家出神喰〜探さないで下さい。いやマジで〜   作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神

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評価見てみたらバーが真っ赤で目が限界まで開いてしまいました。


第3話 走れ!!転生者!!

〇月✕日

 

逃げ出してはや1ヶ月。とても気持ちが楽になった。

クエストを椀子蕎麦の様に押し付けてくるオペレーターちゃんも、俺が仕事をサボらないか逐一現場に出てくる某スターゲイザーさんも、周りでイチャイチャしながら俺を奇異の目で見てくる同僚達もいない。

肩の荷が全部降りた気分だ。今なら銀〇の夏休み回で無人島で全裸になったマダ〇とぱっ〇ぁんの気持ちが分かる。

だが、やはり外で生活してるせいか、アラガミに出会う機会が多くなった。

確実にフェンリルに居た時よりも多い。

そのせいか、自分でも恐ろしくなるほど強くなった。

 

フェンリルに居た時はヴァジュラを一体倒すのに掛かった時間は90秒程度。

今じゃ20秒もいらない。

と言うのも、この世界はゲームとは違い、敵の硬さはアニメ基準なのだ。

ゴッドイーターも、大型アラガミのタックルに何度も耐えて立ち上がる様な化物じゃない。

基本は1度でも攻撃を食らえば即お陀仏。取る戦法は基本ヒットアンドアウェイだ。

みんなも1度はOPとかプロモ見て「はぁ!?ヴァジュラこんな柔らかいの!?ビル倒れるの!?ズルくない!?」と俺と同じように思った人は居ると思いたい。

 

まぁ、そういうわけでアラガミ全般がゲームと比べると柔らかくなった代わりに攻撃力が増した状態なのだ。

そんな中俺は、人間を逸脱した動き.......ゲームと同じ動きをしていた。

更にゲームではできないリアルだからこその攻撃とかもできた。

それが、俺がアラガミを異常な速度で狩れている理由なのだ。

 

例えばロングブレードでステップ→ダッシュ攻撃を繰り返して効率的に移動したり、スピアでマリオの如く華麗に跳躍したり、エンジンの付いたハンマーをなんの苦もなく高速で振り回したり、ショートブレードで空気を蹴って二段ジャンプしたり、鎌を伸ばして雑魚を一撃で一掃したり、攻撃中に一瞬で捕食したり....。

 

銃だったらスナイパーでジャンプしながら撃って距離を取ったり、アサルトをアラガミの口に突っ込んで乱射したり、ブラストで超火力の自作バレットでアラガミを粉微塵にしたり、ショットガンを負荷を考えずに銃口をアラガミに密着させて連射したり.....。

 

などなど、まずゲームじゃなくなった現実で同僚達に見せればドン引きされる人外行動。

関節のパニックとはこのことだ。

普通にゲームをやり込んでいたら基本的な立ち回りも、現実では人外的なんていうのはよくあることだ。

まずエンジンの付いたハンマー.....ブーストハンマーは現実では、エネルギーを溜めに溜めた強大な一撃でアラガミを一撃で粉砕するのが常識なのだ。

 

そんな物を高速で振り回したりしたら肩どころか腕が使い物にならなくなる。

俺はそれをなんの不便もなくやって退けるのだ。

これも『神機に愛される』と言うのに入るのだろうか?

つまりはゲームの主人公もこの特典を貰っていた可能性が.....?

 

それはともかく、その中で最も際立ってるのは『神機を一瞬で捕喰形態にする』という、所謂クイック捕食だ。

まずおかしいでしょ。ゲームですらNPCはちゃんと溜めてから捕喰形態にしてアラガミバレットを手に入れていた。

その横で俺は超速で捕喰してダメージリソースを優先しているのだ。

化物だよね。本来しっかりと意識を持ってしなきゃイケナイ捕喰をとんでもない回転速度で行っているのだ。

こんなことをしているから、俺はソロでしかクエストを受けられなかった。

 

だって、そんな所見られたら今まで以上に奇異の目を向けられるのは確定しているからだ。

だから俺はぼっちだったわけじゃない.....。仕方なかったんだ........。

これについて神機はどう思っているか聞いてみた。

答えは、

 

『変。異常。人外。』

 

俺は心にクリティカルヒットを受けた。

 

 

 

〇月□日

 

今日は大変だった。

今まで会ってなかったのが不思議だったのだが、どうやら捜索隊の様なものが作られていたらしい。

そ、そこまでして俺を連れ戻したいのか.....!!

フェンリルめ!!何故俺にそこまで執着する!!

.....あれか、俺が仕事を受けすぎていたせいで、俺に回っていた仕事が他の同僚達に回ってしまい、その仕事量(恐らく俺からしたら微々たる量)の多さにボイコットでも起きたのだろう。

 

人柱が無いと回らない職場.....。それはもはやブラックじゃなくてダークだ。真っ黒じゃなくて純黒だ。

俺以外の被害者(人柱)が居るかどうかは分からないが、もし居るならその被害者には頑張って俺の代わりをしてもらいたい。

今回はその事について書きたいと思う。

 

しかし.....その時はタイミングが悪い時に鉢合わせたもんだ。

俺はフェンリルから逃げるために走っては休み、走っては休みを繰り返す生活をしていた。

だが、アラガミに度々出会うせいであまり距離は稼げていないのだ。

なので俺は休みを削ることで距離を稼いでいた。

 

閑話休題

 

今日も今日とてスタコラと走っていると、遠くに人影が見えた。

すぐさま隠れ.....ようとしたのだが.....。

周りを見てみると、何も無い殺風景な更地だった。

.....マズイ。恐らくあれはゴッドイーターだろう。

遠目でもわかるほど大きな何かを背負っているのが目立つ。

 

とりあえず伏せた。視界に入りにくくする為に。

だがしかし、現実は甘くなかった。

 

1人のゴッドイーターが、こちらを指差し他のゴッドイーターに何か喋っている。

そのゴッドイーターがこちらに歩いてくる。

マズイマズイ。このまま歩いてこられたら.....!!

 

「おい........いや、すみません。顔を上げてくださいませんか?」

 

と喋りかけられた。

何故途中で敬語に変えたのか気になるが、そんなの気にしてる場合じゃなかった。

 

「.....でもなぁ、捜索対象の『あの方』の服は黒色だしなぁ。こんな真っ赤じゃないし......」

 

誰だよあの方。お偉いさん?お偉いさんが失踪したの?

 

「おい、『デシュア』という名前は知っているか?」

 

俺は反射的に答えてしまった。

 

―――なんで俺の名前知ってるの!?

 

と、顔を上げて問いかけてしまった。

だって驚くでしょ。関わったこともない人間が自分の名前を知っているんだぞ?

 

「え?」

 

―――え?.....あっ

 

2人の間に、不穏な空気と気まずい空気が流れ出した。

 

「ちょっとそのままにしていろ.....いや、していてください」

 

俺は断ることも出来ずに顔を上げたままの姿勢をキープしていた。

そのゴッドイーターはポケットから1枚の紙....あれは、写真か?

その紙と俺を何度も見比べながら、徐々に顔を青くして行った。

え?え?なに!?

 

「そ....」

 

―――そ...?

 

「そ.....そ......」

 

―――そ....?

 

「捜索対象発見したぞぉおおおおおおおおお!!!!!」

 

え"え"え"え"え"え"え"え"え"!?!?

俺は心底驚きながらも立ち上がって逃げ出した。

余談だが俺の今の装備はロングブレードにスナイパー(俺がゲームしていた時からのお気に入りの装備の仕方)だ。俺はその装備を全力で活用して.....ステップからのダッシュ攻撃を全力で繰り返して逃げ出した。

後ろから複数の足音と声が聞こえる。

 

「ま、待ってください!!支部のみんなが貴方の帰りを待っているんですよ!!」

 

「そうだ!!あんたが居れば百人力.....いや万人力だ!!」

 

「っていうかなんだあの速度!!人間が出せる速度じゃねぇぞ!?」

 

そこで俺は確信した。

こいつら、俺をあの地獄に返す気なのか!!

捕まってなるものか!!死ぬ気で逃げ仰せてやるぜぇぇえええ!!!

そんな意気込みで走る中、目の前にアラガミが現れた。

 

「グアォオオオオオオ!!!!」

 

人面の黒い虎......。ディアウス・ピターだ。

なんでここにお前が居るんだよ!!!

とにかく邪魔だァアアアア!!!!

 

俺はディアウス・ピターの顔面にロングブレードを突き刺し、重力に従うまま下に切断し、着地と同時に胴体を切り裂きながら逃げた。

流石にこれは火事場の馬鹿力だ。

いつもなら40秒はかかる。だがこのやり方を使えば平常時でも一瞬でディアウス・ピターを狩れるかもしれないな。頭に残しておくことにする。

 

「でぃ、ディアウス・ピターを一瞬で!?」

 

「流石はデシュア.....。噂は本当だったか!!」

 

そんな声が聞こえる中、俺は手持ちの確認をしていた。

.....これは!?行けるぞ!!

手持ちの中には、

 

―――そい!!

 

「何...!?グアアア!!!」

 

「目が、目がアアアア!!!!」

 

スタングレネードがあった。

俺はゴッドイーター達が〇スカになっている間に逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

おかげで手持ちのスタングレネードは使い切ってしまった。

これさえあれば回復アイテムなんぞ必要無いと言わしめる程の有能アイテム、スタングレネード。

今回も助けられた。

と言った感じで、今日は激動の日だった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

今まで進展の無かった彼の捜索隊からの報告書、とてつもない進展があった。

彼の生存が確認されたのだ。

 

その姿に変わりはなく、変わったところと言えば黒かった服は(恐らく)アラガミの血で真っ赤に染め直され、髪が伸びていたくらいだそうだ。

彼は身柄がバレたと分かったや否や全速力(人間、というかゴッドイーターが出せる速度を遥かに超えた速度だったらしい)で逃げ出した。

捜索隊が必死に追いかけていると運悪くディアウス・ピターと接触。

しかし捜索対象の彼が一瞬で鎮圧し、捜索隊が呆気に取られている所にスタングレネードを投げつけ逃走したらしい。

 

逃げられたのは惜しいが、彼が生きていたのが分かったのは大きな戦果だ。

これは大々的に発表させてもらうとしよう。




とてつもない速度でアラガミを狩れる理由を書く回でした。

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