第二十話 「長門さんのE4戦記」
どかああああああん
敵がなにかポエムを吐いているが、知ったこっちゃない。
まったく、面倒なものだ、と提督がぼやいた。
まあなんとなくと言った感じでE3が終わった。別段強くもなかったが、輸送はなかなか苦戦した。
さてE4だ、と伸びをする提督にお茶を出す。
「おお、すまないな。」
「問題ない。これくらいのこと...じょ、上手に入っているか...?」
「あ、ああ。」
「よかった」
どういうわけか緑茶なのに甘い気がした提督だが、まあとりあえず飲んでおいた。苦いのか甘いのかよくわからん。
「そうだ。お茶ついでにお前、旗艦をやってみないか?」
「旗艦...?」
「ああそうだ。なるたけ火力が欲しくてな...頼めるか?」
「長門」
E4は連合艦隊出撃...連合艦隊旗艦...!
「よ、よし、よかろう。」
響きに釣られて二つ返事で引き受けた長門であったが、しかしこの時彼女は知る由もなかった。E4の恐ろしさを...
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―これは実在のAshley提督の鎮守府での出来事である。―
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ついに編成が発表された。長門が旗艦になった時には既にE4の第一ゲージが破壊されていた。E3が突破されてわずか一日後のことである。
提督は、前回は前段作戦を完遂できなかったから今回このE4を突破して初めて前回の自分たちを超えたことになる、と言った。
どうやら油断さえしなければ難なく突破できそうだ。提督が最高練度集団の中からではなく自分を旗艦に選んだのはそういうことであろう。
発表された編成はこうだ。
連合艦隊:水上打撃部隊
第一艦隊
長門(改)
扶桑(改)
鈴谷(改)
熊野(改)
千歳(航改)
瑞鳳(改)
第二艦隊
名取(改)
榛名(改)
神風(改)
妙高(改)
雪風(改)
北上(改二)
なかなか錚々たるメンバーが揃っている。名取、榛名、神風、北上と言えば話に聞く最高練度集団じゃないか。
なるほど、第二艦隊に戦力を集中させたか。ならば、せいぜい第二艦隊を守らねばな…
「あ、あのっ、どうか、よろしくお願い致します。」
怯えた様子で話しかけてきたのはこの鎮守府内で、並みいる戦艦、空母たちを差し置いて最高練度を誇ると噂の名取であった。そんなに怖く見えるかな...ショック
私もこの鎮守府に来たのは早い方であったが、なにせこの名取は伝説に聞く提督が着任した瞬間持っていた資材を全て投入して建造したという、その艦だ。
さらに練度も上となれば、こちらから挨拶するべきだったか…しまったな...
「ああ。よろしく頼む。」
ああああああああああああああああああああああやってしまったあああああああああ。
どうも駆逐艦、軽巡洋艦の前だと緊張してえらぶってしまう。
おかげでおっかないキャラだと思われてしまって間宮さんのとこにも行きづらくなってしまった。どこまで学習しないんだ私は!
「おい、じゃあそろそろ出撃してもらうぞ」
提督の声だ。い、いけない、こんなことでは。相手は深海棲艦、こんな海域さっさと終わらせて、それから名取とでも電チャアンとでも話せばよいのだ。そうとなれば、この長門、相手がどんな雑魚であろうと手加減をする気は無い。
「行くぞ。長門、出撃する!」
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さて、海に出た長門たちであったが、いきなり潜水艦に襲われた以外は穏やかな海の旅を続けていた。
それもそのはず。第一ゲージ破壊に際して翔鶴姉をはじめ空母たちがこれでもかと知らしめてやったのだ。そこには敵の姿はもうなかった。
しかし、少し狭い海峡を抜けると、一転して敵の猛攻が始まった。
魚雷艇での強襲から基地航空隊からの空襲、敵の攻撃は湾を深く進むにつれ激しくなっていく。
敵の攻撃をかいくぐりながら北西方向、湾の最深部に向かっていると、不意に羅針盤が西を指した。
「なに?西だって?北西じゃなくてか?」
妖精さんに尋ねるが、妖精さんは能天気にも「まあこっちに行く運命なんだよワトソン君」とか言って聞かない。
妖精さんの羅針盤は何気に絶対なので進路を変え、西へ向かう。
「長門さん!偵察機より入電...集積地夏姫です!」
「なにっ!さっきの空襲のか!」
「魚雷艇も...駆逐ナ級もいます!」
駆逐ナ級は今回のイベントから突如出現した耐久、装甲、火力、どれをとっても頭おかしい駆逐艦だ。さっきの羅針盤の挙動といい、敵の編成といい、どうやらこっちは避けるべき道のようだ。
まだボスがいると思われる場所までかなりあるなかでこの編成...不覚にも少したじろいでしまうが、この状況、もはややるしかない。
「全艦に告ぐ!この先強敵との戦闘になる!航空母艦は攻撃隊を発艦させよ!その他の艦は総員配置につけ!砲戦、雷撃戦用意!」
見ていろよ!この長門、提督から頂いた連合艦隊旗艦の任務、初戦から大破などで終わらせない!
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...まあ、こうなるよな...
思わずため息がこぼれる。
戦闘が始まってすぐ、集積地夏姫の砲撃で扶桑さんが大破してしまった。仕方なく離脱して帰投する。
まああれだけフラグをたてたのだ。こうなってしまうのも仕方がない。
一行は帰投するとバケツを使って手早く入渠を済ませる。魚雷艇のカスダメが痛い。
「す、すまなかった...次は、どうにかしよう...」
なぜ私は提督にまでえらぶってしまうんだ...!このままではさらにコワモテキャラみたいになってしまう...
「あ、ああ。頑張ってください。」
ほらー。なんか敬語使われてんじゃんー。もうやだ。ながとしらないっ。
「あ、それでだ...」
心の中では大暴れであったが、提督の前ではポーカフェイスを貫く。
我ながらこのポーカフェイスはすごいと思う。麻雀してても全然読まれない。戦いの中で心理を読まれることを嫌って練習しといてよかった。よかった...のか...?
「どうやら今回の編成だと『ダメ』らしい。編成の見直しを意見具申する。」
「うむ。わかった。すまんが、これからほかの鎮守府から情報を得るから、少しでも削っておいてくれないか?」
なんで調べてねえんだこのクソ提督...しかも無謀とわかっていながら出撃とは...!
「し、しかし...」
「今までの傾向からして編成を軽くせざるを得ないかもしれない。考えうるいちばん丈夫な編成を考えたつもりだから、行ってくれ。信頼してるぞ。」
ぐっ...そ、そんなこと言われたらっ...ず、ずるいぞ...
「了解した。この長門、できる限りのことをしよう。」
ポーカーフェイスを練習しておいてよかった。
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艦隊のメンバーで作戦を練る作戦室に行くと、意外にも全員やる気だった。当然だ。E3までなんの苦労もなくクリアしたのに自分たちのせいで立ち止まらせてはいけない。
全員、リベンジに燃えていたのだ。
「よし、名取!行くぞ!」
「ふぁっ、は、はい!」
かわいい。(確信)
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集積地夏姫はなんとか突破できることがわかった。正直私からすれば大した砲撃でないし、大きなダメージを与えれば攻撃すらしてこなかった。
通過するだけなら事故さえなければ大丈夫そうだ。
それよりこいつら...
ボスマス前に立ち塞がる戦艦たち。これは...集積地夏姫より厄介だ。
「第二警戒航行序列!!攻撃を躱せ!!!」
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...助かった。名取が中破してしまったが彼女にそれは誤差の範疇だろう。
彼女は中破状態で戦艦を2隻落とした。あいつは化けもんだ。
しかし、次はついにボス戦。どんなやつが現れるかは分からないが、これだけ激しい道中をくぐり抜けた先のボスだからより一層強いに違いない。
燃料ももうカツカツだ。満足に砲撃も避けられないだろう。だが、やるしかない。
「全艦、第四警戒航行序列!今回は様子見ではあるが倒すつもりで行くぞ!第一艦隊、砲撃開始!」
号令と同時に砲弾を放つ。先ほど先制航空攻撃を仕掛けた艦載機たちによると、敵は「戦艦仏棲姫」だそうだ。
しかしその周りに戦艦2隻、軽空母もいる。なかなか大変そうだ。
と、偵察機から入電、「我、弾着観測セリ。軽空母大破」
どうやら敵航空戦力を潰せたらしい。いきなり大活躍じゃないか。やったぞ。
そこからも続々と攻撃成功の知らせが届く。敵戦艦中破、駆逐艦撃沈、軽空母撃沈...
しかしその中でただ一つ異彩を放つのは戦艦仏棲姫であった。
「敵旗艦ニ弾着ヲ確認。命中、タダシ敵旗艦ニ損害ハ見ラレズ」
「なにっ」
みんなの全力の砲撃を通さぬ装甲...分厚い。
「妖精さん、今、どれ位ダメージが入ったかわかるか?」
たまらず妖精さんに尋ねる。そう、弾着観測なんかしなくても妖精さんに聞けば命中か、ダメージはいくらか、なんてすぐに教えてもらえるのだが。
「ん~10くらいかなぁ~」
なんとも適当な返しであるが、おそらく本当なのだろう。妖精さんは絶対である。
燃料が心許ない分、みんなの逃げ足も遅い。かくゆう私も中破してしまった。こいつ、砲撃の威力も命中率も高い。高すぎる。
装甲も高い。攻撃力も高い。果たして倒せるのだろうか。
「長門さん、名取、夜戦に突入します。夜戦だけは、得意なんです!私!」
「お、おう。」
この子、スイッチ入るとキョドらないんだな…これはこれでかわいい。
さて、私ができることはもうない。名取の背中を見送りながらただ祈るのみ。
せめて満足できるだけ削ることが出来ればいいのだが…
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730あった耐久は600程までしか削れなかったそうだ。これでは削りとはなかなか言えない。
北上のカットインでさえ100程しかダメージが入らないらしい。カットイン不発や連撃では誤差程度しか削れないらしい。
帰投した私達は既にお通夜状態だった。沼の匂いがプンプンする。
前回はE2で沼った。ただ、それは丙でお札が無効になるシステムを理解しておらず、ずっと二軍で出撃していた事が原因で、システムに気づいたら一発でクリアしてしまった。
今回はE4で沼った。今回は前回と違う。完全なる実力負け。その現実は案外重たいものだった。
そんな中お通夜ムードの中に一筋の光。
それは、提督であった。
「みんな聞いてくれ。例の集積地夏姫を回避する方法が分かったぞ!」
「遅かったじゃないか。なんなんだその方法とやらは!早く教えないか!」
何もできない自分に腹が立っていた長門は、はっと何かに気づいたように顔を赤くして縮こまってしまった。
「す、すまない…」
「なに、気にするでない。お前の気持ちはよく分かっているつもりだ。だから俺も最大限自分にできることをしたつもりだ。」
「て、提督…」
こういう時だけかっこいいことを言うのは本当にずるいと思う。あっなぜだろう涙が…いかんいかん、名取がいる手前泣いてしまうわけにはいかない。名取を見ろ。あんなに真剣な顔で何かを見据えているような顔をしているじゃないか。今は、提督の話に集中するんだ…
(この時当の名取は提督のことなど一ミリも信用せずにどうしたら夜戦でダメージを与えることが出来るか考えていたのは秘密である。)
「よしじゃあ発表するぞ。条件は...」
(どきどきどき...)
「雷巡ゼロか、海外艦一隻につき雷巡1まで、だそうだ!」
「ナ,ナンダッテー」
一応形だけのリアクションをしたみんなはすぐに机に向かう。
正直みんなわかっていた。最近雷巡の粛清が激しいこと。今回のイベントは海外艦が深く関わっていること。
...そして、我が鎮守府には海外艦がいないこと。
「うちにはよく育った重巡も妙高しかいないから北上の代わりは...電だな」
言い終わるが早いか、名取が電の首根っこを引っ張って作戦室に入ってきた。
ちなみに電は今しがた四暗刻単騎待ちをテンパり、不敵にもリーチをかけたところである。待ちは地獄単騎だった。
長門は、恐ろしい手を張っていた電を恐れるべきか、そんな電を涙目にさせて引きずってきた名取を恐れるべきか分からなくなった。
部屋の奥にはどこか悲しそうな顔をした北上がいる。連合艦隊旗艦は気にすることが多い。
「とにかく、次は一旦集積地夏姫を回避する編成で出撃しよう。北上を抜く火力の低下と一回戦闘が減る回避、火力の低下抑制を天秤にかけて、そこから本攻略編成を決定する。総員準備をするように。一時間後に出撃だ。」
「あ、あの...」
名取が申し訳なさそうに手を挙げる。
「意見具申、いいでしょうか…」
「なんだ」
「ひっ...ごめんなさいごめんなさい!」
えっ...そんな怖かった...?今度から気をつけよう
「いいからとりあえず言ってみろ」
「えっとですね…あの...その...装甲があまりにも分厚かったので、何かギミックはないかなぁって...すみません!意見具申じゃなくて...」
「ふむ、じゃあ提督頼んだ。」
提督に丸投げする。こういうのは私たちの仕事ではないし、こいつ、放っておくとほんとに何もしないからこれでいいのだ。
ところが、長門は感じた。提督のオーラが変わった。顔を上げると、なんてことは無い、ドヤ顔をしていた。
「ふふふ、そんなこともあろうかと、もう調べておいたぞ!」
「なにっ!」
「ギミックはないそうだ!まあ頑張ってこい!」
「(´・ω・`)そんなー」
これに大いに驚いたのは北上であった。また自分の出番がやって来ると思ったのだろうか。
一方の長門は特には感ぜず。第一艦隊の仕事は夜戦までに雑魚を掃除しておくことで、ボスにはむしろ触れない方が良かったりする。
「よし、では一時間後に再出撃だ!今度はもっと削れるよう願おう。私も全力を尽くす。」
「「「了解!!!」」」
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出撃はしたがうまく削れずだった。やはり、途中大破率が上がってでも北上を入れた方が突破の可能性は高そうだ。というか、そうでないと全く希望がないと言ってもいい。
スッタンを邪魔され、一回で乗り捨てられ、ろくに活躍もできなかった電の怒りは計り知れない。だんだんと目が横棒と丸になっていく。
このままでは深雪が危ない。
「あ、あとで麻雀でもしよう。な?間宮券もあげるから。」
「わあい、ありがとうなのです!」
必死で慰めたら案外機嫌を直してくれた。ちょろかわいい。
…あれ?もしかしてヤバイ約束をしてしまったのでは?…まあいいか。
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電が執務室に帰っていくと、すぐに北上がやってきた。
「やっぱ私の出番なのねー。まあわかってたけどさー」
「頼むぞ。お前のカットインが頼りだ。」
「はいよー。名取も頑張ろうねー?」
「は、はい!頑張ります!」
「もー名取かわいいー」
北上と名取がえらく仲よさそうだ。そういえば彼女らは旅行メンバーだったか。くそ、私ももう少し練度が高ければ…
恋敵の出現に気を取られている暇は無…
「な、長門さんもよろしくお願いしますねっ!」
もー名取かーわーいーいー
…はっ、いけないいけない…大丈夫だろうか…?
提督がやってきた。
「わっ、びっくりした!どしたの?」
ドア付近にいた北上が被害を受ける。
「みんな聞いてくれ...実は...」
なんかめっちゃ溜めているがみんなはあまり聞いていない。聞かなくていい。
「実は、探照灯を手に入れたぞ!」
聞いていない...聞かなくて...えっ?
「やったぁぁぁぁ!」
大喜びなのが名取である。いつもと違う名取の姿に感枠気味の提督だった。かわいい。
「こ、これで...夜戦が...」
目が輝いている名取だが、実はこいつ、デメリットがある。
申し訳なさそうに妙高さんが言った。
「大丈夫?それ、敵の攻撃を引きつけるんじゃ...」
「えっ、あっ、えっと...」
名取が少し言いよどむ。闇の中で光を灯せば名取の位置は丸わかりであり、いい的だ。危険である。
名取はやるというだろうが、やらせるわけには行かない。そうだ、私が持って私も夜戦をするというのはどうだろうか。
「大丈夫です。やります。」
そらきた。
「名取...しかsh」
「大丈夫です。私が役に立てるなんて、ここしかないから...」
「しかし...」
「勝ちましょう?」ニコッ
うっ...ずるいぞ…ずるいぞ…笑顔は...
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探照灯、照射!
それは夜戦のため離脱した長門たちからも見えるほどのものであった。
この時、初めて長門は戦艦仏棲姫姿を見る。
「なんて...醜いかおなんd...」
「はいはい、応援しましょうねー」
扶桑姉様に窘められる。ほんのジョークじゃないか。
「あぁっ!」
遠目に名取が被弾しているのが見える。助けに行きたい、助けに行けないジレンマ。頑張ってくれ、名取!
「ゆきかじぇの攻撃!くらえーーー!」
雪風の放つ魚雷が戦艦仏棲姫に命中!轟音を立てて沈んでいった。
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母港に帰投するや否や、すぐに名取を皆が賞賛する。
昼戦で早々と中破した千歳は、鎮守府に映像を送っていたのだ。
千歳を称えるものはいなかったが、名取は鎮守府の皆に囲まれていた。
そっと千歳のそばによる長門。
「よくやった。」
「...はい。」
主役は、ひとりではない。
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さて、忘れていないだろうか、実はこれ、ラスダンじゃないです。
本当の戦いはここからであった。
先程の勢いのまま出撃するも失敗、失敗、倒せる気配もない。
最終形態となって現れた敵は先程よりさらに硬く、強化されていた。
泣きそうな名取。枯渇した資材。限界であった。
自然回復に頼るしかない資源では、一日に数度しか出撃できない。
何回やっても倒せない戦艦仏棲姫の替え歌ができるくらいであった。
出撃しても出撃しても倒せない無力感、イベント終了が近づいてくる焦燥感、せっかく頑張ったのにダイジェストにされた絶望感に打ちひしがれる。
だんだん提督の目が死んできた。私達も辛いが提督も辛いのだーーーなんてなるはずがなく、お前毎日遊んどるだろうがなんでお前の目が死ぬんだよふざけんな死ね!
...はっ、最近疲れているからだろうか、だんだん心まで荒んできた。いよいよまずいか。
ギスりまくっている鎮守府。執務室をウロウロしていると、後ろから肩を叩かれた。ちょうどイライラしていたところなので振り向きざまぶん殴る!
提督が吹き飛ぶ音がした。同時に鎮守府から拍手が巻き起こる。
ありがとう長門。よくやった長門。私達の戦いは終わらない!
完
とはならないのが残念なところである。しぶとく、提督は床を這ってやってきた。
鳴り響く拍手の中、長門だけに聞こえる声で提督が言う。
「後で俺の部屋に来い...」
あっ...これはあかんヤツや。長門は察した。
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恐る恐る部屋の扉を叩く。長門ですと言うと入れ、とだけ返ってきた。
扉を開ける。さて、覚悟を決めようと、目を見開くとそこには...
提督とプリンがあった。
「は...?」
唖然とする。
「長門。これがなにかわかるか?」
何を言っとるんだこいつは。
「プリンです。」
なんで真面目に答えてるんだ。
「そうだ。食いたいか。」
「食いたいです。」
なんて間抜けな会話だろうか。即答してしまう自分が恥ずかしい。
「ご存知の通り、なかなかやばいことになっている。早くここをクリアせねばならない。」
「ええ、そうですね」
「そして、ここにプリンがある。...あとはわかるな?」
こっ、このクソ提督...!食べ物で私を釣ろうというのか...?というか、別に手を抜いている訳では無いのだが。舐めるのもいい加減に...!
「お主も悪よのぅ...」
「いえいえ、お代官様ほどでは...!」
交渉成立。プリンはずるい。
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プリンのある長門は無敵であった。それは艦隊のメンバーが若干引くほどであった。
まずPT小鬼群を全滅させる。圧倒的命中率。ボス前もあっという間に片付けて、ボスに向かう。
「な、長門さん?一体どうしたのです?」
「む、なんだ。いつも通りだが?」
(絶対なんかあったのです…)
明らかにおかしい長門に全員ドン引きであるが、ボスの顔を見てすぐに目を濁らせる。
「シツコイヒト、キ・ラ・イ♡」
(好き好んでしつこくしてるわけじゃないんだよなぁ)
その目はあまりに憎悪を含んでいたため、戦艦仏棲姫もさすがに覚悟を決めたという。
残り彼女にできることはただ祈るのみであった。
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最後はあっけなかった。昼戦のうちに長門がすべての雑魚を蹴散らしてしまった。あとは夜戦高練度集団が簡単なお仕事をするだけだった。
帰投すると、鎮守府のみんなが迎えにきてくれた。執務室に行くと、ひとりぼっちの提督が泣いていた。とりあえずプリンを取っておいた。そしてみんなを間宮さんのところにつれていってやった。経費で。提督は泣いていた。
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「長門、よくやったな」
「いえいえ、当然のことをしたまでです。」
「この調子で、次回のイベントも頼んだぞ。」
「任せておけ。で、次のイベントとはいつなのだ?」
「あと20分です」
「このクソ提督!!!」
本当に申し訳ない...
ゆっくり書いてたらこんな時期になってしまいました
もう金輪際時事ネタは入れないようにします。だって遅筆だから。
もう読んでくださってた方もいなくなっているでしょう。しかし、私は書き続けます。頑張るので、どうか...どうか暖かい目で...!
めっちゃ寒くなってきました。秋イベの季節です。今までなんだかんだ攻略しきれてないので今回こそは完走して冬月ちゃんを迎え入れたいと思います。
(朝雲持ってないけど大丈夫だろうか...志摩艦隊誰一人としてレベリングしてないけど大丈夫であろうか...不安は尽きません。)
皆様も、体調には気をつけて、特に提督の方々は艦娘に風邪をうつさぬよう万全の注意を払ってください。受験生の親みたいな感じです。
次は...とりあえず雪風戦をとっとと仕上げて、阿賀野型とかそのへんの話を書こうかと思ってます。
いつになるかわかりませんがどうぞよろしくお願い致します。
追記
完全に前編をあげていたのを忘れて全編をあげてしまいました。申し訳ない。二十話は後書きを楽しむものとしてください。