はい!今回と次回で一応オリジナルストーリーとなる、日常篇は終わりにしたいと現段階では考えております。
文字数などによってはまた変わるかも知れませんがその際はまたお知らせします!
では、59話最後までお付き合い、お願いします!
リゾートを満喫し、妖精の尻尾に帰還してから数日後……最強チームの面々はシクルとルージュを除き、ウェンディとシャルルを加えたメンバーでハコベ山にある依頼で来ていた。
「開け! 時計座の扉 ホロロギウム!!」
リンゴーンと音を鳴らし、現れるルーシィの星霊。
ホロロギウムが現れるとすぐさまその中へと入り冷えた体を抱えるルーシィ。
「『ひぃいい!! あたしってばまたこんな薄着でこんなところ来ちゃったー!! 寒すぎるぅ!!』と、申しております」
「お前ほんと何しに来たんだよ」
前回ハコベ山に来た時と何ら変わらないルーシィをジト目で見るナツ。
「それにしてもほんとに寒いですね……」
ナツたちの歩く少し後ろの方で手を擦りながら寒さを堪えるウェンディ。
その横ではシャルルが「だらしないわねぇ」と、苦言していた。
「『ウェンディもこっちへ来たら……? 風邪ひいちゃうよ』と、申しております」
ホロロギウムの中で、ちょいちょいとウェンディを手招きするルーシィ。
「そうですか……? じゃあ、お言葉に甘えて……シャルルは?」
隣を飛ぶシャルルに声をかけるも「問題ないわ」と、拒否をした為、ウェンディだけがホロロギウムの中へ入っていった。
「わぁ、暖かーい!」
ホロロギウムの中が思ったよりも暖かく、微笑むウェンディ。
「腹減ったなぁー」
「あいー……」
ぐでーと歩き、腹を鳴らすナツ。その隣ではハッピーもお腹を鳴らしている。
「くっそ……こう雪が積もってっと歩きにくいな……」
「その前にお前は服着ろ服を!!」
「うぉ!? いつの間に!」
ナツの指摘に、やっと服を着ていないことに気がついたグレイ。
「ねぇ、ナツー? ほんとにこんな所にそんな便利な薬草なんてあるのかなぁ?」
飛ぶのが疲れたのか、ナツの頭に乗り、聞いてくるハッピー。
ナツは首を傾げ口を開く。
「さぁな? けど、依頼にそう書いてあったんだし、あんだろ?」
「だってさぁ……お茶に煎じて飲んだり、ケーキに練りこんで食べれば、魔導士の魔力を一時的にパワーアップするなんて、オイラは眉唾ものだ思うんだよねぇ……
ほら、うまい “魚” には毒があるって言うでしょう?」
「それをいうなら、うまい “話” には裏がある、だ」
ハッピーの言葉に冷静にツッコミを入れたエルザに目を見開き驚くハッピー。
「わあ! エルザに突っ込まれた!!」
「効果はともあれ、依頼はこの山の薬草の採取だ……ついでに、多めに採れたら明日のビンゴの景品にしよう、皆喜ぶぞ」
「おぉおい、薬草! いたら返事しろぉ!!」
声を荒らげ、返事もない薬草を呼ぶナツ。
「するかよ、バーカ」
そんなナツにいつもの調子で軽口をふっかけるグレイ。
「んだとコラァー!!」
そしてグレイの言葉にのっかり、いつも通り喧嘩が始まる2人。
そんな2人の喧嘩は、エルザの「やめんかっ!」という喝でピタリと止まるのだった。
「はぁ……、早く仕事終わらせて帰りたいなぁ……明日のお花見の準備したいのに!」
もう! と膨れっ面になるルーシィ。そんな彼女の隣でにっこりと笑みを浮かべるウェンディ。
「私もすごい楽しみです!」
「シクルがいれば薬草なんてすぐに見つかるのにねぇ」
「あぁ、あいつの薬草を嗅ぎ分ける嗅覚は凄まじいからな」
ハッピーとエルザの何気ないその会話に、ふと疑問を抱くルーシィ……。
「『そういえば……どうして今回、シクルは一緒じゃないの? ルージュも来てないし……』と、申しております」
ルーシィのその言葉に一同はしぃんと、静まり返る。その様子に、ルーシィはえ? と困惑する。
「『ど、どうしたんですか……皆さん?』と、申しております」
ウェンディからのその問いかけにはぁ、とため息をつき顔を上げるのはエルザ。
「シクルは、この時期……虹の桜の咲くこの時期は、家から1歩も出てこないのだ」
「……え」
「その年のシクルの調子にもよるけどなぁ……短けりゃ1週間……長ければ1ヶ月は外に姿を現さねぇよ」
エルザの言葉に続いたグレイの言葉にルーシィ、ウェンディとシャルルは目を見開く。
「1ヶ月!?」
「そ、そんなに長い期間、何をしているんですか……?」
(ホロロギウムは時間が終了し、星霊界へと帰っている)
「……この時期は、あいつにとって……全てが変わったんだとよ」
それだけ呟き、グレイは口を開かなくなり、ナツたちも何かを言おうとはしなかった。
そんな様子にルーシィやウェンディたちも深くは聞かなかった。
ナツたちがハコベ山に出向いていた頃、
シクル宅にてーーー
自室に備え付けてある椅子に腰掛け、何もせず、ただ……その虚無の瞳で窓の外をぼぉっと、眺めているシクル。
コンコンッーーー
「……シクル?」
「……ルージュ? どうしたの?」
扉の向こうからする、ルージュの呼びかけに、シクルはふっと、扉の方へと顔を向ける。
「……ご飯、持ってきたんだぁ……少し食べ「いらない、ルージュが食べていいよ」……シクル」
ルージュの言葉を遮りそう告げたシクル……
ルージュは悲しげに瞳を揺らす。
「シクル……わ、分かったよぉ……じゃあ、ここ……置いておくから……お腹すいたら、食べてねぇ?」
じゃあ……と、呟き扉の前から去っていくルージュのその気配を感じ、シクルははぁとため息をつき、目を瞑る。
「……ダメだな……ごめんね、ルージュ……」
寂しげに去っていったであろうルージュを考え、顔を歪ませるシクル。
そんな彼女の視界の隅に、ひらりと舞う桜の花びらが……
「虹の桜……あぁ、もう……そんな時期なんだ……」
……この時期は……全てが変わった……最悪な時期……
この時期だけは…………落ち着かない
ふぅと、ため息をつき再び、虚無の瞳で窓の外を眺めるシクル。
場面戻り、ナツたちの方では……
丁度ナツの嗅覚が薬草の匂いを察知したところであった。
「相変わらず、すごい鼻だね」
流石ナツ! と、嬉しそうにするハッピー。
「てかあんた、その薬草の匂い嗅いだことあるの?」
ふと疑問を持ったルーシィが首を傾げ聞くとナツはいあ、と首横に振った。
「嗅いだことはねぇけど、なんかそれっぽい匂いがするから多分そーだと思う!」
「多分かよ」
「でも、確かに薬草のような匂いがしますよ」
ナツの言葉に同意する、ウェンディ。
「よっしゃあ! 行くぞハッピー!」
「あいさー!!」
その大声と共にナツは全速力で走り出し、ハッピーもその後を追い疲れはどこへやら、飛んでいった。
「ちょ、ちょっとナツ!?」
「あんのせっかち野郎!」
駆け出したナツとハッピーを追い、ルーシィとグレイも走り出す。
「……気のせいかしら? すごぉく嫌な予感がする……」
走り去るナツたちを見つめ、険しい表情で告げるシャルルの言葉にウェンディは苦笑を浮かべる。
「シャルルの予感はよく当たるからね……」
この会話の数分後、薬草を見つけたはいいものの、ワイバーンが現れ、撃退する際の余波で雪崩が発生……ナツやグレイ、ウェンディたちは間一髪逃れるも……
「あれ? ルーシィさんは?」
「そういやぁ……」
「「「あ」」」
ルーシィだけが雪崩を回避できず……
「さ……さ……寒、い」
雪に埋もれ、震えていた……。
翌日ーーー妖精の尻尾恒例 花見の日
「さぁ皆、どんどん食べてね!」
ご馳走をレジャーシートに広げ、告げるミラ。
「これは私のだからね!」
と、言いグビグビと樽ごと酒を飲むカナ。
「樽ごと持って来たんか!」
「誰も取りゃあしねぇっての」
そんなカナを見て、苦笑を浮かべる男達。
「花見は……漢だぁー!!」
「意味分かんないよ」
「漢」を大声でいつも通り叫ぶエルフマンに苦笑を浮かべる一部のメンバー。
「レビィ、何食べる?」
「レビィ、何飲む?」
「わ、私……そんなにいらないよ?」
ジェットとドロイの持ってくる食べ物や飲み物を見てやんわりと断るレビィ。
ワイワイと賑わうメンバーたちの中で……ナツたちは……
「ゴホッゴホッ……」
「ルーシィ、大丈夫ー?」
咳をするルーシィを心配そうに見つめるハッピー。
「やっぱりお家でゆっくり休んでいた方が……」
ウェンディがルーシィの背をさすりながら声をかける。
「だ、大丈夫よ! 咳がちょっとあるだけで熱とかはないの!」
にっこりと笑みを浮かべ、そう告げるルーシィ。
「それに、今朝ルージュが家に来てね?」
「……ルージュが?」
うん、と頷きルーシィは今朝あったことを話し出す。
「はぁ……体重いぃ……これじゃあ花見行けないかなぁ……」
ルーシィの体温を示す温度計は37.8℃をしめしており、この後も熱が上がりそうな状態だった。
はぁと再びため息をつき、花見を諦めよう……そう思った時だった。
コンコンッ
窓を叩く音がする。
「ん? 誰かしら……」
首を傾げ、カーテンを恐る恐るあけると……
「っ! ルージュ?」
窓の外には小さな小包を持ったルージュが手を元気に振っていた。
ルーシィは慌てて、窓を開けるとルージュを中へと招き入れる。
「どうしたの? こんな朝早くに……」
「あのねぇ、ハッピーからルーシィが風邪引いたって聞いてねぇ? これ、シクルから渡してきてって頼まれたんだァ」
そう言い、ルーシィに差し出す小包の袋。
「……これは?」
「それはねぇ、シクル特製の風邪薬だよぉ」
「シクルの!?」
ルージュのその言葉に驚き、小包を開けると2粒の薬が入っており、メッセージカードが添えられていた。
そこには……
“ルーシィへ
今日花見でしょ? これ、1日だけ風邪を強制的に軽くさせる薬。
ただ、これを飲んだ次の日はその副作用で熱とか上がっちゃうんだけど……効果は保証するから、もし良かったら……飲んで?
シクルより”
と、書いてあった。
「わぁ! ありがとうルージュ! シクルにもそう伝えておいて?」
笑顔でルージュにそう言うルーシィ。
「どういたしましてぇ! じゃあ、あたしはシクルが気になるから……帰るねぇ」
ルージュはそう言うと、ルーシィの家を飛び立ち、シクルと住む家へと帰っていった。
そして、薬を飲み現在に至るという。
「へぇ……シクルさんって、お薬も自分で作れるんですね!」
すごいなぁと呟くウェンディ。
「昔の知り合いに作り方を教わったそうだ……簡単な薬ならすぐに作れるようにといつも薬草を持ち歩いているんだぞ?」
エルザの言葉にへぇと、知らなかったルーシィやウェンディは頷く。
そして会話が途絶えたその時……
「それではこれより、お花見好例のビンゴ大会を始めまーす!」
ミラの一声が響き……
「「「「「「「ビンゴー!!」」」」」」」
メンバー全員の掛け声がその場に轟いた。
「にょっほっほっほい!! 今年も豪華な景品が盛りだくさんじゃ! 皆、気合い入れて掛ってこい!!」
「「「「「「うおぉぉぉぉぉ!!」」」」」
マカロフの一声でさらに賑わうメンバーたち。
そして、妖精の尻尾恒例の、ビンゴ大会がスタートする。
そして、ビンゴ大会が始まり数分後……
「ビンゴだァー!!」
「「「うそぉ!?」」」
「エルザすごぉい!」
一番最初にビンゴが当たったのはエルザだった。
だが、景品は昨日ナツたちと共に持って帰ってきた薬草で、しかも枯れてしまっていた……。
「ううぅ、そんな……私の、ビンゴが……」
泣き崩れるエルザ……
「ド、ドンマイエルザ……」
「ファイト……」
そんなエルザを慰めるルーシィとレビィの姿があった。
そして、この後ワカバもビンゴを当て、段々とビンゴが当たるメンバーが増えてくる中で……
「125番!」
ミラの告げた番号……
「んぉ? 当たったぞぉー!!」
「「「「「なにぃいいいいっ!?」」」」」
「すごぉおい!! 流石ナツです!!」
ナッハハハッ!! と高笑いをし、喜び跳ねるのはナツだった。
「おめでとう、ナツ!」
「おう!! んで? 景品は何だ?」
ワクワクとミラに迫るナツ。
はいはい、と苦笑を浮かべ、ミラがナツに渡したのは……
「……んだ、これ?」
赤と青の宝石が一つずつ埋め込まれたペンダントだった。
「それはね、想いのペンダントって言うまぁ……大切な人を想う気持ちを表したペンダントってところかしらね」
ミラの説明にへぇとペンダントを見下ろすナツ……。
……大切な……人、か……
その後、ビンゴ大会は大きなトラブルも無く、滞りなく終わり、最後のメインイベント、 “虹の桜” の鑑賞が始まった。
「わぁ!!」
「きれぇ!!」
「ほんとに虹色なのね……」
初めて見るその虹の桜にルーシィやウェンディ、シャルルは感動の声を上げる。
そして他のメンバーも虹色に輝くその桜を見つめ声を上げていると……
「そーだ!! ハッピー!!!」
と、突然ナツが大きな声を上げた。
「あい?」
ナツは隣にいたハッピーを呼び、ニカッ! と笑みを浮かべると……
「これ……シクルへのプレゼントにしよーぜ!!」
と、告げた。
その言葉にハッピーは少し目を見開き……
「え? 今から行くの?」
と、ナツに問うと「おう!!」と答えた。
そして、少しナツを見つめ……、にっこりと笑みを浮かべるとハッピーも「あいっ!!」と、返事をしナツを掴んだ。
「んじゃ、ちょっと俺行ってくる!!」
「ちょ、ナツ!?」
ナツを呼び止めるルーシィの声が響くも、ナツは既にハッピーにより飛び立っており……
「ほんとに……シクルの事になると……」
「超せっかちになるんだから……」
苦笑を浮かべながらも、この時期になると外に出たがらないシクル……彼女を思い、ナツならきっとなんとか出来ると心の中でそう感じるギルドメンバーたち……
「……シクルを、頼むぞ……ナツ」
如何だったでしょうか? 次回はナツとシクルのからみがすごく多く出るかなと思います!
恋が進展するかは……まだ分かりません!
では、59話も最後までお付き合い、ありがとうございます!!
次回も、よろしくお願いします!!