フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい……結局お昼の投稿となる安定ですね笑


今回はついにあの金髪君が出ます!

やっと出せた!! という感じですね……原作ではまだ登場シーンではないのですが……好きなキャラなので出ていただきます!!

では、最後までお付き合い、お願いします!!


62話 白き竜との邂逅

 

 

 

ギルダーツに呼ばれ、ギルダーツの自宅へとゆっくりと向かうシクル。

 

ルージュはギルドで留守番をすると言ったため、今は一緒にはいない。

「んー……ギルダーツ、何のようかなぁ」

 

「……着いたらわかるか」

そう呟き、ギルダーツの家へと向け足を進めるシクル。

 

そして、ギルダーツの自宅前に到着すると……

 

「やっとついたァ……方向音痴の割にはギルドから離れたところに家持ってるんだから……」

 

もっと近場にすればいいのに、と呟きながら扉をノックしようと手を出す。

 

 

「ナツおめぇ……リサーナとはどぉなんだぁ? あぁ、今はシクルだっけかぁ? がっははは、若いなぁ」

 

「……は?」

 

中から聞こえてきた会話に……ピタッとノックしようとした手を止め、はぁと深くため息をつく。

 

「地雷踏み抜くとか……荒れるな」

中から聞こえる「リサーナは死んだ」と言う、ナツの言葉を聞き再びため息を1つつき、扉を開けた。

 

 

 

「……え、なんだと?」

 

ナツの口から出た言葉に目を見開き、驚きを隠せないギルダーツ。

そこに……

 

「リサーナは、2年前……ミラの受けたS級クエストのサポートにエルフマンと行った時……テイクオーバーの魔法を使い、暴走したエルフマンの手により、死んだよ」

 

静かに入ってきたシクルの声が流れた。

その言葉にギルダーツはシクルを見つめ、顔を青ざめる。

 

「マ、マジかよ……そっか、それでミラの奴……うおぉ、スマン……スマネェ、ナツ」

 

何も事情は知らなかったとはいえナツにとって、ギルドメンバーにとっても深い傷となったであろうその出来事……

 

それを話題に出してしまったギルダーツは申し訳なさそうに苦しい表情を浮かべ、ナツに頭を下げる。

 

だが、ナツの中に湧いたその黒い感情は治まらず……

「ンだよ……そんな話なら俺は帰るぞ」

 

「ナツ!!」

 

ギルダーツに背を向けるナツの表情には苛立ちが見え隠れしており、シクルも辛そうにしている。

 

 

 

「……ナツ、シクル……仕事先でドラゴンに会った」

 

「「っ!?」」

 

ギルダーツの告げたその言葉に背を向けたナツはギルダーツを振り返り、又シクルも驚愕でギルダーツを見つめる。

 

「ナツが探してる赤い奴じゃねぇ……多分、シクルの言う奴でもねぇと思うが……

 

 

俺が見たのは、黒い竜だった」

 

 

「黒い……竜!?」

 

「ど、どこで……どこで見たんだよ?」

 

ギルダーツに問い詰めるナツの隣で目を見開き、震えるシクル……

 

 

黒い……竜……まさ、か……

 

 

 

「霊峰ゾニア……お陰で仕事は失敗しちまったよ」

 

「っ……!!」

 

「待て、ナツ……何処へ行く気だ?」

ギルダーツの話を聞き、ギルダーツの家を飛び出そうとするナツ。そんなナツを止める、ギルダーツの声。

 

「決まってんだろ!? イグニールの居場所を聞くんだ!!」

声を荒らげるナツ。だがそのナツの考えを、ギルダーツは真っ向から否定する。

 

「もういねぇよ……あいつは、あの黒竜は大陸……あるいは世界中を飛び回っている」

 

「それでも……!! 何か手掛かりがあるかもしれねぇ!!」

 

 

「ナツ……これを見ろ」

 

そう言い、ギルダーツはプチッと身体を覆っていたマントを外す……その下から露わになったのは……

 

「「っ!?」」

 

 

マントの下から現れたのは左半身がボロボロになった姿……

 

「ほとんど一瞬の出来事だった……左腕に左足……内蔵もやられた

 

お前のいうイグニールがどうかは知らねぇが……あの黒竜は間違いなく、人類の敵だ

 

 

……そして、人間は勝てない」

 

「そ……それを倒すのが滅竜魔導士だろ!?俺の魔法があれば……その黒い竜だって!」

 

「……本気でそう思うのなら、止めはしねぇよ」

 

その言葉にグッと拳を強く握り、震えるナツ……そして

 

「っ……くっそぉおおお!!!」

 

雄叫びを上げ、家を飛び出して行った。

 

 

「ナツ!!!」

 

「ハッピー」

 

飛び出して行ったナツを追おうとするハッピーをギルダーツが止める。

 

「……お前が、ナツを支えてやれ……アレは人間じゃ勝てねぇが、竜なら勝てるかもしれん」

 

ギルダーツの言葉に頷き、飛び出したナツを追いかけるハッピー……

 

 

 

「……ギルダーツ」

 

「んお?」

 

ハッピーの姿が見えなくなった頃、ここまで沈黙していたシクルが口を開き、ギルダーツの名を呼ぶ……そして、ギルダーツに近寄ると……

 

 

俯きながら、キュッとギルダーツの義手となった左腕を掴んだ。

「……どうした?」

 

「……違和感は、あったんだ……それが、なんだかは……分からなかった……」

 

でも……

 

 

「っ、おい……」

 

「ギルダーツ……生きてて、本当に……よ、かった……」

顔を上げたシクルは泣いていた……

 

「シクルお前……まさか、あの黒竜に会ったことがあるのか?」

 

「っ……」

震え、涙を流すシクルの様子に何かを感じ取ったギルダーツがそう、問いかける。

 

 

「……黒竜……多分、それは……黙示録にある黒き竜…… “アクノロギア” 」

 

「!? なん……だと、あれが……」

 

驚きに目を見開き、顔を伏せるギルダーツの視界の端でグッと拳を握りしめるシクルが映る。

 

そっと、シクルの顔を見つめると、ポンッと低い位置にあるシクルの頭に手を乗せる。

 

「ギル……」

 

「お前に何があったのか、俺はよく知らねぇけどよ……何かあったら、俺に言えよ? こんなオッサンでも色々と経験は豊富だ! 力になってやんよ」

 

がははは! と笑うギルダーツを見上げ……ふっと、笑みを浮かべるシクル。

 

 

「……ありがとう、ギルダーツ」

 

不安そうな表情は無くなった様子のシクルにほっと安心したギルダーツは手を離す。

 

「落ち着いたならお前も、早くナツを追ってやれ……あいつの気持ちが1番に分かんのはお前だろ?」

 

「うん……行ってくる!!」

 

最後に、「今度なんかお礼するねー!」と声を上げ、ギルダーツの家を出ていくシクル。

 

 

「……元気だなぁ」

 

 

 

 

ナツの匂いを辿り、足を走らせるシクル。そして……

 

 

バシャーン! という水飛沫の音が聞こえると……

 

 

「イグニール……父ちゃん、元気かなぁ」

 

「ナツぅ……」

 

 

か細いナツの呟きが聞こえた。

 

 

ナツはギルダーツの家を飛び出した勢いに任せ、全力で走っていたら足を滑らせ川に転げ落ちた様子だった。

 

 

そして、もう一つ聞こえた声……岸の上ではハッピーが瞳を揺らし、ナツを見つめる。どこかナツに声をかけるのを戸惑っている様子……

 

ふっと、シクルはハッピーの元へと歩み寄り、その小さな頭をそっと撫でる。

 

「ハッピー」

 

「シクル……」

 

「……行こ? ナツのところ!」

 

見上げたハッピーの視界に映ったのはハッピーの不安を全部消し去ってくれるような綺麗に輝く笑みを浮かべたシクル。

彼女を見つめるとハッピーは自然とにっこりと微笑み、「あいっ!!」と返事をし、ナツの元へと向かった。

 

シクルとハッピーは未だ川に体を沈め、倒れるナツを見下ろす。

 

「ハッピー……シクル」

 

「ナツー、何やってるのー?」

 

「ナツ、風邪ひいちゃうよ?」

 

ほら、帰ろ? と、ナツに手を差し出したシクルの小さな手を見つめ……ナツは数度瞬きをするとにっと笑みを浮かべ、「おう!!」と答え、シクルの手を握る。

 

 

 

暖かな日差しがマグノリアを照らす中、2人と1匹は仲良く、ギルドへと帰っていった。

 

 

 

そして……ギルダーツ帰還から、数日後

 

 

「はぁー、疲れたぁー……」

 

もー暫く仕事行かなーい……と、ぐったりと呟き歩くシクルを苦笑を浮かべ見つめるルージュ。

 

 

「ついこの間まで休んでたでしょぉ? あんまりサボってると金欠になっちゃうよぉ」

 

「大丈夫大丈夫! 評議院からがっぽり受け取った報酬金がまだ残ってるから!」

 

何を言っても仕事を休むという意志の変わらないシクルにはぁと、諦めのため息をつくルージュ。

 

 

「ん……?」

 

マグノリアへと帰る道すがら、ふと、騒がしい人集り……というより、小さな子供たちが一箇所に集まっている光景がシクルの目に入り込んだ。

 

「何あれ……?」

 

「んぇ? ……喧嘩かなぁ?」

 

止める? と聞いてくるルージュをチラリと見つめ、ふぅと一息つくと……

 

「うーん……早く戻って休みたいし……大丈夫でしょ」

と、答えると踵を返し、足を1歩前へと踏み出した……

 

 

 

 

「スティング君っ!!」

 

 

 

 

「っ!」

 

子供たちの集団の中から聞こえた悲しい叫び声、その声の発した名前が耳に入ると、はっと子供たちの方を振り返るシクル。

 

そして、集団の中央に目を凝らす……そこには……

 

「くそっ……レクターを離せよっ!」

 

「ふんっ! 返して欲しけりゃ、この間のこと謝れよ!」

 

「ばぁさん虐めてた奴に誰が頭下げるかよ!」

 

「うっせぇ!」

 

 

がっ!

 

「ぐっ! くっそ……」

 

「ほら、早く謝んねぇとこの猫が死ぬぞぉ?」

 

「や、やめろ!!」

 

金色のつんつん頭の男の子が口の端から血を流し、周りを囲む相手を睨みあげる姿……

 

その周りを囲む子供たちの1人が茶色い子猫を抱え、つんつん頭の男の子を脅していた……。

 

 

そして……1人の子供が捕まっている子猫に木の棒の様なものを振り上げる。

 

 

 

「やめ……レクターっ!!」

 

「っ!!」

 

ギュッと目を瞑る茶毛の子猫……

 

 

 

 

「はい、ストーーーップ」

 

パシッーーー

 

「え……」

 

「は?」

 

「だ、誰だお前!?」

 

 

突然割り込んできたシクルに目を見開く子供たち。それはつんつん頭の男の子と子猫も同じで、目を見開き、突然の登場に驚いていた。

 

そして、シクルの登場と同時に捕まっていた子猫はルージュが助け出した。

 

「大丈夫ぅ?」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

「ダメでしょー? 動物虐待だよ、それ……」

 

チラッとルージュの方を振り返ってから子供たちを見下ろし、にっこりと微笑むシクル。

 

「な、何だよ……よそもんが口出すなよ!!」

 

「よそもんでも見過ごせない時があるでしょー? 集団リンチなんてかっこ悪いよー?」

 

ケラケラと笑いながら宥めるシクルの口調が癪に障った様子の子供が……今度は鉄パイプを握り、シクルに振り上げる。

 

 

「黙れクソババァ!!」

 

 

「……ア?」

 

 

パシッ……グギャッ!!

 

 

「…………え」

 

 

鉄パイプを振り上げた子供は目を見開き、目の前の光景に驚愕した……何故なら……

 

 

女性の握力で、それも片手……それだけで鉄パイプがあらぬ方向にひしゃげたからだった……

 

そして……ヒュォ、とシクルから殺気が漏れる。

 

「「「ひぃっ!?」」」

 

 

「糞ガキ共……誰が、ババァだって? ん?

 

あたしの事かなぁ……? ふざけんな……これでもまだまだピッチピチの17歳じゃくそがぁああああっ!!!」

 

 

がぁああああっ!!! と吠えるシクルに……ガクガクと体を震わせる子供たち……そして

 

「「「ご……ごめんなさーい!!!」」」

 

あまりの恐怖に、走り去っていった。

 

 

「あいやぁー……ご愁傷様だねぇ、あれはぁ……(シクルにババァ呼びはいけないね……うん)」

 

見えなくなった子供たちに少し同情の心を向けるルージュ。

 

「あ、あの……!」

 

「んぇ? なぁに?」

 

不意に、ルージュが助け出した子猫が声をかけてきた。

 

「ぼ、僕……レクターって言います!!

さっきはどうもありがとうございます!!」

 

頭を勢いよく下げる目の前の子猫、レクターを見下ろし……にっと微笑むルージュ。

 

 

「どういたしましてぇ!! あたしはルージュだよぉ!」

 

 

仲良くなった様子のルージュとレクターの姿にふっと笑みを浮かべると、ふぅとため息をつき、つんつん頭の男の子を振り返る。

 

シクルが振り返ると男の子はビクッと肩を揺らす。

 

「な、何だよ……俺は悪いことしてないぞ!?」

先程までのシクルの様子に怒られるか……そう感じ、身構える男の子……そして、シクルはゆっくりと男の子に近づくと……

 

そっと腰を下ろし、男の子と目線を合わせる。

 

 

 

 

 

「……スティング」

 

「……え?」

 

まだ名乗っていないはずなのに名前を知っているシクルに戸惑うスティングと呼ばれた男の子。

 

そして……

 

 

「スティング……白竜のスティング……

 

 

……バイスロギア」

 

 

「っ!?」

 

 

 

月竜と小さき白竜との出会い……それは今後、どのようなことを巻き起こすのか……そして……

 

 

 

 

「ついに……ついに時が来た……明日……

 

アニマ計画……を実行する……」

 

もうすぐだ……もうすぐ、永遠の魔力が!!

 

 





はい! 如何だったでしょうか……恐らく次回の前半は白竜ちゃんとの話が続き、後半で原作に戻りたいと思います!

では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!

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