魔の国――侵攻六ヶ月目
半年。
カレアと兼善が旅を初めて半年と言う時が過ぎた、荒野を走り抜け、山脈地帯を縫い歩き、森林地帯へと踏み込んだ二人。
長いだろうか? 短いだろうか? 兼善からすれば長いと言えば長いし、短いと言えば短いと言う、なんとも玉虫色の感覚。脳裏を過るのはカレアとの旅、その道中、それは楽しくも苦しく、しかし安らかで甘美な日々だったと思う。
刹那の様で長く、永遠の様で短く、旅を始める前であれば半年という時間に途方もない遠さを覚えていた兼善は、しかしそれが存外近くに転がっている事を知った。
更に最近、凄く幸せな事があった様に思うのだが微妙に記憶が曖昧で、カレアに聞いてもはぐらかされてしまう。アレは夢だったのだろうか、具体的に言うとカレアと一線を越えそうな雰囲気でマッパになった気がするのだが、そんな都合の良い現実がある訳ないかと自分を恥じた。
恐らく日々の欲求不満が祟った結果だろう、遂に夢にまで下半身が及んだか、無念。
森林地帯深部、その果て。
山脈地帯よりも比較的狭く、直線距離の短い森林地帯は凡そ山脈地帯の半分程の期間にて走破に至った。本来ならばもっと時間が掛かるモノだと思っていたが、兼善とカレアの無尽蔵とも言える体力が成した強行軍。
一日の移動時間は凡そ十四時間以上、強靭な足腰を酷使し競歩の様な速度で進行したのが幸いしたのか、もしくは最初の馬による高速移動も合わさった結果だろう。森林を抜けた先には広大な平原が顔を出し、兼善とカレアはその入口に立っていた。
一ヵ月前に受けた鱗粉の毒は既に抜け落ち、兼善もカレアも万全の状態。見据える広大な平原の先には遥か遠くにポツンと、建物が見える。遥かな地平線に聳え立つ恐らく何らかの建築物。
此処からでは良く見えない、大地の丸みに半ば隠れている様な形だ。下手をすれば米粒程度の大きさ、しかし二人は見逃す事無くソレを見据えていた。向こうは少し高台にあるのだろう、だからこそ遠く離れたこの場所からでも辛うじて視認出来る。
此処から歩いて数日か、一週間か、まぁ月単位は掛からないだろう。
「兼善様……」
「あぁ」
隣に居るカレアが呟き、兼善は頷く。それだけで互いに何を言いたいのかを理解し、二人は握っていた手を解いた。
広大な平原、地面を覆う自然、何も無く、風だけが吹く――そこに生き物の気配は一つとしてなく、ただ虚無だけが広がっていた。余りにも、何もない。
ただ一つを除いて。
「草原の守護者か――山脈の守護者もそうだが、どうにも、魔の国は守りが厚いと見える」
兼善は久々に纏った甲冑を拳で軽く叩き、頬当てを装着する。僅かに気温の高い平原は少しばかりの汗を滲ませるが、戦の前では気にもならない。兼善は腰に差した打刀の柄を強く握り、目前の影に言葉を零した。守護者、と呼ばれる連中がいる事は山脈で知った、そして奴らが何人いるか、何処にいるかも分からず、こうして出会う。
目の前に立つ人物――否、人ではない。
鉄と木で出来た歪な人型、鉄で骨格を作り表面に木を打ち込んだのだろう。見た目こそ二足歩行に二本腕、頭もある人型だが大きさはトロールに近い。人に非ず、獣に非ず、そもそも生きているかも分からない。ソレは鋼鉄の巨人、表面に錆と蔦を張り巡らせながら、一体何年、何十年この場所を守り続けていたのか。
動く度にギチギチと音を鳴らし、その錆を落とす機械人形。
――ドゥリンダナ
巨人の胸元には、そう彫り込まれていた。
それを読めたのは偶然でしかない、東にあった歴史書のひとつにあったのだ。数千年前に存在した『デュランダル』と呼ばれる恐ろしく鋭い剣の話。ドゥリンダナとは即ち、そのデュランダルの異なる呼び方の一つ。
つまりこの巨人は守護者であり、魔の国の住人であり、戦士であり、剣であるのだ。
そう在れと願われて生まれた剣か。
東でいう村正や雷切の様なモノだろう、生憎と兼善は名剣だとか業物だとか、そういうモノに一切興味が無い。故にその文字を知っていたのは偶然の産物。
己を名剣と称するか、業物と胸を張るか。
「馬鹿馬鹿しい」
兼善はドゥリンダナを前に、そう言い放った。
一息に腰の打刀を抜き放ち、刀身が光を反射して輝く。抜刀一つでも空気を裂き、絶技と嘆息させる程のキレ。柄を握り正眼に刀を構えた兼善は、小さく息を吐き出した。
その瞳には烈火とも言える闘志だけが灯っている。
「業物、名刀、聖剣、妖刀、魔剣、大いに結構――だが錆びた鈍らだろうが、木の棒だろうが、使い手が良ければ業物に勝る、切れ味など問題ではない、要は斬れれば良いのだ、何であれ、どうであれ」
兼善は見せつける様に打刀の切っ先を突き付け、その刀身に指を滑らせる。刀が応えるように輝きを増し、日光が切っ先に集った。
「これは唯の数打ちだ、魂が籠められている訳でも無いし凄まじい切れ味がある訳でもない、神や仏の加護も無く、悪魔とやらの血も吸ってはいない、名も無い刀、無銘である」
しかし、兼善にとってはこの打刀一つだけあれば良いのだ。
ただの数打ち、凡夫が打った頑丈なだけな刀、その頑丈さも不壊とは言えない凡庸の刀。それで十分だし十全、弘法筆を選ばず、それは剣士にも同じことが言える。兼善が扱えば何であれ名剣に、名刀に、業物に、妖刀になり得るのだ。
「しかし侮るなよドゥリンダナ? この刀――数多の剣士を斬り裂き、剣豪を下し、魔の国の戦士を悉く屠り、果てに四魔将を断ち切った刀だ、必要とあらば敵の血も啜ろう、
「――」
使い手の無い剣など、剣聖の敵ではない。
ドゥリンダナは兼善の声に応える様にして、ゆっくりと頭を動かす。
樽の様な大きく楕円型の頭だ、その中央に赤いガラス玉が埋め込まれており、それで周囲を探る。兼善を見て、それからカレアを見たドゥリンダナは。
「――アメ―ガッ州――隊―識コ――し、殲滅」
ただ拳を握って、兼善に殴り掛かった。
「言葉も介さんか」
先程のぎこちない動きは演技だったのか、錆を振りまき蔦を千切り、凄まじい速度で肉薄し拳を振り下ろすドゥリンダナ。兼善はソレを細めた瞳で捉え、半歩横にズレた。
ドゥリンダナの拳は空気の壁を撃ち抜きながら地面に叩きつけられ、土を抉りながら凄まじい衝撃を放つ。単純な力だけならトロールよりも上、例え刀で防いだところで折られるか、そのまま力任せに吹き飛ばされるだろう。兼善はその一撃を見て、そう思った。
力で及ばず、体で及ばず、ならば凌駕するは技の一つ。
「お前の首――貰うぞ」
拳を繰り出したまま硬直するドゥリンダナ、その姿は兼善から見ても隙だらけ。拳を避けると同時に打刀を上段に構えていた兼善は躊躇い無く一歩踏み込み、刀身を振り下ろした。
そして、ドゥリンダナはその様子をガラス玉越しに確認する。
受ける、不可――避ける、不可――ならば攻勢に出るまで。
ドゥリンダナの
凡そ人体では不可能な動き、骨格を無視した人外機動、そういう機構が組み込まれていたからこその技。予想も出来まい、反応も出来まい、何故ならドゥリンダナは唯の機械人形、闘志も無ければ殺意も無い。
「ッ、兼善さ――!」
カレアが思わず声を上げ、しかし次の瞬間には瞠目する。
「――」
刀が煌き、その背後に腕が落ちる。振るわれた筈のドゥリンダナの腕だ。兼善は振り下ろした姿勢のまま小さく息を吐き、その刃を切り返した。
ドゥリンダナは思考する、搭載されたカメラ機能にて先程の兼善の動きを追った。なに、簡単な事だ、横から振るわれた腕に、振り下ろしていた刀を合わせただけの事。
首を断たんと振り下ろした刃を、自身の脇腹に直撃する腕を察知するや否や、軌道を変え速度を変え、その根元に振り下ろしただけ。
ドゥリンダナは思考した、凡そ彼が倣って来た人体では不可能な動きだと。
兼善が更に一歩踏み込む。
ドゥリンダナは観察に徹する。
機体の運動性能と処理能力を以てすれば敵の初動から防御に移るのは容易、そう判断した。
眼はドゥリンダナの首を注視している、その事から突きで首を刺す気迫を感じる。
左足は大きく踏み込んでいる、突きにしては踵が深い、上段で振り下ろす動作だ。
腕は僅かばかり左に傾いている、その向きならば斬撃は左から右へ薙ぎ払われる。
重心は右へと寄っていた、その重心ならば斬撃は右から左へと薙ぎ払われる。
右足が僅かに右に逸れた、足を開く動作、次の斬撃が変則的な斬り上げの可能性。
視線が変化した、見るのはドゥリンダナの胸元、突きの狙いは胸元か。
それらが僅か一秒の間に流れた。
ドゥリンダナの片腕が残った選択肢を潰す為に動くが、途中で固まってしまう。
――剣筋が多すぎる。
兼善から見て取れる剣の軌道は余りにも多岐、ドゥリンダナの動きが止まり、兼善はその瞬間に凄まじく鋭い一閃を放った。突きは僅かに反応した手に掠り、しかし確りとその首を穿つ。
「―――」
ドゥリンダナの視界にノイズが奔る、カメラ機能と繋がる配線を断たれた。反応が鈍り、突き刺した刀を抜いた兼善の姿が消える。一瞬の暗転、しかしすぐさま視界は切り替わり、再び明瞭な瞳が戻った。
そして次の瞬間に見えたのは、刀を振り終えた兼善。
横から薙ぐようにして残心する彼は、ドゥリンダナの両足を斬り裂いていた。
首を落とすには少々背が高い、ならば足を断てば身長は大して変わらない。ガクンと衝撃がドゥリンダナを襲い、その体が一段と低くなった。みればドゥリンダナの両足は未だに大地に立っていると言うのに、胴体と繋がっていない。
両足を切断された。
「その
両足を切断され、僅かに残った断面で立つドゥリンダナは感じ取る。センサーの類ではない、何か言い知れぬ圧力を。
それは兼善から吹き出る闘志、それを機械であるドゥリンダナは存在として感じていた。兼善が一歩下がり、その剣を水平に構える。首を飛ばされる、そう判断したドゥリンダナは残った腕を兼善に繰り出した。
真っ直ぐ正面から、人間臭い、我武者羅な一撃。
しかしそれが兼善に届く事はなく、たった一歩踏み込むだけで拳は兼善の顔、そのすぐ横を貫通し、虚空を突いた。
「だが所詮は傀儡よ」
透明な刃。
嘗て四魔将の男がそう称した兼善の斬撃、滑らかなソレは流れる様な動作で首を斬り裂き、ドゥリンダナの視界が回転した。
宙を舞う頭部、その一瞬のみをドゥリンダナは自覚し。
軈て永遠に機能を停止する。
ズン、と背後で重々しい音。斬り飛ばしたドゥリンダナの首が半ば地面に埋まり、そのガラス玉は何度か点灯を繰り返した後、暗闇の中に沈んだ。
「――血が出ない、やはりカラクリの類か、この様なモノがあるとは知らなんだ、或は遥か昔に存在した兵士の人形か……」
兼善は最後に拳を突き出したまま機能を停止したドゥリンダナを見て、そう呟く。最早生き物とは言うまい、腕を斬り落とした時に血が出ない事にも驚いたが、首を飛ばしても一滴すら見えないのは生物ではない。
断面から覗くのは奇怪な機構、東にあるカラクリとはまた異なった遺物だ。
「……一応、この地を守る守護者なのでしょう、でなければ此処一帯、誰も居ない理由がありません」
カレアは納刀した兼善の傍に駆け寄り、その腕を掴む。その表情はやはり優れず、どこか悲痛ですらあった。まただ、そう思った、しかしソレを疑問に思う事はない。
兼善は既に動かなくなった骸を眺め問いかける。
「……この剣は守護者か、剣を使う者ではなく、剣そのものだと言うのに」
「……はい、
「そうか、カレアがそう言うのであれば、そうなのだろう」
兼善はそう言ってドゥリンダナに一礼した、何であれ戦士であるならば礼を尽くそう。その余裕がある限り、兼善は強者に尊敬の念を抱き続ける。彼もまた兼善が尊敬を抱くに値する強さを持っていた、剣であれ剣士であれ。
「これで全員だと思うか、守護者とやらは」
ドゥリンダナの体を包む空を見上げ、そんな事を聞く。兼善の腕を掴むカレアの手が、ぎゅっと強く握られた。
「どうでしょう……まだ城の方に残っているかもしれません、流石に護衛が全く居ないとは考えられませんから」
「それもそうか」
守護者、王を守る盾。
ならばこそ王の傍に最後の一人が居ると考えるが自然。兼善は打刀の柄を触りながら考える、あの白猿の男と、この鋼鉄の巨人――ドゥリンダナを超え得る一騎。
それはもう、五体目の魔将と呼べるかもしれない。
「――あの城まで、どの位掛かると思う?」
「……一週間程度、でしょうか」
遥か遠くに見える小さな建物、恐らく魔の国の王が住まう城。それを指差し問うた兼善に、カレアは小さな声で答えた。
一週間、そうか、一週間か。
今までの半年に比べれば刹那の様な時間だ、余りにも短く瞬きの内に過ぎ去る時間。
兼善は自分の腕を掴むカレアの手に自身の手を重ね、そっと握った。カレアもソレに応えるように、兼善の甲に額を擦り付ける。
「……兼善様」
絞り出したように、僅かに涙を含んだカレアの声。
後悔か、悲しみか、深い負の色を感じさせる声だ。しかし兼善がカレアに視線を向ける事は無かった。だって下を向いたら、零れてしまう。
「何も言うな」
兼善は小さく、そう呟いた。
所詮は西と東、自分達は同じ者ではない。
交わるべき時に交わり、それが終われば再び手を握る事はない。それが終わるまで、あと――七日。
決戦は近く、それは決して避けられない。
魔の国の王、その根城。
そして其処に辿り着いた時。
この旅は終わりを迎えるのだ。
☆
「そんな馬鹿なッ!」
東の国本殿、既に夜が世界を包み私室にて食事を摂っていた天皇。その彼女に向けて一報が入った、天皇の私室の前で息を荒くし、膝を着いて首を下げる衛士。本来ならば天皇の私室に一般的な衛士が踏み入るのは許されざる事であるが、それ程までに火急の用であった。
その衛士から放たれた言葉を聞き、思わず天皇は声を荒げる。その服は公務時に着るものではなく、私服時に着込む簡素なものだ。
衛士は荒げた息を何とか整え、深く頭を下げたまま口を開いた。
「現地にて、伊藤忠輝殿、羽賀園丁殿、見廻り隊の両名が証言しております! 西も既に調査に取り掛かっておりますが、その傷は斬撃では無く、巨大な鈍器で殴った様な――兎も角、刀や剣の切り傷ではないと」
「ならば……ならば剣聖は、兼善はどうなった!?」
天皇が勢い良く立ち上がり、衛士へと詰め寄る。衛士は淡々と、しかし激情を秘めた声で答えた。
「現状、剣聖様の遺体は見つかっておりません、彼の剣聖様の技量ならば襲撃者を撃退するのも可能かと愚考致します――或は、これ自体が魔の国の計略であると、軍師黒田殿は……」
「計略……!?」
天皇は思わず顔を顰めた。彼女は兼善の技量、その強さを微塵も疑っていない。四魔将襲撃の報を聞き、絶望した彼女を救ったのは他ならぬ兼善である。どのような厄災も、危機も、彼ならば一刀にて屠ると心の底から信じている。
しかし、その天皇であっても思わず安否を問うてしまう程の衝撃があった。
――西の国が派遣した下級騎士百名、上級騎士パトリオット。
その亡骸が魔の国の荒野一歩手前の地点で発見されたのだ。
発見したのは東の国の見廻り隊、定期的に魔の国との国境を巡回する防衛隊である。その報はすぐさま軍師黒田へと伝えられ、西の国に確認が取られた。下手に報告を長引かせれば、殺害したのは東だと思われると考えたのだ。
斯くして、僅か数時間後に西の国から調査隊が派遣され、現場の検証が行われた。死体の状態は非常に悪く、死後数ヵ月経過したと思われる。致命傷は刀傷ではなく、もっと何か大きなもので臓物や骨ごと砕かれる様な一撃。
その殆どは首が捩じ切れていたり、体の一部がめり込んでいたり、散々なものだった。
明らかに剣聖の仕業ではない。
西の国の人間も知っている、東の剣聖は何より戦いに於いて無駄を嫌う人間だ。態々鈍器で殴りなどしない、剣を生き物の様に操り、一刀必殺、首や心臓を的確に狙って一息に殺す。
何より兼善が殺した死体と言うのは綺麗なのだ、断面が、形が、或は死の造形が。
足元に転がるそれらは、余りにも酷い有様だった。
「黒田殿によれば、この此度の遠征、その情報が魔の国に漏れていたのではないかと……西の国の集団を討ち、そして剣聖様を搦め手でもって堕とす――少なくとも騎士百人、加えてパトリオットをも屠る実力者、それも単独、魔の国は四魔将に匹敵、或はそれに迫る猛者を隠していたとの予想です」
現場を東の国の見廻り隊で隈なく探索したが、剣聖の持っている刀や甲冑、装備品などは一切見つからなかった。剣聖ならば或は、撃退したか討ち取った可能性がある、しかしならば何故一度東に戻り報告しなかったのか? 西の国の増援が気に食わなければ突き返して戻れと言い含めてあった。
仮に西の国が全滅していたならば、そして襲撃者と一戦交えたのならば、その報告を行う為に帰還する筈である。戻らないならば討たれたという事か? あの剣聖が、四魔将を単独で屠った彼が?
「それともう一つお耳に入れたい事が――パトリオットの死体のみ、身包みを剥がされた状態で見つかったとの事」
「何……?」
天皇が顔を顰め、思考を断ち切る。パトリオットのみの装備を剥いだ、そこから分かる事は何か。装備が目当てだったのか? しかし、だとすれば他の百人は何故そのままの状態で見つかったのか。
衛士は一度息を吐き出し、「西の推測によると――」と前置きを口にし、真剣な眼差しで告げた。
「――成り代わりに御座います」
天皇は絶句した。
成り代わり、それはつまり。
「西の軍師によれば恐らく部隊を壊滅させた後、その襲撃者はパトリオットの装備を身に纏い剣聖様と共に出立した可能性があると――剣聖様は向こうの編成を知りません、パトリオット単独の増援であると捉えましょう、ましてや自分の腕があれば単独でもとお考えに……」
「ならば――ならば、仮に、仮にだが、兼善の隣に、誰かが居るとすれば」
天皇が思わずその場に座り込み、呆然と呟く。兼善は東の国筆頭の武士である、例えどんな難敵であろうと『正面から』戦うのであれば無敵を誇るだろう。
しかし彼も人間だ、斬られれば血を流すし、心の臓を破壊されれば死に至る。ましてや背後からの裏切りなど。
「剣聖様の同行者は――魔の国の間者に御座います」
連続更新四日目か、三日目か、忘れてしまいました。
最終回が近付いて参りましたが、これから一気に物語が動きます(タブン)
東の剣聖、一ヵ月程で纏まったので、個人的に満足です。
明日も投稿します。
恐らく後、1~2話で完結でしょう。
プロローグ的な部分が短いので一話に纏めるかもしれません。
そうなると次回が最終話になるのか……。
長かった様な短かった様な、ともあれ旅の幕引き、最後まで見届けて頂ければ幸いです。