暗いというわけでは無いが周りが黒く、チェックボードの床が広がる世界。
一人の男は、そこで目を覚ます。
狼牙「…む、ここはどこだ?」
???「初めまして、神宮 狼牙さん。私は転生を司る神のエリスです。あなたは若くして多系統萎縮症となり、死亡してしまったあなたを導くためにここにお招きいたしました。」
そう言われ、狼牙は落胆する…ことなど無く、ただ受け入れる。
狼牙「そうか…まだ鍛え足りなかったのだがな、まあ、良いだろう。転生を司る神と言っていたが俺は地獄に行くのではないのか?」
エリス「え、ええ?狼牙さんは生前でも善行ばかりで悪行と言える悪行をしていないので天国か異世界への転生なのですが…。」
狼牙「ふむ、天国か異世界か…異世界?そこはどんな世界なのだ?」
エリス「えっと、世界は多数存在し、狼牙さんがいた世界の他、同じような世界もあればSFのような世界、そしてファンタジーの世界も存在いたします。今回、転生をしていただきたい世界はそのファンタジーの世界なのです。」
狼牙「ほう?何故そこへ転生させたい、理由があるのだろう?」
エリス「はい、実は…魔王の所業で輪廻転生を断る魂が増えてしまい、その世界が崩壊してしまうかもしれないのです。ですので、狼牙さんにはその世界へと魔王を討伐する勇者候補として転生していただきたいのです。」
狼牙「魔王か、高熱の息子が最後に見た幻影とかではないのだな?」
エリス「ええ、シューベルト的なものでなくて本当の魔王です。」
狼牙「そうか…良いだろう。その世界へ転生しようか…だが、転生後はどの様な状態だ?赤ん坊からの再スタートなのか?」
エリス「いえ、その姿での転生…いえ、狼牙さんにとっての全盛期、病気が発症する前である18歳の姿で転生していただきます。場所は街の中で周りの者からは違和感のない状態です。」
狼牙「そうか、なら良かった。もし転生する際に人がいない危険区域に飛ばされたりでもしたら切れる所だったぞ?」
その言葉を聞き、一人で叫ぶのかな…?とエリスは思いながら苦笑いをし、返答する。
エリス「あ、あはは…わ、私の先輩である女神が過去にそれをして怒られたらしいので現在は安全な場所へと転生させることが決まったそうです。」
狼牙「そうか、金銭面はどうすれば良い?武器を買うのも食事をとることにも先立つものは必要であろう?」
エリス「そちらに関しては一応は問題ありません、こちらをどうぞ。」
そう言うと、ジャラジャラと音がする小包と一本の刀が現れる。
狼牙「…何故その刀を貴様が持っている、それはあの世界にあるはずだ…。」
現れた刀を見た瞬間、殺気を込めてエリスへと問いただす。
エリス「え、あ、あの…そ、それはコ、コピーの様なモノです。本物の刀は貴方の弟の家宝として相続されて…。」
狼牙「…贋作か、それならば良いだろう、盗人行為をしたのであればその首を刎ねる所だったぞ?」
殺気を消しながらそう言い、エリスは一息つきながら説明を再開する。
エリス「が、贋作とは少し違います、確かにコピーではありますがその性質はすべて同じ様になっており、同一個体といってもおかしくないものです。」
狼牙「贋作であり本物である…か、その二つを持ってその世界へ行けば良いのだな?」
エリス「はい!では狼牙さん、こちらの本をご覧いただき、特典を選んでください!」
狼牙「特典?なんだそれは?」
エリス「えっと、こんな能力が欲しい、こんな武器が欲しいと思ったものをその世界へ持っていける制度ですね。」
狼牙「ふむ…。」
その言葉を聞き、分厚い本を一枚ずつめくっていき目を通す。
狼牙「…天叢雲剣、妖刀村正、物干し竿…む、ほう?女神エリス、この特典にしてくれ。」
そう言いながらページに書かれている特典に指をさす。
エリス「はい、えっと…持参品への不懐属性の付与ですね?こちらはその通り一切壊れることが無くなります。しかし刃こぼれなどは置きますのでしっかりと手入れをしてくださいね。では、この特典でよろしいですね?」
狼牙「ああ、構わない。」
エリス「承りました。では転生を始めますね、魔方陣から出ないようにお願いします。」
そう言うと、足元に魔法陣が狼牙の足元に魔法陣が発生し、体が浮かんでいく。
エリス「では、狼牙さん、願わくば数多の勇者候補たちの中から貴方が魔王を討ち倒す事を願っています!さすれば神々からの贈り物としてどんな願いでも叶えて差し上げましょう!さあ、旅立ちなさい。」
狼牙「体が浮かぶという経験は初めてだが…奇妙なものだな、しかし俺の体は」
そう言いながら光りに包まれ、その空間より消える。
エリス「…あ!?そういえば体について問題ない事を言うのを忘れていました!?」
そして残ったエリスは言い忘れていたことに気付き、焦っていた…。
というわけで終わり、多分次回も続くはず。
設定としては若くして亡くなったという不幸から選ばれた。
名前は神宮狼牙、剣術の才能を持っていたが開花間もなく上記の通り病気にかかった。
没年は24歳、多系統萎縮症という肉体の衰弱によって寝たきりのまま死亡、若さ的に結婚することなく死亡。
両親は既に没しており、叔父の家で弟と共に世話になっていた。
基本は厳しくするが度が過ぎた思想の押しつけはしない、困っているのなら一応は手を貸す。
ただし利用しようとする意志には過敏に反応し、すぐに断る。
若くして死んだため、死生観は死ぬときは死ぬという思想になっている。
武器は刀、名は無く、先祖が打ったとされている。
切れ味自体は名刀に匹敵するが担い手がいなかった為に無銘である。
何故一緒に持っていけるかというと弟が死ぬ間際まで隣に置いていた為に所持品として換算された。
服装は黒いジーンズと黒いTシャツに膝下までの長さの黒い羽織と黒尽くし、ただし中二病ではない。
身長は高めで目つきは鋭い、天国の情報を聞かず転生を選んだ理由は己の鍛錬。
転生特典は持っていった物に不壊属性の付与、ダンまち的な。
金とその小包以外の全部に付与されている。
金については5000エリス、冒険者登録代、宿代に食事代ということで。
では、次回もありましたらよろしくね。