感激です!今後もこの調子で途切れることなく投稿していきたいと思います!
では、第37話最後までお付き合い、お願いします!!
「奥の手……?」
「それって……一体?」
「鏡花水月じゃないんだよね……?」
ルージュの問いかけに頷くシクル。
「確かに、あれなら術式の外にも作れるけど……一定の距離、本体と離れると消えちゃうから……今回は違う方法だよ」
「じゃあ、ちょっと準備するから離れててね?」
シクルはそう告げると身近にあった短刀を手にし、床を中心に周りの壁やテーブルに何かの魔法陣を記していった。
「……何やってんだ?」
ナツが途中シクルに問いかけるもシクルは魔法陣を記すことに集中し、ナツの声は聞こえていないようだった。
そして……
「よし! 出来たっと……さて、いーい? ナツ、ガジル……これからやるのは滅竜魔法の言わば応用編のような魔法」
「……応用編?」
「んだそりゃ……」
ナツとガジルが首を傾げ、ハッピーやルージュも分からないと言った様子だ。
「そう、応用編よ。応用編……滅竜魔法を扱いし者なら誰でも発動可能な魔法だよ。ただし、術者は大量の魔力を消費するわ」
故に、圧倒的魔力が無いと発動できないというシクル。
「下手したら死ぬよ?」
「「死……!?」」
「はぁ!? 死ぬって……お前」
なんでもないような表情でいうシクルにナツたちは驚愕な表情を見せる。
ナツたちの表情を見て、あぁと苦笑を浮かべ
「今回、あまり長い時間これを発動する気は無いから……死ぬ事は無いよ?(まぁ、魔力の消費は抑えられないだろうけど……)」
と、言った。
その言葉にほっとするナツたちを見て、シクルはけらけらと笑い、ふぅと深呼吸をする。
「じゃ……始めるよ。確認だけど、私はエバーを本気で討ちに行く……いいよね? マスター」
そう問いかけ、シクルがマカロフを見やるとマカロフは仕方が無いと言った様子で頷いた。
「あぁ……やむを得ん……頼むぞ、シクル」
マカロフの言葉を受け、ニッと微笑むと魔法陣の中心に立つ。
「あ、ルージュはここで待っててね」
「え……」
シクルのその言葉に目を見開くルージュ。
シクルは振り返りルージュを見つめる。
「ルージュはここで…… “私” を守ってて?」
シクルのその言葉に、真意を受け取ったルージュは力強く頷いた。
それを見たシクルも満足気に笑うと、座禅を組み、魔法を唱える。
「……【光の道 龍の道 神の道
汝 絶望の道を閉ざし 希望の道を創らん
我が盟約にて 汝 我が魂を捧げ 我を導かん】
滅竜奥義 《光の魂》“ルミエール・ソウル” 」
魔法を唱えた瞬間、魔法陣が輝き出し、シクルを包み込んだ。
次にシクルが目を開けるとそこはギルドの外だった。
「ラクサス……私があなたの目を覚まさせる!!!」
そう叫び、シクルは最初の目的であるエバーグリーンを探し、走り出した。
走り去るそのシクルを見つめる一同。その姿が見えなくなると、次に目の前で座禅を組むシクルに視線を向ける。
「……頼むぞ」
目を瞑り、光に包まれるシクルに思いを託すマカロフ。その瞳の奥では複雑な感情が揺らめいていた。
街中を走り、エバーグリーンを探し求め数分……
「あぁああっ!! もう!! どこにいんのよあいつはっ!!」
未だにエバーグリーンが見つからず、イライラしているシクル。
正直言って、少々無謀だったかもしれない……ここ、マグノリアの街は規模が広く、今回の捜索範囲はその街全体に及ぶ……尚且つ、今は収穫祭の真っ只中……たくさんの匂いが混じり、エバーグリーンの匂いを特定出来ずにいる。
「はぁ……てかホントあの人どこいんのさ……匂い覚えとけば……いや、それは流石に嫌だな……」
あの人香水臭いし……
はぁと、再びため息をつくシクル。
「あんまり時間無駄にしたくないんだけどなぁ……」
そうシクルが1人呟いた時……上空からの殺気に気づく。
「っ!!」
殺気に気づき、避けるように飛び上がるとシクルの立っていたところに光の玉が飛んでいき、地面を壊していく。
「あちゃ……また壊しちゃった……てか、これ直すの私だよね? 絶対……」
あいつら……人の苦労も知らずに……
でも……
「でもま……大元をまずは叩かないと……ねぇ?」
シクルは地面に着地すると上を見上げる。
「あらあら……どうしてこんな所にいるのかしら? まぁいいけど……さっきぶりねぇ? 妖精姫ちゃん?」
不敵な笑みを浮かべるエバーグリーンが上空を飛んでいた……。
シクルはその姿を見た瞬間、ニヤッと笑い……拳に魔力を集める。
「やっと見つけた……あんた達のその腐った性根……私が、滅してやる……」
2人が対峙するとすぐに始まった戦い。
エバーグリーンが魔法を飛ばし、シクルはそれを避け、時には魔法で打ち消すなど……エバーグリーンからの一方的な攻撃が続いていた。
「あーも……うざったい! 月竜の翼撃!!」
回転しながら魔法を打ち消すシクル。
「ほらほらどーしたのぉ? そんなんじゃ、あたし達は滅せれないわよぉ?エセ妖精姫ちゃん?」
「うっさい!!! 黙って私に倒されなさいよ!!」
「やぁねぇ……そんなんだから、背も伸びずにチビだお子ちゃまだ言われるのよ……エセ妖精姫ちゃん?」
エバーグリーンのその言葉を聞いた瞬間……ブチッと理性の線が切れる。
「……へーぇ? そんなに……そんなに、あたしに殺されたいか?エバーグリーン……」
ドッと、魔力が高まるシクル……それを感じ、今まで余裕の笑みを称えていたエバーグリーンの表情が曇る。
「な、なに……この、魔力……」
そうしている間も更にシクルの魔力は上昇し……次にエバーグリーンをその視界に入れた瞬間……
「お望み通り殺ってやるよ……自称妖精が」
ゾクッ! とエバーグリーンに恐怖が襲う。
「ひっ……な、なに……今の」
訳の分からない震えに襲われるエバーグリーンにゆっくりと近づくシクルを見て、エバーグリーンは焦り、混乱する。
「ひっ! く、来るなっ!!!」
エバーグリーンは叫びながら無我夢中となり、魔法を飛ばす。
だがその短調となった魔法の玉をシクルが避けられないわけもなく……
冷静に、小さな動きでそれらを交わしていき……遂には、エバーグリーンからおよその50mの距離まで来ていた。
「な、なによ……何よ何よ!! お子ちゃまの癖に……生意気なのよぉ!!! レブラホーン!!!」
シクルへと再び魔法を飛ばすエバーグリーン。だが、シクルはフッと笑みを浮かべ……
「そうそう……攻撃を避けている時に気づいたんだけど……それ、少し光が混じってるよねぇ?」
そう呟くと……左手をかざし……、エバーグリーンの魔法をわし掴んだ。
「これは……光……即ち、あたしには効かない……あたしの食は……月と光……」
そう言い、シクルはエバーグリーンの魔法を食べた。
ゴクッと音を立て飲み込んだシクルを見つめ、驚愕を隠せないエバーグリーン。
「な……なんっ!? 何よそれぇ!?」
エバーグリーンは声を荒らげる。
「ふぅー……さぁ……懺悔の時間よ……」
ニヤリと笑みを浮かべるシクルを見て、エバーグリーンは察する……勝てない……と。
そして、瞬きを1度した……次の瞬間
「……へ?」
目の前にシクルの拳が振り上げられていた。
「……月竜の鉄拳っ!!」
ゴッーーーーー!!!!
シクルの拳はエバーグリーンの真横を通り、地面を砕き割った。そして、その風圧でエバーグリーンは後方へと吹っ飛び、壁へと激突する。
「きゃあ!?」
壁とぶつかり、痛みに呻くエバーグリーン。
そこに……
チャキーーー
「っ!」
「……さぁ……石像にした皆を元に戻しなさい? さもないと……切るぞ?」
首筋に当てられる剣先とシクルから放たれる殺気にゴクッと息を呑む。
だが、ここで怖気付いては雷神衆の名が廃る……と、そう考えたエバーグリーンはフッと強気な表情を見せる。
「ふ、ふん……やれるもんならやってみなさいよ……まぁ、あんたが動けば、あたしが石像達を砂に変えちゃうわよ?」
「……は?」
不敵な笑みを浮かべるエバーグリーン。
「知ってるでしょ? あたしは遠隔操作で石像を砂に変えることが出来る……砂になったら2度と元には戻せない……」
本当に砂にする気はなかったエバーグリーン。このハッタリでシクルが諦め、油断した瞬間にシクルを叩くつもりであった。
……だが、エバーグリーンの目論見はここで大きく崩れることとなる……。
「……へぇ? そう……じゃあ、やれば?」
「……へ? え……」
予想外の返答が戻ってき、エバーグリーンはシクルを見上げた。
その目に入ったのは……
「ひ……っ!?」
背後に竜の姿が揺らめくシクルの姿……否、エバーグリーンの目には既にシクル自身が竜そのものに見えた。
「ほら……出来るんでしょ? やりなさいよ……その前に、あたしがあなたの息の根を止めてあげるから」
そう言い、振り上げられる刀……
「ひっ!? い、いや……た、助けっ!
きゃぁああああああああああっ!!!!!」
ギィイイインッ!!!!
振り上げられた刀が貫いたのはエバーグリーンの顔、真横の壁だった。
「……脅しってのはこーやんの。分かった?」
「は……はひっ……」
そこでエバーグリーンの意識は完全に途絶え、気を失った。
ふぅと一息つき、十六夜刀をしまい顔にかかる髪を払い除け……不意に振り返ったシクルの視線の先には……
「既に倒していたか……流石だな、シクル」
鎧の女騎士 “エルザ” がいた。
「とーぜん……私がエバーにやられる訳ないでしょ? それより……やっぱり、エルは先に石化が解けたみたいだね」
にっこりと微笑むシクルにあぁ、と頷いてみせるエルザ。
「この右眼のお陰でな……」
そう、エルザは言い自分の右眼を抑えた。
エルザの右眼は義眼となっており、その影響で石化の魔法が半減されていたのだ。
「さて……エバーグリーンもやったところだし、私は一度魔法を解いて元の体に戻るよ」
流石にこれ以上魔法の持続はきついし……
そう告げ、シクルは魔法を解除しようとするがその前にエルザを見つめると
「多分、ラクサスの事だからこれで終わらないと思う……だから、エルは先にラクサスを探して抑えておいて……後から私も追いつくから……絶対」
「あぁ……任せておけ、シクル……お前も、無理をするなよ」
エルザの警告にコクリと頷き、魔法を解除し、本体へと戻った。
シクルがエバーグリーンを倒し、エルザと合流するほんのわずか前の事……ナツやマカロフの残るギルドではーーー
「ねぇマスター……ほんとにシクルは外で戦ってるの?」
シクルが魔法を発動してから数分……
ハッピーは魔法陣の中で座禅を組み、光に包まれるシクルの身体を見つめマカロフに問いかける。
「あぁ……間違いない……よいか?この魔法発動中は絶対、術者に触れてはならん……
そして、あの魔法陣の中に入り込むのも許されん……入れば最後、魔力を奪われるぞ」
マカロフの言葉にゴクリと息を呑む音がギルドに響き、シクルを一同が見つめる。
「それに、いざとなればエルザも復活しておる……何とかなるじゃろ」
シクルが出ていった直後、エルザもまた石化から解放されていた。
「……一ついいか?」
「あ? ンだよ……」
ナツたちから少し離れたところで腰を下ろし、胡座をかいていたガジルがナツたちに話しかけてくる。
「あいつは……あのシクルとかいう奴は、ほんとにそんなにつえーのか? 以前戦った時は……そんな感じはしなかったぞ……」
以前手を合わせた時の印象だと、ガジルにとってシクルは隙だらけで注意力も散漫なとても妖精の尻尾最強には思えなかった。
「何言ってんだ、お前……シクルはめちゃくちゃつえーよ!!」
何言ってんだこいつ?と言った表情を浮かべるナツ。
「シクルが本気になることはほとんど無いからねぇ……めんどくさがりだし……」
苦笑を浮かべ、マカロフの周りを浮遊しているルージュ。
「前にシクルとラクサスがギルドで戦ったことも何度もあるんだよ?」
ハッピーの言葉に少し興味を持つガジル。
「……そん時は?」
「あの時は凄かったなぁ……ギルドも危うく吹っ飛ぶ所だったもんな!」
ナツの楽しげな表情にマカロフは呆れたため息をつく。
「笑い事ではないわい……危うく本当にギルドが消し飛ぶところだったんじゃぞ……」
「マスターが止めたんだもんねぇ」
「……そん時、決着は?」
「んー? 引き分けだったと思うよ? あ、でもあの後数日はラクサスが寝込んでたみたいだからシクルの勝ちなのかな?」
ハッピーの思い出したような発言にガジルは内心シクルへの興味を高めていた。
弱いと思っていた奴の本気を見てみたい……何故か、そう思ったガジル。
そんな時……
……ピキッーーー
ステージの上から何かがひび割れる音が聞こえ、一同が振り返ると……
石像になってしまった者達のそれにヒビが入っており……やがてそれは全身へと増えていき……
石化が解除された。
「ルーシィぃいいい!!」
「元に戻ったぁっ!!」
「……え? え、なにっ!?」
元に戻ったルーシィの胸元に飛び込むハッピーとルージュ。
他の女性達も石化から元に戻ったのを確認し、マカロフはニヤッと笑みを浮かべ、見えない壁に表示された内容にグッと拳を握る。
【シクルVSエバーグリーン 戦闘開始】
【勝者・シクル エバーグリーン 戦闘不能】
それは、どこかにいるラクサスの元にも流れ……
「っ……!!!」
忌々しげに表情を歪め、握りしめた拳からは血が滲み出ていた……。
そして、ふと、ニヤリと浮かべたその笑みは……暗く、黒い何かを纏っていた……。
これで終わると思うなよ……
本当のバトル・オブ・フェアリーテイルは……これからだ……
はい!!シクルとエバーグリーンをぶつけました!!
次はどうしようか……まだ確実に決まってはいないので次回、近くによる際にお話しようと思います。
では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!