SAO〜赤目の罪人〜   作:鎌鼬

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過去と始まり、そして罪

 

 

まず感じた物は〝既知感〟だった。

 

 

自我に目覚めた時、いや、もしかしたらお袋の腹の中にいた時から俺は〝既知感〟を感じていた。何を知っても何をしても、初めての事のはずなのにそんなことがあったなぁと既知感を感じてしまう。全てを知っている全てをした事がある。子供の頃はデジャヴるなんて言って呑気にしていたが、それが成人間近になるまで続くと恐怖しか沸かなかった。

 

 

未知を求めた、知らない事を探したーーーその全てに、デジャヴを覚えた。未知が欲しい未知が欲しいと、虚弱体質ですぐに寝込んでしまう身体なのに未知を求めて彷徨う姿は側から見れば不気味だったかもしれない。だが、それを心配してくれる両親の姿には何故かデジャヴを覚えなかった。

 

 

あぁ、未知がある。これは俺が知らない事だと喜び、そして見果てぬ未知を求めた。その過程で医者であり病院を持っている親父から、俺ではなくて弟に自分の後を継ぐ様に言われて悲しくなり、そしてその事にもデジャヴを感じた事に泣きたくなった。

 

 

そして俺はソードアート・オンラインというゲームに出会った。世界初のVRMMOのオンラインゲームという事でメディアは毎日の様に騒ぎ、これならば〝既知感〟を感じないだろうとフルダイブマシン〝ナーヴギア〟と共に製品版のソードアート・オンラインを購入。〝XaXa(ザザ)〟というプレイヤーネームでログインをした。

 

 

そして、ソードアート・オンラインは茅場晶彦の手によりデスゲームと化す。

 

 

そして、そこで初めてこの世界がどういう世界なのかという事を、そして俺が二度目の人生を歩んでいると言うことを思い出した。

 

 

突然の茅場からの発表に混乱し、暴動が起きかけているプレイヤーたちから離れて、俺は裏路地で1人笑っていた。あぁなるほど、確かにこれは〝既知感〟を感じるはずだと。俺は前の人生でこの世界を知っていたのだから。前の人生の記憶は虫食いが空いた様に不確かで、正直に言って頼りにならない。だが、この世界がどう動くのかという事は鮮明に覚えていた。

 

 

75層で〝黒の剣士〟キリトの手により〝神聖剣〟ヒースクリフである茅場晶彦が倒されて、ソードアート・オンラインはクリアする。

 

 

そして、ザザというプレイヤーはレッドギルド〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟に所属していて、攻略組と衝突して途中退場する。

 

 

既知、既知、既知。未知を求めた先にあったのは全て既知だった。まるで道化の様な自分が無様で自虐の笑いしか出てこない。どれだけ笑ったのか分からないが、茅場からの発表が夕方だったのに当たりが暗くなった頃になって笑うのを止めた。そして決意した。

 

 

この世界が決まりきった世界だとしても、俺が求める物は変わらない。未知を、未知を、俺が知らない何かを求めて彷徨うだけだ。その為ならば、疎ましく煩わしく思っていた〝既知感〟ですら利用してやろう。

 

 

そうして俺はソロで活動し、PoHに誘われる形でレッドギルド〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟に入った。カーソルはグリーンからオレンジになったが、この手で間接的、直接的に人を殺したことは無かった。ソロで活動している時にはプレイヤーには手を出さず、ギルドで活動している時にはMPKで殺す様にメンバーを唆して、メンバーの隙を伺って状態異常で動けなくなっているプレイヤーに転移結晶を渡して逃していた。

 

 

俺が殺したのはたった1人だけ、PoHだけだ。

 

 

殺した事に後悔は無い。PoHを殺すという出来事に〝既知感〟は覚えなかった。求めていた未知を手に入れた、だがそれと同時に俺は罪を犯した。転移結晶を使って逃げる事も出来たというのに、俺は自分から攻略組との戦いに飛び込んでいった。

 

 

罪を犯した俺を、殺して欲しかったから。

 

 

そうして俺はヒースクリフと戦い、捕縛され、ゲームクリアの日まで犯罪者が入れられる黒鉄宮に収容された。

 

 

リアルに戻った俺はゲーム内でのストレスで髪が白髪になり、さらに刃物に対して心的外傷、つまりトラウマを持った。

 

 

俺が生きて戻ってきた事を親父とお袋は喜んでくれた。

 

その事に未知を感じた。

 

それが辛かった。

 

 

だって俺は人殺しなのだから。生かしておけば何をするか分からないからとPoHを殺した人殺しなのだから。

 

 

その事が親父とお袋に申し訳なくて俺はリハビリに死力を尽くして四ヶ月程で終えると、実家から出て一人暮らしを始めた。何かの拍子でPoHを殺した事を零し、それで家族から拒絶される事が怖かったから。親父もお袋も虚弱体質の俺が一人暮らしを始める事を悩んでいたのだが、定期的に連絡をする事を条件に何とか許可を出してもらえた。

 

 

電話をする両親との仲は良く、遊びに来る弟とも仲は良好。だが、人殺しという罪を犯しているので一歩引いてしまう。〝既知感〟こそ感じなくなったが、一時期は罪の意識から死にたいと考えていた。

 

 

それを心配したのか、弟がとあるゲームを持ってきた。それか〝ガンゲイル・オンライン〟だった。ソードアート・オンラインの様に剣ではなくて銃をモチーフにしたゲーム。PKが推奨されるゲームだと教えられたが、俺はあえてそれをする事にした。

 

 

荒療治という奴だった。あえてPKをする事で強引に精神を鍛えるという、傷口に塩を塗る様な愚行。虚弱体質でまともに働けず、株で金を稼いでいる俺は一般人よりも遥かに時間が取れたので、食事と睡眠以外を全てゲームのプレイに注ぎ込んでその愚行をした。結果的には成功して死の欲求は無くなったが、今考えれば廃人になってもおかしく無かった。

 

 

だが、その代わりというのか俺は生きる欲求を失った。〝既知感〟からは解き放たれて死の欲求はもう無い。ただただ、何となく生きて流されるだけの枯れ果てた存在に成り果てた。

 

 

だから願うのだ。どうか糧を、前に進むだけの熱を下さい。前に進みたい、でも進めない。この足を動かす何かが欲しいんだ。

 

 

だから探している。リアルで、仮想現実で、俺が前に進める〝何か〟を。

 

 

 






ーーまず感じたのは〝既知感〟、求めしものは〝救い〟

覇道神の残滓の詠唱風だとこんな感じの主人公。未知を求め、それから解放された結果罪を背負った。前に進みたい、だというのに足が動かない。だからそんな自分を救って欲しい。って感じ。

と、いうわけでこの小説の目的は枯れ果てた主人公が再起する事よ〜


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