家出神喰〜探さないで下さい。いやマジで〜 作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神
エイプリルフールなんてなかった。
代わりのイベントは用意しました。
ある日、1本の電話があった。
―――はい、もしもし
『よかったやっとでてくれた.....。デシュアくん、少し私の部屋まで来てくれないかい?』
そう言って一方的に切る支部長メガネ。
強制かよ。と嫌に思いながら支部長室に向かう。
「よく来てくれたね。軽く3時間ほどコールしたんだけど何してたんだい?」
若干青筋を立てながら聞いてくる。
いや聞こえなかったぞ。
この時デシュアは知りようもないが、最初に神機ちゃんが電話のコールで起こされ、煩わしそうにしてるデシュアを見かねて頭に被り付き音を遮断していたのだ。
傍から見たら暴走かと勘違いするであろうことは想像にかたくない。
「まぁ来てくれただけ良いと思おう......。時にデシュアくん、バレンタインデーというのはご存知かい?」
―――えぇまぁ......。男の夢と希望と嫉妬と憎しみが蔓延する日でしたよね?
前世でバレンタインデーに良い思いをしたことないデシュアの認識はそんな感じだった。
やれ放課後に時間があるかあの人に聞いてくれ、やれ代わりに渡してくれ。
こんなことが続いた青春だった。
嫌なことを思い出したデシュアは気分を変えるために榊に概要を尋ねる。
―――それでぇ?それがどうしたんっすかぁ?
「なにやら気分が悪そうだね。それはまぁともかく......。何故かチョコの体をしたアラガミが続出してるんだよ」
まさかの内容に一同驚愕。
詳しく聞くと、チョコの体にリボンのような機関が体に巻きついたアラガミが出てくるとのこと。
大した強さではないのだが、増殖力が高いらしい。
そして1番厄介なことは......。
―――匂いが?
「そう、。匂いが。あの甘い匂いは確かに美味しそうかもしれないが、それがどこにいても濃くしつこく付きまとって服にまで付く。それに胸焼けして気持ち悪いと体調を崩すゴッドイーターが増えているんだ」
ちなみにブラッド隊の一部も脱落しているらしい。
そんなこんなで駆除を手伝うことになったデシュアは早速後悔していた。
―――うっわ......聞いてたよりもキツイ......。こりゃ体調も崩すなぁ。
マップに来た瞬間甘ったるい匂いが頭を埋めつくした。
口の中の空気も入れ替えられさながらチョコの海に沈んでいるかのようだった。
―――さっさと終わらせよう......。
『賛成。』
とりあえず近くを探そうとした時、ベチャベチャと足音が聞こえた。
「グルルルル.......」
オウガテイルチョコだった。
オウガテイルチョコはこちらを見るやいなやかなり小さめ、一口サイズの針を口めがけて飛ばしてきた。
不意を突かれチョコが口にぶち込まれたデシュアであった。
―――あっま!!!!
溶けかけの感触とともに口に広がる砂糖爆弾のような甘みが口に広がる。
砂糖どころか水飴やシロップを直に舐めた方がまだ甘くないように思えた。
それを見てオウガテイルチョコはそこはかとなく嬉しそうにしっぽを振って様子を見てきていた。
『嬉しそう。媚び。殺意。』
言うやいなや勝手に捕食形態になった神機が食らいついた......かと思えばすぐに吐き出した。
『無理。』
オラクルの味も甘過ぎるらしい。どこまでも甘味でできているようだ。なぜ詰めは甘くしてくれなかったのか。
そんなことしてるうちにオウガテイルチョコに周りを包囲されていた。より一層匂いがキツくなっていた。
―――長くここに居たら気持ち悪くなりそうだ。さっさと終わらせるぞ!!
『了解。』
―――はぁ......はぁ......うげぇ......もう嫌だ.....。しばらくはチョコは見たくないな.......。
『賛成。同意。辟易。』
オウガテイルチョコを討伐仕切った1人と1匹は疲れ果てて居た。
特に神機は捕食形態のまま萎んだ風船のようになっていた。
実はオウガテイルチョコは核を食わないと無限復活するという悪夢のような特性を持っていたのだ。
軽く30を越すチョコを食い尽くした神機は最後の1匹になった頃にはデシュアが無理やり口を開けさせていた。絵面的には千と千尋の使い魔が取り付いたところのハクに無理矢理苦団子を食わせたあのシーンのような感じだった。
―――とにかくこれでクエストは終わりかな.....
べちゃ......べちゃ.......
後ろから聞こえる足音に冷や汗を流す。
壊れたブリキのように首を後ろに回すと......。
背中の砲塔を構えるグボロ・チョコロが......。
どぱああああああん!!!!!
「えへへ......デシュアさん喜んでくれるかなぁ.......」
台場カノンは小さな包を片手にスキップしながらデシュアの部屋に向かっていた。
丹精込めて作ったカノンの血と汗と涙の結晶(比喩抜き)を渡すためだ。
部屋の前のドアに着いたカノンは深呼吸をし.....。
「よし.....。大丈夫。ちょっと渡すだけだから......。よし!!」
コンコン、とドアを叩く音が響く。
「デシュアさん❤チョコをお渡しに来ま」
―――いやあああああああああああああ!!!!!!
カノンは、窓を割って逃げたデシュアの背中を、呆然と見ることしか......
「......うふふ❤恥ずかしがってるんですね❤待ってくださああああああああい❤❤❤❤❤」
できないことはなく、後に続いてデシュアを追いかけて行った。
その後デシュアはピンク髪のゴッドイーターに少し塩っぽいチョコを口に突っ込まれたり、車椅子に乗った女性に椅子に縛られながら淡々とホットチョコを流し込まれたりし、鼻血とストレスにより2週間ほど動けなかったという。
時期外れも良い所のバレンタインデー。
みんなは容量を守ってチョコを......キメようね!!