バディファイトLoveLive!サンシャイン!!   作:ヤギリ

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新章
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『X-encounter』黒崎 真音

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『Pray ~祈り~』IKU

『Days』Shela

↑どれもいい曲だから聞いてみて!


魔星龍侵攻 編
踏み出した少年


内浦のとある一軒家に、1人の少年が住んでいた。

少年の名は「星野 流」かつて、壮大な戦いを繰り広げ、そして大切なバディを失った。それでも流は強く生きる事を決めた。

それが、最後に残したバディの言葉だから………

 

 

朝、流の家………

 

いつものように、彼の家に1人の少女が訪ねて来ていた。

 

 

「おおーい、流くーん!そろそろ行くよー!」

 

流「ああ、分かってるよ。天音」

 

 

彼女の名は「響 天音」流の幼馴染みで親友、そして今をトキメク地元のアイドルだ。彼女も流が経験した一連の戦いを知っている。

 

 

流の父「やぁ天音ちゃん、おはよう。」

 

天音「あ、お父さん。おはようございます。」

 

流の父「はははは………お父さんだなんて、天音ちゃんも家の娘になる決心がついたかな?」

 

天音「え?あ、やだ私ったら………って言うか、お父さんって呼ぶの今更じゃないですか⁉︎」

 

流の父「はははは………まあ冗談はさておき、息子の事、これからも頼むよ。流の支えになってあげてくれ。」

 

天音「………はい。」

 

流「天音、行くぞ。」

 

天音「うん!」

 

流の父「行ってらっしゃい、流」

 

流「行ってきます、父さん。」

 

 

流は3〜4ヶ月前まで不登校であり、星を見に行く夜以外は殆ど引きこもっていた。だが、彼は壮大な戦いに巻き込まれ、バディとの壮絶な別れを経験した。その経験が彼を変えてくれた。

 

 

天音「流君、少し変わったよね?」

 

流「うーん、どうかな?」

 

天音「変わったよ。前より………凄くかっこよくなったよ………

 

流「え?」

 

 

天音は、3〜4ヶ月前………流が久しぶりに学校に通い始めた時の事を思い出していた。

 

 

ーーー回想ーーー

 

 

3〜4ヶ月前………

 

 

壮絶な戦いの後、バディのレッドグリムを失ってから1週間が過ぎた。

 

 

天音「流君!今日も来たよ〜!って……」

 

 

天音が玄関のドアを開けると、そこには久しぶりに学校の制服に袖を通している流が靴を履いて、学校に行く準備していた……。

 

 

流「おはよう天音………」

 

天音「流君……、どうしたの⁉︎その格好………」

 

流「どうしたって、学校に行くんだから、制服は普通だろ?」

 

天音「流君……」

 

流「グリムが言ってたんだ、「強く生きろ」って、だから僕も、一歩踏み出そうと思う」

 

天音「そっか!じゃあ遅れる前に行こう!」

 

流「おう!」

 

 

静岡私立第5学院高校………校門前。

 

 

「よお、星野。」

 

「へへへへ………」

 

「………………」

 

流「三嶋君、伊藤君と小坂君。」

 

 

校門前で流に声を掛けたのは「三嶋 タキト」赤茶色の髪をオールバックにして、短い前髪が3本くらい飛び出ている。制服の全部のボタンを外し青いTシャツが見えていて、目つきが鋭く右頬に赤い二本線がある。

 

彼の隣には黒髪ロングの男子生徒「伊藤」、そして角刈りの男子生徒「小坂」がいた。

 

彼らはかつて流に対してイジメを行なっていた3人組である。タキトは自分を筆頭に3人で流にイジメを繰り返し、不登校まで追い詰めた不良達である。

 

タキトは無言で流に近づいてくる。

 

 

タキト「………………」

 

流「三嶋君………?」

 

天音「また流君を追い詰めるの⁉︎」

 

流「天音………いいよ。」

 

 

天音は流の前に立って、手を広げて守る姿勢をする。けど流は首を横に振って自分を庇おうとする天音を静止する。

 

 

天音「流君………でも………」

 

流「いいんだ。」

 

タキト「久しぶりじゃねーか星野。寂しかったぜ?またいつものように俺達と遊ぼうや?」

 

流「………僕は君達と遊ぶ気は無いよ。」

 

伊藤「ああ?!」

 

小坂「やめろ伊藤。せっかく学校に来たのに、また逃げちまうだろ。」

 

 

タキト達は、久しぶりに登校して来た流にいきなり突っかかって(なじ)る。だが流はいつもより強気の姿勢で、あしらう。

 

タキトは流の態度と、少しギラついた目を見て少し顔が強張る。

 

 

タキト「お前………なんか変わったか?」

 

流「さあ、どうかな?」

 

タキト「………チッ、行くぞ。」

 

 

タキト達はつまらなそうに校舎の中に入って行った。その姿を見送って流は安堵したように大きくため息を吐き、脱力する。

 

 

流「はぁぁ〜〜………」

 

天音「流君、凄いよ!あの三嶋君達を相手に言い返すなんて!」

 

流「いや、マジ怖かった………」

 

天音「今の流君、かっこ良かったよ!」

 

 

天音の満面の笑みでの「かっこ良かったよ!」の一言に、流は思わず顔が赤くなる。流にとって今日一番トキめいた瞬間だった。

 

 

教室………

 

 

「あ、星野君だ!」

 

「久しぶり星野君!」

 

「おっす星野!」

 

流「よ、よお!ひ、久しぶり皆んな。」

 

 

流が教室に入った時、クラスの女子と男子が流に賛辞混じりに挨拶をしてくれる。流にとって予想外の反応に少し戸惑いながらも挨拶を返す。

 

 

天音「良かったね。流君」

 

流「ん、ああ。」

 

 

タキト「………………」

 

 

だが、その様子を気に入らないようにタキト、伊藤、小坂が見ていた。

 

それから流は休学していた分、別の空き教室で教師と授業を受けたりプリントなどを処理していた。

 

 

昼休み、流は中庭で天音と昼ごはんを食べていた………………、その時の流は少し疲れた様子だった。

 

 

天音「お疲れ様、流君。」

 

流「本当に疲れたよ………、教師とマンツーマンでの授業はマジで疲れるよ………」

 

天音「あはは………」

 

流「ん?」

 

天音「ん?どうしたの?」

 

流「誰か来る………」

 

 

流の言葉通り、3人の男子生徒が流と天音の元に近づいてくる。それは、不良の三嶋タキトと伊藤と小坂だった。

 

 

流「三嶋君………何?」

 

タキト「星野、今日の放課後………面貸せよ。」

 

伊藤「逃げんなよ?」

 

小坂「放課後に案内してやる。」

 

 

それだけ言って3人は去って行った。

 

 

天音「流君、あんな誘い乗る必要ないよ。放課後、早く一緒に帰ろう!」

 

流「………悪い、行くよ。」

 

天音「何で⁉︎ 流君、三嶋君達に酷くイジメられてたんだよ⁉︎何でわざわざ着いて行こうとするの⁉︎」

 

流「逃げちゃダメなんだ………、いつかは三嶋君達に立ち向かわなきゃいけない時が来る、そう思うんだ。」

 

 

今日の流はいつになく強気な感じがした。

だからと言うわけでは無いが、天音は少し心配なのだ。せっかくまた登校して来たのに、タキト達に何かされて、また不登校になったら………そう思ってしまうのだ。

 

 

天音「………っ! 勝手にしなよ!!」

 

 

天音はいきなり怒鳴り、走って校舎に入って行った………

 

 

流「天音……? 怒らせちゃったか………。だよな、僕の事を一番心配してくれてるのは天音だからな。でも、これだけは本気(マジ)にならなきゃいけないんだ、グリムがそうだったように………。」

 

 

 

それから放課後………、流は小坂と伊藤に連れられて学校から少し離れた旧体育館前に連れて行かれる。その後ろから天音はこっそりと気づかれないように追いかける。

 

 

旧体育館前………

 

 

タキト「逃げずに来たか。星野」

 

流「三嶋君………ああ、僕はもう逃げない。」

 

タキト「チッ!今朝も、昼も思ったけどよ………お前、前よりなんか強気だよな?なんかムカつくぜ、普段ナヨナヨしてる奴が急にそんな態度だとよ!!」

 

伊藤「だから、ここらでいっちょ締めてやろうかってよー!」

 

小坂「悪く思うな。」

 

流「………………」

 

タキト「おい伊藤、小坂………こいつは俺1人でやる。手ぇ出すなよ?」

 

 

タキトは制服を脱ぎ捨てて青いTシャツ姿になった、身軽で動きやすいのだろう。タキトは少しフットワークを確認し、拳を握る。

 

 

タキト「いくぞ………」

 

流「っ………!」

 

 

流には自信めいたものがあった、確証はない。だがなぜか強気でいられる。"負ける気がしない"とまではいかない。ただ純粋に立ち向かう姿勢を崩さない。

 

タキトは拳を構えて流に殴りかかる。三嶋タキトの運動神経は高い………その為、一気に距離を詰められる。普通の奴なら避ける間も無く殴り倒されている事だろう。

 

だが流には見えている。タキトの動きがはっきりとスローモーションとまではいかないが、今の流には、5秒の速さで向かって来るものが15秒の速さに感じている。だがいつもそう見えるわけではなく流の回避本能が、度々その能力を引き出しているのだ。

 

流は軽々とタキトの拳を避ける。タキトは自分の拳が流に当たっていない事に一瞬疑問に思うが、まぐれだと思い二発、三発と拳を振るう、だが流は悠々とそれを避け続ける。タキトは自分の拳が流に一発も当たらない事に困惑し思わず動きを止めてしまう。それを隙と見た流は拳を握り、今目の前にいる立ち向かうべき相手………、自分にイジメを繰り返し、不登校まで追い詰めた憎いあいつの顔面を目掛けて思い切り拳を振るう。

 

身体が軽い。まるで自分の周りの重力が半分くらいしか無いんじゃないかと思うくらい………、そして拳が重い。まるで自分の拳に鉛でも入っているんじゃないかと思うくらい重く強い力が入る、流の拳はタキトの顔面を捉え、殴り飛ばした。タキトの身体は少し宙を舞い、そして背中から滑るように地に倒れた。

 

タキトはさらに困惑していた。いや、混乱と言えばいいのか?ただ一瞬の事だった。自分はいったいなぜ地に倒れた?いったい何があった?じわじわ染みてくる頰の痛みに、自分は今殴られたのだと実感する。誰に?まさか目の前にいる男に?普段からナヨナヨしていて気に食わなかった星野 流に殴られたのか?今日久しぶりに登校して来た流に?自分がずっと弱者だと見下してイジメていた、あの流に殴られたのか?自分の拳を全て避けた上で殴り返して来たと言うのか………?ナヨナヨしていたあの流が自分の拳を避けて殴り返して来たんだ………、理解が追いついたところでタキトは上体を起こし、立ち上がる。

 

 

タキト「お前………不登校中の間に、いったい何があったってんだ………?」

 

流「あったさ、色々と………」

 

タキト「?」

 

 

流の身体能力の向上には理由があった。

流にはレッド・グリムというバディが居た。

流は【ファイナライズ】という能力でレッド・グリムと完全に同化した事があった。その影響が今の流の急激な身体能力向上の原因となっている。今は亡きレッド・グリムが流に残してくれた恩恵だ。

 

タキトは今まで以上にムカついていた。自分の拳が何発も避けられ、その上、自分より速く重く強い拳をまともに受けてしまった。さらにタキトの神経を逆なでしたのは、自分を殴った相手が星野 流であるという事だ。これだけはタキトのプライドが許さなかった。

 

 

タキト「不登校中、おめぇに何があったかは知りたくもねーけどよ、認められねー、お前みたいなナヨナヨして弱い奴が、俺に勝っていいはずがねーんだ!一発でもおめぇに拳叩きつけなきゃ、俺の気がすまねーーー!!」

 

 

タキトはそう言って再び殴りかかって来たが、流はそれを軽く避けて、また一発タキトに拳を入れた。そしてタキトはまた吹っ飛ぶ。

 

 

タキト「ぐぁ!」

 

伊藤/小坂「三嶋!」

 

伊藤「星野、てめぇ!」

 

タキト「伊藤………、手出すなつったろ、俺がやる………!」

 

伊藤「三嶋………」

 

小坂「………もう辞めよう。三嶋」

 

タキト「ああ⁉︎ 小坂!星野にやられたまま帰ろうってのか⁉︎」

 

小坂「ああ、お前ももう分かってるはずだろ。星野はもう前とは違う。ひ弱で、何の抵抗もせずに黙ってイジメられていた、もう、あの時の星野じゃないんだ!」

 

伊藤「小坂………」

 

小坂「今朝、お前に一言言って返した。あれだけで星野がどれだけ変わったのか、分からないお前じゃないだろ!」

 

タキト「………ああ、分かったよ。」

 

 

タキトは小坂の言葉に頷き立ち上がる、そして星野に背を向けた。

 

 

タキト「星野………………悪かったな。」

 

 

そう一言言い残して3人は去って行った。

 

 

流「はぁ〜〜………終わったよ、天音。」

 

天音「あ、あれ?バレてた?」

 

流「グリムのおかげで聴覚も多少鋭くなったんだ。僕の後ろから聞き慣れた足音が小さく聴こえてきたから天音だなってさ。」

 

天音「そ、そうなんだ………」

 

 

昼休みの事があってか、流と天音のやりとりが少しぎこちなく感じる。特に天音は流を怒鳴ってしまった気まずさがある。

 

 

流「天音、昼休みの時ごめんな。」

 

天音「え?」

 

流「俺の事、一番心配してるのは天音なんだって分かってたのにさ………天音の心配も考えずに、なんか強気になっててさ………結構調子に乗ってたんだと思う………。ごめん!」

 

 

天音は少し驚いた。実は天音も今のタイミングで謝ろうと思っていたのだが、先に流が謝って来た事に………でも凄く嬉しかった。そして流に続いて天音も謝る。

 

 

天音「私の方こそ………、確かに、流君の事凄く心配だったよ?流君がまた三嶋君達に酷いことされて、また不登校になるんじゃ………って考えて凄く心配した………。でも私、心配し過ぎて流君の事………信じきれてなかった、そんな自分に腹が立っちゃって、流君に怒鳴りつけちゃった………本当にごめんなさい!」

 

 

天音は目に涙を浮かべて流に謝った。そんな天音を見ていて、流は無性に天音を愛しいと思った。自分の事を信用できなくなるほどに自分の事を心配してくれた天音を………

 

意識はしていなかった。これも愛しさゆえの本能なのだろうか、気がつくと流は天音を抱きしめていた。

 

 

天音「な、流君………?」

 

流「………………いきなり、ごめん。」

 

天音「う、うん………ふふふ、帰ろっか!」

 

流「ああ。」

 

 

流と天音は照れながらも、いつも通り一緒に帰る。

 

 

ーーー回想 了ーーー

 

 

そんな事があってから、三嶋タキト、伊藤、小坂はもう何もして来ず、流は平和な学校生活を送れるようになった。

 

それからも、流と天音の関係には

特に進展は無いが、クラスメイトから見たら、今までより仲睦まじく見えるらしい。




今回も感想を是非‼︎


ーーー次回予告ーーー

その少年は「星」を眺めていた。
いつもと同じように、いつもとは違う気持ちで………
そして少年の心にはいつも、消えてしまった大切なバディへの想いがずっと残っている。

次回『星を想う少年』

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