フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

60 / 75

はい!! 今回は少しグレイとの会話があります!!


最終的には前話の内容と続いてるところもあるのですが……では、

最後までお付き合い、お願いします!


56話 氷の魔法 瞬間氷結《アブソリュート・ゼロ》

 

 

 

アトスとナツからの告白から一夜明け……

 

現在時刻お昼すぎ……普段ならば面倒くさがっても結局はギルドに顔を見せるシクルなのだが……

 

 

「……来ねぇ」

 

「来ないねぇ……」

 

「来ないわねぇ……」

 

 

シクルがギルドに現れない……。

 

 

「んぁー!! なんで来ねぇんだよぉ!?」

がぁー! と天上に向け、火を吹き叫ぶナツ。

 

「んー、シクルはぁ……」

苦笑を浮かべ、ナツに説明しようとするルージュ……だが、

 

「きっとあれじゃない? 昨日のでやっぱ嫌になっちゃったんじゃない?」

ルージュの言葉を遮り、ハッピーの声がナツに届く。

 

「んなにィ!?」

ハッピーの言葉にぐもぉ! と顎が外れるくらい口をあけ、呆然とする。

 

「ちょっとハッピー? ダメよ、そんな事言っちゃあ……」

 

「そんなことになったらナツが廃人になっちゃうわよ」と、冗談なのだろうがどこか冗談に聞こえないルーシィの言葉。

 

「そうだよハッピー……それにシクルもナツを嫌いになった訳では無いと思うよ? ……多分」

ルージュのフォローに聞こえないフォロー。

 

「ルージュ、それフォローになってないよ……(それにしてもシクル……本当にどうしたのかしら……)……そういえば」

 

ギルドに姿を見せないシクルの事を考える片隅でふと、ギルドがあまり騒がしくないことに気づき……辺りを見渡す。

 

「……あれ? (グレイが……いない?)」

 

 

 

 

 

ギルドでナツがハッピーの言葉にここ一番という程に沈んでいた頃……

 

その元の原因、シクルは……

 

 

「んん……ギルドに行かないとなぁ……でも行ったらナツに会うんだよね……んんんー!」

 

自宅の玄関前でぶつぶつと呟き、扉の外に出れていなかった。

 

シクルの脳裏に蘇るは……

 

“ 俺だってシクルが好きなんだっ!! ”

 

「うぅうううっ/////!! (あんな大声で言わなくたって……今思うと恥ずかしすぎる)」

 

あの時の言葉とナツの顔がずっと繰り返されていた。

 

「はぁ……昨日はまだそこまで気にしてなかったのに……」

 

昨日はまだそこまで意識をしていなかったシクル。だが、時間が経つにつれ徐々にその事実を受け入れ始めた。

すると、ナツに会うのが恥ずかしく感じ始め、ギルドに未だ顔を出せずにいた。

 

「んー……(そろそろ行かないと……皆も気にしてるかもしれないし……)で、でもなぁ……!」

 

頭を抱え、んー! とシクルが唸っていると……

 

 

「……何やってんだ?」

 

「え……?」

 

よく知った声が目の前から聞こえ、顔を上げると……

 

「……グレイ?」

 

「……おぅ」

 

普段通り、上半身裸のグレイが頬を掻きながら目の前に気まずそうに立っていた。

 

 

「はい、コーヒーで良かった?」

 

「おぅ」

 

グレイをリビングへと案内し、飲み物を目の前に置くと、シクルもグレイの反対側に腰掛ける。

そして一口、紅茶を飲むと目の前のグレイを見据える。

 

「で?何でここにいたの……と言うか何でノックもなしに入ってきたのよ」

 

「俺、何度もノックしたぞ。声も掛けたけど……お前出てこなくてよ……気になって開けたら、鍵閉まってなかったから…」

 

肩を落とし、シクルを見れずにそう告げるグレイ。

「ふぅん……そっか。 気づかなくてごめんね? ちょっと、考え事してたからさ」

 

苦笑を浮かべ、謝るシクル。そして、もう1度紅茶をコクッと飲み干すと、グレイを見つめ、本題に入る。

 

「で? ここまで来たってことは何か用事があったんだよね?」

 

シクルの言葉に「あぁ」と頷くグレイ。

 

「実は……少し、シクルに頼みがあってよ」

 

「頼み?」

 

「おぅ……シクル……俺に、修行をつけて欲しい」

 

「……はい?」

グレイの言葉に目を点にし、唖然とするシクル。

 

 

 

数分後……

 

「つまり……あのニルヴァーナの時、グレイは自分の力不足を痛感したと?」

 

「正確にはB・O・Fの時からだ。あの時も俺はビッグスローにやられたからな」

 

グレイの話を聞き、んー、と腕を組むシクル。

 

「修行って……私、月と光の魔法は使うけど氷は使わないんだよ? 同じ氷の造形魔導士のリオンじゃダメなの?」

コテン、と首を傾げシクルが問いかけると……

 

 

「じょーだんじゃねぇ! 誰があんなやつの手なんかかりっかよ! なぁ頼む! 何かねぇか!? 俺に使える氷の魔法! 修行を!」

 

「そんな事言われたって……」

困った表情を浮かべ、考えるシクル。

 

「修行ねぇ? えー……私、氷の魔法なんて使わな……あぁ、ちょっと待って? 」

 

シクルはそこで一度言葉を切ると、立ち上がりリビングから飛び出していく。

 

そして、ガサゴソとグレイの耳に何かを漁る音が聴こえる。

「……シ、シクル?」

 

「んー……確か書庫にあの魔法があったと思うんだけどなぁ……」

 

グレイの言葉には答えず、何かを必死に探すシクル……そしてーーー

 

 

「あった!!!」

 

声を荒らげ、リビングに1冊の古びた本を持ち戻ってきたシクル。

 

「これこれ! 多分これならグレイも使えると思うんだけど……」

 

そう言い、グレイの目の前にその本……魔法書を差し出すシクル。

 

「……これは?」

魔法書を受け取り、首を傾げ、シクルに問いかけるグレイ。

 

「それはね、氷の造形魔法の事を記した大昔の本なの。 数年前に、評議院からの依頼をクリアした時の報酬で貰ったんだけど……

 

使い道なくて書庫の奥の奥にしまっちゃってたから見つけるのに苦労したよ……」

 

苦笑を浮かべ、そう告げたシクルはグレイの目の前で魔法書を開いていく。

 

「これはね、氷の造形魔法 “瞬間氷結《アブソリュート・ゼロ》” を記した本なの」

 

「……アブソ……リュート、ゼロ?」

 

グレイのオウム返しをしたその言葉に頷いて見せるシクル。

 

「そう、瞬間氷結……これは、グレイのよく知る魔法、 “絶対氷結《アイスドシェル》” の劣化版なの」

 

「アイスドシェル!?」

目を見開き、シクルの言葉に驚くグレイ。

 

「でもあの魔法は……使ったものの命を」

 

「だーから……これはその劣化版だって今言ったばかりでしょ?」

人の話は最後まで聞いて! と言ったシクルの言葉に立ち上がりかけた腰を落とすグレイ。

 

「……その、アブソリュート・ゼロってのは……何なんだ?」

 

「さっきも言った通り、これは絶対氷結……悪魔の島でグレイが使おうとした、あの《アイスドシェル》の劣化版だよ」

 

そこで一度言葉を切ると、人差し指を立て言葉を続ける。

「この魔法は1時間、かけたものを氷結に閉じ込め相手の動きを封じる魔法よ

 

但し、これにはデメリットもあってね? 魔法を発動すると大量の魔力がなくなってしまうために術者も1時間、動けなくなっちゃうの」

 

「へぇ……相手を1時間……」

シクルの説明を聞き、魔法書を手に取り考えるグレイ。そして……

 

「シクル……この本、借りてもいいか?」

と、問いかけるとシクルはふっと笑みを浮かべ頷く。

 

「もちろん、むしろ私はその魔法使わないから……貰っちゃっても構わないよ」

 

シクルのその言葉を聞くとパァ! と笑顔を浮かべるグレイ。

 

「マジか! サンキュー、シクル!!」

早速修行してくるぜ! と声を上げ、帰り支度をするグレイ。そして、最後に……

 

「お、そうだ……あのよシクル」

 

「なに?」

 

先程まで笑顔だったグレイはどこか真剣味を帯びた表情でシクルを見つめる。

 

「今日まだギルド行ってねぇだろ?

シクル……お前とナツに何があったのかは知らねぇけどよ……そろそろ顔だしてやんねぇと、みんな心配すっぞ?

 

……それと、ナツの奴がシクルに会えないってうるせぇからよ」

 

「っ! ……ありがと、グレイ」

 

グレイの言葉に一瞬目を見張り、すぐに笑みを浮かべるシクル。

 

「じゃあ、私も行こうかな……ルージュも先に行ってるだろうし……」

と、呟きシクルも腰を上げグレイと共に家を出ると、グレイは一人修行に……シクルはギルドへと足を進めた。

 

 

この時何故か……シクルの中に恥ずかしさはなかった。

 

 

シクルがギルドに向かっている頃……ギルドでは……

 

 

「うがぁああああっ!!! んで来ねぇんだァああ!!」

ナツが限界を迎えていた……。

 

「ちょ! うるっさいナツ!!!」

 

「あらあら……ナツったら、そんなに会いたいなら会いに行けばいいのに」

クスクスと笑いそう告げるミラ。

 

「それで振られたらこえぇ!!」

ガクガクと頭を抱え震えるナツ……

 

「ナツってこんなキャラだっけ?」

 

「……恋がナツを変えたのかもねぇ」

 

「あんたたちそんな呑気にしてないであのナツの慰めに手を貸しなさいよ!!」

 

ハッピーとルージュに声を荒らげ、ぐてぇとなっているナツを支えるルーシィ。

 

そこに……

 

「……何やってんの?」

 

 

「「「っ!!!」」」

 

その声がギルドに響いた時……一同が一斉にギルドの入口に視線を向ける。

 

そこには、にっこりと微笑むシクルの姿……

 

「シ……シクルっ!!!!」

 

 

ガタッ! と立ち上がり、飛びかかるナツ……

 

にっこりと微笑みナツを迎えるシクル……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、ナツが目の前に来た瞬間スッと体を横へと避ける。

 

「なんで避けんだよぉお!? ぎゃぴっ!!」

 

勢いあまり、ナツは床をスッテーン! と転がった。

 

「いってて……」

床に強打した頭をさすりながら体を起こすナツ。そんな彼をぼぉっと見つめシクルは、ふっと笑みを浮かべると座り込むナツの前にしゃがむ。

 

「……ンだよ」

 

「ナツ……おはよっ!」

 

シクルのその言葉に目を見開くナツ。

そして、ニカッと笑みを浮かべるとガバッとシクルの肩に腕を回す。

 

「おせーよ!! もう昼過ぎだっつーの!」

 

「ごめんごめんお詫びに今日は一緒に仕事行ってあげるから! 許して?」

 

「っ! おう!!」じゃれ合うナツとシクルを見つめるルーシィとハッピー、そしてルージュは……

 

「……あれ、結構良い感じじゃない?」

 

「あい……でぇきてるぅ! だね!」

 

「でぇきてるぅぅ!! だよぉ!(シクル……少しはスッキリしたみたいだねぇ)」

 

ニヤニヤと笑っていた。

 

 

1人と2匹は目の前の男女がくっつくのも遅くはない……と、考え始めていた。

 

 

 

 

「さっ! じゃあ、皆で仕事行こ!」

 

「あ? みんな、で?」

 

シクルの言葉に首を傾げるナツ。

 

「うん、そーだよ?」

 

にっこりと微笑み告げるシクルのその言葉に……

 

「っーーー!(俺は2人で行きてぇんだぁっ!!)」

 

昨日の事もありその言葉は胸の奥にしまうも……ナツは、がっくりと落ち込んでしまった。

 

 

 

「……あれはまだだと思うなぁ」

 

「……あい」

 

「……そうね」

 

 

ナツとシクルを見て、苦笑を浮かべる1人と2匹であった。

 





はい!! 今回はほんの少し短かったですかね……

そしてやっぱり……最後はナツとの絡みをいれたいのです!

グレイをメインの話にしたかったのですが……文章を作っていくうちに結局いつもと変わらないような雰囲気に……私欲が出てますねぇ

では、次の話は恐らく明日になるかと!

次回は懐かしの彼が登場です!
最後までお付き合い、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。