フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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1日忙しかった影響で5月1日に投稿しきれませんでしたorz

あともう少しで収穫祭篇も終わりを迎えるかと思います……


では、続きを……最後までお付き合い、お願いします!!


38話 神鳴殿

シクルの勝利を知ったナツたち。

 

「勝った!! シクルが勝ったんだぁ!!」

ハッピーが飛び上がり、喜ぶ。その隣でルージュも喜び、ルーシィに二パッ!と笑顔を向ける。

 

初めは訳の分からなかったルーシィや他のメンバーもマカロフやハッピーから説明を聞き、現状を理解する。

 

その時、シクルを包み込んでいた光が消え、魔法陣も解除される。

そして、ゆっくりとシクルは目を開き、数回瞬きをすると額を抑え呻く。

 

「っ……あークラクラするぅ……あ、良かった皆元に戻ったんだね」

 

「シクル!! シクルが助けてくれたんだよね? ありがとう!!」

笑顔でシクルにお礼を言うルーシィに続きミラやレビィ、ビスカとジュビアもお礼を言う。

 

これであとはラクサスを皆で探し、何とかすれば全てが終わる……そう、シクル以外のメンバーが思った時だった。

 

『よぉ、聞こえるか? じじぃにギルドの奴ら……』

 

シクルたちや街で未だに戦っていたメンバーの目の前に魔水晶映像に映るラクサスがデカデカと現れた。

 

「っ! ラクサス……」

 

 

『ルールが1つ消えちまったからなぁ……今から新たなルールを1つ、追加する』

ラクサスはそこで一度言葉を切る。

 

『ククク……この、バトル・オブ・フェアリーテイルを続行するため……俺は “神鳴殿” を起動させた』

 

「神鳴殿じゃとぉっ!?」

ラクサスからの宣言を聞いた時、マカロフはプルプルと震え、青筋を立てラクサスを睨む。

 

そして、シクルも……

 

「……ルール変更……? 神鳴殿って……ふざけんなよ、糞ガキ……」

怒りを募らせていた。

 

 

ラクサスの映った映像が消えた瞬間、マカロフの怒声がギルドに響く。

 

「何を考えておるんじゃラクサスゥ!! 関係の無い街の人たちまで巻き込むつもりかぁ!?」

大声をあげた……その時ーーー

 

 

ドグンッ!!

 

胸が痛み出すマカロフ。

「うぐっ……!?」

胸を抑え、倒れるマカロフ。

 

「「マスター!?」」

 

「じっちゃん!!」

 

「大変!いつものお薬……!」

 

突然倒れたマカロフに慌てふためくナツたちと奥の部屋へ、発作時のお薬を取りに戻るミラ。

シクルもマカロフの元へ駆け寄ろうとするが……立ち上がった瞬間、目眩に襲われる。

 

「マスターっ……う(あ、倒れ……)」

 

「っ!! おっ……と! 大丈夫か?」

倒れかけたシクルに気づき、支えたナツ。シクルは顔を上げ、弱く微笑みながら頷く。

 

「大丈夫大丈夫……ちょっとふらついただけだから……ありがとう、ナツ」

 

「あんまし無理すんなよ?じっちゃんは大丈夫だからさ」

ニッ!と笑い、安心させるようにシクルにそう言うナツを見つめ、不安だった心が晴れる。

 

マカロフはルーシィたちが現在、介抱していた。すると、奥へ薬を取りに行ったミラがどこか慌てた様子で戻ってきた。

 

「皆大変!! 空に何か……!」

「「「空……?」」」

 

ミラに続き、ナツとシクル以外のメンバーがギルド2階のバルコニーから空を見上げると……

 

「……何、あれ……」

マグノリア全体を囲うように空中に浮かぶ球体の何か……魔水晶のようなそれ……

 

近くには説明文のようなものが書かれており、それによると制限時間になると街を魔水晶から発せられる雷が襲うというものだった。

 

 

「そんなことさせないっ! スナイパーライフル換装!!」

ビスカが銃を換装し、魔水晶へ向け2発の弾を射つ。

 

その時、丁度ナツに支えられシクルがバルコニーへやって来……

 

「ビスカだめ!! それを壊したらっ!!」

と、大きな声で叫んだ。

 

「え……」

だが、時既に遅く……ビスカの撃った弾は魔水晶を破壊していた。そして、破壊から数秒、時間が開き……ビスカの身体を強い衝撃が襲う。

 

「あぁあああああああっ!?」

 

「「「ビスカっ!?」」」

 

「何、今のっ……!!」

 

 

ビスカの身体を強力な雷が襲い、その瞬間、ビスカは倒れてしまう。

 

「あれを壊しちゃダメ! あれには生体リンク魔法が掛けられている……壊したらこっちがかみなりにやられちゃうのっ!」

 

「んじゃどーすんだよ!?」

 

ナツに支えられながら、シクルはレビィが抱えるビスカの元へと歩み寄り、その隣に腰を下ろす。

 

「シクル……」

シクルを見上げるレビィの瞳は涙で少し濡れていた。

 

「大丈夫……ビスカは、死なないよ……死なせない」

不安げなレビィを安心させるようにそう呟くとビスカに手をかざす。

 

歌魔法(ソングマジック) 治癒(ヒール)

 

ビスカに治癒の魔法をかけるとかけ終えた瞬間、ガクッと体から力が抜けるシクル。

 

「お、おい! シクル……」

 

「ごめ……ちょっと休憩しないと……動けないや」

ははっと乾いた笑いを出し、ふぅと息をつくとシクルはルーシィたちを見やう。

 

「きっと今街中でエルが先に走り回ってラクサスを探していると思うの……

 

皆も、ラクサスと残りの雷神衆を探して……それから、レビィは少しここに残って……フリードの残した術式を解除してほしいの……

 

出来る?」

 

シクルの言葉に全員が頷く。

「任せて!」

 

「ありがとう、シクル!」

 

「シクルは少し休んでな!」

 

「シクルさんが回復している間に何とかします!」

 

「私は術式を書き換えればいいんだよね? 任せて!!」

 

全員が頷く姿を見て、シクルはフッと微笑み、「お願い……」と呟いた。

 

その言葉を聞き、ルーシィ達はギルドを飛び出す。

「ハッピー! ハッピーも先に行け! あとから俺も行く!!」

 

「あいさー!!」

ナツの指示に従い、ギルドを飛び出すハッピー。

ビスカはルージュが抱え、医務室へと運び、マカロフの眠る隣のベッドに寝かせた。

 

そして、シクルとナツ、ルージュがギルドの広間に戻ると既にレビィが術式の解除に専念していた。

その様子をマジマジと見つめるガジル。

 

「……ナツ」

 

「あ? どーした?」

レビィが順調に術式解除の公式を作り出しているのを見た瞬間、シクルは段々と眠くなる感覚に陥る。

 

「ごめん……ちょっと、眠くなっちゃった……少し、休む……ね」

途切れ途切れにそう告げたシクルを見下ろし、小さく笑みを作るナツ。

 

「あぁ! ありがとな、シクル!」

今は休んでろ……その言葉を最後に、シクルの意識は途絶えた。

 

 

次にシクルが目を覚ました時……既に術式はレビィが解除しており、ナツとガジルはいなかった。

 

「あれ? 起こしてくれなかったのか……」

 

「あ! シクル!! 目が覚めた? もう大丈夫?」

医務室から出てきたレビィはシクルが目覚めている事に気づき、駆け寄ってくる。

その表情は少し悲しげに見えた……。

 

「うん、ちょっと寝てすっきりしたよ。ナツとガジルはもう行ったんだね……

 

それより、レビィ……どうしたの? なんか……浮かない顔してるよ?」

 

シクルのその言葉を聞いた瞬間、レビィは瞳を潤わせ……静かに、告げる。

 

「マスターが……危篤だって……」

 

「……え」

 

 

 

レビィの話を聞いた直後、シクルはギルドを飛び出した。

 

 

ラクサス……何処にいるの!?

 

お願い……もう、もうこんな事やめて……

 

 

おじいちゃんの所に行ってあげよう……?

 

 

待ってるよ……待ってるんだよ……

 

 

ラクサスっ!!!

 

 

 

街中を走り回り、ラクサスを探すシクル。

 

そんな彼女は突然大地が震えるような魔力のぶつかり合いを感じとる。

 

 

「この感じ……まさか、ミストガン? (帰ってきたの……?)」

シクルは魔力の発信地を振り返る。

 

 

その先は……

 

カルディア大聖堂ーーー

 

 

「……やっと……見つけた……ラクサス!!」

 

 

 

大聖堂へ向けて足を早めていると次第にその全貌が見えてきた。

 

「ちょいちょいちょい……何やってんのあいつら……(何でそんなにぶっ壊してんのさぁ!? それ後で直すの私なんだっての! ふざけんなよっ!!!)」

 

大聖堂の窓ガラスはヒビ割れ、所々崩れ落ちており、壁も一部崩れていた。

 

 

これ全部終わったらちょっとお仕置きだ……と、1人決意し、頷き、大聖堂へと入ると…鎧の女騎士の宣言が耳に入る。

 

 

 

「神鳴殿……全て、私が破壊するっ!!!」

 

「なっ!? エルザ……!!」

 

「っ!? テメェ、ゲームのルールを壊す気かっ!? それにもう発動まで時間もねぇ……1個ずつでは間に合うはずもねぇ!!」

ラクサスの怒声が響き渡る。

 

「全て同時に破壊する……街も救われる」

冷静に言葉を告げるエルザ。その言葉を鼻で笑うラクサス。

 

「はっ! 無理だな……1つ壊すだけでも下手すりゃ死ぬ程の高圧電流が流れるんだ……全部一人でやればてめぇは死ぬぜ」

 

 

 

「……なら、2人でやれば半々……死ぬ確率は低くなるよね?」

 

「「「っ!?」」」

 

シクルの到着に気づいていなかった、ナツ、エルザ、ラクサスは驚き、声のするほうを振り返る。

 

3人の視線を受けるとシクルはニッと微笑み、エルザの隣に立つ。

 

「一人で無理でも……仲間とならなんだって出来る!! ……ね? エル」

笑みを見せるシクルを見て、エルザも自然と自信に満ちた笑みを浮かべる。

 

「あぁ……そうだな」

 

2人の会話を聞き、顔を歪めるラクサス。

 

「ふざけるなぁ! やらせるかっ!!」

エルザとシクルを止めようと魔法を飛ばすラクサス。

だが、それは2人に当たる前にナツが弾き飛ばした。

 

「やらせねぇよ!! シクルたちの邪魔はさせねぇぞ、ラクサス!!」

 

「ナツ……」

前に立つナツを見つめるシクル。

そして、ナツは1度シクルとエルザを振り返ると、再びラクサスへと向き合い……口を開く。

 

 

「……信じていいんだよな?」

 

「……え?」

 

 

「信じてるぞ……シクル! エルザ!!」

 

「ナツ……」

 

「お前……」

 

 

 

「出来るかじゃねぇぞ! お前らの……無事をだ!! ぜってぇ…死ぬなよ!!」

 

 

ナツのその言葉を聞き取り、シクルとエルザはフッと笑みを浮かべ……

 

「もちろん!!」

「任せておけ……」

 

と、告げるとエルザが先に大聖堂を出ていき、シクルはじっとラクサスを見つめた。

 

 

「……ラクサス」

 

「あ?」

 

「すぐ戻ってくる……だから、待ってなさい……あなたには、伝えなきゃいけないことがあるんだ……でも、それは街を救ってから……」

 

シクルは一度目を閉じ、言葉を途切ると……次の瞬間、ふっと目を開け、ラクサスを睨む。

 

「それまで…首洗って待ってろ!!」

 

そう叫び、シクルはエルザを追い去っていった。

 

 

 

シクルは少し離れた所、街の広場でエルザを見つけた。

エルザは既に剣を幾つも召喚し、破壊の準備をしていた。

 

「エルっ!!!」

 

「シクルか……悪いが半分、頼めるか?」

エルザの頼みににっこりと微笑み、頷く。

 

「任せて!! じゃあ私が300壊すから残りの300……よろしくね!」

 

東をエルザが、西をシクルが担当することになりシクルは魔力を高め、撃つその時を待つ。

 

隣では200まで剣を出しきるも魔力が足らなくなり、膝をつくエルザ。

 

「エル!! 大丈夫!?」

シクルが心配し、声をかけるがエルザは気合で立ち上がる。

 

「大丈夫だ! 問題ない……だが、このペースでは発動前に300破壊が……」

エルザに少し焦りが見え始めた時……

 

 

脳裏に声が響く。

 

 

《おい! 皆聞こえるか!? 一大事だ……空を見ろ!!》

 

「この声……ウォーレン? 」

「念話か……!」

 

 

《聞け! 空に浮かんでる物をありったけの魔力で破壊するんだ! 一つ残らずだ!!

 

あれはこの街を襲うラクサスの魔法だ!

時間がねぇ! 全員でやるんだ!》

ウォーレンの言葉にエルザはほんの少し目を見開き驚く。

 

「なぜウォーレンが、神鳴殿を………」

 

 

《その声はエルザか!? 無事だったのか!?》

グレイの声が響く。

 

《石から戻ったのか!?》

 

 

 

「グレイ!? そうかお前が!!」

 

エルザの納得した言葉にグレイは頷く。

 

《とにかく時間がねぇ!! いっせーのーせであれを壊すぞ!!》

ウォーレンの声が響いた瞬間……「ちょっと待て!!!」と声が響く。

 

 

《ウォーレン! てめぇ!! 俺にしたこと、忘れたわけじゃねぇだろぉな?》

怒鳴り声を上げたのはマックスだった。

 

彼は先程、ウォーレンと共にフリードの術式にハマり、ウォーレンに倒されていたのだ。

 

 

その時の怒りが抑えきれないマックスはウォーレンに言い放つ。

 

ぐっと息を呑むウォーレン。

 

《マックス……わ、悪かった……》

 

謝るウォーレンだがそれに耳を傾けない様子のマックス。

そして、マックスに続きぎゃあぎゃあと念話で喧嘩を始めた一同……。

 

 

「ちょ、ちょっとちょっと……喧嘩してる場合じゃ……て、だから……話を……おぃ……」

 

 

喧嘩をするメンバーに声をかけるも全く聞く様子がなく……シクルの額に青筋が浮かび上がり……次第にそれは増え……、そして……

 

 

 

「うるっさぁああああああああああああああいっ!!!!!!!!」

 

 

《っ!?》

 

突然響いたシクルの怒鳴り声に一同は動きを止める。

 

 

「ちょっとは黙れないのあなた達!!!

今は喧嘩してる場合じゃないでしょーが!?

 

街を守りたいんじゃないの!?喧嘩ならいつでも出来んでしょーがアホ共ぉっ!!!」

 

シクルの怒声を聞き、一同は目が覚めた。

このままでは行けない……と

 

《で、でもシクルっ!あれには生体リンク魔法がかけられて……》

 

「そんなん気にしてたら間に合わないでしょーが!! 大丈夫っ!! みんなでやれば何とかなる!!!」

 

 

そう告げ、シクルはパンッ!!と両手を叩く。

 

「北東の200個はエルが!北西の300個は私が!残りの南側……100個、皆でお願い!!」

 

そして……シクルの掛け声と共に、一斉にギルドメンバー全員の魔法が上空に向かって放たれる。

 

 

 

 

「月竜の……咆哮ぅうううううううううううううううう!!!!!!!」

 

 

神鳴殿、600個の同時破壊に成功する。

 

 

神鳴殿がひとつ残らず、崩壊していくのを見つめ、祠げに微笑む一同……そして……

 

生体リンク魔法が襲いかかる……。

 

 

 

『 うぎゃぁああああっ!!! 』

 

『 きゃぁあああああっ!!! 』

 

『 あぁああああああっ!!! 』

 

「ぐぅっ!!?」

 

「つっっ!!!」

 

神鳴殿破壊から数分、念話を通じお互いに心配し合う声が響く……。

 

それらを聞き、シクルはホッと息をつき、微笑む。そして……

 

 

「エル……大丈夫?」

 

「あぁ……大丈夫だ……シクル、行くのか?」

エルザの問いかけにコクリと頷く。

 

 

「……まだ、ラクサスに伝えなきゃいけないこと……伝えられてないから」

 

そう言い、シクルは重い身体を起こし、立ち上がる。

 

 

「……無理するな、シクル……」

 

心配気なエルザを見下ろし、ニッコリと微笑むと「大丈夫!」と言いきる。

 

「向こうにはナツもいるし……それに、多分彼もいる……私が行かない訳にはいかないから……行ってきます!!」

 

 

そして、大聖堂へ向け再び走り去るシクルを見つめる。

 

「……頼んだ」

 

 




数話を残し、収穫祭篇の次はニルヴァーナ篇ですね!


主人公の立ち回りに少し悩んでいる今日この頃です……

それと投稿遅れほんとすいません!
次回、早めの投稿目指します!!


最後までお付き合い、ありがとうございます!!

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