はい!今回からエドラス篇!! 参りたいと思います!(まだエドラスまでは少し先なのですが……)
と言うか、完全にギルダーツの登場場面吹っ飛ばしていました。
ほんとは例の白き竜を出そうと思っていたのですが次回で……
では、61話最後までお付き合い、お願いします!
61話 もう1人の最強、帰還
虹の桜、花見の日から2週間……
今回、ナツとの出来事もあり1週間で回復したシクル、既に通常運行に戻り、ギルドでのんびりと、時折ナツたちの依頼に着いていくを繰り返していた。
そして今は一時の休息でミラの作ったご飯を食べ、過ごしていた。
「ふぁー! 美味しい!!」
頬に手を添え、身体をくねらせながらその美味さを全身で表すルーシィ。
「ほんと、美味しいです! ね、シャルル!」
隣でご飯を食べ進めるシャルルに声をかけながらにっこりと言うウェンディ。
「まぁ、なかなかね」
美味しいと感じるも変なプライドで素直には言わないシャルル。
そんな彼女たちの様子に頬を少し赤らめながら笑うミラ。
「ウフフ、ありがとう」
「んー! やっぱりミラのご飯は美味しいなぁ!」
最高! と笑みを浮かべ告げるシクル。
「もぉ……そんなこと言って、シクルの方が私より料理上手なのに……」
苦笑を浮かべながら、洗い終わった食器を棚に戻すミラ。
「それにしても、よく寝るねぇ……」
ちょいちょいと、ルージュがシクルの隣に腰掛け眠るナツのその桜色の髪を引っ張りながらクスクスと笑い、言う。
ナツの隣ではハッピーも眠っていた。
「ルージュ、そんなにやったらナツが起きるよ?」
苦笑を浮かべ、ルージュを止めるシクル。
チラッと眠るナツに視線をやる。
「……はぁ(……好き、かぁ)」
あの夜以降、ナツとの関係に進展はない。このままでいいのか……シクルは悩んでいた。
「……いい訳、ない……よね(ナツも待っててくれてるけど……ずっと待たせるわけにはいかないよね)」
早めに整理をつけよう……そう、そっと心に決めたシクル。
ふと、最近ギルドに来てから1ヶ月ほど経つウェンディとシャルルに視線をやる。
「ウェンディたちも、だいぶこのギルドに慣れてきたみたいね」
「はい! 皆さん優しいので……色々教わっています!」
「女子寮がある所もいいわね、気に入ったわ」
ウェンディとシャルルの言葉に「良かった」と微笑むミラ。
「そういえば、どうしてルーシィさんは寮じゃないんですか?」
ウェンディがきょとん、と首を傾げ問うと……
「あー……あたし、女子寮の存在って最近知ったのよ……てか、寮の家賃って10万Jなのよね……」
ルーシィは深く溜息をつき、苦笑を浮かべる。
「もし入ってたら払えなかったわ……そうなったら今頃……」
恐怖で震えるルーシィをウェンディたちは苦笑を浮かべ見つめた。
そんな中、ふと食事に夢中なシクルを見て
「そういえば、シクルもあの寮で住んでないわよね?」
と、シャルルが問いかけた。
「んぇ? あー、うん……」
シクルは食事を中断しシャルルの方を振り返る。
「私の場合は寮より森での生活の方が好きだったから……それに自分で建てた家ならローンとか気にせず暮らせるでしょ?」
だから寮に住んでないのと、告げるシクルを見つめ唖然とするルーシィたち。
「ローンをいちいち気にするの面倒くさがりそうだもんねぇ、シクルはぁ」
「えー? そー見えるかなぁ……そんなことないよ?」
ルージュとケラケラと笑いながら話をするシクルにはっと我に返るルーシィが声を上げる。
「……て、シクルってあの家自分で建てたの!? 1人で!?」
「まっさかー、ちゃんと人手使ったよ? あ、あれは星霊手かな?」
タウロスの力とか借りたしねーと、言うシクルにふと、星霊の事で聞きたいことを思い出すルーシィ。
「そういえば、どうしてシクルは星霊が呼べるの?」
「ん? あー、それね……んー……私もよく分からないんだけど……セレーネが星霊王と友人だったというか……」
「セレーネって……シクルさんに魔法を教えた竜ですか?」
ウェンディの質問にコクンと頷くシクル。
「そーそー、本名はセレーネソフィアなんだけど、彼女からセレーネでいいって言ってたからそう呼んでるの」
少し話がずれたね、と呟き再び語り出すシクル。
「セレーネは竜であり、別名“月の女神”とも呼ばれていた……月と星……だからかな?
星霊王との相性が良かったのは……セレーネの歌う声に星霊王が魅了されて、その歌声を受け継いだ私に特別な紋章をくれたの……
それがあの星霊の鍵なしに星霊を呼べたり、星霊界へ還したりする力よ
ちなみに私の歌魔法も滅竜魔法とは別に、セレーネから教わった魔法なの」
シクルの語ったその話にへぇ……と興味津々のルーシィたち。
「へぇ、シクルの歌魔法って竜から教わったんだ……」
「あ、竜と言えば……シクルさん、前にグランディーネの事を教えてくれると……」
ウェンディからの言葉にあっと今思い出したかのように声を漏らすシクル。
「あー、そういえばそうだった……んー、まずはグランディーネの居場所を1番聞きたいんだろうけど……」
シクルの呟きにコクコクと頷くウェンディ。
そんなウェンディに苦笑を浮かべ、申し訳なさそうにシクルは告げる。
「ごめんね? グランディーネとは昔会ったこともあるし、知り合いではあるんだけど……今何処にいるかは分からないんだ……」
「そう、です……か」
シクルの言葉にしゅん……と、落ち込むウェンディ。
「あわわわ……ご、ごめんね? ほんと……」
頭を下げ、謝るシクルに首を振り、微笑むウェンディ。
「大丈夫ですよ! シクルさんは悪くありませんから」
と、言ったウェンディの笑みを見て可愛いなぁと、心の奥で感じるシクル。
グランディーネの話が途切れ、この後何をしようか、と話をしようとした時だ……
バーンッ!! と、大きな音を立てギルドの扉が開く。そして……
「「た……大変だぁー!!!」」
ウォーレンとマックスの声がギルド中に響き渡る。
なんだなんだと、ギルドメンバー全員がそちらに顔を向ける。
シクルたちも、同様にそちらへと顔を向けた。
すると……突然、
ゴーン ゴゴーン
と、鐘の音がマグノリア全体に響き渡った。
「……何?」
「鐘の音?」
「何よこれ?」
最近入ったばかりのルーシィ、ウェンディとシャルルはその音の意味が分からず首を傾げるも……他のメンバーはその音の正体が分かったようで……
鐘の音で眠りこけていたナツとハッピーも目が覚める。
「おい、この鳴らし方って……」
「あい!!」
「まさか……」
「あいつか!?」
「おぉ! ついに帰ってきたか!!」
ギルド全体がざわつく……その理由は……
「ギルダーツが帰ってきたぁー!!」
「あいさー!!」
「「「「「ギルダーツだぁ!!!」」」」」
最強の帰還ーーー。
「……ギルダーツ、さん?」
「誰なの?」
「あたしも会ったことないわ」
唯一名前が出ても首を傾げるルーシィたちに、フフフと笑いながらミラが説明を始めた。
「ギルダーツは、妖精の尻尾最強の魔導士なのよ……あ、シクルを除けばかしらね?」
「ちょっとなんでそうなるのさ……」
ミラの説明にいちゃもん付けるシクルだったが……
「だってシクル、ギルダーツに負けたことないでしょ?」
と、ルージュの言葉に嘘偽りはなく……
「そうだけど……」
と、肯定するしかなかった。
「て、シクルを抜いたら最強って……まさか、エルザよりも強いの!?」
ルーシィの投げかけに、2階から降りてきたエルザは笑みを浮かべ、あぁと頷いた。
「私など、足元にも及ばんさ」
「ど、どんだけやばい人なのよ……」
カタカタと震えるルーシィ。
はぁ、とため息をつき未だ興奮の冷めないギルドメンバーを見て呆れた表情を浮かべるシャルル。
「どうでもいいけど、この騒ぎようは何よ……」
「お祭りみたいだね、シャルル!」
にっこりと楽しげに騒ぐギルドを見つめるウェンディ。
「本当、騒がしいギルドね」
ウェンディとシャルルの会話にクスクスと笑うミラ。
「みんなが騒ぐのも無理ないわ……3年久りだもの、帰ってくるの」
「3年!? 3年も何してたんですか?」
ミラの言葉に目を見開き驚くルーシィ。
「ルーシィたちは、S級クエストの上にSS級クエストがあることは知ってるわね?」
ミラからの質問にコクリと頷くルーシィたち。
「その上に10年クエストって言うのがあるの」
「……10年クエスト?」
「10年間誰も達成したことのないクエストの事だよぉ」
シクルの頭に飛び乗り、口を開くルージュのその言葉に……
「10年間誰も!?」
「そんなすごいクエストがあるんですか!?」
と、驚くルーシィとウェンディ。
純粋な反応をする2人を見てクスクスと笑うシクルたち。
「そして、ギルダーツはその更に上に100年クエストに行っていた」
と、エルザが告げると……
「100年って……まさか」
僅かに呆然とした様子で問いかけるルーシィに……ふっと笑みを浮かべ答えるのは……
「100年間、誰も達成したことのないクエストの事だよ」
と、シクルが告げた。
「「えぇ!?」」
そんなすごい人がいるなんて! と驚きを隠せないルーシィたちに……
「でも、100年クエストに行ったことのある人なら目の前にいるじゃない」
と、ミラが爆弾発言をした。
「……え」
「ちょ、ミラ……それは言わなくても」
唖然とするルーシィの隣で深いため息をつくシクル。
「ま、まさか……シクルも100年クエスト経験者!?」
ルーシィからの問い詰めに……あーと苦笑を浮べるシクル。
「まぁ……確かにそうだけど」
頷くシクルに凄まじいわ……と、呟くルーシィ。
そこに……
『マグノリアをギルダーツシフトに移行します!町民の皆さん、速やかに所定の位置へ!!』
マグノリア全体に流れるアナウンス。
「な、なになに!?」
「今度は何が始まるんですか!?」
「人1人帰ってくるだけで大げさじゃないの……?」
「まぁまぁ、とりあえず外見てみなよ? 面白いのが見れるよ」
クスリと笑うシクルに首を傾げながらも、外へと出るルーシィたち……すると……
パッカリと、街が二つに割れた。
「えぇえええええっ!?」
「ま、街が割れちゃいましたよ!?」
あわあわと狼狽える2人を笑いながら見つめるシクルとエルザ。
「ギルダーツは“クラッシュ”と言う魔法を使う……クラッシュとは触れたものを粉々にしてしまうすごい魔法なのだが……」
「ギルダーツは極度の方向音痴で……しかもぼぉっとしてると民家の壁をクラッシュで壊して歩く癖があるから……」
「どんだけ馬鹿なの!? てか、それだけのために街を改造したの!?」
ルーシィからの質問にコクコクと頷くシクルたち。
「すごいねー! シャルル!!」
「ええ……すごいバカね」
目を輝かせるウェンディと呆れてものも言えないシャルル……
そして、2つに割れた街の果てからギルドへと歩み寄る1つの影……
「来たァ!!」
「あい!!」
飛び跳ね声を上げるナツとハッピー。
しぃんと、その人がギルドに着くのを待つ一同……そして……
「ふぅ……」
深いため息をつく赤茶毛の男……彼こそ、今100年クエストから帰還した、妖精の尻尾最強の1人、SS級の資格を持つ“ギルダーツ”だ。
ギルダーツはカウンターにいるミラに近づくと……
「お嬢さん、この辺に確か妖精の尻尾ってギルドがあったはずなんだが……」
そう、訊ねた。
ギルダーツの言葉にポカーンとする一同。
そして……
「ウフフ、妖精の尻尾はここよ? それに私はミラジェーンよ」
にっこりと微笑むミラを見下ろしぱちくりと瞬きをするギルダーツ。
「な、なにぃ!? お、おま……ミラなのか? 随分変わったな!! てか、ギルド新しくなったのか!」
「外見で分からないんだ……」
「それがギルダーツですぅ」
「ギルダーツっ!!!!」
がぁ! と上がるナツの叫び声。
「おぉ! ナツか! 久しぶりだなぁ!」
ニカッと笑うギルダーツに飛びかかるナツ……
「俺と勝負しろォ、ギルダーツ!!」
その姿に、あっとシクルが思った時は時既に遅く……飛びかかった次の瞬間には……
ダァン!
「また今度な」
ナツはギルダーツの軽い一振りでギルドの天上に投げ飛ばされた。
「えぇええ!? あのナツが一撃で!?」
「流石にギルダーツは無理だってナツ……」
はははっと空笑いをするシクル……ふと、ギルダーツと目が合う。
「……シクルか?」
「うん、そーだよ? おかえり、ギルダーツ」
ギルダーツからの投げかけににっこりと微笑み答えたシクル。
そんな2人を見て……
「や、やべぇ!」
「おい、みんな離れろ!!」
「巻き添えくらうぞぉ!!」
「ぎゃぁああ、あれは恐怖だァ!」
ギルドメンバーが一斉にギルドの奥へと逃げる。ウェンディとシャルルもミラとハッピーに連れられ逃げる。
「え? 何? なんなの」
……ルーシィを置いて……
「ルーシィ! 早くこっちに来い!!」
エルザの呼びかけにはて? と首を傾げるルーシィ……すると
「元気だったか? シクル……」
「もちろん、元気よ……ギルダーツも、相変わらずだね……」
にっこりと微笑みながら近づく2人……そして
……ダンッ! と、強く足を踏み鳴らし、同時に駆け出すと……
ドッッッッッーーーー!!!!!
「ぎゃあああああああああっ!!?」
ギルダーツとシクルの拳がぶつかりあった衝撃波でものすごい爆風と爆音が轟き、逃げ遅れたルーシィも吹っ飛んだ。
「はっはぁ! 相変わらず女らしからぬ力だなぁ!!」
「そういうそっちはバケモノ並みの力じゃないの……よ!」
2人のぶつかり合う蹴りの風圧で一部の壁が吹き飛ぶ……
「ひぃいいいい! ギルドが壊れるぅ!!」
誰かの悲鳴が響いた時……
「止めんか糞ガキ共ぉおおおおおおおおおお!!!!!」
「「あ」」
マカロフの怒声でやっと事態に気づいたシクルとギルダーツ……
「またギルドを壊す気かバカタレ共!!」
「もう半分以上壊されてるよ……」
怒れるマカロフを前に……
「わりぃわりぃ」
「ごめーん、マスター……やっちゃった」
ケラケラと笑うシクルとギルダーツ。
相変わらずの2人にため息をつくマカロフ……
「はぁ……それより、ギルダーツ……仕事の方はどうじゃった?」
マカロフの問いかけを聞くとピタッとギルダーツは1度笑うのを止める……そして
「がっはははっ!!」
と、再び笑い出す。
その様子を見てマカロフとシクルの表情がやや険しくなる……。
「……ダメだ、俺には無理だわ」
「「「「「なにぃいいい!?」」」」」
「ギルダーツが……」
「依頼……失敗?」
「そうか……主でもダメか」
ふぅと肩を落とすマカロフ。
「悪かったな……ギルドの名を汚しちまって」
「いや、無事に帰ってきただけで良いわ……わしの知る限り、このクエストから帰ってきたのは主が初めてじゃ」
ようやった、と褒めるマカロフ。
「シクルなら行けるかも知れねーな」
がははっ! と笑い、言うギルダーツに不満の表情を向けるシクル。
「じょーだん! 私が行くわけないでしょ……」
「はは! そらそーだ……はぁー……疲れた疲れた……俺ァ、休みてぇから帰るわ」
そう言い、ギルドメンバーに背を向け、扉へと歩いていくギルダーツ……すると
「お、そーだ……ナツー、後でちょっと俺ん家来い……あぁ、シクルもな」
「え? あー……わかった」
ギルダーツの言葉に首を傾げるシクルと……
「土産かっ!?」
と、興奮するナツ。
「おー、土産だ土産ー」
と、手を振り去っていくギルダーツ……
ギルドの壁を破壊し……
「ギルド壊すなよ!?」
「扉から帰れよっ!?」
ギャアギャアと飛び交う言葉……
「よっしゃー! 俺達も行くぞハッピー!!」
「あいー!!」
うぉおおおっ! と叫びギルダーツを真似、壁を壊し飛び出していくナツ。
「あんたも壁壊すなぁ!!」
ルーシィの怒声が響くもナツは既におらず……
「はぁ……まぁ、壁は後で二人に直させるとして……私も行くね」
「あ、うん」
じゃっと手を振りギルドを出ていくシクル。
「あ、ルージュは……」
「あたしは此処で待ってるよぉ」
「分かった、後で迎えに来るね」
手を振り、いってらっしゃぁい! というルージュに手を振り返しギルドを出る。
「話ってなんだろ……(それに……さっき感じた違和感……もしかして)」
ぼぉっと、空を見上げながらふと、先程感じた違和感の正体を考えながら、ギルダーツの家へと向かい、歩き出す。
ギルダーツから語られる話とは……
そして、今……平和になった妖精の尻尾にまた新たな、事件が巻き起ころうとしていた……。
はい!! 一度書いた文を全部消して作成したので所々矛盾や誤字があるかもしれません!!
見つけた際はご報告お願いします!!
では、次回は今日の夜出来るかな?と思います!遅くとも明日!
最後までお付き合い、ありがとうございます!