ダンジョンに鉄の華を咲かせるのは間違っているだろうか 作:軍勢
ある女神様=孤児の保護者
という発想を元に勢いで初めてしまった。
原作は希望のあるエンドでしたが、散ってしまった彼らが悲しくて書き始めました。
相変わらずのドン亀更新ですがよろしければよろしくお願いします。
――パンパンパンッ!!!--
人通りのなくなった都市、クリュセに発砲音が鳴り響く。
「はぁ……なんだよ、結構当たんじゃねぇか」
男は襲撃を掛けてきた殺し屋三人の内一人の脳天を銃で撃ち抜き退散させた。
だが男はその襲撃が行われた際にとっさに団員を庇い、その背に何発もの銃弾を受けていた。
「あぁ……ああぁ……」
「なんて声…出してやがる…ライドォ!」
少年、ライドが声を洩らすのも無理はない、男の姿は誰が見ても死に体。
穿たれた傷からは命の水が止めどなく溢れ出して地面に赤い池を作り出していた。
「だって…だってぇ!!」
「俺は鉄華団団長…オルガ・イツカだぞ…こんぐれぇなんてこたぁねぇ!」
虚勢だというのはこの光景を見れば誰しも理解出来るだろう。
だが虚勢であろうとも男は最後まで団長である事を止めはしない。
「そんなっ…、オレなんかのために……!」
「団員を守るのがオレの仕事だ。いいから行くぞッ!みんなが、待ってんだ。」
ベチャリと自分から流れ出した血の池を踏みしめ歩き出す。
血は繋がっていないが、それ以上のもので繋がった家族たちの為に。
一歩が重い、体が鉛になった様に上手く動かない。
血を失い、意識が朦朧としていると不意に色々な顔を思い出した。
(ユージン、アキヒロ、ダンジ、おやっさん、……)
次々と浮かんでくるのは掛け替えのない家族の顔。
その中には既に死んでしまった顔も含まれて居た。
(名瀬の兄貴、アミダ姐さん、ラフタさん、シノ、ビスケット……)
そして最後に浮かんでくるのは当然あの顔だった。
それと同時に『約束』を思い出した。
―――謝ったら許さない。
(ハッ、最後まで…あぁ、そうだ、そうだよな!ミカァ!)
己の親友である三日月・オーガスの声が、瞳が死の淵で弱気になった己に活を入れた。
時に脅されるように。時に決断を尋ねるように向けられた三日月の眼に自分は背中を押されてきた。
それがどうしようもない程の重荷と感じる事があった。
あの眼で見られている事に怯えていた事もあった。
だがそれでも、その目のおかげで自分は鉄華団の団長 オルガ・イツカになれた。
いつでも粋がってて、最高にカッコイイ姿で家族を引っ張っていく…そうあれと自分に誓ったのはやはりあの目があったからだ。
そして死の間際になってやっと、オルガは自分の答えを見つけた。
(ミカ、やっとわかったんだ、俺たちに『たどり着く場所』なんていらねぇ。ただ進み続けるだけでいい!とまんねぇ限り、道は…続く!)
だからこそ伝えよう。自分が得た答えを伝えるために……
どこまでも、どこまでも、遠く遠く見果てぬ先へと進み続けろと。命ある限り叫び続けろと。
それは宛ら蝋燭が燃え尽きるその直前に激しく燃え盛るが如く。
命を振り絞りながら彼は叫んだ。大きく、力強く、嗚咽を洩らす団員達にしっかりと聞こえる様に。
「オレは止まんねぇからよ。お前らが止まんねぇ限り、その先にオレはいるぞ!!」
自分の居る場所こそが自分たちの居場所だと言ってくれた家族たちに、
例え離れてしまっても、生きる場所が変わろうとも、進み続ける限り俺達は変わらず家族のままだという思いを込めて…男は倒れた。
「だからよ…止まるんじゃねぇぞ…」
最後の最期まで、家族を想い、家族を考えた男はその言葉を最後にその命を散らした。
そう、散らした筈だった。
「ちょ、ちょっと君!大丈夫かい!?」
プロローグなので短めです…