諦めたように呟くだけでした。

 

<つづく>

 




<番外編>

「それにしても…」

「どうした?ひなた」

「あのとき、あんなことがあったんですね…」

「はあっ?!覚えていて再現したんじゃなかったのか?」

「いえ、生太刀で斬りかかったりしたことはおぼろげに覚えていたんですが…」

「う、うむ」

「気付くとあの男にそっくりな春信さんに抱きしめられているという状況だったので」

「そ、それは驚きだな!」

「斬りかかった後は体の赴くままに動いただけだったんですが、再現できるものなんですね」

「そうだな!まったくもって驚愕だ!」

「あら?若葉ちゃん、何か怒っていますか?」

「怒る?!私が?!何故だ?!」

「だって…」

「別に怒ってなどいないぞ!
ひなたが春信に抱きしめられていたのは覚えていたのにそれを再現しようとした事など!」

「あらあら、やきもち若葉ちゃんでしたか」

「やきもち?!やきもちを焼く要素など、どこにもないぞ!うん!どこにもな!」

「大丈夫ですよ、私が…
こうして抱きしめてあげるのは若葉ちゃんだけですから」

「ずっ、ずるいぞ、こんなふうに優しく抱きしめて誤魔化すなど…」

「誤魔化していませんよ、若葉ちゃんは怒ってないし、やきもちも焼いてないんですから」

「ううっ、それは…」

「それに」

「うん?」

「私の一番は、いつだって若葉ちゃんですから」

「うっ!うむぅ…」

「はいはい、よしよし」

「こ、こら!皆がいるところで撫で撫でするな!園子に見つかったら…」

「みんな、園子さんの高い高いに気をとられて気付いてませんよ」

「そっ、それでもこういうのは二人だけの時にっ!」

「うふふ、そうですね、続きは部屋に帰ってからにしましょうか」

二人のイチャコラムードはいつまでも続くのでした。



「そんな事があったんだね~」

「まったく、勇者部はネタの宝庫だよ~」

「園子に乃木?なにを見ているのだ?」

「あ、わかちゃん!なんでもないよ~、ただの昨日の日記だよ~!」

「そうか、昨日は春信が来たせいか、大騒ぎだったからな」

「楽しかったね~」

「うん~!書くことが多くて日記も増し増しだよ~」

「あまり他人のプライベートに関わる事は書くんじゃないぞ」

「「は~い、わかってま~す」」

全然、わかっていない、園子ズでした。





次回予告
(BGM)
 ぶろまいど?!
      ワザとね、アレ…
サプリ大好きだもんね!
   勇者様に最大限の敬意を
        大赦をぶっ潰す!
  陳謝
     アタシ、気付いちまったんだ…
  次回「ホワイトデー・その3」





春信(以下略):おーい、手ぇ抜くなー

mototwo(以下略):しっ、黙ってろ!

何も言わずに上の予告だけですまそうなんて甘すぎんぞー

黙ってりゃ、そういうもんだと思うんだよ、みんな!

そうやって困った時はこのパターン、とかいうのはどうかと思うなー

『ゆゆゆ』の二次創作なんだから、『ゆゆゆ』の次回予告パロって何が悪い!

だったら堂々としてりゃいいのに、こんなの書き込んで。。。

それすらもネタだ!

<もう自分でも何書いてんのか訳が分からなく…>

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