フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい!!最近は1日に1回しか投稿できてませんね……2回は投稿したいんですがねぇ……


では、前書きはさておき、本編……最後までお付き合い、お願いします!!


36話 共通点

ラクサスの去った後、ギルドメンバーは我先にと、ラクサスと雷神衆を討つべく、ギルドを飛び出して行った。

 

 

「むむむっ……ワシが……ワシが止めてやるわ! 糞ガキがァッ!!」

 

他のメンバー同様、マカロフもまた同じ……ラクサスを討つべく、ギルドを飛び出そうとしていた。だが……

 

 

ゴチーーーーンッ!!!!

 

「っ!!!!」

マカロフはギルドを飛び出そうとした瞬間、見えない壁にぶつかり、外へは出られなかった。

 

 

「おい、何やってんだよじーさん!?」

最後に出て行ったグレイがマカロフに気づき戻ってくる。

 

「何じゃこれは!? 進めん! 見えない壁じゃっ!!」

マカロフの言ったことが理解できなかったグレイははぁ? と言った呆れた表情でマカロフを見下ろす。

 

「こんな時にどーしちまったんだよ、じーさん……見えねぇ壁なんてどこにもねぇーだろ?」

そう言い、グレイはマカロフを抱え引っ張る。だが、マカロフの身体が外へ出ることはなく、確かに見えない壁に邪魔されているかのような感覚がする。

 

すると、マカロフとグレイを挟むかのように、空中に文字が浮かび上がる。

 

「これは……まさか、フリードの術式か!?」

 

“フリード” とは、雷神衆の1人、文字や術式を使った魔法を得意とする男だ。

 

「術式?」

マカロフの言葉に怪訝そうな表情を浮かべるグレイ。

 

「結界の一種のようなものじゃ。術式に踏み込んだものにはルールが与えられる……それを守らねば出ることは出来ん……見よ」

そう語り、マカロフの指差した先に書いてあった文字は……

 

ーールール:80歳を越える者と石像の出入りを禁ずるーー

 

と、書いてあった。

 

 

「何だよこれ……この言ったもん勝ち見てぇな魔法はっ!?」

 

「術式を書くには時間がかかる……故に、クイックな魔法には向いとらんが、罠としては……絶大な威力を発揮する……」

マカロフは苦々しい表情を浮かべ、語る。

 

「こんな魔法のせいで……じーさんだけ出られねぇってか? くそ、じーさんでも壊せねぇのかよ!?」

 

「術式の決まりは絶対じゃ!! しかも、 “年齢制限” と “物質制限” の二重術式とは……フリードめ、いつの間にこんな強力な魔法を……」

 

 

マカロフの言うところつまり、どう足掻いてもマカロフがギルドの外へ出て闘いに自ら参加することは出来ない、という事だ。

 

その言葉を聞き、グレイはマカロフに背を向ける。

「初めからじーさんを参加させる気はねぇって事か……用意周到だな、たく。 こうなった以上、俺たちがやるしかねぇな……」

 

グレイの言葉を聞き、ほんの少しマカロフの目が見開く。

「グレイ……!」

 

「あんたの孫だろうが容赦はしねぇ……俺はラクサスをやるっ!!」

グレイはそう言い残し、街中へと走り去って行った。

その後ろ姿を見つめ、深いため息をつくマカロフは背後でガタッと何かが動く音に気づき、振り返った。

 

振り返った先にいたのはリーダスだった。

 

「ご、ごめ……オレ、ラクサス……怖くて」

申し訳なさそうに俯き謝るリーダスを見て、マカロフはほんの少し険しかった表情を穏やかにし、リーダスに話しかける。

 

「よいよい……それより、東の森に住むポーリュシカの場所は分かるな?」

マカロフからの問いかけにコクンと頷くリーダス。

 

「あ奴ならもしかすると石化を治す薬を持ってるやもしれん……行って来れるか?」

マカロフの頼みに力強く頷いてみせるリーダス。

「うぃ! そーいう仕事なら!!」

そう言い残し、ポーリュシカの家へと走り出て行くその後ろ姿を見つめるマカロフ。

 

「頼むぞ……」

ぽそりと、マカロフの呟きがギルドに静かに響いた時ーーー

 

 

「ごあぁああああっ!!!!!」

 

背後から爆発音と共に大きな叫び声が聞こえた。マカロフは何事かと振り返ると、先ほどラクサスにより気絶させられたナツが起きていた。

 

「ナツ!! 起きたー!」

「あいぃ!!」

ハッピーとルージュの声が響く。

 

「あれっ!? ラクサスどこ行った!?

 

つか誰もいねぇーし!! どーなってんだじっちゃん!?」

 

騒ぐナツを見つめ、こ奴ならもしや……と考えついたマカロフ。

「祭りは始まっておる!! ラクサスはこの街のどこかにいる……早く探し出し倒してこい!!」

 

マカロフの言葉を聞き、燃え上がるナツ。

「おっしゃぁあああっ!!! 待ってろラクサスぅううううっ!!!」

 

ラクサスを追い、ギルドを飛び出そうとするナツ。

 

だが……

 

 

ゴチィーーーーーンッ!!!!!

 

「おごっ!?」

 

「え……」

 

「「「えぇえええええっ!?」」」

 

何故かマカロフ同様、見えない壁に阻まれたナツにマカロフ、ハッピー、ルージュは目を見開き驚愕する。

 

ナツは決して石化しているわけでも、80歳を越えている訳でもないのに……

 

 

「どーなってんじゃぁあああっ!? ナツ!

お前80歳かっ!? 石像かっ!?」

マカロフのツッコミが炸裂するもナツはうがー!と見えない壁に体当たりしながら吠える。

 

「知るかぁ!!! うぉぉおお!!

 

何で出れねぇんだよ、くそぉおおお!!!」

 

どんなに頑張ってもギルドの外へ出られないナツ。すると……

 

 

「あれぇ? 何……?」

見えない壁を見上げていたルージュが何かに気づき、一同がそちらを見上げると……

 

「何じゃ……バトル・オブ・フェアリーテイル 途中経過速報?」

見えない壁に浮かび上がった文字を怪訝そうに見つめると、さらに文字は増え……

 

「なっ……【ジェットVSドロイVSアルザック 戦闘開始】 じゃと!?」

 

「なんで!?なんであの3人が戦ってるの!?」

 

「あ、また増えたぁ……えっとぉ【勝者・アルザック】 【ジェット&ドロイ 戦闘不能】

ど……どうなってるのぉ……?」

 

 

その速報の内容にマカロフたちは困惑していた。

 

「どうして皆が戦ってるの!? 敵はラクサスでしょ!?」

ハッピーの辛そうな声に拳を握りしめ、マカロフは憶測を語る。

 

「恐らく、フリードの術式にはまったのじゃろ……クソ、彼奴らめっ!」

悔しそうにそして、苦しそうに顔を歪めるマカロフ。

 

愛する我が子同然の子等が争うなど……マカロフにとっては耐え難い苦痛なのだろう……

 

そこに、新たな情報が流れる。

 

「何……【リーダス 戦闘不能】っ!?」

「そんなぁ!これじゃあシクルたちの石化がっ!」

そうこうしている間にも妖精の尻尾のメンバーたちは、次々と戦闘を開始し、その人数を減らしていっていた。

 

「よせっ!! やめんか、ガキども!!」

マカロフの叫びがメンバーに届く事はなく……

 

「街中に術式の罠がはってあるんだぁ……それにかかった皆が戦いを強制されて……」

 

「これがラクサスの言っていた……バトル・オブ・フェアリーテイル」

ルージュとハッピーの悲しみの混じった声がマカロフの表情をさらに曇らせる。

 

そんな中……

 

「くうぅううっ!! 俺も混ざりてえっ! 何なんだよこの見えねえ壁はよぉ!?」

的外れな発言をするナツの頭にマカロフのチョップが落ちる。

 

 

「混ざってどうする気じゃ馬鹿たれが!」

 

 

「最強決定トーナメントだろ? これ!!」

俺も出るんだ!! と意気込むナツに呆れた視線を向けるマカロフ。

 

「どこがトーナメントじゃ……仲間同士で潰し合うなど……」

 

そんなマカロフの言葉を聞き、きょとんと首を傾げるナツ。

「ただのケンカだろ? いつもの事じゃねーかよ」

 

 

ナツの言葉に呆気にとられるマカロフ。

 

「これのどこがいつも通りじゃ……仲間の命がかかっておる! 皆必死じゃ!! 正常な思考で事態を把握出来ておらん!!

 

このままでは……石にされた者たちが砂になってしまい、二度と元には戻らんやもしれん……」

 

 

「いくらラクサスでもそんな事しねーよ!!ムカツク奴だけど、同じギルドの仲間だ……ハッタリに決まってんだろ?」

 

ラクサスのことを微塵も疑わず、こんな騒動になっても尚、 “仲間” だというナツ。

「ナツ……」

 

「これはただのケンカ祭り……つーか、結局何で出れねえんだよ!?」

思い出したのか、再び見えない壁にぶつかり、吹っ飛ぶナツ。

 

「オイラはフツーに通れるよ!」

「あたしもぉ!」

ナツの頭上をクルクルと飛び回るハッピーとルージュ。

 

そんな2匹を見て、ズーンと背中に影を落とすナツ。

「80歳超えてたのか……俺」

 

明らかに落ち込むナツに苦笑を浮かべるハッピーとルージュ。

「そんな訳ないと思うけど……」

「あたしも……そぉ思うけどなぁ」

 

「ナツ……(お前はあのラクサスを……仲間だと言うのか? そこまではやらないと……そう、信じられるのか……? ワシは……)」

 

ナツを見つめ、心の中でそう呟き、拳を握り締めるマカロフ。

 

そんな彼の視界に、再び現在の戦いの状況が表示される。

 

 

【残り時間 2:18】

 

【残り人数:42人】

 

 

「なっ……(42人!? 仲間同士の潰し合いで……もう人数が半分以下に……)」

 

「くっそー! やるなぁ、ラクサスもフリードたちも! 俺も混ざりてぇ!!」

 

「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないんだよ!?リーダスがやられちゃったからシクルたちの石化を解く方法もなくなっちゃって!」

ハッピーがナツにそう告げるが……

 

「治す事ねえよ……どうせハッタリだからさ」

と、笑みを見せ言った。すると……

 

 

「ハッタリだと思ってんのか? ナツ」

 

「「「っ!!!」」」

 

 

「ラクサス!!!」

 

 

声がした方を振り返ると、そこにはラクサスが立っていた。

 

 

「アレ思念体だよぉ!」

ラクサスの姿を見て一目で思念体だと気付いたルージュ。

 

ラクサスはギルドに残るナツを見つめ、怪訝そうな表情を浮かべる。

「つーか、何でおめぇがここにいんだよ?

ナツ」

 

 

「うっせぇ!! 出られねえんだよっ!!」

ガルゥウウ!! と唸るようにラクサスを睨みつけるナツ。

 

 

「ラクサス……貴様……」

マカロフが呟きながら、ラクサスを睨みつけるが、ラクサスは余裕の笑みを浮かべている。

 

 

「仲間……いや、アンタはガキって言い方してたよな? ガキ同士の潰し合いを見るに堪えられんだろ? あーぁ……ナツやエルザ……おまけにシクルも参加できねえんじゃ……雷神衆に勝てる兵はもう残ってねえよなぁ?」

 

ラクサスのその言葉に黙ってしまうマカロフ。その姿に、ニヤッと笑うラクサス。

 

 

「降参するか?」

 

「く……」

ラクサスの言葉にマカロフは小さく唸る。

すると、ハッピーが口を開く。

 

 

「まだグレイがいる!! ナツと同じくらい強いんだ! 雷神衆になんかに負けるもんか!」

 

 

「オレと同じだぁ!? アイツがか?」

ハッピーの言葉に反論するナツ。

「だってそうじゃん?」

 

 

「グレイだぁ? ククッ、あんな小僧に期待してんのかヨ」

ラクサスの面白おかしそうなその声に目つきを険しくするマカロフ。

 

「グレイをみくびるなよ? ……ラクサス」

ラクサスを睨みつけながらそう断言するマカロフ。

 

 

しかし……

 

 

 

 

 

【グレイVSビックスロー】

 

【勝者:ビックスロー】

 

 

【グレイ:戦闘不能】

 

【残り27人】

 

 

 

 

 

「「えっ……グレイが……」」

目の前に表示されたその情報は、余りに酷な知らせであった。

 

 

「ふははははっ!!! だーから言ったじゃねーか……なァ?」

 

 

「う、嘘だっ!! 絶対何か汚い手を使ったんだよっ!!」

「そーだそーだぁ! じゃなきゃ、グレイが負ける訳ないんだぁ!!」

ハッピーとルージュの言葉を、高笑いで無視するラクサス。

 

 

マカロフの表情は次第に険しい目つきから諦めがちらつき始める。

 

「あとは誰が雷神衆に勝てるってんだ? ククク……」

 

 

「ガジルがいる!!」

「ガジルも強いんだぞォ!!」

 

 

「残念っ!! 奴は参加してねぇみてぇーだぜぇ? 元々、ギルドに対して何とも思ってねえ奴だしなァ……」

 

 

「俺がいるだろーが!!! 無視してんじゃねぇ!!!」

存在を忘れられたのが悔しかったのか、叫ぶナツ。だが……

 

「ここから出れねーんじゃ、どうしようもねーだろォよ?ナツ」

ラクサスのその言葉にぐぬぬと反論出来ず。その間、マカロフは考え……そして……

 

 

「……わかった、もうよい……降参じゃ。

もう……やめてくれ、ラクサス……」

弱々しく、降参を宣言した。

 

「じっちゃん!?」

ナツは頭を下げるマカロフに目を見開く。

 

頭を下げるマカロフを見下ろすラクサス……

 

その表情は無表情から、不気味な笑みを浮かべ……

 

 

「ダメだなァ……? 天下の妖精の尻尾のマスターともあろう者が……こんな事で負けを認めちゃあなぁ?

 

どうしても投了したければ、妖精の尻尾の “マスター” の座を俺に渡してからにしてもらおうか」

ラクサスはマカロフへと、そう要求してきた。

 

 

「汚ねぇぞラクサス!! 俺とやんのが怖えのか!? あぁ!?」

ギャンギャン吠えるナツ。

 

「貴様……初めからそれが狙いか……」

ギッとラクサスを睨むマカロフ。

 

「石像が崩れるまであと約1時間半……

 

リタイアしたければ、ギルドの拡声器を使って街中に聞こえるように宣言しろ。妖精の尻尾の “マスター” の座をラクサスに譲るとな

 

よォく考えろよ? 自分の地位が大事か……仲間の命が大事か……な」

 

そう言い残して、ラクサスの思念体は消えていった。

 

 

「くそっ!!! 俺と勝負もしねえで、何が最強だ!? マスターの座だ!? 」

うがー!!と地団駄を踏むナツ。だが……

 

 

「マスターの座など、正直どうでもよい」

と、マカロフの言葉を聞き、ぐもぉ! とずっこける。

 

「いいのかよ!? じっちゃん!!!」

 

 

「だが……ラクサスに、妖精の尻尾を託す訳にはいかん。この席に座るにはあまりにも軽い……信念と心が浮いておる」

 

 

「でもこのままじゃ……みんなが砂になっちゃうよ?」

マカロフの言葉を聞きながらも、耳を垂れ下げションボリするハッピー。

そして、ルージュも……石像となってしまったシクルに寄り添う。

 

「シクルゥ……」

 

泣きそうなルージュを見て、ぐぐぐっと拳を握り締めるマカロフ。

「えーい!! 誰かラクサスを倒せる奴はおらんのか!?」

 

 

「俺だよ俺!! 俺がいんだろ!?」

 

 

「ここから出れんのじゃぞ?どうしようもなかろう……」

 

 

ナツとマカロフがそんな口論をしていると……

 

 

ガサゴソ……ガタッ……

 

 

「誰だ!?」

突然バーカウンターの方から物音が聞こえ、全員が視線をそちらに向ける。

 

そして、振り返った先には……

 

 

「ガジガジ……」

 

 

鉄製の食器を食べているガジルの姿があった。

 

 

「ガジルぅうう!!?」

 

 

「食器食べんなよ!?」

 

 

「も……もしや……行ってくれるのか?」

マカロフの言葉に、ギヒッと不思議な笑い声を出し……

「あの野郎には借りもある。まあ、任せな」

と、言うと腰をあげる。

 

「おおっ!!」

 

 

そして、ラクサスを倒すため、出口へと向かうガジルであったが……

 

 

ゴチィーーーーーンッ!!!!!!

 

 

ナツと同じく、術式の壁に阻まれた。

 

 

「「「お前もかぁあああっ!?」」」

「えぇえっ……」

ナツ、マカロフ、ハッピーの叫びと、ルージュの呆気にとられた声が響く。

 

「な……何だこれはぁあああっ!?」

 

 

「ど……どうなってんだ? ここから出られないのは、80歳以上と石像だけだろ?」

 

 

「ガジル……お、おじいちゃん?」

ルージュの言葉にガウッ!!と吠えるガジル。

 

「んなわけねえだろ!? しばくぞクソ猫!!!」

 

 

何故、ナツやガジルが外に出ることが出来ないのか訳が分からない一同。

 

考えるも検討のつかない一同……そして、その間もバトル・オブ・フェアリーテイルは続き……

 

ついには……

 

 

 

【残り2人】

 

 

 

となった。

 

 

「残り2人だけじゃと!?」

 

 

「何でお前まで出れねーんだよ! マネすんじゃねぇよ!!」

 

「知るか」

ナツの怒声をそっぽを向き、無視するガジル。

 

「ハラ減ってきたじゃねーかコノヤロウ!!」

 

「それは本当に知らんわ!!!」

思わず振り返り、ギャーギャー言い合いを始める2人。

 

ふと、マカロフはそんな2人を振り返る。

「……2人?」

 

そして、はたと気づく……残りの2人ーーー

 

「こいつ等だけじゃとぉおおおお!?」

 

 

「オイラは頭数にすら入ってなかったのかぁあああっ!?」

「あたしも入ってなかったぁああっ!! ちょっと安心」

 

残っているのがここにいるナツとガジルだけだと言う事実に、マカロフは驚愕する。

 

又、自分たちが頭数に入っていないことにハッピーは軽いショックを受け、ルージュはほんのりとほっとしている。

 

 

「くっ……(同士討ちや雷神衆の手により妖精の尻尾の魔導士が全滅したというのか……なんという事だ……シクルやエルザも石像となってしまっている……もう……ここまでなのか……)」

 

 

マカロフが諦めかけ、俯いた。

 

その時ーーー

 

 

「出られないのは多分、 “滅竜魔導士” だからじゃない?」

 

ナツたちにとって聞き覚えのありすぎる声が静かにギルド内で響いた。

 

 

「……え?」

 

「今の……声は……」

 

「ま、さかっ?」

 

「で、でもまだ石像に……」

 

「なんだ……?」

その声にナツたちはお互いを見合い、ステージ上の石像の1人を見やる。

 

 

「…………シクル?」

 

そう……誰かが彼女の名を呼んだ時ーーー

 

 

ピキッーーー

 

シクルの石像の顔に亀裂が入る。

そして、それは徐々に体全身へと回り、ついには……

 

 

パキィイイイインッ!!!

 

完全に砕け、石は砕けきった。

そして……

 

 

「ふぅ……やっと出来た」

金の髪を揺らし、ニッと笑う女、シクルの復活だ。

 

 

「「シクルっ!!」」

「お前……」

マカロフ、ハッピー、ガジルはシクルを見上げる。

 

そして……

 

「シクルゥぅううう!!!!」

「戻ったぁああああっ!!!」

 

ナツとルージュはシクルに飛び付く。

シクルは静かにルージュを抱きとめ……ヒョイっと体を横へ向け、ナツを避けた。

 

「んで避けんだよぉおおおっ!? どわっ!」

 

「いやいや、流石にあの勢いで来られたら怪我するっての」

胸に飛び込んできたルージュの頭を撫でながら、床を転がったナツを見下ろし苦笑を浮かべる。

 

そして、胸に飛び込んできたルージュは涙を流し、更にシクルに抱きついてきた。

「シクルゥ……」

「ルージュ……心配かけてごめんね?」

 

もう大丈夫だよ……とシクルが言うとコクコク、と頷くルージュ。

 

「何故……石化を……」

マカロフの問いかけにシクルはにっこりと微笑み、答える。

歌魔法(ソングマジック) 解除(ディスペル)

を石化する瞬間にかけたの。ただ、どうも石化を解くのに時間かかっちゃって……」

 

シクルのその言葉にニッと笑みを浮かべるマカロフ。

 

 

「てか、さっきの “滅竜魔導士” だからって……どーいうことだよ?」

シクルとマカロフの会話が終わったところを見て、ナツがシクルに問いかける。

 

 

「あぁ、あれ?あれはね……」

シクルはそう言うと、自身もギルドの外へ出ようと出口へ向かい……片手を前に出す。

 

すると……シクルの手も見えない壁により、阻まれ外へは出られなかった。

 

 

「シクルもかっ!?」

「なんと……」

ナツとマカロフは目を見開き、ガジルも驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「石化を解除する間に調べてたんだけど……どうも私たち、滅竜魔導士はこの術式の何かに当てはまって出られないみたいなの」

 

シクルの言った通りならば……ナツとガジルが出られなかった理由も話がつくとマカロフは頷く。

 

 

「滅竜魔導士……それが、共通点じゃったか……」

 

 

「じゃあ、どうやって出んだよ!?」

俺もやりてぇ!!と叫ぶナツ。

 

ガジルもなんだかんだラクサスとやりたい様子……すると……

 

 

「エバーを倒せばいいんだよね?」

マカロフを見つめ、そう問いかけるシクル。

 

「ぬ? あ、あぁ……そうじゃが……」

マカロフの答えを聞くと、パンッ!と手を叩き、ニッ!と笑顔になるシクル。

 

「なら!私が行くよ……エバーを討つ」

 

 

「「「「なにぃ!?」」」」

「え……でも、シクル……ここから出られないんじゃあ……?」

 

ルージュの戸惑いを纏う声に振り返り、クスリと微笑むシクル。

 

 

「大丈夫!!!私には秘策があるから!とっておきの……奥の手がね!」

 

 

ついに動き出す歌姫……

 

彼女の言うその奥の手とは?一体……

 

 




おぉ……初めて7000文字いった!!

次回はエバーグリーン戦です!!

主人公の秘策とはなんでしょうね……では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!

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