―前回までのあらすじ―
「ぜひ私を!ぜひ、私をこのパーティに!」
アクア、めぐみんに続いて変態チックなクルセイダー「ダクネス」が仲間になった!
「おれにもあるから、魔王ってのを倒す理由」
「魔王を倒す」という目的のもと、カズマといることを決める三日月。
歩く歩幅は異なれど、向かうゴールは同じ5人、今ここに、人類を救うべく魔王に立ち向かう新たな勇者たちが立ち上がった!
「なあ、スキルってどうやって習得するんだ?」
カエルを討伐し皆の意思を確かめた夜から一夜明けた次の日、ギルドで遅めの昼食を摂っていたカズマは、一緒に食べているアクア、めぐみん、三日月に尋ねる。
「スキルの習得?そんなものスキルカードに記されているスキルから・・・、ああ、そういえばカズマは『冒険者』でしたね」
「『冒険者』は他の職業の奴にスキルを教えてもらって、それで覚えることができるんだ」
「だから全てのスキルを覚えることができるんです、まあ割り振るスキルポイントは本職に比べて多いんですが」
めぐみん、三日月がカズマに説明する。
「へー、ってことはめぐみんに教えてもらえば俺も爆裂魔法を使えるようになるのか」
「その通りですっ!」
「うおっ」
「その通りですカズマ!必要になるスキルポイントはバカみたいに多いですが、『アークウィザード』を除いて唯一爆裂魔法を使えるのが『冒険者』です。爆裂魔法を覚えたいのならいくらでも教えます。というか覚えましょう。ほかに覚える価値のあるスキルなんてあるのでしょうか、いやない!さあ!私と一緒に爆裂道を歩もうじゃないですか!」
「おちついてめぐみん、少なくとも今のカズマじゃ無理だと思う」
「・・・そうなのか?」
「うん」
「そうね、『冒険者』が爆裂魔法を覚えようとしたら、10年ぐらいスキルポイントを何も使わずずーっと貯めてようやくってところじゃないかしら」
「待てるかそんなもん。・・・なあアクア、お前なんか役に立つスキル覚えてないか?」
「しょーがないわねー、私のスキルは半端じゃないわよ?本来なら誰かに教えていいスキルじゃないんだから、そこちゃんと覚えておきなさいよね」
何やらもったいぶった様子で答えるアクア。水の入ったコップを持つようカズマに言うと、スキルの説明を始めた。
「この種をコップに入れるのよ。そうすると中の水を吸った種はにょきにょきと―――」
「誰が宴会芸スキル教えろっつったこの駄女神がぁ!」
ちなみに宴会芸スキルの習得には5ポイント必要です。
―このすばー―
「・・・ったく・・・、そういや三日月は何のスキルを覚えてるんだ?」
「知り合いの職業が結構ばらけてるからいろいろと教えてもらった。ダクネスとかから前衛職向けのスキルとあとは―――」
「―――ねぇ、君がダクネスと三日月が組んだっていう人?有能なスキルがほしいなら『盗賊』のスキルはどうかな?」
突然隣から声をかけられる。隣のテーブルにいたのはダクネスと身軽そうな衣装で身を包んだ銀髪の女性だった。
「ヤッホーミカヅキ♪」
「クリスじゃん、どうしたの」
「いやー、ダクネスが「ミカヅキと一緒にパーティに加入した」っていうもんだからさ、お姉さんとしては相手がどんな人か気になるじゃん?」
「紹介する、私とミカヅキの友人で『盗賊』の―――」
「『クリス』だよ、よろしく!」
「あ、よろしくお願いします。・・・えっと、『盗賊』スキルってどんなのがあるんですか?」
「よくぞ聞いてくれました!『盗賊』スキルは便利だよ、敵感知に罠感知、潜伏とか窃盗とか、覚えておいて損はないスキルばかり!ついでに言うと必要なポイントも少なくてすむ!どう?今ならクリムゾンビア1杯とお安くしとくよ?」
「そりゃいいや、おーい!この人にクリムゾンビア一つー!」
―このすばっ!―
「―――で、なにがあったの?」
カズマにスキルを教えると言って路地裏へ向かったクリスだっただが、涙目になって帰ってきた。
「えぐっ・・・、
「カズマ・・・」
「いや返してほしかったらパンツの価値分の金を払えって言っただけだよ?ホントだよ?」
「お金払ったら「お前がこのパンツにかける価値はそんなもんか?」って言われて・・・!」
「・・・」
「あの、無言でこっち見つめるのやめてくれません?」
「はあ・・・、ほらクリス、元気出して」
「うん・・・、って!ミカヅキ!?こ、これって・・・!?」
「え、おれの財布だけど?ああ中身とったら返してね。それリーンからもらったやつだから」
「いやそうじゃなくって!ミカヅキがこんなことする必要なんて・・・!」
「別にそこまで必要なわけじゃないし、一応カズマは仲間だから。仲間のやったことにけじめをつけるのは大事でしょ」
女の子が泣いてたら慰めろって言われたしね、と三日月。
「・・・もう、お金は大事にしなきゃだめだよ?」
「あれ、いいの?」
「お金がないからって誰かにたかるのはダメでしょ、しかも友達からなんてもってのほか!いつまでもめそめそして弟分に心配かけてちゃ情けないしね!」
じゃあ私稼ぎに言ってくるから!とその場を後にするクリス。
「・・・お前ってフェミニストだったのな」
クリスが見えなくなると、カズマが三日月に話しかける。
「その『ふぇみにすと』ってやつがどんなのかは知らないけど、名瀬とアトラから「女の子は大事にしろ」って言われたから」
「いやまあそれはそうだろうが・・・、てかお前、それで有り金全部渡したらどうするつもりだったんだ?誰かに借りるつもりだったのか?」
「安いクエストでも飯代くらいは何とかなるし」
それに・・・、と三日月
「もうすぐ『アレ』の時期だしね」
「『アレ』?一体―――」
なんだよ、と続けようとしたカズマの声を遮って聞こえてきたのは―――
『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中の冒険者たちは、至急ギルドに集合してください!繰り返します―――』
「今年も来たね、『キャベツ狩り』・・・!」
―このすば!―
「・・・キャベツってあれだよな、野菜だよな?」
「そうですよカズマ、緑で丸いあのキャベツです」
「ああ、嚙むとシャキシャキしてて美味しいあのキャベツだ」
「んなこと知っとるわ!じゃあなにか?緊急クエストとか言ってやるのはキャベツの収穫か!?」
「あー・・・、カズマは知らないんでしょうね・・・。カズマ、ここのキャベツはね―――」
「皆さん!お集まりいただきありがとうございます!もうお気づきかと思いますが、今年もキャベツの収穫時期がやってきました!今年のは出来が良く、1玉1万エリスとさせていただきます!すでに住民の皆さんには避難していただいております。この檻の中にできるだけ多くのキャベツを捕まえて収めてください!尚、今回の報酬は後日まとめてのお支払いとさせていただきます―――」
「―――飛ぶんだ、ここのキャベツ」
職員に遮られたアクアの話をつづけた三日月の言葉は、日本人のカズマにとっては理解の範疇を超えていた。
―このすば・・・―
「―――うぐあぁぁぁ!」
―――拝啓、父さん、母さん、元気にしていますか
「―――くそっ!仲間がやられた!」
―――俺はこのファンタジーじみた世界で変な仲間と元気に暮らしています
「―――どきなさい!このキャベツで一山あてるんだから!」
―――役に立たない元女神の『アークプリースト』、頭のおかしい『アークウィザード』、どこか危ない匂いを感じる『クルセイダー』、それと強くて優しくて頼りになる『冒険者』の仲間とともに、日々クエストに挑んでいます
「―――ああ、いい、いいぞ!もっとだ、もっと来い!」
―――ちなみに今の天気は
「はあぁっ―――!!」
―――曇り時々キャベツです。
―日本に帰りたい・・・―
「なぜたかがキャベツ炒めがこんなにうまいんだ。納得いかねえ、全っ然納得いかねぇ・・・!」
キャベツ狩りが終わった夜、街のいたるところでキャベツ料理がふるまわれていた。
羽振りがいいのでクエストに参加したカズマだったが、軽く後悔しているようだ。
「でもすごかったよカズマ、教えてもらってばかりの『盗賊』スキルをあんな風に使いこなすなんて」
「うむ、私がキャベツに囲まれ袋たたきにされていた時など、さっそうと現れるや否や襲い掛かるキャベツを次々と収穫していったからな。礼を言う」
「確かに、潜伏スキルで気配を消しながらスティールでキャベツを捕まえるその姿はさながら
「カズマ・・・、私の名において、あなたに『華麗なるキャベツ泥棒』の二つ名を―――」
「やっかましいわあ!」
3000字を超えた・・・だと・・・!?これいつもの字数じゃ前回含めて3話分じゃねえか・・・
三日月にお姉さん風吹かせてかっこつけるクリス、いいよね・・・?よくない・・・?
―次回予告―
さて!ミカヅキにああ言ったわけだし、くよくよなんてしてないで早いとこ稼がないとね!
・・・それにしても、あんなこと言ってくれるなんて、最初会った時からは考えられないくらいや・・・一瞬ばれたかと思ったし・・・。
次回!「この素晴らしい世界で本当の居場所を!」
「これはアンデッドですか?いいえ、リッチーです」
それにしてもさっきいた女の人、まさか先輩じゃないよね・・・?