ちょっと急ピッチな感じもするんですが……最後までお付き合い、お願いします!!
バトル・オブ・フェアリーテイルから一夜明けた次の日……
ギルド内は落ち着きを取り戻し、街も多大なる被害はあったものの今は落ち着き、普段と変わりなく過ごし、先延ばしとなったファンタジアへ向け、準備が進められていた。
そして、街の中心……今回のバトルで1番被害の大きかったカルディア大聖堂前に1人……シクルが、ぽつんと立っていた。
両手を合わし、目を瞑り集中し……
「【 我、聖なる月の名の下に
聖なる光に照らされ その姿
正なる形に戻さん】
シクルを中心に淡い銀色の光が輝くとそれは街の壊れた建物を徐々に包み込み光が消えた頃には壊れた街中は元の姿に戻っていた。
「……ふぅ」
街が元に戻ると魔法を解き、目を開け、空を見上げるシクル。
「……また……やっちゃったなァ……」
脳裏に思い浮かぶは……確実な殺意の感情を持った自身と……後少しで仲間を……ナツを殺そうとしていた自分自身……
そっと右耳につけているピアスに触れる。
「……ダメだなぁ、私ってば……」
まだ、コントロール出来ないなんて……
「……こんなんじゃ……守れないよ」
だから……
「……もっと、強くならないと……」
空に登る月を見上げ、ふぅと最後にもう1度ため息をつくとギルドを見つめる。
「……帰ろ(帰ったら……謝らないとね)」
未だに宴を繰り広げているだろうギルドへと足を向けた。
ギルドに戻ると予想した通り、やはりお祭り騒ぎのメンバーにクスリと苦笑を浮かべる。
「今年は全員参加だからなぁ」
「えぇ!? そ、それじゃあジュビアも参加なんですか……?」
「待って!? それじゃああたしも参加なの!? うそっ!」
グレイの言葉にジュビアとルーシィは声を上げ驚きを見せるがその表情はどこか嬉しげ。
そんな2人にグレイは苦笑を浮かべ、クイッと後ろを指差す。
「まぁ、あんなんファンタジアに参加できねぇからなぁ」
グレイの差す方には包帯でグルグル巻きにされた超重傷のガジルと同じく包帯グルグルの口まで包帯で覆われているナツの姿だった。
「あんなのって言うなよ……」
「ふぉへあはんがふんがっ!!」
唇を尖らせ拗ねたように文句を言うガジルと何を言ってるのか全く分からないナツ。
誰もが聞き取れない中ガジルだけはその言葉を理解し……
「無理だね。参加できるわけねぇだろ」
と会話をする。
「ふぉあえばふぅがふぅがばお!!」
「それはかんけぇねぇだろ!? 子供かてめぇは!!」
「なんで分かるんだろ……」
「きっと似たもの同士だからだよ……」
「だねぇ……」
ガジルとナツの会話に苦笑を浮かべ、乾いた笑いをするルーシィ、ハッピーとルージュ。
他にも怪我をしているのに騒ぎ回るせいで傷が開き痛みに呻くものやそれを見てワタワタするもの、笑い転けるもの……
その様子をギルドの入口から眺めていたシクルはつい、プフッと笑った。
そして、その笑い声に騒がしい中、全員がシクルの帰りに気づいた。
一斉にこちらへ向かれる視線にビクッと肩を揺らすシクル。
「あ! シクル!! お帰りなさい!!」
「お! やっと戻ってきたなぁ!」
「街直してくれてありがとなっ!!」
「シクルも飲もーぜ!!」
「おかえりぃ! シクルゥ!!」
シクルの暴走の件は昨日、あの戦いのあと目を覚まして直ぐ、ギルド内全員に伝わった。
仲間を本気で殺そうとした……その話は既に皆聞いているはずなのに……誰1人として、シクルを恐怖の目では見ていない。
その光景を見つめ、目を見開きながらも拒絶のないことに驚き、また嬉しさを感じていた。
そして、一際強い視線を向けるものが1人……
ナツだった。
その視線に気づき、ゆっくりとそちらを向くと……
「っ……」
痛々しいほどの包帯を巻かれた身体……その中で、左手の傷は刀を握った時の傷だ……その姿を見た時ズキッと胸が痛んだ。
「……ナツ」
じっと見つめるナツから目を離せないシクル。だが、ナツが意を決して近づこうと動くとビク! と、肩を揺らし一歩下がる。
「……ごめん、私今日は……」
「え!? ちょ、シクル!!」
「もう帰んのかよ!?」
「待てって!!」
そう言い、引き止める仲間達の声を聞こえないふりをし、ギルドを去ろうとする。
その時ーーー
ドンッーーー
扉の前で何かとぶつかるシクル。
「っ! ったぁ〜……」
何かにぶつけた鼻を抑えながら前を向くと……
「……ラクサス」
シクルを見下ろすラクサス。その身体はナツやガジルよりは少ないものの包帯が巻かれていた。
ラクサスはほんの少しシクルを見下ろすとその横をスッと通り過ぎて行く。
「……シクル、ーーーーー……」
「っ!!」
横を通り過ぎる時……シクルの耳元で囁かれたラクサスのその言葉にシクルは目を見張り、振り返る。
振り返った先では、ラクサスにギルド内から文句の声が上がっていた。
「よさないか、お前達!!……行け」
声を荒らげるメンバー達はエルザの一喝で静まり返る。そして、ラクサス再び足を医務室で休んでいるマカロフの元に進めると……
「ふぁぐあぐー!!!!」
ナツがその前を立ち塞がった。
「……ナツ」
ラクサスを前にプルプルと身体を痛みに震わせながら、息を荒くし、立ち塞がるナツ。
「ふぁぐが!! ふあがふぁんがふぉんぐがうがばうが!!」
全くなんといっているか分からない言葉を発するナツに一同がポカーンと唖然とする。
「……通訳よろしく」
ルーシィの一声で、はぁ……とため息をつくガジル。
「 “2対1でこんなんじゃ話にならねぇ 次こそはぜってぇ負けねぇ……いつかまた勝負しろラクサス!! ” ……だとよ」
「え……でも、戦いには勝ったんでしょ?」
ルーシィの問いかけに首を横に振るガジル。
「俺もあれを勝ちとは言いたくねぇ……
あいつはバケモンだ……あの怪我も、ほとんどあの女との戦いで作った傷だ……もし、ファントム戦にあいつがいたならと考えたら……ゾッとするぜ」
そして、そのバケモノに傷を負わせたあいつも……
ガジルはそっと、気づかれないように入口で突っ立っているシクルに視線を向ける。
一方、ナツにその言葉を告げられた張本人、ラクサスは……暫くナツを見つめると何も言わず、その横を通り過ぎる。
「っ……!! ふぁぐあぐー!!!!」
無視されたことに腹を立てたナツが振り返り、声を荒らげると……
ラクサスは静かに右手をあげた。
「っ!!!」
それをみたナツは一瞬驚きに目を見開き、パァ!! と笑みを浮かべた。
それに驚いたのはずっと見つめていたシクルも同じだった。
「……ラクサス」
シクルは医務室へと入っていくラクサスを見つめ、静かにシクルもギルドを後にした。
ギルドを後にしたシクルはマグノリアを一望できる丘の上にそびえ立つ、大きな大きな樹木の上に寝転がっていた。
空を見上げ、はぁと沈んだ様子を見せるシクル。
「……お別れ、か」
流石にあんな事をしたのだ……きっと、マカロフはラクサスを破門にするだろう。
それは分かっているのだが……
「……やっぱり、寂しい……な」
仲間がいなくなるのは……どんな人でも寂しく感じる。
「……きっとナツは認めないだろうなぁ」
その様子を容易く想像出来るな、と思いシクルはクスクスと笑みを浮かべる。
だが、その笑みはすぐに消え……再び悲しい表情を浮かべた。
「……やっぱり……合わせる顔、ないよ……」
あんな……あんなことしちゃった後なのに……会える訳ない……
魔力が暴走していた時の記憶は、ほとんどシクルには残っていない……だが、確かに……ナツに刀を向けたのは覚えていた。
「……殺そうとした…………嫌われてたら、どうしよっか……」
あの笑顔が……もう、私に向けられることがなかったら?
そう、考えた時……ゾクッと背筋が震えた。
「あ……なんで? どうして……こんなに……こんなにも……怖い、の? なん、で……」
どうして……こんなにも恐怖を感じるんだろう……どうして……?
こんなにも……嫌われることに恐怖を……抱くのだろう……。
その事だけがシクルの脳裏を埋め尽くしていた……。
そして、それは次第に表情にも現れ、涙が溢れ始めた。
「……怖い…………怖いよ……ナツっ」
嫌いに……ならないで……あなたに嫌われたら……
嫌……嫌われたくない……怖い……苦しい……
苦しいよ……ナツ……
シクルは涙を拭うことも無く、顔を伏せ嗚咽を堪えていた。
すると……
フワッーーー
シクルの頭に大きく、暖かな手が乗せられた。
「っーーー! え……?」
頭に乗せられたそれにハッとし、顔を上げると……
「……ナ、ツ……」
目の前には包帯でグルグル巻きでギルドで絶対安静が言い渡されていたはずの、ナツがいた。
シクルの涙に濡れる瞳を見ると目を大きく見開くナツ。
だが、すぐににっと微笑み、その涙を左手で拭う。
……暖かい
ナツの体温の高さを心地よく感じていたシクル。
だが、そのナツの血の匂いに気づくと……
「っ!! だ、ダメっ!」
ドンッとナツを押し返す。シクルのその行動に驚き、手を離してしまうナツ。
「ご、ごめ……わ、わた、し……」
身体を震わせ、怯えた表情を浮かべるシクル……そんな彼女を見つめ、ナツはじっとしていると……
ギュッ……
「……ぁ」
固定のされていない左手でシクルの背中に手を回し、抱きしめた。
そして、安心させるかのようにその背をぽんぽんと叩くナツ。
そっ……と、ナツの顔を見上げると、ナツはニカッといつもと変わらない笑顔をシクルに向けた。
「っ! ナ、ツ……ナツぅ……ごめ、ごめんね……怪我、させて……ごめんっ」
堪えていた嗚咽を出しながらナツに抱きつき泣き喚くシクル。
この夜は、シクルの背をずっと落ち着かせるかのようにぽんぽんと叩き、シクルが泣き止むまでずっとそうしていた。
そして、ラクサスが破門を言い渡された次の日、ファンタジア当日……
街中はパレードで大賑わいだった。
ルーシィやレビィ、ビスカ達によるダンスやグレイとジュビアの共演、エルザの剣による舞、重傷の身体を無視しながらパレードに参加したナツは演出の途中でむせ込み、辺りから笑いがこみ上げる。
そして、一際輝く光が照らされると……光の中から淡いピンク色のドレスを着たシクルが現れ、竪琴の音を静かに響かせながらその周りを沢山の光の玉が舞い踊る。
そんなパレードの最後は、マスターマカロフのファンシーな踊りだ。
見物客からは多くの笑いと歓声が響く。
そんな影でじっとパレードを見つめる大男……ラクサスの姿があった。
ラクサスは奇妙なダンスを踊るマカロフを見つめるとフッと微笑み……その場を去ろうとする。
だが……
「っ!?」
視界の隅で映った光景に目を疑い、パレードを振り返る。すると……
ギルドメンバー全員が、右手を上げ、人差し指を天高く、掲げていた。
それは、昔幼い頃にラクサスがマカロフにしたある合図……
“例え……姿が見えずとも……
どんな遠くにいようとも……
ずっとお前のことを……見守っている”
言葉にせずとも、マカロフからのそのメッセージが心に届いたラクサスは、目に涙を浮かべ……
「じーじ……」
と、幼い頃に呼んでいたその愛称を口にした。
ラクサスはそれを最後に、パレードを振り返ることはなく……立ち去っていった……。
その後ろ姿を横目で見つめ……ふぅ、とため息をつくシクル。
「……ラクサス」
シクルの脳裏に蘇るは、昨日のラクサスの一言……
“シクル……悪かったな……”
シクルは小さく微笑むと……空に輝く満月を見上げ……
「……ラクサス…………またね……」
と、ひとりでに呟いた。
こうして、2日延びたファンタジアは大成功に終えた。
その後、ナツからの大抗議を受けるマカロフや、責任を取りマスターを辞めると大騒ぎになった妖精の尻尾だが、フリードの丸刈り坊主という古い反省の意の示し方に、その場は収束した。
やっと落ち着き、いつも通り、ギルド内で喧嘩を繰り広げるナツを見つめ……ふと、シクルは考える……。
「……(なんで……どうして、あの時私は……あんなにも、恐怖を覚えたの……?私……ナツの笑顔を見て……凄く、凄く安心した……)」
そして……
「……ドキドキ、した」
未だに思い出すとどこか恥ずかしく、でも嬉しくてドキドキが溢れるこの想い……
「……ま、さか……ね?」
「? どーしたのぉ? シクルゥ?」
小さな呟きを聞き取ったルージュが横からシクルに問いかける。
「う、ううん! 何でもないよルージュ! さて……たまには仕事でも行こっか?」
誤魔化すようにそう言うシクルにルージュは目を見開く。
「あ、あの面倒くさがりのシクルが……自ら仕事にぃ!? 熱でもあるのぉ!? 大丈夫っ!?」
「あのね……私だって行く時は行くわよ」
私をなんだと思ってんのさ……と小さくため息をつき、さぁ仕事だーと振り返ったシクルの目の前に……
「仕事行くのか!? なら一緒に行こーぜ!! シクルっ!!」
ナツの顔がドアップで突然現れた。
「っ!? き、きゃぁあああああ/////!?」
ドゴォ!!!
「ぐもぉ!?」
突然の事に、顔を真っ赤にしナツをぶん殴ったシクル。
吹っ飛ぶナツを見てはっ! と我に返るシクル。
「あ……! ご、ごめ! ナツ!? 大丈夫!?」
吹っ飛んだナツにわたわたと慌てた様子で駆け寄るシクル。その姿を見て……
「あらあら……」
「……もしかしてこれって」
「……そうかもぉ?」
「へぇー? あのシクルがねぇ……ニヤニヤ」
ミラ、ハッピー、ルージュ、ルーシィの2人と2匹の小声での会話……それを聞き取ったシクルはカァ!! と耳まで赤く染め……
「う、うるさぁあああああい/////!!!!」
と、叫んだのであった……。
収穫祭 B・O・F篇 完結〜
next.story ニルヴァーナ篇 開幕
〜予告〜
なんで私まで討伐メンバーに入ってるのよ……めんどくさいなぁ
ウェンディ……もしかして……?
なんで……なんで、ジェラールがっ!?
あんたなんかに……星霊の鍵を持つ資格なんかない!!
な……あなた……なんで、ここに!?
ナツを離しなさい……離さないのなら……あたしの光が、あなたを滅する
何やってんのよ……早く、起きなさいよ……皆……ナツっ!!!!
……おいで…………私たちのところに……
はい!!いやぁ……収穫祭終わりましたね!
そしてここでついに気持ちに気づき始める主人公ちゃん!
どうなりますかねぇ……では、次は六魔将軍との戦闘です!
正直、原作持ってないと誰と誰が戦っていたかとか正確に覚えてないのできついです(汗)
でも、ちゃんと最後まで終わらせますよ!!
では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!