フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい! 初めに言います……

すいません!! ニルヴァーナ篇今回で終わりませんでした!!
字数的な問題で……

あぁ……本当はこの回で終わらせたかった……
……とにかく、50話、最後までお付き合い、お願いします。


50話 別れ

 

 

7つの魔水晶の破壊に成功すると……次第に、ニルヴァーナは魔力の供給が途絶え、崩れ始めた。

 

《7番魔水晶》

 

「やっば……早く逃げないと…………うっ!」

 

崩れ落ちる瓦礫を避けながら、出口へと走るシクル。その時、ドグンッと、動悸が襲い、体から力が抜け倒れるシクル。

 

「うっ……はっ(まずい……意識が……)」

 

魔力をほぼ休みなしに使い過ぎた影響か、シクルは倒れた身体を動かせず、次第に意識が遠のいていった。

 

 

まだ……こんな所で、終わ……れ、ない……

 

 

 

「うぉおおおおお!!!!」

 

ズサァ!! と音を立て、命からがらニルヴァーナから脱出したグレイ。

 

地面を転がりながら、崩落するニルヴァーナを振り返り、不安気に見つめる。

 

「おいおい……皆無事だろうな!?」

そこに……

 

「グレイ!!」

と、声を上げ走ってくるエルザが現れる。

 

「エルザ! 無事だったか……と?」

 

エルザの方を振り返るグレイの視界に、もう一つ影が見える。

それは、グレイとエルザの方へと走り寄っており……

 

「エルザさぁん! 無事でよかったでぇす!」

 

「「げぇええっ!?」」

 

ムキムキマッチョな男が現れる。

 

思わずエルザは槍を構え、グレイも魔力を練り上げ、構える。

 

「何者だ!?」

 

「敵か!? ……そしてキモいっ!!」

 

「落ち着いてください、2人とも……

 

今は力のパルファムにて姿形は違えども、中身はいつもと寸分違わぬこの私……あなたのための、一夜でぇす」

 

その言葉に目が点になるエルザとグレイ。

 

「……おめぇもえらいもんに好かれたな」

 

グレイの哀れみの瞳に顔を逸らし、ため息をつきながら沈むエルザ。

「あ、あぁ……頼もしい、奴では……あるんだが」

 

そこに……突然上から時計のようなものが降ってくる。

 

「な、なんだ!?」

 

「ん? これは……」

 

空から降ってきたのはルーシィの星霊、ホロロギウムだった。

中からはルーシィとハッピー、そしてルージュが出てくる。

 

「ルーシィ!! ハッピーにルージュも!」

 

「助かったよ!」

 

「ありがとねぇ!!」

 

「ありがとね、ホロロギウム! てか、あたしってあんたをいつの間に呼んだっけ?」

魔力も0に近かった中、呼んだ記憶のないルーシィは首を傾げる。

 

「いえ……私が勝手にゲートを通って参りました」

 

「へぇ……ロキやバルゴもよくやるわよね」

ルーシィの言葉に頷くホロロギウム。

 

「ルーシィ様の魔力が以前より高まった事により、可能になりました」

ホロロギウムからの説明を受け、へぇと息をつくルーシィ。

 

そして、ホロロギウムが星霊界へ戻ると……

 

「みなさーん!!」

 

「皆、無事だったか!」

 

「ついでにオスネコとメスネコも」

 

ウェンディとジュラ、シャルルも無事に合流を果たす。

 

「あれ? ナツさんは? ジェラールやシクルさんは……」

集まったメンバーを見て、首を傾げるウェンディ。

 

「そういえば、見当たらんな」

 

「ちょっと待て、まさかまだ中に……!?」

 

「そ、そんなっ!」

 

全員が辺りを見渡すも、やはりその姿は見えない……。

 

「ナツ……シクル……」

 

「あのクソ炎……何してやがるっ」

ルーシィとグレイがか細い声で呟く。

 

「ナツさーん!! シクルさーん!!」

ウェンディも大声を上げ、呼びかけるが返ってくる声はなく……

 

「ナツ……シクル、ジェラール……(何をしているんだ……)」

嫌な予感が絶えず胸の中を渦巻き、グッと拳を握るエルザ。

 

「シクルゥー!!!」

 

「ナツゥー!!! う、わぁ!?」

ルージュとハッピーも、声を上げ相棒を呼んでいると……ハッピーの立っている足元の地面がボコッと盛り上がり、ハッピーは転がる。

 

そして、盛り上がった地面の下から現れたのは……

「愛は仲間を救う……デスネ!」

 

「……んァ?」

リチャードと、その両脇に抱えられるナツとジェラールが現れた。

 

「ナツさん!!」

その姿にウェンディは笑みを零し、グレイたちもほっと息をつくが……

 

「待て……シクル殿は?」

ジュラの言葉にシクルを探し、辺りを見渡す……。

 

「おいおい……シクルの奴、どこにいんだよ!?」

 

「シクルさん……」

 

「シクル……まさかまだ中に」

 

「そ、そんなぁ……!」

 

「くそ……いるなら返事しろよ……シクル!!」

ナツが声を張り上げ、俯く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞こえてるっての……」

 

「「「っ!!」」」

 

ナツたちの背後から声が聞こえ……振り返ると、結ばれていない金の髪が風に揺られながら、しっかりと立ち、こちらを見据えているシクルの姿があった。

 

「全く……無駄に声がでかいんだから……」

 

「無駄ってなんだよ無駄って!?」

 

「シクル!!」

 

「シクルさん! 良かった、無事だったんですね!」

 

「シクルゥー!」

 

「たく……心配かけやがって」

 

「ともかく、無事で何よりだ……」

 

例外なく飛びついてくるルージュを抱き留め、その場に座り込むシクル。

 

「シクル、大丈夫?」

心配そうに隣へ歩み寄り、シクルの身体を支えるルーシィ。

 

「うん、大丈夫……」

ニコッと微笑むシクルだが、その表情に力はない。

 

「とにかくこれで、一件落着だな!」

ニッ!と笑顔を浮かべ、ウェンディを見つめるナツを見返し、ウェンディもにっこりと微笑む。

 

「はい! ナツさん……本当に、ありがとうございます!」

ぺこりと頭を下げるウェンディにきょとんとした瞳を向け……フッと笑みを浮かべるナツ。

 

「みんなの力があったからだろ? んじゃ、今度は元気に……ハイタッチだ!」

 

「っ……はいっ!!」

 

パンッ! と、ナツとウェンディは元気にハイタッチをした。

 

 

 

「とにかく、全員無事で何よりだね」

 

「皆、本当に良くやった」

 

「これにて、作戦終了ですな!」

 

「んで? あれは誰なんだ?」

と、グレイはジェラールを指した。

 

「あんな人いたっけ?」

 

「あれは、ジェラールだ」

 

グレイとルーシィの疑問にエルザが答えた。すると2人は目を見開き驚く。

 

「何!?」

 

「この人が!?」

 

「だが、私達の知っているジェラールではない……記憶を失っているようだしな」

 

「いや……そう言われてもよぅ」

 

エルザの言葉に納得のいかない様子のグレイ。そんな彼に苦笑を浮かべながら、ウェンディが声をかけてくる。

 

「大丈夫ですよ、ジェラールは本当はいい人ですから」

ウェンディがそう言うとグレイは渋々ながらも、納得したようだ。

 

その横ではエルザがジェラールに歩み寄り、何かを話している。その様子をちらりと見ながら、ふぅとため息をつくシクル。

 

「あ、あの……やっぱり少し回復を……」

目を伏せるシクルを見て、心配そうに声をかけるウェンディだが……

 

「ん? あぁ、大丈夫大丈夫……少し休めば回復するよ。それに、今日はもうウェンディだって魔法を使いすぎちゃったでしょう?」

 

無理しちゃダメだよと、シクルは微笑みながらやんわりと断った。

 

そこに……

 

「メェーーーン!!」

 

「っ、何?」

 

突然、変な奇声をあげ、鼻上を抑える一夜が……

 

「どうしたんだ、オッサン」

グレイが怪訝そうに問いかける。

 

「トイレのパルファムをと思ったら、何かにぶつかったのだァ!!」

 

そう叫ぶ一夜を尻目に、ふと地面に目をやると……

 

「何……地面に文字が?」

 

「こ、これは」

 

「「「術式っ!?」」」

 

グレイたちは声を上げる。そして……

コツッと、靴を鳴らす音が聞こえ、そちらを向くと……

 

「誰だコラァ!?」

 

「どうしてあたし達を閉じ込めるのよ!」

 

「漏れるぅうううう!!!」

 

「やめてぇ!?」

 

 

「手荒な事をするつもりはありません……しばらくの間、そこを動かないで頂きたいのです」

眼鏡をかけた男を中心に、数人の人間に囲まれていたシクルたち。

 

その服装と紋章を見てはっとシクルは息を呑む。

「あなたたち……もしかして」

 

「私は新生評議院、第四強行検束部隊隊長、 “ラハール” と申します」

 

「新生評議院!?」

 

「もう発足していたのか!!」

ラハールと名乗った男の言葉に驚くルーシィとグレイ。

 

「我々は法と正義を守る為に生まれ変わった……如何なる悪も、決して許さない」

 

ラハールのその言葉に、ビクッ! と身体を揺らすナツとハッピー。

 

「お、オイラたち何も悪いことしてないよ!?」

 

「お、おう……!!」

 

「存じております……我々の目的は六魔将軍の捕縛……そこにいるコードネーム『ホットアイ』をこちらに渡してください」

 

その言葉に驚愕するナツたち。

その影で、シクルは暗い表情を浮かべる。

 

(……やっぱり)

 

「ま、待ってくれ! 彼は……」

 

「いいのデスネ、ジュラ」

説得を試みようとしたジュラを微笑みながら止めたホットアイこと、リチャード。

 

「例え善意に目覚めても、過去の悪行は消えませんデス……私は一からやり直したい」

 

そう告げたリチャードに、ジュラは心が折れ、代わりにリチャードが探す弟を見つけ出そうと約束をした。

 

「弟の名は何というのだ?」

 

「弟の名はウォーリー……ウォーリー・ブキャナン」

リチャードの口から出たその名に、シクルやナツたちは目を丸くした。

 

「「四角ぅー!?」」

 

「その男なら知っている……私の友だ。今は元気に仲間と大陸中を旅している」

 

エルザのその言葉を聞き……リチャードは涙を流す。

「これが、光を信じるものだけに与えられた奇跡と言うものデスか……ありがとう! ありがとう……ありがとう」

 

リチャードは最後に、晴れ晴れとした表情で評議院の人たちに連れられ、去っていった。

 

「……なんか、可哀想ね」

 

「あい……」

ルーシィの言葉に同意し、気分が沈むルージュの頭をそっと撫でるシクル。

そんな彼女の表情は……未だ晴れない。

 

きっと彼らの目的は……

 

「も、もういいだろう! 術式を解いてくれ! 漏らすぞ!!」

 

「だからやめなさいっての!」

声を荒らげる一夜をハッ倒すシクル。

 

「いえ、私達の本当の目的は六魔将軍ごときではありません」

 

「へ?」

 

「それって……」

 

ラハールはある一点を睨み……告げた。

 

「評議員への潜入・破壊、エーテリオンの投下……もっととんでもない大悪党がそこにいるでしょう……貴様だジェラール! 来い!

 

抵抗する場合は抹殺許可も降りている!!」

 

「「「っ!!!」」」

 

「そんなっ!」

 

ジェラールを指さし、告げたラハールに驚愕の眼差しを向けるナツたち。

 

 

「ちょっと待てよ!」

 

「その男は危険だ、2度とこの世界にはなってはいけない……絶対に!」

 

そして、ナツたちが反対をする中……ラハールはジェラールを連れていこうとする……。

 

そんな後ろ姿を見つめ、エルザはギュッと拳を握る。

 

(止めなければ……私が、止めなければジェラールが行ってしまう……

折角、悪い夢から目覚めたジェラールをもう1度暗闇の中へなど行かせるものか……!)

 

「……エル」

 

 

「死刑か無期懲役は免れないぞ。2度と誰かと会うこともできんだろう」

 

「っ!?」

ジェラールとの会話の中でラハールの放ったその言葉にエルザは目を見開き、止めようと動こうとした……その瞬間ーーー

 

 

「行かせるかぁー!!」

 

エルザよりも早く、声を荒らげ、ナツがラハールたちに突撃していた。

 

「何してるの!?」

 

「そいつは仲間だ! 連れて帰るんだぁ!!」

 

ナツのその言葉にグレイたちも動かされ……ラハールたちを相手に、反抗を始めた。

 

 

「お、お前たち……」

その光景を後ろから見つめ、身体が動かないエルザ……そんな彼女の横から声がする。

 

「どうするの……エル? もし、エルがジェラールを行かせたくないなら……私もナツたちと一緒に止めるわ……」

 

さぁ……どうする?

 

シクルがそう投げかけ、エルザはぐっと唇を噛み締める。

 

「全員捕えろォ! 公務執行妨害及び逃亡幇助だぁ!!」

 

「行くな!! ジェラァアアル!!!」

 

 

「もういい!! そこまでだっ!」

 

エルザの止める声が響き……ナツたちは動きを止めた。

 

「騒がせてすまない……責任は全て私が取る……ジェラールを、連れて……いけ」

 

「エルザ!? なんで……」

 

エルザに突っかかろうとしたナツ……だが

 

「ナツ……分かってあげて」

ナツの肩に手を添え、それを止めたシクル。ナツはグッと苦々しい表情を浮かべ、エルザを見つめる。

 

 

ジェラールは抵抗もせず、連行される……その時、ふと足を止めエルザを振り返った。

 

「エルザ……お前の髪の色だった」

 

「っ!!」

その言葉を聞き、エルザは目を見開き、ジェラールを見つめる。

 

「……さようなら、エルザ」

 

「……あぁ」

 

その会話を最後に……ジェラールは護送車へと乗り込み、姿は見えなくなった。

 

 

悲しそうに僅かに震えるエルザを、後ろから見つめ辛そうに表情を歪めるシクル……。そんな彼女に、声が掛かる。

 

「あなたが、シクル・セレーネ様ですね?」

 

「え……?」

シクルに声をかけたのはラハールだった。

シクルが振り返るとラハールは手に何やら手紙のようなものを持っており……

 

「シクル様……あなたに、これを……」

 

「……これは」

ラハールから受け取った手紙を持ち、シクルは目でラハールに問いかける。

 

「そちらはアトスさんからの……文書です」

 

「っ! アトス……からの?」

シクルからの確認の問いかけに頷くラハールを見て、「そう……」と、呟くシクル。

 

「……ありがとう、落ち着いた頃に読ませてもらうわ」

シクルはそう言い、手紙をポケットにしまい、ラハールから離れようとした……その時

 

パシッ

 

「んえ?」

シクルの手をラハールが掴む。

 

「シクル様……」

真剣な表情をするラハールに何かまだあるのか? と思い向き直った。

 

その瞬間……

 

チューーー

 

「……へ?」

 

「……は」

 

「「「はぁあああああっ!!?」」」

 

ラハールがシクルの額に口付けを落とした。

 

「……また、何処かでお会いしましょう」

 

「……は、はぁ」

 

それを最後に去る、ラハール……その姿が見えなくなると……

 

「おいシクル!! 何普通にキスされてんだこの野郎!!」

 

「え、何? なんでそんな怒ってんのナツ?」

うがー! とシクルに詰め寄るナツに困惑するシクル。

 

そして……

ゴシゴシとラハールの唇が触れたシクルの額を擦り始めるナツ。

 

「ちょ! ちょちょちょ!! 痛い痛い! 痛いってば! やめっ!」

 

「あんのやろぉ!! 勝手にあんなことしやがってぇ!!」

シクルが止めるもナツは抑えられず……次第にシクルの怒りが溜まっていく……。

 

「痛いってば! ちょ、もう……痛いって……言ってんでしょぉおおがぁああ!!!」

 

「ごぱぁ!?」

 

最後に、ナツはシクルに殴り飛ばされ……気絶した。

 

 

哀れ、ナツ……因みにグレイやルーシィ、ルージュやハッピーもラハールの行動に怒り狂い、この後、その場を収めるのに苦労したとかしなかったとか……

 

 





はい……とりあえず、前回の最後の後書きのあれは撤回です……次回!!

次回こそ、ニルヴァーナ篇を最後に、終わりたいと思います!!

では、最後までお付き合い、ありがとうございます!

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