フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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あぁああああっ!!! 前回から大分日にちが空いてしまいました、すいません!!

1度風邪は治ったのですがぶり返しまして……やっと完治しました!……恐らく


遅れた割にはあまり話の内容は進んでいないのですが……

最後までお付き合い、お願いします!


64話 もう一つの世界 エドラスへ!

 

 

 

シクルは我が目を疑った。

 

あの大きな大きな、活気の満ちたあのマグノリアが……そして、妖精の尻尾が……

 

 

消えた……。

 

 

「何これ……ギルドが……街がっ、皆は!?」

 

「ここが本当にマグノリアなのぉ?」

唖然とするシクルを見上げ、問いかけるルージュ。

シクルはコクッと頷いてみせる。

 

「間違いない……微かだけど、皆の匂いが残ってる……(でも、何でこんな……どうして)」

 

辺りを見渡すシクル……そして、不意に空を見上げると……

 

 

「あれは……」

 

「え?」

 

 

空に大きな大きな穴が空いていた……。

 

 

「あれって……もしかして、あれが……」

 

 

「そう、あれがアニマだ」

 

「「!!」」

 

シクルとルージュの背後から聞こえた声に振り返ると……

 

 

「「ミストガン!!」」

 

少しふらつきながらも歩み寄ってくるミストガンがいた。

 

「アニマを閉じながらここまで来ていたのだが……すまない、間に合わな……くっ」

 

「ミストガンっ!!」

最後まで話せず、膝をつくミストガン。

 

彼の身体を支えると……

「あなた怪我して……! ちょっと待ってね……

 

【我、月の加護の名の下に

 

愛する者の身を包み

 

その身、回復させん】

 

歌魔法(ソングマジック) 治癒(ヒール)

 

シクルの手をかざしたところから徐々にミストガンの身体を淡い光が包み、光が消える頃には傷は癒えていた。

 

「すまない、ありがとう……シクル」

 

「どういたしまして……それより、もしかして……ギルドの皆や街の人たちは……」

 

クスッとミストガンに笑みを見せるとすぐに表情を引き締め、険しい表情で問いかけてくるシクルにミストガンもコクッと頷き

 

「あぁ、そうだ……皆アニマに吸い込まれてしまった……すまない、気づくのが遅れた私の責任だ……シクル……」

 

「なに?」

 

「私はまだこちらでやらなければならないことが残っている……身勝手だと思うが……先に向こうへ行き、皆を救出してくれないか?」

 

頼む、と頭を下げるミストガンを前にじっと見つめるシクル……

 

 

「……分かった、どうすればいいの?」

 

ふっと、笑みを浮かべそう言ったシクル。

「あぁ、まずはシクル……これを飲んでくれ」

 

ミストガンはそう言うと懐から小瓶を取り出し、その中には小さな赤い薬がいくつも入っていた。

 

「これは……?」

 

「これは向こうで魔法を使えるようにする薬だ。 向こうでは、エクシードという種族しか魔法を使えないからな」

 

ミストガンの説明になるほど、と頷くと1錠飲み込む。

 

 

「飲んだな……なら、あとはあのアニマの残留した空を通り、そこからエドラスへ行ける……ルージュの魔法で行けるはずだ」

 

そういい、ルージュに視線を向けると……ルージュは俯き、何かを考え込んでいた……。

 

「……どうした?」

 

「あ、の……ねぇ、シクル……」

 

「あ……そっか……」

 

言いづらそうにしているルージュを見て、ミストガンは首を傾げ、シクルは合点がいったかのように頷くとルージュをそっと抱き上げた。

 

 

「……ミストガンは、知らないよね」

 

「ん?」

 

 

「あのね……ルージュは……この子は、向こうで生まれて、ある事故でこちらに来た子なの」

 

 

「え……」

目を見開くミストガン。そして、その視線はシクルの腕に抱かれるルージュに向けられる。

 

「それは……一体」

 

「……ルージュ」

 

「うん……あたしのお母さん達は例の計画を知ってあたしを奪われないように色んなところを旅してたんだぁ……その結果あたしは例の計画の子供たちの中には入ってないの

 

ただ……、あたしが生まれて2年くらい経った頃に……突然開いた人間の作り出したアニマの残留にお母さん達と一緒に吸い込まれて……」

 

「……こちらの世界に来た、と?」

 

ミストガンからの問いかけに頷くルージュ。

 

「まぁ、国を逃げ出したってことは裏切りとも同じだってことで……こっちに飛ばされる前に怪我をしてたみたいでね……

 

傷ついて倒れてたところを私が見つけて今に至るって感じかな……この子の両親はいなかったからこっちに飛ばされた時、離れ離れになっちゃったのかもしれないけど……」

 

そう言い、ルージュを撫で続けるシクル。

 

 

「ルージュ……無理しなくてもいいよ……?

私も飛べないわけじゃないから……こっちで待ってても……」

 

いいよ、とそうシクルが告げようとすると……

 

「ううん、あたしも行くよぉ……だって、あたしは……シクルの相棒だもん……一緒に行くよぉ!」

 

真っ直ぐとした瞳でシクルを見つめ、ニッ! と笑みを浮かべるルージュ。

ルージュの覚悟した瞳を見つめ、シクルもふっと笑みを浮かべると……ミストガンを見やう。

 

 

「確認だけど……あのアニマの力が残留した穴に飛び込めば向こうの世界に行けるんだよね?」

 

「あぁ、私も向こうにいたのは随分昔のことだ……今の詳しい現状を完璧に把握している訳では無いが……恐らく、厳しい現状だと思う……気をつけてくれ」

 

「分かった、ありがとう」

ミストガンの忠告ににっこりと微笑み、例をいうシクル。

 

 

「それと……向こうへ行ったら王都へ向かってくれ」

 

「王都へ?」

 

「あぁ……王都のどこかに、巨大な魔水晶があるはずだ……それが、マグノリアの人たちだ……彼らはこちらの人間を魔水晶に変え、その魔力のみを抽出しようと企んでいる」

 

ミストガンから出たその言葉に目を見開くシクルとルージュ。

 

「魔力を……抽出って……」

 

「そんな事をしたら魔水晶になったみんなはどうなっちゃうのぉ?」

 

 

魔力は魔導士にとって、命と同じ……それを奪われるということは……それ即ち……

 

 

 

死ーーー。

 

「そんなこと……!! 絶対させない!」

ギリッと拳を握り、苦しい表情を浮かべるシクル。そして、ルージュも……シクルの背を掴むと浮かび上がり……

 

「行くよぉ! みんなを助けに!!」

 

と、声を上げる。

 

 

「待て、シクル! 最後に……その魔水晶は滅竜魔導士の魔法で元に戻すことが出来る…シクル、覚えておいてくれ」

 

ミストガンからのアドバイスにふっと笑顔を浮かべ、「ありがとう!」と告げるとシクルは……

 

 

 

「じゃあ……行ってくる!」

と、ルージュと共にアニマへと吸い込まれていった。

 

「シクル……ルージュ……頼んだぞ」

 

 

 

アニマに突入する時、眩い光に包まれ、うっと目を細めるシクルとルージュ。

 

そして……アニマを通り、エドラスへと辿り着いた時、目の前に広がる光景は……

 

 

「ここが……エドラス……ミストガンの、ルージュの……故郷」

 

アニマを通り、エドラスの上空に出たシクルとルージュ。

 

目の前に広がる光景に、目を見張り……

 

「とりあえず……地上に降りよう……お願い出来る? ルージュ」

 

「任せてぇ!」

シクルの指示でルージュは地上にゆっくりと、降り、シクルを離す。

 

「ありがとう、ルージュ」

 

「うん! ねぇ、シクル? これからどうやって王都まで行くのぉ?」

 

「んー……とりあえず、まずはこっちの情報集めて……それから王都へ向かおう? 何も知識もなしに行ってもダメでしょ?」

 

そう言い、まずはとこの世界に暮らす人を探し始めるシクルとルージュ。

 

ちなみに2人が降り立った所は……少し岩肌がゴツゴツとしている土地だった。

降り立つまでに人の姿は確認していない……

 

「……人いるかなぁ?」

 

「さぁ? とりあえず探そ?」

笑みを浮かべ、ルージュを肩に乗せると捜索開始。

 

 

……それから、歩き始めて30分……

 

 

「ねぇー……シクルぅ?」

 

「……なに?」

 

「……人、いないねぇ……」

 

「……いないね」

 

 

歩きながら人を探し始め、30分……未だに誰とも会わないシクルたち……そして……

 

 

「ギュォォオオオオオオッ!!!」

 

「エドラスってどーしてこー生き物がでかいのぉおおおおお!?」

 

「知らないよぉおおおおお!!!」

 

不気味な生物に追いかけられる始末……

 

しかも……

 

 

「シクル何とかしてぇええええ!!!」

 

「アレはいやぁあああああっ!!!」

 

 

超巨大な蜘蛛の化け物に追いかけられていた。

(シクルは蜘蛛が大の苦手である)

 

 

結果、超速度で逃走劇を繰り広げるシクルとルージュ……だが……

 

ガッ!

 

小石に足を取られ……

 

「あ……っ!?」

 

ズサァ!!

 

「あうっ!」

「ぷぎゃ!」

 

シクルは転び、その反動でシクルの肩にしがみついていたルージュも落ち、顔面から地面に激突。

 

「いったた……」

 

「は、鼻打ったァ……」

 

痛みに耐えるシクルたち……

 

そして、頭上に……影が指す……

 

 

「……あ、はは……あぁ」

 

「……あ、たし……いやぁな予感がァ……」

互いに顔を見合わせ……そっと背後を振り返ると……

 

 

大きな口をいっぱいに開き、シクルとルージュを食べようとする、巨大蜘蛛の姿が目いっぱいに広がっていた。

 

 

「「きゃぁああああああっ!!?」」

 

絶叫を上げ、固まる……目を瞑り、

 

あ……おわった……

 

そう、シクルが思った、その時だった。

 

 

「掴まれっ!!!」

 

「っ!?」

 

突然響いた声に、はっと目を見開くシクル……すると、目の前から砂を巻き上げ突っ込んでくる何かと……己に伸ばされる手に気づく。

 

咄嗟に、ルージュを抱き上げその手に掴まる。

 

「っーーー!!」

 

パシッ!

 

伸ばされた手に掴まると、グンッ! と引っ張られる感覚がする。

 

「わぁ!?」

「っ……!」

 

「とっ……間一髪だったな」

 

……え?

 

 

耳元で聞こえた声に、驚き、目を見張るシクル。先程は気づかなかったが……今、目の前にいるのは……

 

 

「……ナ、ツ……?」

 

「え?」

 

「あ? ……え? お、前……」

 

 

目の前にいるのは乗り物酔いが酷い彼のはず……なのに、車を運転する見慣れた彼……

 

シクルを見て、驚いた表情を浮かべる、ナツだった。

 

 

ナツはキキィィィッ!! と九ブレーキをかけ、車を止める。

 

「きゃっ!」

 

「わぁ!」

 

ガクン! と首が揺れ、いたた……と首を抑えていると突然、目の前のナツにギュ! と抱き締められる。

 

「え!? ナ、ナツ!? ど、どうした……の?」

 

「……シクルか? 本当に……シクル、なの……か?」

 

抱き締めてくるナツは震え、その声はどこか涙声に聴こえた……。

 

「ナツ……? ……うん、そう……私は、シクルだよ」

 

どうしたの? とナツの顔を覗き込むと……

 

「え……ど、どうしたの!? ナツ……泣いて……」

 

「う……っ……! だって……だって! シクル……が、生きてた……から……あの時、王都の兵隊に捕まって……もう、ダメかと……」

 

泣きながらそう、言葉を告げるナツを見て、シクルとルージュははて? と顔を見合わせる……そして

 

「あ……」

 

「シクル?」

 

ナツの言葉……そして、ミストガンに聞いたある話を思い出す……

 

 

ーーーあちらは、もう一人の自分がいる世界……そして、こちらの人間とは少し違う……

 

 

もしかして……

 

「ナツ……ナツ、ごめんね……多分、私はナツの知ってるシクルじゃないの……」

 

「っ……えぇ? ど、どういう……」

 

シクルはここまで来た経緯をナツに話す。そして、その話を聞くとナツは……

 

 

「そ、そんな……じゃあ、君はそのもう一つの世界の……シクルなんだね……そっか」

 

しゅん……と、明らかに落ち込むナツ。

 

「あ、ご、ごめんね? ほんと……」

 

「う、ううん! 勝手に勘違いしたのは俺の方だし……大丈夫だよ」

 

ニッと笑みを浮かべるとナツはあっと声を上げ

 

「そっか、じゃあ君がさっきルーシィの言っていた……もう1人のルーシィたちの仲間なんだな?」

と、確信を持った様子で告げた。

 

「もう1人の……ルーシィって……もしかして、皆の居場所知ってるの!?」

 

「そっかぁ! ナツたちも滅竜魔導士だから無事だったんだァ! あれ? じゃ何でルーシィも?」

 

「きっとホロロギウムが助けたんじゃない?」

 

ルージュの疑問にシクルが答えると、「なるほどぉ!」と、納得するルージュ。

 

 

「うん、ルーシィに頼まれて、もう1人のルーシィたちの所へ向かう途中だったんだ」

 

ナツの言葉に、合流のチャンス、と考えたシクル。

 

「お願い! 私たちも一緒に連れて行って!」

 

「あぁ、もちろん! そのつもりさ……しっかり掴まってろよ? 飛ばすぜ」

 

ニカッとシクルの知るその笑みで、告げるナツに、あぁ……やっぱりナツだなぁと、思いながら「うんっ!」と頷くとしっかりとシートベルトをつけ、ルージュを抱きかかえる。

 

「おっけーよ!」

 

「おし……行くぜ、GO ファイヤー!!」

 

その掛け声と共に、ナツの運転する車は猛スピードで、走り出す。

 

 

あちらの世界……“アースランド” のナツたちの元へと……

 

 

「……うっ!?」

 

「え、シクル!?」

 

車が走り出し、数秒後……シクルは口元を抑え、呻く……そして、重大な問題に今更ながら、気づく……。

 

 

 

薬飲むの忘れてたぁあああああっ!!!!

 

 

「ま……う……よ、うぅう……」

 

「シクルぅー!?」

ルージュの呼びかけにも答えられず、ひたすらに吐き気に耐えるシクル。

 

 

「ま、ナ、ツゥ……と、とめ……」

 

「時間を食っちまったんだ……もっと飛ばすぜ!!」

 

「っ!? (あ……これは、おわった……)」

 

シクルの言葉も届かず……こちらのナツ(以降、エドナツ)は車の速度を上げる。

 

 

果たして……無事にシクルたちの知るナツ達とは合流出来るのか……

 

合流までにシクルは耐えられるのか……

 

 

「シクルぅ、しっかりぃー!!」

 

「む、りぃ……うぷっ! は、やくぅ……止まっでぇ」

 

 

 





はい! いやぁ……遅くなって申し訳ないです

次の投稿はまた明日になるかと……明日からはまた1日1話投稿を再開していきたいと思います!

ちなみにシクルたちがエドナツと出会った時は既にエドルーシィはエドナツへとナツたちを王都まで運ぶ指示を出した後です。

では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!

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