新 三好春信は勇者である   作:mototwo

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今回で『楠芽吹(くすのきめぶき)は勇者である』の話は終了です。
ネタバレおよびキャラ崩壊を含みます。



24話 神世紀301年 1/17

「それじゃ、またね」

 

「ええ、また」

 

結界の壁の上、夏凜(かりん)芽吹(めぶき)は再会の言葉を交わし別れた。

夏凜は壁から飛び降り、去っていく。

その背中を芽吹は静かに見送り振り返った。

 

なぜそうしたのかは芽吹にも分からなかった。

だが、なぜか結界の外が気になり、再び身を乗り出す。

 

結界の外は何も変わらない。

いや、ますます熱気を帯びているかのような灼熱の世界。

そこに(うごめ)き、空を漂う星屑たち。

 

その灼熱の世界で星屑たちを足場に飛び跳ねつつ

その身に集まってくる星屑を切り裂く赤い影。

 

「三好さん?さっき別れたばかりなのに…」

 

しかし目を凝らした芽吹の双眸が捕らえたシルエットは、三好夏凜とは少し異なっていた。

 

「でも、髪が…後ろで束ねているの?」

 

その影に芽吹のある記憶が重なる。

 

「そんな…」

 

以前、映像で見た先代勇者たちの戦う姿。

 

「バカな…」

 

その中の一人に

 

三ノ輪(みのわ)(ぎん)っ?!」

 

思わず叫んでいた。

そんなはずはない。

頭では分かっていたのに。

彼女がもうどこにもいないことなど、知っているのに。

 

「くっ!」

 

芽吹の声に気付いた星屑が集まってくる。

まだ結界を越えて壁の上にいた芽吹は数歩戻ればすぐに結界内へ逃げられた。

しかし迷ってしまった。

目に映るその赤き勇者の姿を見失ってしまって良いのか?

本当に三ノ輪銀なら会ってみたい、話をしたい。

そう思う気持ちが後退と戦闘開始を迷う隙を生んだ。

 

迫り来る星屑たちに銃弾を乱射し、撃ち落し切れなかった星屑を銃剣で切り裂く。

 

(しまった!)

 

初めから戦闘にとりかかっていれば、あるいは防人の誰かと一緒であれば

今の芽吹なら問題なくさばき切れたであろう。

しかし一手足りない。

最初の隙が決定的であった。

目の前の星屑を銃剣で突き、消滅させた後ろから迫る1体、更に両側から迫る2体。

それら全てに間に合う攻撃手段は無かった。

口を開き、芽吹という獲物目掛けて飛び来る3体が

 

光を放ち霧散した。

 

ハッと目をやると、芽吹に近づく星屑たちが(ことごと)く散っていく。

それは先程見た赤い勇者が放つ武器によるものだった。

 

その手際に驚きながらも芽吹も銃弾で星屑を撃ち抜いてゆく。

そうして見える範囲の星屑が掃討され、最後に赤き勇者の踏み台になっていた固体も散る。

 

既に星屑から飛び降りていた赤い勇者はその背を芽吹に向け、壁の上に立っていた。

 

(刀…違う…)

 

その髪を後ろでまとめた後姿は芽吹の記憶にある三ノ輪銀とは明らかに違っていた。

両手に刀を持ち、勇者服は三好夏凜のものに近く思える。

なにより、芽吹よりも高いその背と体格が女性のそれとは思えなかった。

 

「あなたは…」

 

「三ノ輪銀は。。。

もういない。。。」

 

両手の刀を消し、呟くように発したその声は男性のものだ。

 

「そっ、そんなこと…」

 

そんなことは知っている、わかっている、そう言おうとするが芽吹の言葉が詰まる

 

「だがっ!」

 

そんな芽吹に対し男は振り向き、その胸に手を当て声をあげる。

 

「その心は!たましいは!ここに生きている!」

 

「!」

 

男の顔にはあの女性神官と同じ、大赦の仮面があった。

 

「三ノ輪銀だけじゃない!今まで戦ってきた勇者たちのたましいが!

俺の!お前の!全ての勇者のここに生きている!」

 

「私が…勇者?」

 

「楠芽吹、お前だけじゃない、お前の仲間たちも皆、勇者だ」

 

「私のことを知って…しかし、私たちはまだ防人(さきもり)で…」

 

「大赦の与える名や地位など関係ない!

お前たちが勇者であろうとする事!

そのありようこそが勇者なんだ!」

 

「…」

 

「。。。」

 

「ふふふ…」

 

少しの沈黙の後、芽吹が呆れたように笑った。

 

「何がおかしい?」

 

「まさか、その仮面をつけた人にそんな事を言われるとはね」

 

「これは。。。

単に素性を隠す為に使っているだけだ。

俺は大赦の勇者ではないからな。。。

顔を隠せるなら別に『おかめ』や『ひょっとこ』でも問題なかった」

 

「いえ、それを問題ないと思うあなたに問題があると思うけど…」

 

男の間抜けな返答に思わずジト目で突っ込む。

 

「ふん、流石は赤き勇者の系統。いいツッコミをするじゃないか」

 

「そんな不名誉な評価はいらない…って赤き勇者の系統?!」

 

「どうした?」

 

「まさか…三ノ輪銀って…」

 

「三ノ輪銀も三好夏凜もツッコミが得意だぞ」

 

「そ、そんな…」

 

「乃木園子から聞いた話だ。間違いない。」

 

「乃木って…あの名家の、伝説の勇者の…?

し、知りたくなかったわ。それはこういう場面では…」

 

「何を今更。。。お前も知ったはずだ」

 

「え?」

 

「勇者もただの人間、崇高なたましいもあれば自堕落な顔だってある。

ただの人間が勇者であろうとする、その心こそが勇者の証だ」

 

「ふ…おかしな人ね、あなたは…」

 

「むう。。。なぜかよくそう言われるな。。。」

 

「自覚が無いのは問題ね…

でもなぜこんな所で?何をしていたの?」

 

「天の神の侵攻が近い」

 

「!」

 

「天の神そのものが降りる気配すらあるそうだ。」

 

「天の神…」

 

以前、芽吹たちがあの神官から聞かされた事、それが現実に起ころうとしている

 

「それは数ヵ月後かもしれないし、今この瞬間にも起こるかもしれない」

 

「一体何が…」

 

「神世紀が始まって以来の大きな侵攻だ。何が起こるか想像もつかない」

 

「そんな…」

 

「だが、誰もが何かが出来るはずだ。そしてそれは自分で出来ることをする以外にない」

 

「出来ることを…それであなたは星屑の掃討を?」

 

「今の俺の勇者の力ではこの程度が限界だがな。。。」

 

男は自分の拳を見つめ、悔しそうに語る。

巫女を使った奉火祭は中止になった。

しかしその裏では東郷美森を生贄とした奉火祭が行われていた。

それを救うために妹たちはこの結界の外で戦い、今度は結城友奈が生贄となっている。

自ら動き、情報を集めても全てが後手に回る。

結局、今やっている事もどれだけの効果があるのかも分からない。

男は自分の力の限界に不甲斐なさを感じてばかりだった。

 

「ふんっ、限界を超えてこそ勇者というものでしょう?」

 

男の弱気な発言を突っぱねるように芽吹は言う。

 

「!」

 

その言葉に、俯きそうになっていた男は顔を上げ、高らかに笑った。

 

「ふ、ふふ、ふふふははははははははぁっ!」

 

「な、なによ?」

 

「楠芽吹、お前の言う通りだ。限界の先にこそ勇者の真価が問われる!」

 

そして腰に手を当て、小首をかしげるように言葉をつむぐ。

 

「『まあ、お主はお主で頑張れ』」

 

「はあ?なによそれ…」

 

いきなりおかしな口調で話す男に突っ込んでしまう。

 

「神樹様のありがたいお言葉だ」

 

「何言ってるのよ」

 

大赦の教義にある神樹様の教えにもそんなおかしな言葉など無い。

ましてや、神樹様は人に対して言葉で語らない。芽吹でもそれくらいの事は知っている。

巫女である国土(こくど)亜耶(あや)からも以前聞いた事がある。

巫女に降りる神託はイメージのようなものであって、ハッキリした言葉ではないのだ。

 

「そんな訳ないでしょう…」

 

男のふざけた返答に呆れ顔で返すが

 

「そうだな、こいつはただの俺の妄想かも知れん。だが。。。」

 

男は吹っ切れた様に語る。

 

「結局は同じ事なんだよ」

 

「え?」

 

「自分たちで出来ることを頑張る。限界が来ればそれを越えて頑張る。それしかないんだ」

 

「それしかない…か、そうね。確かにそうだわ」

 

「今までの勇者たちが、そうして来たように」

 

「これからの私たちも、そうしていく」

 

「「そして未来を掴む!」」

 

合わせた声のままに、ガツンと拳を合わせる二人。

 

「そういえば、名前を聞いていなかったわね」

 

「この仮面を着けている時は名を捨てている。

『仮面の赤い勇者』と呼ぶ者もいたが、あえて名乗るなら。。。」

 

「?」

 

「『通りすがりの勇者(ヒーロー)』とでも呼ぶがいい」

 

「…あなたって本当におかしな人ね…」

 

「勇者は皆そうだ」

 

「私は違うわよっ!」

 

「ふふふ。。。」

 

芽吹の鋭いツッコミに笑みの声を漏らす男。

芽吹も思わす笑みをこぼす。

 

「ふふ…

じゃあ、行くわ。

機会があったらまた会いましょう」

 

「ああ、行くがいい。友と共に」

 

「ええ」

 

結界の外でまた少しずつ湧き出す星屑を睨む仮面の男。

芽吹は振り向き、仲間の待つ結界の中へ飛び去った。

 

これから何が起きようとも、どんな時にも、絶望だけはすまいと互いの心に誓って。




春信(以下略):これで。。。終わり?

mototwo(以下略):『くめゆ』の話はな

本当に何もできてないな、俺

最初からそう言ってたろ?

そうだけど。。。夏凜ちゃんも台詞一言しか出番ないし

防人なんて芽吹以外は名前すら出てないけどな

よくコレを『くめゆ』の話だって言えたな。。。

いや、元はそれだし、時間軸もそうなんだから、そう言うしかないだろ?

2回目にいたっては時間軸すら『のわゆ』時代がほとんどだったが。。。

元々、最終決戦後のネタバレだし、お蔵入りだって諦めてたとこだから、
『くめゆ』と『勇者の章』で奉火祭の話が出た時にここしかない!って思ってな

結局、西暦では誰も救えなかったってことか。。。

お前には別時空の歴史を変えられるほどの存在力が無かったって事だ

ホント、惨めだな

あの後で10話の二つの話が入るから元の時代で頑張ろうって思えるようになったんだし

それでも今回の話で芽吹に活入れられてたんだよな。。。

お前は挫けそうになると誰かが言葉をくれるんだよ
そういう意味ではすごく主人公してるぞ

そう。。。なのか?

前作でも、今作でもずっとそう。こういう周りの人に恵まれた環境と
その言葉をもらえるタイミングは主人公属性の持ち味なんだろうな。

それならまあ。。。いいか

勇者としては最弱だから、属性がまるで生かせないけどな!

いちいち一言多いな、お前は。。。

さて、ここで一段落だが、次どうするかねぇ…

え、何も考えてないの?

あ~、色々書き留めてはいるんだけど、書きあがってるのって何もないなぁ、と

ま、なんか思いついたら一週間後、なんだろ?

そうね、それしかないわな

じゃ!またな!みんな!

<次はいつかな?>

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