フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい!!では、続きを投稿していきたいと思います。

この時間に投稿したら明日は投稿できない気もするのですが……

気にせずいってみましょう!

では、最後までお付き合い、お願いします!


46話 闇に染まりし男

 

「ラディティ……なんで」

 

「なぜ、おいちゃんガここにいるか……かィ?そンなの……貴様を殺ス為に決まってんだロォ……なァ゛?」

 

ニヤッと笑い、シクルを見つめるラディティにブルリと震えが起きる。

そして、シクルは十六夜刀を構え、ルーシィやヒビキたちの位置を確認する。

 

「く……(どうする……? ルーシィやヒビキはもう魔力もない……戦えない)」

 

流石にこの人数を……しかもこの足場の悪いところで庇いながら目の前の敵と戦うのは無理だ……と、考える。

 

「(それに……)あなた……その魔力、何? 前はそこまで黒くなかった……何をした?」

 

ラディティから発せられる魔力の質が……以前対等した時と明らかに違うことに気づいていた。

 

シクルからの問いかけに……ラディティが答える事はなく……

 

「……デッド・ブレイク」

 

「っ!?」

ラディティの振り下ろした剣から、黒い波動が地面を伝い超速度でシクルに襲いかかる。

足に力を入れ、空中へと飛び上がり回避する……が

 

「……デッド・ウィング」

 

「んな……うっ!」

 

黒い剣尖がシクルに襲いかかる。上空の為、うまく避けれず幾つか身体を掠る。

 

「「「シクルっ!!」」」

 

「っ……貴方、そんなに邪悪な魔力……だったかしら?」

 

斬れた箇所を抑え、ラディティを見つめるシクル。

その視界に……黒く光るものが入る。

 

「それ……魔水晶?」

ラディティの手首にはめられている腕輪……それは黒く、邪悪なオーラを放っていた。

そして……

 

この感じ…………何処かで、感じたことが……

 

何処で? とにかく……いい感じはしないわね

 

 

グッと睨むシクルに慄く事はなく、逆に笑みを深めるラディティ。

 

「オ前は……目の前の俺ニ集中しスぎた」

 

「……え」

 

 

「「「きゃあああああっ!!!」」」

 

「「うわぁあああああっ!!!」」

 

「っ!? みんな!!!」

 

背後から聞こえたルーシィたちの悲鳴に振り返ると……黒炎の柱がルーシィたちを襲っていた。

 

「伍ノ太刀 鳴雷月!!」

 

シクルの刀から発せられた雷は黒炎を打ち消した。衝突の衝撃で、煙が巻き上がる。

視界の悪い中、シクルの目には……

 

「っ! ナツ……!!」

 

ロープが切れ、川に流されるナツの乗った筏が見えた。

シクルは咄嗟に……

 

ガシッ!

「へ?」

 

近くにいたルーシィの手を掴むと……

 

「ルーシィ……ナツを、お願いっねぇ!!」

ルーシィをナツのところへとぶん投げた。

 

「へ!? きゃああああああっ!? いきなりすぎよぉおおおおお!!!!」

 

濁流に巻き込まれた筏は物凄いスピードで川を下っていたが、ルーシィを投げたシクルの腕は寸分の狂いもなく、ナツの上へとルーシィを投げ飛ばすことに成功。

 

そして……

 

「あまり魔力も残ってないから……出来れば見逃して欲しかったんだけど……あなたそれ、普通じゃないものね……」

 

と、呟き……シクルは魔力を解放する。

 

「ニルヴァーナの件もあるし……あまり長い時間は取らさせないわよ」

 

「フン……今ノおいちゃンは前とは違ウぞ……

 

貴様ハ、死するノミ……ころ、す……」

 

「それは……実際にやってから言いなさいってぇのっ!!!」

 

ラディティとシクルが同時に飛び出す。

そして、ラディティは闇を、シクルは光を纏いぶつかり合う。

 

その衝撃の余波は離れたところにいたヒビキやルージュたちのところにも来ていた。

 

「くっ! 大地が揺れる……魔力のぶつかり合いでここまで……」

 

「シクル……!!」

 

「ね、ねぇ……ここにいたらオイラたちまで巻き添えくらうんじゃ……」

 

ハッピーはそう言い、不安そうにシクルの方を見つめるが……シクルも何も考えていないわけではなかった。

 

ガッ!

 

「ん?」

シクルはラディティとのぶつかり合いの中、隙の出来た腕を瞬時に掴み……

 

「ここじゃやりにくいからね……場所移すっよぉ!!!」

 

投げた。

 

「「「「えぇえええええっ!?」」」」

 

シクルは驚愕するヒビキたちを振り返り……

 

「あれは私が何とか抑えるから! ハッピーはナツを! ヒビキたちは回復次第ニルヴァーナをなんとかする方法を探して! ルージュはウェンディを守ってね!」

 

早口でそれを伝えると光の魔力を再び纏い、投げ飛ばしたラディティの元へと飛んだ。

 

 

トッ……と、静かに音を立て地面に足を着くと目の前の光景を睨む。

 

そして、十六夜刀から龍鱗刀へと刀を変える。

「少し思い出したんだけど……あなた、それ……いったい何処で手に入れたの?」

 

刀を向けられるラディティだが先程と何処か様子がおかしく……

 

「う……ァ、ァア……お、い……ゃんは、……こ、ロス……」

 

「これは……(侵食されかけて……いや……)」

 

シクルの目の前にいるラディティは……既に人一人が止めておけるほどの魔力を優に超える量をその身に宿し……暴走していた。

 

 

これは……もう……

 

 

シクルが悲しく表情を歪め、顔を俯き苦しそうに唸るラディティから少し目を、離していると……

 

バリッ!! という音が鳴った……。

 

「……へ?」

 

その音に呆気にとられ、ラディティを見やると……

 

 

「……なに、それ」

 

「うぅウ゛……!! がァア゛!!」

 

シクルの目に映ったのは……

 

ラディティの背中を突き破り飛び出る……悪魔のような翼……そして

 

「竜の……手?」

 

ラディティの腕は竜のような鱗が浮き出て、爪も鋭く尖り、まるで竜の手のような見た目に変化していた。

 

「ちょいちょい……これは想定外だってば……」

 

口元を引くつかせ、苦笑を浮かべるシクル……そして……

 

 

バリバリッ!! バキィ!!

 

「グゥ!! ガァアアアアア゛ァア゛ァ゛!!!!」

 

ラディティは人の姿から……怪物のような姿へと変わってしまった……。

 

息を荒くさせながら徐々にシクルへと視線を向ける。そして、右腕を天高く振り上げる。

 

シクルははぁとため息をつき……天高く上げられる腕を見上げる。

 

「へぇ……何それほんと……そりゃもう……」

振り上げられた腕には黒く、邪悪なオーラが纏いそれは物凄い魔力をひめているのを感じとる。

 

シクルが足を少し後退させた瞬間……

 

「グァアアアア゛ァアア゛ア゛ァ゛!!!」

 

その魔力の塊を、振り下ろした。

 

 

「ありえないってぇーの!!」

 

ズッドォオオオオオオン!!!!

 

シクルの方が一瞬早く回避するも、地面を盛り上がらせ、砕いたその威力に……シクルは目を見開いた。

 

「そっれは……いやもう……何その威力……」

 

そんなん……

 

ジロリと赤く光る目がシクルを追い、捉えた瞬間……その巨大に似合わぬスピードでシクルに突進してくる。

 

「チートでしょぉおおおおっ!?」

 

ズジャッギィイイイイイン!!!!

 

黒いオーラを纏った鋭い爪がシクルの長い髪をほんの少し掠る。

 

「ちぃっ!!」

体を低く屈め、ラディティの懐に入ると……

 

「龍鱗 龍炎斬!!」

その身体に刀をひと振り、斬りつけ真っ二つに斬り捨てる……が

 

ボゴボゴボゴッ……

 

「はぁ!? ちょ……ほんとチート過ぎるって!」

斬りつけたその瞬間から、傷が塞がっていく。そして……

 

「がァっ!!」

口を大きく開き……

 

「っ!?(咆哮っ……!!)」

 

ズギャゴォオオオオオオオオッ!!!!

 

真っ黒な咆哮が……シクルを呑み込んだ。

 

 

 

「グルル……」

 

煙が晴れ……シクルの立っていた場所は地面がえぐれ焦げ、遠くの方まで木々は塵になり、森が言葉の如く消えていた……。

 

そんな光景の中……ラディティから遠く離れた場所の一箇所に、焼け焦げていない土があった……。

 

 

ゴッ……ガッ……ボコッ!!

 

「っ……ゴホッゴホッ……ハッ……ゲホッ」

土の下から手が現れ、そこから、這い上がる様に出てきたのは傷を負ったシクルだった。

 

 

「はっ……はぁ……プッ!」

 

口に溜まった血を吐き出し、呼吸を整えながら目の前を見据える。

 

「な、ん……あっぶな……いって、の」

 

あと少し遅れてたら身体消し飛んでた……

 

咆哮に包まれる一瞬前にシクルは光の力ではるか後方へ飛び退き、それでも避けきれないと判断し、地面に穴を空け、そこに潜った。

 

そしてその瞬間、大きな爆発と共に咆哮が放たれたのだ……。

 

 

ザッーーー

 

「っ!!」

 

呼吸が整い始めたシクルの目の前に更に身体が怪物へと変化したラディティが現れる。

 

その姿を見つめ、目を細めるシクル……。

 

「はぁ……なんでそれに手を出したかなぁ……ねぇ? それは……人が扱っちゃいけないものなんだよ……それは……」

 

命を、殺す……悪魔の道具……

 

 

はぁと再びため息をつき……

 

「(残りの魔力はもう殆どない……回数で言うと滅竜魔法が2.3回……奥義なら1回と……歌魔法が1回……か)なら、回復は捨てなきゃね……」

 

よし……! と手を叩き、立ち上がると目を瞑り……深呼吸をする。

 

「スゥ……ハァ………………行きます」

 

ブワッ! とシクルの周りに突風が舞う。

 

「ッ!? グゥ……!」

 

突風はラディティの視界を遮る。

目を瞑った、その瞬間……

 

「光竜の剛拳・連撃!!」

 

剛拳を連続で繰り出し、ラディティの身体に重い衝撃とダメージを少しずつ増やしていく。そして……

 

グッ! と足に力を入れ直すと

 

「月竜……双撃鉄!!」

 

ゴッ!!! と両手でラディティの身体を遠くへ殴り飛ばす。

 

「ゴァアァアア!?」

 

吹っ飛ぶラディティを追い……シクルは高く飛翔し……

 

「滅竜奥義……月華炎乱舞っ!!!」

 

振り下ろした手の先から、蒼い炎の月華がラディティの身体を襲い……包み込んだ。

 

 

炎がラディティの身体を攻撃し……それが消えると……

 

全身火傷の傷を負った気絶しているラディティが倒れていた。

 

そこから少し離れたところにシクルは足をつき……そのままガクリと膝をつく。

 

「はっ……はぁ……ま、だ……」

 

全身から汗が伝い、身体が震える……それでもシクルは、立ち上がりラディティの元へと歩み寄る……。

 

そして……その横に膝をつく。

 

赤く光る瞳は弱々しく、シクルを見つめていた……。

その瞳はシクルにとって、どこか……助けを求めているように感じた。

 

「……大丈夫……絶対、助けるから……ね?」

 

そう言い、微笑むと……ラディティの身体に手をかざす。

 

 

「【我、聖なる月の名の下に

 

その身に宿りし 邪なる力

 

光へと解放せん】

 

歌魔法(ソングマジック)解除(ディスペル)」

 

 

シクルの手から放たれた光は……ラディティのその怪物となってしまった身体を包み込んだ……

 

 

そして…………光が完全にラディティの身体を包み、その身体に溶け込むように消えていくと……

 

 

「……ぅ…………っ」

 

怪物の姿から……ラディティは人の姿へと、戻った。

 

「……は……ぁ……」

 

その姿を確認し、呼吸をしている事を確認すると……シクルは糸が切れたように地面に崩れ落ち……意識を、手放した……。

 

 

 

…………ル…………シ……ル………ク……

 

 

 

……ん……? ……こ、え…………この、声……

 

 

「ル……シクルっ!!!」

 

自身を呼ぶ声に目が覚める。

目をゆっくりと開け、見えたのは……

 

「……ルー、ジュ」

涙を流し、身体を揺する大切な相棒の姿。

 

「シクルっ!! 良かった……気がついた……! 良がっだぁあああああっ!!!」

 

シクルが目を覚まし、小さく微笑むと涙が滝のように流れ、号泣し、シクルに抱きつくルージュ。

 

「ちょ……ルージュ……痛いって……はぁ」

 

ギューッと抱きついてくるルージュを見下ろし……ふぅと一息つき、その頭を撫でる。

「ごめん……また、心配させちゃったね?」

 

シクルがそう謝るとルージュは首を小さく横に振ると、涙を拭いながらシクルを見上げると……ニパッと笑顔を見せ、

 

「大丈夫だよぉ! あたし、シクルは絶対……あたしを置いていかないって、信じてるからァ!」

と、言った。

 

「ルージュ……うん、私は……ルージュをひとりにしないよ」

シクルもそう言い、にっこりと微笑むとゆっくりと身体を起こし始める。

 

「え、シクル……もう起きて大丈夫なのぉ……?」

 

ルージュが心配そうに問いかけるも

 

「うん! 大丈夫……ちょっと休んだから」

と、笑みを絶やさずそう言ったシクル。

そして、視線を上の方へと向け……

 

「アレが……ニルヴァーナね?」

 

視線の先には、生き物のように伸びる大きな6本の足を動かし、移動する大きな要塞のような物体があった。

 

「あい……」

と、頷くルージュを横目に、よしっと意気込むと……

 

「ルージュ! あの上に行くよ!」

と、告げた。

 

「え、ええ!? そんな! 無茶だよぉ……だってシクル……少し休んだって言ってもまだ怪我が……」

ルージュはそう言い、シクルを止めるが……

 

「大丈夫だって! それに……皆の匂いもあの上からするんだ……ね? 私だけここで休んでるわけには……いかないでしょ?」

 

お願い……と、言うシクルを見つめ……ルージュはやれやれとため息をつく。

 

「はぁ……ほんと、シクルは頑固だよねぇそういうところぉ……分かったよぉ、でも……危なくなったら迷わず安全なところに避難させるからねぇ?」

 

それだけは譲らない、とそう宣言したルージュは「分かった……」と頷くシクルに満足気に微笑むと、その背を掴むと、空高く飛び始める。

 

「じゃあ、行くよぉ!!!」

 

「うん!!!」

 

 




はい! いやぁ……なんか想像より長くなりそうで……


そしてラディティは今後登場するかな……いや、どこかでするかも……?とりあえず、シクルが目を覚ました時ラディティさんは姿を消していたとだけ……何故いなかったのかは不明です。

きっとシクルが目覚める前に目が覚めて、去っていったのだと……

では、46話最後までお付き合い、ありがとうございます!!

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