フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい!!昨日投稿出来なかったので頑張りましたっ!!


ちょっと主人公の設定を増やしてます。
設定内容は後書きに載せたいと思います。
では、最後までお付き合い、お願いします!!


39話 黒髪のシクル

 

 

神鳴殿の破壊に成功し、痛む身体を無視し大聖堂へと走るシクル。

 

途中、眩い光に包まれ、目の前が霞み足を止めたがすぐに光は収まり、再び走り始めた。

 

 

そして、大聖堂についた時……目の前ではラクサスに隠された本当の力、 “竜の力” を使いナツと共闘していたガジルに向け強力な魔法を放つところだった。

 

 

「消し飛べぇ!! レイジングボルトォ!!」

 

もうほぼ発動しかけており、2人を抱え完全に避けるのは無理だと瞬時に判断したシクルはナツとガジルの前に立ち、庇った。

 

 

「くっ!!」

 

「シクルっ!?」

「てめぇ……なんでっ!?」

ガクッと膝をつくシクル。流石に魔力の減っていた身体でそう何度も魔法を受ければ少量でもダメージは重なっていく。

 

 

「っ……(痛みはないけど……痺れがっ)」

麻痺により体が動かせないシクルだが顔を上げ、震える足に力を込め、立ち上がりラクサスを見据える。

 

 

「ラクサス……お願い、話を聞いてっ!」

 

「黙れ……」

 

「ラクサスっ!!!」

 

「黙れぇえええっ!!」

 

再びシクルを襲うラクサスの雷。

 

「つぅー!! お、願……ぃ! 私の……話、を……聞いてっ! ラクサスっ!!」

 

「てめぇの話になんか興味はねぇ!! 黙れ、シクルっ!!」

ラクサスのその言葉と表情、瞳を見てシクルは悲しくなる。

 

「なん、で……どうして……あな、たは……仲間を想う……優しい、人……だったッ!!

 

あの日から……貴方が……苦しんだのは……よく、分かる……そのせいで、誰の、言葉も……想いも、届かなくなっていった……でもっ!

 

今だけは……私、の……話を、聞いて!

 

ラクサスっ!!!」

 

「黙れ!! 俺は……俺は誰にも指図は受けねぇ!! てめぇも……じじぃも!! ギルドのやつの声も!!! 俺には関係ねぇ!!!」

 

シクルに叫び、ラクサスは再び魔力を高め、シクルへと標準を合わせる……。

 

「ラクサスっ! やめろォ!!」

 

 

「っ……」

シクルはギュッと目を瞑る……雷に耐える為ではない……ラクサスの……その眼を見るのがシクルは怖かった……。

 

 

ラクサス……お願い……話を……

 

 

貴方の……おじいちゃんが……ラクサス……

 

 

「やめてぇっ!!! ラクサス!!!」

 

「「「っ!?」」」

 

「……レ、ビィ」

 

大聖堂の入口で呼吸を乱し、ラクサスを見つめるレビィの姿……その瞳は、涙で濡れていた。

 

 

「ラクサス……お願い……シクルの話を! 聞いてあげてっ!! じゃないと……きっと後悔することになっちゃうよ! ラクサス……」

 

そうラクサスに叫び、足を進めるレビィ……

 

 

「よせっ! 馬鹿、来んじゃねぇ!!!」

ガジルの声が響く。それでもレビィは足を止めない。

 

「ラクサス……あんたの……あんたのおじいちゃんが……マスターが!! 危篤なの……」

 

「「っ!?」」

 

「……じじぃが?」

レビィの言葉にナツとガジルは目を見開き、言葉を無くしラクサスも驚愕の表情を浮かべる。

 

その表情に、一度は気持ちが揺らめいたか……マカロフに会ってくれるのではないか?そう考えたシクルだが……

 

 

「ククク……そうか……遂にくたばるのか……これで妖精の尻尾は俺のもんになるんだなぁ……!!」

 

…………ラクサス……どうして……

 

 

その言葉が耳から脳へ、そして感情へと流れた時……どこかでピシッと音が小さく鳴った。

 

 

「ラクサス……どうしてっ! どうしてそんな事言うの!? ラクサスっ!!!」

 

「黙れ、レビィィイイイイイッ!!!!」

 

 

怒りに狂うラクサスはシクルからレビィへと標準を変え、高圧な雷を放った……。

 

「っ!! レビィっ!!!!」

「あぶねぇっ!!」

 

ナツとガジルの声が静かに響く……レビィは身構え、身体が固まり、目を瞑る。

 

 

だが……

 

「ぐっ! あぁあっ!!!」

 

「っーーー!? シ、シクル!?」

レビィを庇い、雷に撃たれたシクル。

 

両手を地面につき、肩で息をするシクルにはっと声を上げるレビィ。

 

「だ、大丈夫……ちょっと、痺れた、だけだよ……」

不安げなレビィを安心させるため、振り返りにっこりとみを浮かべるシクル。

 

しかし……

 

「っ! シクル、あぶねぇ!!」

「あ……」

 

ナツの叫びにはっと前を向くと……その瞬間、頭を殴られ、地面に叩きつけられる。

 

ドゴォッ!!

「がっーーー!」

頭を殴られた衝撃も伴い、目の前が揺れ、意識が朦朧とするシクル。

 

「シクルっ!!」

「やめろラクサス!!」

 

レビィとナツの声が響く中、立ち上がれないシクルの頭をわし掴むラクサス。

「くっ……」

 

「ジジィなんて関係ねぇ……俺は……俺は、力あるギルドを作るためなら!!! 他はどうなっても構わねぇ!!」

 

そう叫ぶと同時にシクルの腹を殴り飛ばす。

 

「かっは!うっ……ラク、サス……」

 

殴られた時……再び、ピシ……ということがシクルの脳裏で響き、それは次第に多く、強くなる。

 

「やめろって……言ってんだろ、ラクサスゥ!!!」

シクルの呻き声に、ナツがキレ、ラクサスに攻撃を仕掛ける。だが……

 

「うるせぇ、ナツぅうう!!!」

「ぐぁっ!!!」

 

ナツは真正面から雷にあたり、吹っ飛ぶ。

そして、ラクサスはシクルの首をぐっと掴みあげ……

 

「今日こそ死に晒してやる……シクル」

 

バチバチバチッ!!!!!

 

放電するラクサス。それは確実にシクルの身体を傷つける。

 

 

「うぁ!! あぁああああああああっ!!!!」

 

ピシ……ピシッ

 

「やめ、ろぉ! ラクサスー!!!」

 

「シクルが死んじゃうよ!! ラクサス!!」

 

 

ナツとレビィの静止の声が響くが、ラクサスが聞き入れることはなく……更に放電を強める。

 

流石に直接身体に流し込まれればそれはダメージとなり、シクルの身体を蝕んでいった。

 

 

「あぁああぁあああぁぁあああっ!!!!」

 

ピシピシッ……

 

「じじぃなんて知るか……死んで精々するぜ……死んだら俺がマスターだ!!

マスターになったら手始めにてめぇら全員壊してやるよぉ……!」

 

「ぅ、あぁ!あああああぁああああっ!!!!」

 

ピシ……ピ……ピキピキッ

ラクサスの言葉が朦朧とする意識の中何故かクリアに脳裏に響く……そして、その言葉を聞く度にシクルは身体の異変を感じる。

 

 

……ンッ……トクンッ……ドクンッ……

 

 

「あぁあああっ……!!!(な、ん……む、ねが……痛い……魔力が……)」

 

「全部壊してやる!! ギルドも!! てめぇらの絆も!!

 

全部まっさらにして新たに最強なギルドを作るんだよぉ!!」

 

 

抑えられない…………

 

バキッーーーー!!

 

鎖が……解き放たれる……。

 

 

ドグンッーーーーーー!!!!

 

 

 

「あぁああああ゛あ゛ァ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ァアア゛ア゛っ!!!!」

 

 

シクルの悲鳴の雰囲気が変わった……その瞬間、シクルを中心に物凄い光と爆発が起きる。

 

「きゃあ!?」

「ンだァ!?」

「なんっ!!」

 

突然のそれにナツたちは目を瞑る。

そして、目を開け、視界に映ったのは……

 

 

 

「…………やっと……お出ましか……」

 

愉快げに表情を歪め、嗤うラクサス……

 

 

そして……

 

 

「………シ、クル?」

 

「なん、だ……ありゃぁ……」

 

「あ、れは……!?」

 

ナツたちの見つめる先には……普段は眩いほど綺麗な金の髪を揺らすシクル……だが、今目の前に立つのは……

 

 

真っ黒に染まった長い髪を揺らし、ラクサスを殺さんと睨む……感情のない瞳で見つめる……シクルの姿であった……。

 

 

 

「……ラクサス………………“俺”を………怒らすなよ………」

 

 

…………殺ス

 

 

誰の声か……わからない……

 

だが、確かに……その声はシクルから発せられた……

 

その後はナツたちの想像を絶していた……

 

 

お互いに本気でやり合い……やられればやり返し、またやり返す……その繰り返し……

 

そこに、手加減の様子はない……

 

 

「シ、クル……」

シクルから発せられる魔力の威圧によりレビィは耐えきれず、身体から力が抜け気を失う。

 

倒れるレビィを咄嗟に支え、ガジルもじっとラクサスへと視線を向ける。

 

「んだよありゃァ!? 尋常じゃねぇぞ!」

 

様子が一変したシクルに驚愕の表情が隠せないガジル。その横でナツが動く。

 

「……止めねぇと」

 

「止めるって……火竜、まさかアレをか!? 無茶言うなっての! あんな戦いの中に入ったらてめぇが死ぬぞ!?」

 

「うるせぇ!! あんなのシクルは望んじゃいねぇんだ!! 止めねぇと……正気に戻った時、シクルが壊れちまう……」

 

ナツはそう言い、止めるガジルを無視し、シクルの元へと走り出す。

 

 

知ってるんだ……

 

シクルが自分のことを “私” じゃなく、 “俺” って呼んでる時は……

 

周りが見えないくらい魔力が暴走している時……あの時も……

 

 

「シクル! やめろ!! ……シクルっ!!!」

 

雷と光の飛び交う戦場を掻い潜り、シクルの元へと駆け寄るナツ。

 

その身体は時折、避け切れずに魔法が当たり、傷が少しずつ増えていっていた。

 

 

それでも、ナツの見据える先はただ1人……

 

 

 

「シクル……目ェ覚ませ!!! シクル!!」

 

シクルとの距離がやっと……あとほんの少しで手が届く……そう思った、その時ーーー

 

 

チャキーーー

 

「っー!!」

首筋に十六夜刀の剣先が当たり、僅かに首筋の皮膚が切れ、血が流れる。

 

「……シクル」

 

ナツを見つめるその瞳は暗く、濁っている

 

「……それ以上俺に近づくな……近づくのならば……貴様も殺ス」

 

 

シクルのその言葉に一瞬目を見張り驚くナツ。

 

 

だが、ナツはすぐにじっとシクルを見つめると……

 

 

グッーーー

 

 

「っ!? なに、を……」

 

ナツは躊躇いもなく十六夜刀を握り、押し返した。握った手からは血が流れ、刀身を伝い、ナツの血がシクルの手元へと流れる。

 

そして、それはシクルの手を赤く汚し始める。

 

 

「…………あ……」

 

ナツの血だ、と認識するとシクルの眼は徐々に見開かれる。

 

「……シクル」

眼を見開き、次第に震え始めるシクルを見下ろし、優しく声をかけるナツ。その声にゆっくりと顔を上げるシクル。

 

 

「……ナ……ツ……? お……わた、し」

 

「やっと俺の名前、呼んだな! シクル……あとは俺に任せろ……な?」

 

 

シクルは休んでろ……そう言い、シクルの身体を抱きしめるナツ。すでに十六夜刀は下ろされ、力なく刀身は地面に向いていた。

 

 

ナツの温もりを感じ、次第に荒れ狂っていた魔力が収まり始めるシクル。

 

 

「……あ…」

 

魔力の暴走はゆっくりと収まっていくが、その反動にシクルは強制的に眠気に襲われ、瞳が閉じていく。

 

最後に見たのは優しく微笑むナツの姿だった。

 

 

 

夢の中ーーー

 

 

……ここ……は……

 

 

シクルが目を開けると広がるのは黒い黒い空間だった。

 

ただ無限に広がるその黒い空間にシクルはほんの僅かな恐怖とどこか懐かしさを感じていた。

 

 

ここ……懐かしい…………

 

……なんで?なんで……懐かしく感じるんだろう……

 

 

分からない……そう、思っていると……

 

 

 

 

《シクルよ……》

 

っ!!

 

背後から聞こえる声に驚き、振り返る。

だが、そこに誰かの姿はない……

 

 

それでも、再びシクルの脳裏には誰かの声が響き始める。

 

《シクル……

 

……我らが再び目覚める時まで……

 

 

 

奴らを…………頼んだぞ》

 

 

 

 

あぁ……そうだ……約束、したんだ……

 

 

 

声の主に心当たりがついたシクル。

 

 

その瞬間黒い空間が白く塗り替えられていく。

 

 

約束……したんだ……皆の代わりに……

 

子供たちを……守るんだって……ね?

 

約束……したもんね?…………イグニール

 

 

 

 

そう声をかけた時……シクルの意識は浮上する。

 

 

 

 

 

パチーーーー

 

 

目を覚ましたシクル。

身体を起こすとまだ魔力の反動が残るのか重く痛みもある。

 

だが無理を承知で立ち上がると一つ息をつき、足を動かし、大聖堂の外へ出る。

 

 

そして……

 

歌魔法(ソングマジック) 防御(シールド)!!!」

 

 

 

傷つき倒れるナツを狙ったラクサスの雷を避雷針となり、身代わりになろうとしたガジルの周りに防御体を作り出し守った。

 

 

「「シクルっ!?」」

 

「お前……!」

 

「っ! シクル、お前っ!!」

 

 

歌魔法は本来膨大な魔力を消費し発動する魔法……魔力の暴走で多くの魔力を消費した後での歌魔法の使用は……

 

 

 

グラッーーー

 

「っ…! 行け……ナツっ!!!!」

 

 

倒れる中で叫んだシクル……その声を確かに聞き取ったナツ……

 

 

 

「う……ぉおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」

 

大きな雄叫びをあげ、ラクサスへと突っ込む。そして……

 

ナツは、火竜の劍角、鉄拳、砕牙、翼撃、咆哮、鉤爪と魔法を繰り出し……

 

 

 

「おぉおおおおおおおっ!!!!

 

 

滅竜奥義 紅蓮爆炎刃!!!!」

 

 

 

ドゴォオオオオオオオッッッンッ!!!!!

 

 

 

ナツの滅竜奥義を食らい、ラクサスは倒れた……。

 

 

その光景を見届け、シクルは意識が遠のくのを感じる。

 

 

 

……あぁ…………最近私ってば……こんなん、ばっか……だ、なぁ……

 

 

そう最後に心でぽそりと呟き、心配そうに駆け寄ってくるレビィを視界の隅に映して、シクルは完全に意識を飛ばした。

 

 

これにて、バトル・オブ・フェアリーテイル

 

 

終幕……

 

 

次回、収穫祭【ファンタジア】

 

 

完結

 

 




はい!!如何だったでしょうか?

追加設定は、魔力が暴走すると髪が黒くなる事です。
後ほど設定の方も編集で追加致します。


では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!

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