フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい! 48話、でございます……あと少しで50話に行きますねぇ……

正直、スランプというスランプに陥らず、ここまで続いた自分が怖いですww

今後もこの調子で続けれればなと思います!
では、48話、最後までお付き合い、お願いします!!


48話 ニルヴァーナ、発射

 

 

ブレインを倒したシクルたちの元へ駆け寄ってくるウェンディとシャルル。

 

「みなさーん!! 大変なんです!」

 

「やっぱり、この騒ぎはあんた達だったのね」

 

不安そうな表情で走ってくるウェンディとため息をつきながら呆れた表情を浮かべ、ウェンディの隣を飛んでいるシャルル。

 

「ウェンディ! どうしたの?」

 

駆け寄ってくるウェンディに首を傾げ、問いかけるシクル。

ウェンディはシクルの前に立つと上がった呼吸を整えながら……

 

「た、大変なんです……! この都市……私たちのギルドに向かっているかもしれないんですッ!」

泣きそうな表情をするウェンディはそう告げた。

 

「らしいが、もう大丈夫だ」

ウェンディの言葉にグレイが微笑みながら言葉を返し、グレイはウェンディから視線を外し後方を見つめる。

 

「へ……?」

 

グレイの見つめる先を見て、ウェンディもやっとその意味に気づく。

 

「ひゃっ!? こ、この人……六魔将軍の?」

ウェンディはビクッ! と身体を震わせながら倒れるブレインをシクルの影から見つめる。

 

 

「それに、向こうには蛇使いも倒れてるしな」

そう、グレイの指す方にはナツにより倒されたコブラが倒れていた。

 

「それじゃあ……」

六魔将軍のメンバーを順調に撃破していることを理解するとウェンディの表情には笑みが浮かぶ。

 

「恐らく、ニルヴァーナを操ってたのはこのブレインよ。それが倒れたって事は、この都市も止まるって事でしょ? ね、シクル?」

 

「え? あ、うん……そうだね」

 

ルーシィからの投げかけに頷くシクル。

だが、その裏では……疑問を感じていた。

 

 

……本当に? 本当にこれで終わりなの?

 

…… “六魔は倒れてはならない” そりゃあ……味方が全員倒れたらその時は私たちの勝ち……六魔将軍の負けとなるけど……

 

それだけ? あの言葉の裏に……何かある気がする

それに……

 

消えた顔の模様の意味は……?

 

 

「シクル……? どうしたのぉ?」

考え事をするシクルが気になり、声をかけたルージュに、シクルは微笑みながら「何でもないよっ」と返した。

 

「でも、気に食わないわね……結局化猫の宿が狙われる理由は分からないの?」

 

怪訝そうな表情を浮かべ、呟くシャルル。

 

「さぁ? まぁ、あまり深い意味はねぇんじゃねぇーか?」

気にしすぎだろと告げるグレイ。

 

「多少気になることもあるが……とにかく、これで終わるのだな」

 

「お、終わっ、て……ねぇ、よ……早、くこれ……止め……」

 

ジュラの言葉に吐き気を堪えながら声を発するナツに……

 

「きゃ!? ナツさん! まさか毒に!?」

 

「オスネコもじゃない!! 全く、だらしないわね!」

 

シャルルの辛口に「あい……」と、弱々しく答えるハッピー。

 

「ごめんね? ウェンディ……傷はほとんど治したんだけど……毒が抜けなくて……頼めるかな?」

シクルの言葉に強い表情で、しっかりと頷くウェンディ。

 

「はい! 任せてください!」

 

「ごめんね……本当なら毒抜きも出来ないことはないんだけど……まだ魔力が回復しきってないんだ」

苦笑を浮かべ、語るシクルに首を横に振り否定するウェンディ。

 

「大丈夫ですよ! 私は戦っていないので……まだ、魔力にも余裕はあります! シクルさんはしっかりと休んでください!」

 

笑顔でそう言うと、ウェンディはナツとハッピーに解毒の魔法をかけた。

 

そして、ナツたちの解毒が終わると、シクルたちはニルヴァーナの力により闇から光に変わった六魔将軍のホットアイ、本名 “リチャード” から聞いた王の間という場所へと向かった。

 

 

「どうなってやがる……」

 

「何……これ」

 

「むぅ……」

 

「……ここが、王の間?」

 

王の間についたシクルたちの目の前に広がるのは何かが壊されたような跡しか残ってはいなかった。

 

無論、この都市を制御できそうな装置は見当たらず……

 

「ど、どうやって止めればいいの……?」

 

「ぬぅ……」

 

「クソッ……! ブレインを倒せば止められると思ったが……」

 

「甘かったわ……止め方が分からないなんて……」

 

ルーシィたちが王の間を捜索し、操縦出来そうなものはないか、探している中……

 

「はぁ……」

王の間、壁際で壁に寄りかかり、座り込むシクル。その表情に浮かぶのは疲労の様子……

 

「シクルゥ……大丈夫?」

心配になり、ルージュが声をかけるも……シクルは二ヘラと微笑み

 

「大丈夫、ちょっと疲れただけだよ」

と言った。

 

すると……

 

「ど、どうしよう……」

オロオロと狼狽えるウェンディの声が……

 

「どうしたの? ウェンディ」

 

「あ、あの……解毒の魔法をかけたはずなのに、ナツさんの体調が治らなくて……」

 

そう言い、ウェンディの見つめる先には地面にへばり倒れ、呻くナツの姿……

 

その姿を見て、シクルはため息をつきながら

「ウェンディ、ナツに “トロイア” ……お願いしてもいい?」

と、告げた。

 

「え……トロイア、ですか?」

 

「そう。 ナツのそれは毒じゃなくて乗り物酔いなんだ」

 

シクルがそう告げると「分かりました!」と、拳を握り頷き、早速トロイアの魔法をナツに掛けた。

 

そして、トロイアの魔法をかけ終わると……

 

 

「うぉおおお!!! 平気だ! 平気だぞぉ!」

と、叫び、飛び跳ねるナツがいた。

そんなナツを見て、にっこりと微笑むウェンディ。

 

「良かったです、効き目があって」

 

「すっげぇーな! ウェンディ!! その魔法、俺にも教えてくれよ!」

興奮が冷めず、ウェンディにお願いをするナツだが……

 

「無理だよ、ナツ。ウェンディのは天空魔法の一つなんだから……ナツが天空の滅竜魔導士にならない限り使えないよ」

と、ケラケラと笑いながらシクルが否定した。

 

シクルの言葉にがっくしと肩を落とすナツ。

 

「ところで……ここって本当に制御する装置が置いてある部屋なの?」

肩を落とすナツを宥めながら辺りを見渡し呟くシクル。

 

「そもそもよぉ……その情報って正しいのか?」

怪訝そうに問いかけるグレイ。

 

「うむ……だが、あのリチャード殿が嘘をつくとは思えん……」

 

一同が制御装置のことのみに意識が向いている中……

「ちょっと……」

と、声が響く。

 

「あなた達、止めるとか制御とか言う前に……もっと不自然なことに誰も気づかない訳?」

 

「どういうことぉ?」

シャルルの言葉に首を傾げ、問いかけるルージュ。だが、その言葉に答えたのはシャルルではなく、ルージュの隣に座っていたシクルだった。

 

「操縦装置や制御装置は見当たらない……さらには、ブレインは倒したはずなのにニルヴァーナは動き続けている……」

 

「おいちょっと待て……まさかニルヴァーナは自動で動いてるってのか!?」

 

「既にニルヴァーナ発射までセットされてるってことぉ……?」

 

グレイとルージュの言葉に頷くシクル。

 

「恐らくね……こんなに探しても何も見つからないし……何より、リーダーであるブレイン倒してもこれは止まらなかった……それを考えると……その可能性が高いわ」

 

シクルの確信ついた憶測を聞き、ウェンディは目に涙を溜める。

 

「そ、そんな……私たちの……ギルドが」

 

「ウェンディ……」

 

「大丈夫っ!!」

 

震えるウェンディを心配げに見つめるシクルと……その肩を掴み、まだ光り輝いている瞳でウェンディを見つめるナツ。

 

「ぜってぇ、ウェンディとシャルルのギルドはやらせねぇ!! 守ってみせる! だから、泣くなよ」

 

ニカッ!と笑顔を見せるナツを見て、次第に笑みが浮かんでくるウェンディ。

そして、そんなナツを見て、シクルもまた……

 

「……そうだね、まだ……終わってないもんね、諦めず頑張ろう!」

と呟き、ウェンディを見つめ頷いた。

 

 

「でも、止めるって言ったってどうやって……?」

 

「止め方も分からないもんねぇ」

 

「壊すとか!」

 

ルーシィとルージュの言葉に即答でそう答えるナツ。

 

「またそーゆー考え!?」

 

「こんなでけーもんどーやって壊すんだっての」

 

「……壊せなくはないと思うけど」

 

「やめて、シクルが言うと本当に出来そうで怖いから」

 

シクルの言葉にため息をつきながら呟いたルーシィの言葉。それに、

 

「それどういう意味っ!?」と問いただすシクルだがルーシィには相手にされず……。

 

「やっぱり、ブレインの野郎に聞いた方が早そうじゃねぇか?」

 

「だが素直に話すだろうか……?」

 

「……もしかして、ジェラールなら」

 

「え?」

 

グレイやジュラたちがニルヴァーナの止め方について、どうしようか話し合っていると、ウェンディがぽそりと何かを呟いた。

 

それが聞こえたシクルはウェンディに声をかけようとする。

 

が……

 

「わ、私! 少し心当たりがあるので行ってみます!」

と、告げると走り出し……

 

「ちょ!? 待ちなさい、ウェンディ!」

シャルルもその後を追い、飛び去ってしまった。

 

「え!? ちょ、ウェンディ!!」

 

「お、おい!? ……どうしたんだ?」

 

ルーシィとグレイが走り去るウェンディに声を掛けるがウェンディは既に走り去っており……

 

「……なんだァ?」

 

「……(今……確かに、ジェラールって……)私、少し心配だから追いかけるね、行くよルージュ!」

 

「あ、あい!」

 

こっちはお願い、とナツたちに告げるとウェンディを追いかけるシクル。

 

「気をつけろよぉ!」

 

「分かってるー!」

 

ナツの掛け声に最後に返ったシクルの言葉を聞くとナツたちも他になにかないか、探索を再開するのだった。

 

 

 

ウェンディを追い掛けるシクルとルージュだが……

 

「あーもぅ……あの子意外と足速いんだなぁ……見失っちゃった」

 

「匂いで追えないのぉ?」

 

「んー……多分近づいてるとは思うけど」

 

ルージュの言葉にそう返したシクルが歩きながら横をスッと振り向いた時……

 

「あ……」

 

その先で、緋色の髪が揺れたのに気づく。

それはよく知る人物……

 

「エル!!」

 

 

「っ! シクルか!!」

シクルの声に気づき、振り返ったエルザ。

そして、エルザの隣には探していたウェンディとシャルル……そして……

 

 

「っ!! ジェラール……」

 

その姿がシクルの視界に入った時……すぅっと感情が冷える感覚がシクルを包む。

そして……

 

「っ!」

一瞬でジェラールの目の前に現れると……刀をジェラールに向けた。

 

「どうしてあなたがエルと行動を共にしているの? 答え次第では容赦しないわ……」

ギロッと睨むシクルにごくっと息を呑むジェラール。

 

「シ、シクル!! 待て! 」

シクルの刀を持つ手を握り、止めるエルザ。

 

「こいつは今記憶が混乱して、以前の記憶が無いんだ!!」

今ここで争っても意味は無い! そう叫ぶエルザを横目で見つめると……1度ジェラールに視線を戻し、ため息をつくと……刀を下ろした。

 

「仕方ない……ここはエルに免じて見逃すわ……でも、いつか絶対、思い出しなさい……

 

エルのことを……そして、今まで何をしてきたか……忘れたままなんて、許さないから」

 

そう告げたシクルに、ジェラールはしっかりと頷き、「分かった」と答えた。

 

ジェラールがそう答えるとシクルから威圧は消える。

 

「ふ、ふぇえ……」

 

シクルの威圧が消えるとウェンディやシャルルは緊張が解け、座り込んでしまった。

 

「あ! ご、ごめんね!? 怖かったかな……大丈夫?」

 

座り込んだウェンディを心配し、肩に手を添え声をかけたシクルにウェンディは弱々しく微笑み、

「大丈夫です……」

と、答えた。

 

「あなた……ちょっとは周りも見なさいよ」

 

「ほ、ほんとごめんね? ……と、そう言えば……結局一番重要なのはこれを止める事なんだけど……その方法は分かるの?」

 

ウェンディとシャルルを支えながら、ジェラールに視線をやるシクル。

シャルルの隣にはルージュも座り、心配している。

 

だが、ジェラールは申し訳なさそうに顔を俯くと……

「……すまない、もはや自律破壊魔法陣も効かない……これ以上打つ手がないんだ」

 

「え!?」

 

「そ、そんな……それじゃあ私たちのギルドはどうなるのよ!? もうすぐ……、すぐそこにあるのよ!?」

 

シャルルが体を乗り出し、ジェラールに声を荒らげる。

 

その時……

 

 

ゴゴゴゴゴッ……

 

突然、地鳴りが響く。

 

「な、何っ!?」

 

「これは……?」

 

「この魔力は……なんだ?」

 

「これ……まさかっ!?」

 

ルージュやウェンディたちがその地鳴りに戸惑い、辺りを見渡していると1人、その正体に気づいたシクルが都市の進行方向を見つめ……目を見開く。

 

「まさか……ニルヴァーナの発射!?」

 

「「えぇっ!?」」

 

「なんだと!?」

 

「そ、そんな……っ!」

 

「く……っ!」

 

 

シクルたちの見つめる方向には化猫の宿のギルドと……ギルドを狙い光る怪しい光が見える……。

 

「や、やめてぇえええええええっ!!!!」

 

ウェンディの悲痛な叫びが辺りに小玉する……。

 

 

「くっ……!! (ダメ……防御が間に合わないっ!)」

 

発射寸前のそれを見て、唇を噛み締め、表情を歪めるシクル。

 

 

誰もが、もう間に合わない……そう、思った。

 

その時……

 

 

ズドォオオオオオオッ!!!

 

大きな音を立て何かが上空から降り、都市を支える足の1本に直撃。

 

それにより、発射したニルヴァーナは化猫の宿を逸れた。

「「「きゃああ!?」」」

 

「ぐっ!?」

 

「な……」

 

「い、今のは……」

 

 

揺れが治まり、一同が上空を見上げると……そこには……

 

「っ!!」

 

『 魔導爆撃艇クリスティーナ!!!』

 

 

六魔将軍により、爆破され墜落したはずの天馬のクリスティーナが上空を飛んでいたのだった……。

 

 

クリスティーナから発射された弾がニルヴァーナの狙いを逸らしたのだった……。

 

彼らの希望はまだ……途絶えてはいなかった。

 

そして……その影で蠢く一つの邪悪な力が……姿を現そうとしていた……。

 

 

「ククク……さァ、始めるかァ……」

男の声が静寂に響く……。

 

ザッーーー

 

立ち去った男の背後では……倒れる3人と1匹の姿が……

 

 

「…………シ……クル」

 

 





はい! もう少しでニルヴァーナ篇も終わりです……

今回長かったですね!! この回が終わりましたら少し日常篇を入れ、エドラス篇に入りたいと今のところ考えております!

では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!

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