フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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こんにちわ! 昨日は3度目のフェアリーテイル……見てきました笑

そして特典は2度目のナツくんでした笑笑

一緒に行った友人もナツくんが出て笑ってました!

……という報告はここまでにし、では本編……最後までお付き合い、お願いします!


58話 一人で抱えるなよ?

 

 

ラクサスに抱えられ、雨粒を極力避けながら、辿り着いたのは小さいながらもラクサスも余裕で入れる大きさの小さな洞穴だった。

 

ラクサスはシクルを足に負担のかからぬよう、ゆっくりと地面に座らせると薪木を手早く集め、火をつけた。

 

「寒くねぇか?」

 

「うん、大丈夫……ありがとう」

ふんわりと微笑み、お礼を言うシクルにふっと笑みを浮かべ、「そうか」と満足気のラクサス。

 

少しの間、会話をせず、沈黙が続いていたがふと、シクルは目の前に座るラクサスを見つめ問いかける。

「……ねぇ、ラクサスは今……何、してるの?」

 

「あ? 俺は……まぁ、あてのない旅をしてるってところだな……」

多くは語ろうとしないラクサスに「そっか……」とだけ、返すシクル。

 

 

「……そういうお前は、あんなところで何してたんだよ?」

火を炊きながら、シクルを横目で見やい、問いかけるラクサス。

 

「私? 私は……評議院からの依頼で大量発生したワイバーンの退治に……」

 

「ほぉ? それでその途中に転けて怪我をしたと……は、とろいな」

 

「う、うるさいなぁ! 足場が悪かったんですぅ!」

クククと笑うラクサスに頬を赤らめ、怒るシクル。

 

「……で?」

 

「え……?」

 

ラクサスを見上げたその視界に入ったその表情は何かを探る瞳をしていた。

 

「どうした……お前……」

 

「どうしたって……なに、が?」

 

「……なんか、あったか? いつもなら俺の気配くらい簡単に気づくだろ?」

 

「っ……」

 

ラクサスの言葉に目をほんの僅かに見開くシクル。そして、暫くラクサスと目を合わせると不意に、はぁとため息をつき……

 

 

「何でもないよ……ただ、なんだか雨の日は調子でなくて」

膝を抱え、小さく笑みを浮かべ、告げた。

 

ラクサスを見つめるシクルの瞳は何かに怯え、震えている……が、これ以上は何も聞くな、とラクサスに訴えていた……。

 

 

「……はぁ、そうか……」

ラクサスはそれだけ呟き、深くは聞かなかった……。

 

その一言を最後に会話が完全に途絶える……その場には焚き火の燃える音と雨音のみが響いていた……。

 

 

 

場所を変え、ナツたちの方では……

 

 

「いあー! 探検楽しかったなぁ!!」

ルームに戻りバフッ! とベッドに飛び込むナツ。

 

「あのおっきいカジノはすごかったね!」

ナツの隣に転がり、ニコニコと笑い言うハッピー。

 

「クッソー、俺なんかカジノで大損しちまったぞ」

ズーンと、効果音が聞こえるほど肩を落とし沈むグレイ。

 

「まぁまぁ……それにしても、やっぱりエルザは安定の負け無しなのねぇ」

沈むグレイを宥めながら、30勝したエルザを苦笑を浮かべた表情で見つめるルーシィ。

 

「ふん、当然だ!」

キランと輝くエルザの瞳……その様子に一同は気難しい反応で、から笑いしか出せず……

 

「それにしても、雨止みませんね……」

 

「そうね……」

窓の外を眺め、ウェンディとシャルルが呟き、ナツたちも窓の外へと視線をやる。

 

「……雨」

 

「ルージュ? どうかしたの?」

 

様子のおかしいルージュに気づき、ルーシィがそっと声をかける。

ルージュはふっと顔を俯き……

 

「何でもないよぉ……ただ、雨の日は、シクルの……笑顔が見れないから……悲しいなぁって」

と、呟いた。

その言葉に、首を傾げるルーシィや、ウェンディ、シャルル……そして

 

「あー……」

 

「……そうだな」

 

何か事情の知っている様子のナツとグレイ、ハッピーとエルザも知っているようで顔を伏せる。

 

「シクルさんの笑顔が見れないって……」

 

「どういう事よ?」

ウェンディとシャルルが首を傾げ、ナツたちに問いかける。ルーシィもその見つめる瞳で説明を訴えかけていた。

 

「そういえばルーシィたちは知らないんだな……」

 

「まぁ、シクルも好き好んで話そうとはしねぇだろうよ……」

 

「ルーシィたちは知らんだろうが……昔のシクルは全く笑わなかった……否、感情が欠落していた……と言った方がいいか」

 

エルザの語ったその言葉に、ルーシィたちは目を見張る。

 

「ギルドに着くまで、何をしてたのか……何があったのかはオイラたちも知らないんだ……」

 

「だが、昔のシクルは確かに……感情っつぅのがなかったなぁ……」

 

天上を見上げ、呟くグレイの脳裏に思い浮かぶのは暗い暗い瞳でギルドの端っこに座る幼き頃のシクル……そして、誰の手も取らなかったあの頃……

 

 

「唯一、ナツだけがシクルの近くにいることが出来た……そして、ナツと触れ合ううちにシクルは感情を取り戻し……私たちとも交流を深め……今のシクルになった」

ナツを見つめ、ルーシィたちにそう語るエルザ。

 

「ギルドに入る前のシクルさん……」

 

「メスネコは何も知らないの?」

シャルルからの投げかけにルージュはふっとシャルルに顔を向け、首を振る。

 

「知らないよぉ……あたしがシクルと出会った時は今のシクルだったから……感情のない時のシクルは見たことがないんだァ……ただ」

 

ルージュはそこで言葉を切ると、俯き、口を開かなくなってしまう……。

 

「ど、どうしたんですか……?」

 

「ルージュ?」

 

ウェンディとルーシィが声をかけるもルージュから返答はなく……代わりに、グレイがため息をつき、口を開いた。

 

「シクルは、雨の日になると笑顔が無くなるんだよ……」

 

「どうして……」

 

「……怖ぇんだとよ」

 

ルーシィの呟きにそっと答える声……ルージュを抱え、ナツが言った。

ルーシィは「え?」とナツを振り返る。

 

「雨の日は、昔を思い出すから怖いんだと……だから、雨の降る日にはシクルは笑わねぇ……」

 

「……そう、なんだ」

 

ふっと、ルーシィは目を閉じ俯き……ウェンディやシャルル、グレイたちも暗い表情を浮かべる。

 

そこに、パンッパンッと手を叩く音が聞こえる。

 

「ほら、お前たち……そう暗くなるな、それでは更にシクルを苦しめてしまうだろう? それに、折角の息抜きなのだ……楽しもうではないか!」

シクルの分までな、と微笑み言ったエルザ。

 

その言葉で、次第にナツたちの表情も晴れ、笑顔が浮かぶ。

 

「おう!」

 

「だな!」

 

「そーね!」

 

「「あい!!」」

 

「はい!」

 

「ま、いいかもね」

 

 

全員の、元気な返事を聞きふっと笑みを浮かべるエルザ。

 

「では、今日はもう遅い……明日もめいっぱい遊ぶために今日は休もう」

 

「「「あいさー!」」」

 

その合図と共に、ナツたちは男と女に部屋を分かれ、寝床についた。

 

 

 

 

 

場面戻り、シクルとラクサスの方では……

 

 

「……はぁ」

 

少し前から、ラクサスを枕に眠ってしまったシクル……そんな彼女を見下ろし、ため息をつくラクサス。

 

「たく……あれほど敵対してたやつを前に無警戒すぎんだろ、アホが……」

 

目下で眠りこけるシクルの鼻上を指で弾きながら、毒づくもその表情は柔らかく、笑みを浮かべていた。

 

もう1度深くため息をつき、外を見やる。

 

「……まだ止まねぇか」

 

大分小雨になったが未だ止まない雨を見つめる。

「……早く止んでくれよ」

 

何故そう思ったか、ラクサスには分からなかった……だが……

 

「……こいつに暗い顔は似合わねぇんだよ」

 

 

こいつは……馬鹿みてぇに笑って……あそこを輝かせる存在なんだよ……だから……

 

 

あいつらの光を曇らせるなら……

 

「……早く、止んでくれよ」

 

 

 

 

ーーー

 

……ん……こ、こは……?

 

……夢の中……なの、かな? ……分からない

 

真っ白な世界で1人ぽつんと佇むシクル。

そこに……

 

 

『……ル…………シクル』

 

っ! 声……? この、声……

 

後ろから聞こえた声に振り返ると……

 

 

……セ、レーネと……わた、し?

 

 

そこには、育ての親、セレーネソフィアと今より小さいシクルの姿があった。

 

 

『シクル……よく聞いて?』

 

『なぁに? セレーネ……何かあったの?』

 

セレーネを見上げるシクルの瞳には明らかな尊敬と信頼が溢れていた。

そんなシクルを悲しそうに見下ろすセレーネ。

 

『シクル……ごめんなさい……私はもう少しで、貴女とは一緒にいられなくなるの……』

 

その言葉に幼き頃のシクルは目を見開く。

 

『セ、レーネ……どうして? そんな……冗談、笑えないよ?』

 

『ごめんなさい……ごめんね、シクル……

 

嘘じゃないの……本当に、もう……』

 

そう言うとセレーネの身体は次第に光の粒へと変わっていく……。

 

 

『やだよ……やだよセレーネ!! 行かないで!! お母さんっ!!!』

 

涙を流すシクル……

 

 

 

『シクル……ごめんなさい……最後に……

 

 

あなたにこれを……授けるわ……』

 

そういい、セレーネが出したのは光の球体……魔水晶とは少し変わったものだ。

 

『……これ、は……なに?』

 

 

『これはいつかあなたに力を与えてくれる……あなたを守ってくれる……お守りよ』

 

『おま……も、り?』

 

セレーネがその言葉に頷くと光の球体は輝きを増し、そして……スゥッとシクルの身体に溶け込み……消えた瞬間、幼き頃のシクルはふっと倒れ込んだ。

 

 

その光景を見つめていた今のシクルは……

 

……これ……そうだ、この後目が覚めたら……

 

セレーネはいなくて……皆も……

 

 

 

あの光の球体……何だったんだろう

 

未だに……あれの正体が分からないんだけど……説明してくれても良かったのになぁ……

 

肝心なところ、抜けてるよねぇ……セレーネ

 

 

そう、ふっと笑みを浮かべた時……目の前の光景が変わる。

 

一瞬目の前が光り、目を開けると……

 

 

っーー!! こ、こは……

 

 

シクルの目に映ったのは雨の降る深い森の中……そして、幼いシクルの目の前には歪んだ笑みを浮かべる男……

 

 

『……だ、れ?』

 

『見つけた……僕の可愛い……お姫様……

 

 

さぁ……おいで……愛しの…………』

 

 

 

「シクルっ!!!!」

 

 

「っ!? ……あ、っ?」

 

 

ラクサスの叫び声が耳に響き、はっと目が覚めるシクル。

そして、目が覚めた瞬間、自身が泣いていることに気づく。

 

「わ、た……し、ラ……ク、サス」

 

「お前……大丈夫か? 魘されてたぞ……」

 

ラクサスを見つめ、震えるシクル……その姿にラクサスは心が痛み……

 

そして、そんなシクルがとてつもなく弱く、儚く見え……思わずシクルをその大きな手で抱きしめた。

 

 

「っ……ラク、サ……ス?」

 

「……お前が、何に怯えているのか俺には分からねぇ……俺は、今まで周りをちゃんと見ていなかったから……他の奴らよりお前のこと、分かってやれねぇ……けどよ……

 

 

お前がひとりで何か大きなものを抱えてるんだってことは俺にだって分かんだよ……だからよ……」

 

 

そこで、ラクサスはシクルの顔を覗き込むように見つめる。

 

「一人で抱えるなよ?」

 

「っ……!!」

 

「……お前は、一人じゃねぇだろ? 一人じゃできねぇ事がある……それを言ったのは、お前だろうがよ…お前は、アホ」

 

最後はふっといたずらっぽく笑ったラクサスに、シクルは次第に乱れた心が落ち着き……

 

 

「ラクサス……アホって言うな、バカ」

と、笑った。

 

 

シクルに笑みが戻った時、外の天気も晴れ、雨が止んだ。

 

「雨が……」

 

「……止んだな」

 

洞穴から出ると晴れ渡る空を見上げるシクルとラクサス。

 

そして……ふと、シクルの嗅覚にスンッと知った匂いが届く。

 

「この匂い……ナツたち?」

はっと、シクルの告げたその言葉にふっとラクサスは1度シクルを見下ろし……そして、ポンッとシクルの頭に大きな手を置いた。

 

「う……? なに……?」

 

「……俺はまだあいつらには会えねぇからよ……お前とはイレギュラーだったけどな……だから、ここでお別れだ……シクル」

 

ラクサスのそう告げた言葉にシクルは少し寂しそうな表情を浮かべる。

 

 

「……行くの?」

 

「あぁ、まだ旅の途中だからな……また、機会があったら……そん時は、話……聞かせてくれや」

 

そう言い、ラクサスはシクルの頭から手を離し、去っていく。

最後に、シクルに後ろ手で手を振りながら……

 

「……またね……身体、気をつけてね?……ラクサス」

その後ろ姿にそっと……小さく呟くシクル。

ラクサスの姿が見えなくなると……知った匂いが急激に近づく。

 

その前にシクルは足の怪我を治癒で治し……治し終えた瞬間

 

ガサッ!!

 

「あぁー!! シクル!!」

 

「いたぁー!」

 

「ほんとだー!!」

 

「シクル!」

 

「偶然だな……シクル」

 

「シクルさん!」

 

「こんな所に仕事来てたのね」

 

「やっと会えたァ!」

 

知った声が次々に響く……その声にふっとシクルは微笑み……

 

 

「偶然だね! みんな!! 仕事?」

と、声を上げた。

 

「ううん、福引のチケットが当たってね? みんなで来てたの!」

 

「シクルの分も予約してあるんだよぉ?」

ルージュの言葉にえ? と驚くシクル。

 

「私も? 会えるかも分からなかったのに……」

 

どうして……とシクルが聞くと……ニッと、笑みを浮かべるナツが目に映る。

 

「だって俺たち! チームだろ?」

 

 

「……ナツ……うん!!」

 

 

「よっしゃー! シクルも合流したんだ! 残りの時間、楽しむぞぉ!!」

 

ナツの掛け声に、おおー! と声を上げるシクルたち。

 

 

この後、宣言通りにめいっぱい遊んだシクルたちであった。

 

 





いかがだったでしょうか……ちょっと最後微妙なのですが……


お許しくださいorz

次は虹の桜のお話を上げていきます。虹の桜のお話が終わり次第、エドラス篇に入りたいと思います!

ちなみにラクサスさんは抱きしめましたが下心等はございません。

では、最後までお付き合い、ありがとうございます!

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