フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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どうも、thikuruです!!

この話を作成中に感じたことが……


エドラス篇……今までで1番長いお話になるかも知れません……


入れたいお話や設定が多すぎて……ごちゃごちゃしてしまいましたらすいません! なるべく気をつけるのですが……

……では、前置きはここまでにしまして……本編の方、最後までお付き合い、お願いします!


66話 作戦前日

 

 

 

王都 城下町に着き、シクルたちの目に飛び込んできたその光景は……

 

「なに……これ?」

 

「……なんか、意外だね」

 

「独裁国家の統治下って言うくらいだから……もっとくたびれてるかと思ったけど……」

 

「……遊園地みたいだねぇ」

 

「オイラたちのいたルーエンやシッカの街とは全然違うよ」

 

シクルたちは辺りを見渡しながら各々、感想を言っていった。

 

そんな中……

 

「んー! むむむ……!! ……ぬぅー!?」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

 

はぁ……と、シクルが後ろを振り返ると……

 

シクルたちの歩く、少し後ろの方で何故かただ1人、何かを考え込み、唸るナツがいた……

 

「ちょっとナツー? 何やってんのよ……」

 

 

「むむむ……んぬぁー!! なんでこっちではなってるのに俺はまだなんだよぉー!?」

 

「……はぁー」

 

「ちょっと、アレ……何やってんの?」

深いため息を吐くシクルを見て、不思議に思ったルーシィが声をかけ、問いかけると……

 

「あぁー……何かね? さっき……」

 

 

 

そう、それは王都に着いた時に発覚したのだ……

 

ナツの言葉を聞き、何か思うところがあったのだろう、考え込むエドナツ……

 

 

「……んじゃ、俺は行くぞ! ここまでサンキューな!」

 

「ま、待って!!」

 

「んぁ……?」

 

先に行ったシクルたちを追い、ナツが走り出そうとすると……突然、エドナツがそれを止めた。

不思議に思い、ナツは振り返ると……先ほどでの不安と恐怖の入り混じった表情から変わり、首を傾げ先にいるシクルとナツを交互に見やっているエドナツがいた。

 

「……1つ、いいですか?」

 

「……何だよ?」

 

「ずっと気になってたんですけど……そちらの僕さんとシクルはどんな関係なんですか……?」

 

「……は?」

 

エドナツのその言葉に、目を点にし放心するナツ。

そして、その言葉の意味をやっと理解すると……

 

「んなっ……な! ど、どんな関係って……そりゃあ……ただの、仲間だけど……よぉ(まだ返事もらえてねぇし……仲間止まりだよ……な)」

 

自分でいい、ずーんと沈むナツ。そこに、追い打ちをかける話がエドナツの口から出てくる……。

 

「あれ? そーなんですか? そっか……そーいうところも少し違ってくるんですね」

 

「あ? なんだ……そっちはちげぇのか?」

 

「僕達は……恋人、です……大切な」

少し顔を俯き、寂しげに笑みを浮かべ告げたエドナツ……その口から出た言葉に……ナツはポカーンと固まる。

そして……

 

「んな……なっ!

 

なにィ!? こっちの俺は……付き合って、んのかぁあああ!?」

 

「ひぃいいいいっ!? ご、ごめんなさいぃいいいいっ!!!」

 

 

 

……これが、エドナツと別れる最後に話した内容だ。

 

それから、ナツは頭を抱え、俺は……まだ……俺は……と、延々と繰り返しているのだった。

 

「……てな訳よ」

 

「あぁ……なるほど……そーいうことね……」

 

「まさかこっちのナツとシクルは付き合ってるなんてねーオイラもびっくりだよ!」

 

「あたしもぉ! こっちはまだまだなのにねぇ」

 

ハッピーとルージュの言葉にむぅと頬を膨らませるシクル。

 

「悪かったわねぇ……まだまだで……あ、そーだルーシィ」

 

「ん? なぁに?」

 

1番前を歩いていたシクルから呼びかけられ、首を傾げるルーシィ。シクルはルーシィを振り返り……

 

「あのね……これが終わったら、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」

 

「聞きたいこと? いいけど……今じゃダメなの?」

ルーシィからの問いかけに苦笑を浮かべ、「今はね……」と、告げるシクル。

 

「今は皆を助ける方が優先だと思うし……そんなに、急ぎの話じゃないから……」

 

いいかな? と質問をするシクルを見つめ、フフッと笑みを浮かべるとルーシィはコクッと頷き

 

「もちろん!! いいわよ」

と、答えた。

 

「ありがとう」

にっこりと微笑み、礼を告げるシクルににっこりと微笑み返すルーシィ。すると……

 

 

わぁああああっ!!

 

「ん?」

 

大きな歓声が聞こえ、シクルたちはそちらへと、視線を向けると……

 

「なんだか……向こうの方が騒がしいですね」

首を傾げながら、シクルたちを見やい呟くウェンディ。

 

「パレードでもやってるんじゃないの?」

 

「んー? ……ちょっと見てくっか!!」

 

「あいー!!」

賑やかな集団を見つけ、沈んでいたナツはピクッとその声に反応し、興味津々で走り出した。その後を追い、ハッピーもついていく。

 

「て、ナツ!? ハッピー! 勝手に行かないでよ!」

 

「あんたさっきまで落ち込んでたじゃない!」

 

「やっぱ単純だねぇ……」

 

シクルの静止も聞かず、走り出したナツ。

そんなナツに反応し、ルーシィも走り出し、はぁとため息をつき、シクルもナツの後を追う。

 

その後ろにはルージュやウェンディたちもついてきていた。

 

 

そして、集まる群衆の中をかき分け、中央の様子を伺おうとした時だ……

 

「いたっ……ちょっと、ナツ急に止まんないでよ!」

 

「ん? ルーシィ……」

シクルの前の方を進んでいたルーシィから、ナツへの抗議の声が響いたのだ。

 

だが、ナツはその声に反応を示さず……ただただ目の前を見つめ、目を見開き驚きを隠せずにいる様子だった。

 

そんなナツの様子に不思議に思ったシクルたち……だが、次に目に映った光景にシクルたちも驚愕を露わにする。

 

 

「……え?」

 

「魔水晶……!?」

 

「まさか……」

 

「これってぇ……」

 

「マグノリアの皆……?」

 

「しかも、一部切り取られた跡があるわね……」

 

「他の皆は……別のところってことね……(あれに滅竜魔法を当てれば……皆は元に戻るってこと、ね……)」

 

 

目の前にある魔水晶を見つめ、呆然とシクルたちは立ち尽くしていると……広場の中央で王座の椅子に腰掛けていた老人……恐らく、この国の王であろう男が立ち上がる。

 

そして、前に出てくると一斉に民からの歓声が上がる。

 

「陛下だぁー!!」

 

「陛下バンザーイ!」

 

「バンザーイ!!」

 

王は民を見下ろし、声を張り上げる。

 

「エドラスの子らよ……我が神聖なるエドラス国はアニマにより、10年分の魔力を生みだした!」

 

その言葉にシクルたちの表情は険しくなる。

 

「生み出したって……あいつ!」

 

「オイラ達の世界から奪ったくせに……!」

 

 

「エドラスの子らよ……共に笑い……共に歌い、この喜びを分かち合おう!!」

 

王の宣言に大きな大歓声が巻き起こる。

 

 

「っ……!!」

ギリッと拳を握り、耐えるシクル……そんな彼女を不安げに見上げるルージュ。

 

 

「エドラスの民には、この魔力を共有する権利があり、また……エドラスの民のみが未来へと続く、神聖なる民族!

 

我が国からは誰も魔力を奪えない!!

 

そして我はさらなる魔力を手に入れると約束しよう!」

 

ピキンッ! と王の振り下ろした杖が魔水晶に叩きつけられ、魔水晶の一部が砕かれる……。

 

「これしきの魔力がゴミに思えるほどのなァ!!!」

 

 

 

「っ!!!」

 

「っ、ナツ!!」

 

 

王と民の様子に我慢の限界に達したナツが拳を握り、足を1歩、前に進めるとそれをシクルが後ろから抱きつき、止める。

 

「っ、離せシクル!! 俺は……!」

 

「分かる……気持ちは分かるよ! でも……

 

でも今は……、その時じゃない……まだ、皆を助けるには力がない……今はまだ……今のままじゃ、王国軍に捕まるのが落ちだよ……」

 

「そんなん……! やってみなきゃわかんねぇだろ!?」

 

シクルの言葉に声をさらに上げるナツだった。が……

 

「お願いッ!!」

 

「っ……!」

 

「……お願い、ナツ……今は、耐えて……

 

私も……ハッピーもルージュも……ルーシィたちも、同じ気持ちなの……でも、今はまだ……皆を助けられない……

 

今のままじゃあ……ダメなの……だから、お願い……」

 

 

そう言い、顔を上げたシクルの瞳は揺れ、辛そうに、悲しそうに……そしてその感情を覆い尽くす程の怒りが入り混じっていた……。

 

ナツはルーシィたちにも視線をやり……その場の全員が耐えてることに気づくと……身体からそっと力を抜いた……。

 

 

 

その後、群衆から離れたシクルたちは城下町のある一角にあるホテルへと泊まり、今後について話し合いをしていた。

 

「これからどうする……? なんとかあの魔水晶にされた皆をなんとかしたいけど……」

 

「どうすればいいんでしょうか……」

 

「大丈夫だよ」

 

俯きながら対策の浮かばない自身に溜息をつきウェンディ。そんな彼女の頭にポッと手を置き、撫でるシクル。

 

「大丈夫、あの魔水晶を元に戻す方法は分かってるわ」

 

「「え!?」」

 

「はぁ!?」

 

「シ、シクル……それ、ほんと!?」

 

シクルの言葉に驚き見つめるルーシィたちに、コクリと頷いて見せるとミストガンから聞いた話を説明するシクル。

 

 

「……つまり、シクルの魔法でみんなを元に戻せるって訳なのね……」

 

「正確には、ナツとウェンディも出来るはずなんだけど……(多分ミストガンから薬もらってないんだろうなぁ)」

 

「でも、元に戻す方法がわかっても他の魔水晶がどこにあるか分からないよぉ?」

 

シクルの膝の上に座り、シクルを見上げ呟くルージュの言葉に「そーなんだよねぇ」と苦笑を浮かべるシクル。

 

「探せるところは探しましたけど……、魔水晶らしきものはなかったですもんね……」

 

「やっぱりお城かなぁ……」

 

んー、とシクルたちが首を傾げ何かないか、と考えていると……

 

 

「んがー!! やっぱり我慢できねぇ!! 俺ァ城に乗り込むぞぉおおっ!!!」

 

「ちょ、うるっさ……っ!」

うがぁー!! と怒声を上げ、吠えるナツ。

 

 

「もう少し待ってちょうだい。」

 

吠えるナツさんに唯一、ここまで一言も喋らず、何かを紙に記していたシャルルがそう言った。

もちろん、ナツがそれに黙って従うはずもなく……

 

「何でだよ!?」

 

「ちゃんと作戦を立てなきゃ、みんなは元に戻せないわよ」

 

「そうよ、ナツ……闇雲に行ってさらに状況を悪化させたら大変でしょ?」

 

「っ……」

 

シャルルの言葉と、その言葉に続いたシクルの言葉を聞き、口を閉ざすナツ。

 

「皆……一体何処にいるのかなぁ……」

 

「……それを知るには……」

 

「王に直接聞くしかないわね」

 

ウェンディの言葉を遮り、シャルルがそう言う。

 

「でも……きっと、教えてくれる訳……」

 

「ンなもん、殴ってやればいいんだ!!」

 

「それは違うと思うけど?」

 

「ねぇ……王が知ってるのは確かだと思うけどさぁ? どうやって王のところまで行くのぉ?」

 

「それは……」

 

ルージュの疑問にシクルはふっとルーシィに視線を向ける……。

ルーシィもシクルの視線に気づき、少し首を傾げるも……はっとなにかに気付く。

 

「そっか……いけるかもしれない、王様に近づく事事が……できるかもしれない!」

 

「本当か!?」

 

「それは……」

 

「どういう事……?」

 

ルーシィがシクルを見つめるとシクルもコクリと頷く。ニッと笑みを浮かべ、ルーシィはナツたちを振り返り、告げた。

 

「ジェミニよ!!」

 

「ジェミニ……確か、黄道12門の?」

 

「そう!ジェミニは触れた人に変身できるんだけど、その間、その人の考えてる事まで分かるのよ」

 

「つまり……、ジェミニの力を使い王様に変身することが出来れば、皆の居場所が分かるかもしれないって事よ」

 

ルーシィとシクルの説明におぉ!! と声を上げるナツたち。

 

「おお!!!」

 

「なるほどぉ……!」

 

 

「問題はどうやって王様に近づくか……ね」

 

「さすがに護衛が多すぎて簡単には……」

 

1つ、問題が解決したのにも関わらず、再び新たな問題にぶつかり、唸るシクルたち。

 

そこへ……

 

「王に近づく方法なら……あるわ」

 

シャルルの言葉が響く。

 

 

シクルたちがシャルルに顔を向けると、シャルルはこの部屋についてからずっと何かを書いていた紙をシクルたちへと見せた。

 

「それは?」

 

「城から外への脱出の通路よ……町外れの坑道から城の地下へと繋がってるはずだわ」

 

「え……!」

 

「すごい! シャルル、何で知ってるの!?」

 

ウェンディが目を輝かせ、シャルルに問いかけると……

「情報よ……断片的に浮かんでくるの」

 

「じょう……ほう?」

シャルルの言葉に首を傾げるルージュ。

 

「えぇ、エドラスに来てから少しずつ地理の情報が追加されるようになったわ」

 

「オイラぜんぜんだよ……ルージュは?」

 

「え……」

 

ハッピーからの問いかけにルージュは目を見開く……そして、シャルルに視線を向け、次にシクルを見上げた。

 

どうやらルージュはハッピーの質問に、どう答えればいいか……分からないようだ。

 

「あー……情報って、何かな?」

 

困惑するルージュに代わり、シクルがシャルルへと質問をすると、シャルルはここへ来る前にハッピーやナツたちに話したことをシクルとルージュにも説明をした。

 

そして、その話を聞いた後……

 

「……え」

 

「それは……」

 

驚愕を隠せないシクルとルージュ。

 

「その様子じゃあ、あんたも何も知らないみたいね? はぁ……どうして、あんたたちは任務のことを知らないのかしら……」

 

「に、任務って……そんな」

 

そんなの……なかったはず……と、言おうとルージュは口を開くも……

 

「とにかく、そこから城に潜入できればなんとかなるかもしれないわ」

 

シャルルのその言葉に遮られ、この話は終わった。

 

「おっしゃ! 皆を元に戻すぞ!!」

 

「おおーっ!!」

 

「出発は夜よ、今は少しでも休みましょ」

 

シャルルの言葉に頷き、部屋の電気を消し、各々割り当てられた部屋へと入っていった。

 

 

1度解散をしてから十数分後……

 

ルージュは窓の近くに座り、空を見上げていた。

 

「……なんで……なんでぇ?(シャルルの話していたあの話……お母さん達の言ってたことと……違う)」

 

何がどうなっているのか、分からず混乱するルージュ……そして、ふっと考えること……

 

「お母さん……お父さん……会いたいよぉ」

 

 

アースランドへ飛ばされた時、離れ離れとなった両親……今、どこで何をしているのかルージュに知る手はなく、会いたい気持ちと寂しい気持ちに顔を俯いている……。

 

 

「ルージュ……」

 

「あ……」

 

俯いていた頭にそっと、温かい手が触れ、その声に顔を上げると……そこには、予想と違わず、シクルがふっと柔らかい笑みを浮かべ、ルージュを見下ろしていた。

 

「シクル……」

 

 

「ルージュ……さっきの話、気にしているの?」

 

「……ん」

 

シャルルの口から語られた任務……それは、シクルたち、滅竜魔導士の “抹殺” ……

 

「そんな任務……ないって……お母さんとお父さんは、話してたのになぁ……」

 

どういうことかなぁ……と、シクルを見上げ声を震わせるルージュ。

 

「ごめんね、そこまでは私も分からない……でも、きっと……ルージュのお母さんたちは間違ってないよ、だから……一緒に真実を見つけよう?」

 

本当のことを……ね?

 

 

「……うん」

 

「それと、今回のことが落ち着いたら……また、お母さん達を探そ?」

 

「シクル……うんっ!!」

シクルの微笑みに、混乱していた思考も落ち着いた様子のルージュはほわっと笑みを浮かべ、頷いた。

 

「さて……作戦に支障が起きないように……もう休もう?」

 

「あい!!」

 

シクルの言葉に元の元気を取り戻したルージュはシクルに抱き着くと、その肩に乗り、一緒にベッドへと横になった。

 

 

城への侵入まで残り数時間……

 

 

 

そして、シャルルやハッピー……ルージュにとって、辛い事実が語られるまで……残り1日……

 

 

その時は……近い……

 

 





はい、今回は城への侵入前までですね。

で、ですね……明日から少し仕事が忙しくもしかしましたら2.3日投稿をお休みする可能性があります。

来月からこのような事が増えるかも知れません……もちろん、理想はまだ1日1話なのですが……もしかしたら、今後2.3日に1話投稿に変更するかもしれません。

途中で途切らせることはしないので、気長に待って頂けると有難いです!

では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!

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