その裏で色々動いちゃってますが、いずれ分かるさ?(伏線回収は、胃が痛い…)
医師と、意思と。
ブロロロ…と古めかしいエンジン音を鳴らして、白いトラックが宿毛泊地の前に停車した。
「にいちゃん、ここでえいがかよ?」
しわがれた老人の声が聞こえる。地元の人なのか流暢に土佐弁を喋る。
「ええ、結構です。…ありがとうございます、おじいさん?」
トラックを降りながら感謝の言葉を述べるのは、老人とは対照的な、知的で聡明に見える白衣を着た青年だった。
「宿毛さんとこに用事あるちゅうことはよ?あんたぁ軍人さんかよ?」
「よくご存知で!この恰好をしていると、研究者か何かと間違えられてしまって?」
「ほほ!オレにゃあ医者にも見えるけんどにゃあ?」
「それも正解です。…いやぁおじいさん、見かけによらず聡明なようで?」
「おんしゃあ褒めてないやろ!舐めちゅう!…まあえいわ?気ぃつけてな?」
「はい、ありがとうございました。」
青年が挨拶すると、老人は車の窓から手をひらひらと振りながら、車を走らせていった…。
「さて?」
青年は、爽やかな風に吹かれながら宿毛泊地に向き直る。
「ご馳走は、用意できているでしょうか?」
言いながら、ペロッと舌舐めずりし、嬉しそうに中に入っていった。
「あ、忘れちょったわ?」
「ズコーー!?」
「言いながら滑るヤツ初めて見たわぁ?」
「私もです。何というか、古典的ですね?」
素直に「古い」でいいんですよ?昭和なんですから?
「…貴方達、相変わらずですね?人の話を聞かないというか…」
青年はメガネをくいっと上に上げる動作をする…どう見てもガリ勉です、本当に…
「私は(眼鏡かけてますが)ガリ勉じゃない!あなたナレーターでしょう!?真面目にやって下さいよホントマジで!!」
いやあwそこを突かれると、小生なにも言い返せませぬ。
「突っ込まねえぞ!?ぜってぇ突っ込まねぇかんな!!」
「落ち着いて下さい、徳田先生?」
徳田と言われた青年ははっとすると直ぐに冷静さを取り戻し?
「ごほんっ!…定期従軍医「徳田」、ただ今宿毛湾泊地に着任致しました!…提督、またしばらくお世話になります。」
「おう!またよろしくにゃぁ?先生?」
そう、彼こそがイベント編で存在を匂わせていた、提督の知り合い、定期従軍医の「徳田先生」です。
まあ、学校の保険医と定期健診に来るお医者さんを合わせたようなもの、で認識は良いと思いますよ?
口上と敬礼をビシッと決めた彼は、自身の持ち合わせのカバンを持つと?
「それでは早速仕事に移らせて下さい?…「患者さん」は、どこですか?」
「お?うーん、深海の皆ぁのことやろ?…今日はおらんかったか?」
「そうですねえ…今日に限ってですが、みんな出払っていて?」
「そうですか…なんとも残念です。あの麗しい肌を拝めないとは?」
ケッ、スケコマシがっ!
「(無視無視。)それでは、艦娘のお嬢さんたちを抜き打ち検査してきましょうか?」
「おお、頼むわ。」
「よろしくお願いします、徳田先生?」
「承りました。では…」
と、先生が執務室を後にしようとする前に、コンコンとドアのノックが聞こえる。
「ん?おう、入りや!」
「ガチャッ)しつれーしまーす!提督!お酒のお誘いに来たよぉ〜?」
「イ、イヨちゃん!用事が終わってないみたいだし、後にしよう?」
「提督、イヨから聞いたが貴様イケる口らしいな?私が祖国から持ってきた上質のウォッカがあるのだが?」
「…おや?」
「あっ!知らない人がいるー!!」
「イ、イヨちゃん!?失礼だよ!」
と、徳田先生を見るなり不審者扱いなイヨちゃんたちとガングートさん。
ガングートさんに至っては、もうメンチ切ってますねこれ?
「…貴様は?」
「これは失礼を?あまりにも美しいもので、しばし見惚れてしまいました。」
「御託は良い、名は何と言う?答えろ。」
「ガングートさん…?」
「こりゃあ!ガンちゃん!仲良うしぃや!」
「ガンちゃんではない!私はガングートだ!!」
「まあ落ち着いてください?…私は運営鎮守府より派遣された、医官の徳田というものです。以後お見知りおきを?お嬢さん方?」
「あはは!ナニこの人面白ーい!」
「イヨちゃん!…えっと、徳田さん?ですか。私は…」
「ええ、存じてますよ?イヨちゃんにヒトミちゃん、それからガングートさん。ですね?」
「私たちの名前わかるのぉ!?イヤー!私も人気者になったなあ?」
「私も長年この仕事に就いてますから、艦娘の名前も嫌でも覚えますよ?」
「そうなんだー?まあいいや、これからよろしくー!」
「もう!イヨちゃん!?」
イヨちゃん、私もそれは軽すぎると…
「なんだよーう!姉貴は固すぎんだよぅ。ね~ぇ提督ー?」
「ははは、貴女みたいな年頃は、そのくらいがちょうどいいですよ?」
「にへへぇ、褒められた!」
「イヨちゃん、それ褒めてないと思う…?」
「まあまあ…では、少し良いですか?抜き打ち検査を行いたいのですが?」
「え”っ!?検査ぁ!!?…わ、わたし痛いのは…」
「いえいえ?少し顔色を窺うだけですから?…では。」
そういうと、徳田先生はイヨちゃんの顔を覗き込む。
「ふぅむ?健康状態は好し。身体機能も正常…?貴女、お酒は?」
「え、ええと…?」
「…毎日のように飲んでます。」
「ヒトミぃ!?」
「いけませんねえ?肝臓が固くなってますよ?貴女だけの体ではないので、お酒は程々に?」
「…ほら、イヨちゃん?」
「わーったよぅ!ふぁーい、気をつけまぁーす。」
「よろしい、では次は…」
…と、同じようにヒトミちゃんの顔を覗き込むへんt…ごほんっ、徳田先生。彼女はどこも悪くないようですねえ?
「さて次は…?」
「…」
「…後にした方がいいですね?…では検査が終わり次第、私は自室で待機してますので、詳しい検査が所望ならいつでも?」
優しく微笑むと、徳田先生はその場を後にした。
ガングートさんが怪訝な顔で提督に問いかけます。
「提督よ、あれは「ヤブ」ではないのだな?」
「お?いやぁ?ほっぽも診てもろうたしにゃぁ?」
「そうか?ただ顔を見ただけで症状が分かるものだろうか…とな?」
「なによぉ?ガンちゃんは疑ぐり深いにゃぁ?」
「貴様が人を信じすぎているだけだ!」
「ほうか?にゃぁ吹雪?」
「ガングートさん、あの?徳田先生は悪い人ではないので…あんな感じの人ですが。」
「分かっている。根は善人なのだろう…が、あの様なタイプは初めてでな?何というか、「素顔を仮面で隠している」…という具合か?」
「あれやにゃぁ!ガンちゃん、続きは居酒屋でやろうや!にゃぁ?」
「そうだよぉ、がんちゃ〜ん?」
「…はあ、解った。あとガンちゃんと言うな!!」
そうですよ?銃殺刑になりますからwww
「おい!ナレーターとか言ったか?貴様いますぐここに来い!お望みどおり銃殺刑にしてやる!!##」
「ガンちゃん、そりゃまずいちや!?」
「ガングートぉ!私はガングートだあああああ!!!」
「ガ、ガングートさん!落ち着いてえ!?」
「あはは…いつもの感じに、戻った……。」
なるほど、経過は順調…といった所か?
生活にも支障はないようだ…しかし、あの女性。
やはり「覚えている」ようだ…自分が何であったのか。
報告で聞いていたが、まさか本当に存在するとは…彼女の送迎が遅れたのもそのため、か?
…まあ、私には関係ないか。
青年はそんな事を考えながら、ふと顔を上にあげる。
「四年か…長い、いや…まだ短いか。」
私の「贖罪」は、まだ終わらない。
青年の胸の内は、未だ明かされない……。
『そっすか…そんなことあったんすね?』
所変わり、海底の暗闇、底のそこの、会話。
空母棲姫は、戦艦棲姫に次の作戦についての話を聞いていた。
『しかし、アンタがキレるなんて、珍しいっすね?』
『別ニソウイウコトデハナイワ?タダ、私タチノ提督ガ貶サレタ気ガシテ…。』
『ふーん?別に良いっすけど、その提督は何してるんすか?』
『次ノ作戦ニ躍起ニナッテルワ…次コソヤツラニ眼ニモノヲ見セル!…ッテ?』
『そっすか?…なら、ウチらもその気になった方がいいっすね?』
『アア…スマナイナ、彼等ノコトハ、分カッテイルノダガ…』
『何でアンタが謝るんすか?w…大丈夫、そこは向こうも分かってるっすよ?』
…ウチらは、もう戻れないと思っていた。
でもあの人は、あの人たちはウチらを受け入れた。
それが当たり前であるように…だから、ウチらはそこに甘えてたかもしんないすね?
だから、これは「ケジメ」。
ウチらは所詮化け物…たとえ、その考えが、あの人たちの優しさを裏切る形になっても…!
『……』
ああ、もう向こうでお酒…飲めないかもしんないすね?
こうして、夏に向けた大型作戦は、着々と進んでいた…。