家出神喰〜探さないで下さい。いやマジで〜 作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神
「うぅ......あなたしゃま.......」
「あの.....ラケル博士.......?」
「うるしゃぁい!!ふん!!」
ガシャン!!とガラスが割れる音がする。
「グハッ!?」
哀れピクニック隊長。
デシュアが家出をしてから2日。ラケルは荒れに荒れていた。
神機兵にピクニック隊長のデータの刷り込みをする一方でピクニック隊長を特異点化するといういつもの計画を進めてはいるのだが、ラケルが壊れた。
「ふえぇぇぇん!!!!あの方に捨てられたぁぁぁ!!!」
ピューっと頭から血を吹くピクニック隊長を他所に幼児退行を起こしたラケルちゃん。
酒をラッパ飲みし車椅子の上で体育座りですすり泣く。そして心配したピクニック隊長の頭を瓶でぶん殴っては大泣きする大きな赤ちゃん状態のラケルの姿は、何も関係ない人が見てもどこか哀れに見える始末だった。
そんな彼女を影から見守る者が1人。
「はぁ......はぁ......あぁラケル......あんなに泣いて.....はぁ......かわいすg.......可哀想だわ......」
カシャッ!!カシャッ!!と鼻血を流しながらラケルちゃんの写真を撮るのは何を隠そう残念系美女レア博士である。
久しぶりに見る弱り切ったラケルの姿に拗れに拗れた姉妹愛が暴走し鼻から出てしまっている。
1人は大泣き、1人は出血多量、1人は出血多量の変態。これ以上にカオスな場面もなかなか見れない。
ここでラケルちゃんが写真を撮る姉を見つけた。
「うっ.....ぐすっ......お゛ね゛ぇ゛しゃま゛あああああ!!!!」
「ンッ!!!!♡♡♡♡どどどどうしたの?ラケル?」
泣きじゃくりながらこちらに手を伸ばす妹の姿に一瞬心肺停止したレアは即座にもちなおしラケルちゃんの傍にしゃがんだ。赤い滝を流しながら。
「あのね、あにょね、デシュア様がね、ラケルを置いて行っちゃったぁぁぁ!!!」
「大丈夫よー。貴方はとっっっっっても可愛いくていい子だから、彼もすぐに帰ってくるわよ。はいよしよし。よしよしよしよし」
泣くラケルちゃんを鼻血を流しながら頬ずりしてよしよしする姉はなんとも献身的である。
部屋がだいぶ鉄臭くなって来た頃合で、少しラケルちゃんが落ち着いてきた様だ。
「私、何か悪いことしたのかしら.......」
「そんなことないわよ。きっと彼が発作起こしただけよ。待っていればいつもみたいに帰ってきてくれるわ」
落ち込んだ妹を慰める姉の鑑。
しかし忘れていないだろうか。
「うぅ.......」
ピクニック隊長は、出血多量で死にかけていた。
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「くそ.....腹痛が......」
地面に転がる小さな2つの瓶。現在お腹を抱えるサカキ博士の私物である。
先程とある真実とも言えない事実に気付いてしまいお腹のSAN値が爆減りしたのだ。
「あぁ頭も痛い.....しかし考えれば納得行く。死にたくないからアラガミを狩る。なんて簡単なことだろうね全く。そういう理由で戦っているゴッドイーターはいくらでも居るだろう。彼もその1人だということだったわけだ」
そう、死にたくないからアラガミを狩る。
死にたくないから1日で3桁を越す量を狩って死にたくないからアラガミを全滅させる勢いで狩っているということなのか。
「いや待てやっぱり規模が大きすぎてしっくり来ない」
普段の冷静な様子も消え去り纏まらず絡まる頭の中で右往左往しながら唸るサカキ。
そもそもなんだ死にたくないから絶滅させるって。思っても実行しようとはしないだろう普通。そしてそれを実現させるかもしれないってとこまで本当に強くなるとかちょっとおじさん規模がデカすぎてわからないな。そんなこと考えるゴッドイーターは見た事が...,,,.
居たよ1人。クレイドルに行ったまま帰ってこないのが1人居た。
それは置いておいて、彼の心の真意は家出した彼の行動に現れるだろう。
いつも通りアラガミの目撃情報などが減る一方であれば、彼は死にたくない一心でアラガミを狩っているということに。
もし、万が一いや億が一にもアラガミの目撃情報などが減らない場合はもう彼が何を考えているのかは私にはわからない。もう理解できない。
サカキは爆発しそうな自らの頭を少しでも落ち着かせるために、グラスの水を飲み干した。
なんにも進歩しねぇ!!!!