フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい!!ついに始まりました、B・O・F 篇!!

私としては進めていくのがほんの少し楽しみな章です

では、最後までお付き合い、お願いします!


第5章 収穫祭 B・O・F 篇
34話 収穫祭へ向けて


 

 

楽園の塔での戦いが終わり、シクルの意識が戻ってから5日後……

 

ギルド内では現在、明日に迫った収穫祭“ファンタジア”へ向け、準備の真っ最中だった。

 

 

「はぁー疲れたァ……ちょっと休憩」

こちらも収穫祭へ向け、準備を進めていたシクルだが、流石に疲労感が増したのか、端っこのテーブル席へ座り、突っ伏していた。

 

ふと、顔を上げギルド内を見渡すシクル。

「ふぅ…にしても、ギルドがこんなに大きくなってたのはびっくりだなぁ……」

 

シクル達があかねリゾートへ行き、尚且つ楽園の塔でジェラールとの死闘を繰り広げている間にギルドは前の建物から姿を変え、大きな大きなまるでお城のようなギルドへと変わっていた。

 

 

そして、変わったのは建物だけでなく……

 

「マスター…約束守ってくれたんだ」

シクルの見つめる先、そこには1人ギルド内でポツンと座り、鉄を頬張る黒髪の彼が……

 

ふっと、シクルは立ち上がり彼の元へと向かう。足音を立てずに……

 

そしてーーー

 

 

「っ……わぁっ!!」

「うぉぉおおおうっ!? な、んだてめ!?」

大きな声を出すと気づいていなかったのか……目を見開き、驚く彼“ガジル”にシクルはお腹を抑え笑う。

 

「あっははははは!!! 匂いでバレてたかと思ったのに…気づいてなかったの? 」

 

「るっせぇ!! 笑ってんじゃねぇぞ、このクソチビアマ……」

ガジルがそう、シクルに暴言を吐いた瞬間、グワシッ!!! とその頭を片手で握り締め、グギギギギ……と力を加えるシクル。

 

「誰がチビですって? あたしのことかなー? ガジルちゃーん?」

「いっでででででっ!!! いってぇよクソが!!!」

 

ガバッ! と力任せにシクルの手を払いのけ、握り締められてた頭をさするガジル。

「たくっ! なんつー馬鹿力だっての……」

 

「お口の悪いガジルちゃんがいけませんー」

「ガジルちゃん言うなっ!!」

グルルルゥ!! と威嚇よろしく、唸るガジルにケラケラと笑うシクル。

 

そして、ふぅと笑いが治ると……シクルはふっと、ガジルを見つめる。

 

「な……なんだよ」

「…………やっぱ、子は親に似るのかな? 」

シクルの言葉にガジルは意味が分からないと首を傾げ、それをみてシクルはクスリと微笑むと……

 

「メタリカーナ……やっぱり、似てるね」

と、告げた。

その瞬間、ガタッ! とガジルは反応を見せ、シクルの肩を掴む。

 

「お前っ……あいつのこと、知ってんのか!?」

「あーごめんね? 知り合いではあるけど……居場所は知らないんだ」

 

シクルの答えを聞くと、「そうか……」と呟き、腰を落とすガジル。

 

「にしても、ナツと反応そっくりだったね」

「んだぁ!? 火竜なんかと一緒にすんじゃねぇ!」

再びガルゥ! と吠えるガジルに「あーはいはい」と面倒くさそうに払いながらふぅと息をつき、小さく笑みを見せる。

 

「でも……ちょっと安心した」

「……んだよ」

 

「やっぱり……ガジルでも、育ての竜を気にしてるんだなぁって……思ってね」

シクルのクスクスと笑う声にそっぽを向くガジル。

 

「けっ……誰があんなやつ……それより、あのジジィから聞いたぞ……」

ガジルのその言葉に首を傾げ、「何が?」と問うシクル。

 

「なんで俺を……ギルドに加入させるように言ったんだよ?」

ガジルのその言葉であぁと合点のいったシクル。

 

「そのこと? なんでって……同じ滅竜魔導士だし……気になっちゃってね」

ダメだった? と聞いてくるシクル。

 

「……別に」

と、そっけないが嫌ではなさそうなガジルに微笑み、「そっか……」と嬉しそうに頷くシクル。

 

 

この後、シクルはミラに呼ばれ、ガジルと別れた。

去っていくシクルの後ろ姿を見つめガジルは……

 

「……変な奴」

と、1人、呟いた。

 

 

 

ミラに呼ばれたシクル。ミラから頼まれたのは足りなくなった食材の買い出しだった。

ちょうど手の空いたルージュも共に買い出しに出かけ、現在はギルドへと戻る途中だった。

 

「ふぅー! 今年は普段よりも新人も多かったもんねー……」

 

「あい…材料足りなくなっちゃったんだねぇ」

 

ルージュに少し荷物を持ってもらいながら並んでギルドへと戻っていると……

 

少し荒い魔力の流れを感じとる。

「ん? この感じ……(誰か喧嘩してるのかな?)」

気になり、魔力の感じる場所へとルージュと共に向かうと……

 

 

「あれぇ? あれって……シャドーギアの皆?」

ルージュの言葉にコクリと頷くシクル。

「みたいね、それと……」

 

シクルの見つめる先には、ボロボロになったガジルがいた。

 

傷のないジェットとドロイとボロボロなガジル、そして不安げに3人を見つめるレビィを見てふぅん……とシクルは目を細める。

 

「なんだかんだ……認められたいのかな? ガジル……」

こういう方法は想像つかなかったけど……と心中で呟いていると……

 

3人の元に新たな魔力……それも、凄く……攻撃的な魔力の持ち主が現れる。

 

「シ、シクル!! あれってぇ……!」

「っ! ラクサス……!!」

ラクサスの眼を見た時、シクルはゾワッと嫌な予感が脳裏をよぎる感覚に陥る。

 

そして、その予感はすぐに的中し……

 

 

ガジルを一方的に攻撃していたラクサスにジェットとドロイが止めるように声を上げた時……

 

「うるせぇ!!!」

ジェットとドロイ……そして、レビィめがけて強力な雷を放った。

 

 

「え……」

 

レビィが目を見開き、驚きと恐怖に身体が動かず、ジェットとドロイも咄嗟のことに身体が動かない……。

 

「ちっ!」

そんな3人を庇うように前に出るガジル。痛みに耐えるように、身構える。

 

そして、ラクサスの雷が目前に迫った……

 

その瞬間ーーー

 

 

ガジルの視界に金色がいっぱいに広がった……。

 

 

バチィイイイイイイッ!!!!

 

 

「おっ……と!!」

 

ガジルの目の前に現れたその人物にガジルやレビィたちは驚き、目を見開いた。

 

「なっ、お前……!?」

「シクル!?」

「いつから……というか今……」

「ガジルを……庇った?」

 

シクルにラクサスも気づき、鋭くシクルを睨みつける。

 

「てめぇ……」

 

「いやぁ……ちょっと威力上がったんじゃない? でもま、まだまだだけどね」

ラクサスの雷を右手1つで受け止めたシクル。ニッとラクサスに笑みを見せ、右手をヒラヒラと振るシクル。

 

「なんだと?」

 

「言葉の意味そのままよ? その程度じゃ、まだ私には勝てないよ……ラクサス」

 

シクルはそう言うと一度目を閉じ……、次の瞬間、ギロッとラクサスを睨みつける。

 

「仲間に手ェ上げんなよ……ラクサス」

 

シクルから発せられるその怒気は殺気に近い威圧を纏い、背後にいたガジルやレビィ達も震える。

 

「シクル……」

レビィが不安げな声を上げると……その隣に茶毛の猫が飛んで来る。

「大丈夫だったぁ? レビィ」

「ルージュ! うん……大丈夫」

 

レビィの方を少し振り返り、再びラクサスに鋭い目つきを向けるシクル。

「……レビィは仲間なんだよ? ジェットやドロイも……ガジルだって、私たちの仲間……傷つけちゃダメだろ? ラクサス……」

 

シクルの言葉に舌打ちをし、去っていくラクサス……

そんなラクサスの去っていく後ろ姿を、シクルは切なそうに見つめる。

 

 

「待ってガジルっ!」

ラクサスが去った後、後ろからレビィの少し大きな声が響き、振り返る。

 

ガジルは傷ついた身体を庇いながら「仕事があるんだ……」と言い、歩いて行く。

 

その後ろ姿をレビィは瞳を揺るがしながら見つめ、そんなレビィの頭にポンッと手を置き、撫で始めるシクル。

 

「わっ…シクル……」

「そんな顔しないの! 可愛い顔が台無しだよ? それに、大丈夫……ガジルは頑丈だから……あれくらいで倒れたりしないよ」

ね? と言うシクルに「うん……」と頷くレビィ。

 

 

シクルはふと、空を見上げため息をつく。

 

 

ラクサス……いつからあなたは…………

 

 

「……独りは、寂しいだけだよ……ラクサス」

 

シクルの思いと呟きは静かにその場に流れ、その思いを聞き取れた者はいなかった……。

 

 

「シクルゥ? どうかしたの?」

ぼぅっと空を見上げるシクルを心配し、頭に乗っかってくるルージュを見てシクルはクスッと微笑むと、首を横に振った。

 

「ううん……なんでもないよ。大丈夫……」

 

そう言うとシクルは荷物を持ち直し、「早く戻ろっ」とルージュに声をかける。

 

最後に、去り際……シクルはジェットとドロイの方を振り返り……

 

「ガジルのしたことは許されない……でも、変わろうとしている彼を……見放さないであげて?」

と、告げた。

 

シクルのその一言にジェットとドロイは考え、悩みこみレビィも……恐怖してしまっていた自身を思い返し、次会う時はお礼を言おう!と決意するのであった。

 

 

その日の夜……

 

「ふぅー、あーあ……やっぱり曲がりなりにも竜の力を使うだけはあるかぁ……」

 

シクルはお風呂から上がり、昼時にラクサスの雷を受け止めた右手を見る。

 

シクルの右手はほんの僅かに赤みを帯びており、痛みはないが痺れが未だ残っていた。

 

「……ラクサスも強いからなぁ……(めんどくさがって手ェ抜いてたら……こっちがやられちゃうかな? )否、流石にやだな……うん」

 

まだ負けるわけにはいかないな……と呟きながら冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップ一杯一気に飲みきるシクル。

 

「ふぅー……さて、私も寝ようかな」

 

ルージュは既に明日に備え寝室で眠っていた為、シクルも早めに寝よう……とそう呟き、コップを洗い振り返った時だ……

 

 

「よっ!」

「………………」

 

リビングの窓から顔を覗かせる桜髪を揺らす彼……ナツがいた。

シクルはジトォ……と半目でナツを睨み……

 

次の瞬間、ヘッドロックを決めるシクル。

 

「うぉぉお!? グェッ!! し、締まる! 締まってるってシクル!! くるしぃっ!!」

 

首に回るシクルの腕をバシバシ叩き、抗議するナツ……

 

「なんであなたは不法侵入決めてんのよ……私が服着てなかったらどーするつもりだったの?」

ナツの首から腕を離し、ため息混じりにそう告げるシクル。

ナツはゴホッゴホッと咳き込み……

 

「いーだろ? 別に……それに! もしシクルが服着てなかったらラッキー! て思う気がするぞ!」

 

悪びれもなくそう言い切ったナツ……シクルはプチッと脳裏で何かの糸が切れる感覚がするも気にせず……ナツを振り返る。

 

「…………あ」

 

「へぇ……? そう……ナツ、あなた……」

振り返ったシクルを見た時……ナツは震えた。

「ひ、ひぃっ!?」

 

シクルは怯えるナツに構うことなく指を鳴らし……

「そんなにあたしに殺られたい?」

ニッコォリと笑みを浮かべるシクル……

 

「い、いあいあ!! じょ、冗談だって冗談!! 悪かった!! 謝るから!! ゆ、許し……「そんなんで許したら警察いらないんじゃアホォおおおおお!!!!!」ぎゃぁあああああああああっ!!!!!!」

 

シクルからの鉄拳を食らったナツが回復するまで十数分……

 

 

結局シクルはナツに紅茶を入れ、出迎えた。

「全く……明日もあるんだから、これ飲んだら帰って寝るのよ?」

呆れ紛れに言うシクルに「分かってるよ…」と不貞腐れながらもシクルの淹れた紅茶を飲むナツ。

 

不貞腐れるナツを見ながらフッと笑みを小さく浮かべるシクル。

「で? 何か用があってきたんじゃないの?」

シクルからの問いかけに、あっと今思い出したというような反応を見せ、懐を探り始めるナツ。

 

「んっと……確かこの辺にっ! お、あったあった! これ!!」

ナツが懐から出したのは一枚のチラシだった。

「ん? これ……あぁ、ミスコン?」

 

ナツが見せたのは、収穫祭の際に開催される “ミスフェアリーコンテスト” のチラシだった。

「おう! じっちゃんがな、シクルにそれ、出て欲しいってずっと言っててよぉ」

 

「マスターが? えぇ……でもこれ皆の前で何かやるんだったよね? ……めんどくさい」

シクルはため息をつき言った。

 

「めんどくせぇ言うなよ! 賞金50万Jなんだぞ!?」

 

「私お金困ってないし」

 

「じっちゃんの頼みだぞ!?」

 

「別にマスターの頼みでも断る時はあるし」

 

「出るだろ!?」

 

「だからめんどくさいって」

 

「出ろ!」

 

「いや」

 

「出ろって!!」

 

「いやだってば」

 

その後数分間、出ろ、いや、の言い合いが続き……

 

 

「なんだよ……俺だってステージに上がったシクル見てぇのに……」

テーブルに突っ伏し、そう呟くナツ。そんな彼を、シクルはチラリと横目で見つめ、そして少し考え込み……はぁ、とため息をつくと……

 

「……出るよ」

と、言った。小さく呟いたがナツの耳にはしっかりと届き……ガバッ!と勢いよく顔を上げ、キラキラとした眼をシクルへ向けた。

 

「ほんとか!?」

「ほんと、出るよ(てか眩しい……ほんと、犬みたいだなぁ)」

 

シクルの返事に満足したのか、ナツはカップに入っていた残りの紅茶を飲み干すと立ち上がり、窓から外へ身を出す。

 

「ちょっと、玄関から帰りなさいっての……」

何度言っても治らない為、強くは言わないが一応文句を言うシクル。

だがやはり、気にしないナツはくるりとシクルの方を振り返り、ニカッ! と太陽のような笑みを浮かべる。

 

「また明日な、シクル!!」

そう言い、ナツは窓から飛び降り、帰って行く。

シクルはナツの出て行った窓をしばらく見つめ……1人、「また明日ね……」と呟くと窓を閉め、電気を消し、寝室へと入っていった。

 

 

 

 

そして、翌日ーーー

 

 

ついに、収穫祭 “ファンタジア” 当日。

 

 

「収穫祭だー!!! ファンタジアだぁあああ!!!」

 

『ぉおおおおおおおおおっ!!!!!!』

 

 

妖精の尻尾を中心に、歓声がマグノリア全体に轟くのであった……。

 

 

 

 

これよりーーー収穫祭 “ファンタジア” 開催

 

 





はい!!如何だったでしょうか?

ちょっと予想より文字数足りなくナツとの絡みを入れました、はい


次回はミスコンスタート!そして……な、感じになると思います!
では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!

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