なんと夜になる前に出来ました!自分でも驚きです!!
では、早速32話…始まります!
最後までお付き合い、お願いします!
「ジェラァアアアアアルゥウウウウウッ!!!!!」
「っ!…シ、クル………」
大きな…大きな叫び声と共に、ダンッ!と地を蹴り、ジェラールへと突っ込むシクル。
そんなシクルを見て、驚きを隠せないエルザと、ニヤッと笑うジェラール。
「月竜の…鉄拳!!!!」
ジェラール目掛け、拳を振るうシクル。
だが、その1発はジェラールの右手により、受け止められ止まる。
「どうした?そんなもんか…」
「っ!!」
クク…と笑い、シクルを見下ろすジェラール。
「魔力が無ければ満足な力は出せないか…」
ジェラールはそう呟くと、光の玉でシクルを吹き飛ばす。
「っ!!!」 ズサァッーーー!!!
地を滑り、後退するシクルだが、足に踏ん張りを効かせ、止まる。
「許さない…ジェラール………あんたは絶対…許さないっ!!!エルの大切な人を…エルの仲間を…あんたは殺した………そして………
エルを泣かせたあなたを………あたしは………許さないっ!!!!」
そう叫び、顔を上げたシクルの憤怒する表情にジェラールは高笑いを見せる。
「もう遅いのだよ、歌姫!!
俺はエルザを生贄にし、ゼレフを復活させるのだ!!!そしてそこに倒れる愚かな男は…そんなつまらん女の為に命を落としたんだ…
笑えるだろう?」
「…………………な…」
シクルは拳を強く握り、震える。握り拳からは少しずつ赤いものが流れる。
その様子に、ジェラールは不審に感じ半歩ほど…後ずさる。
「なんだ…?」
「ふざけんな………エルを使って…ゼレフを復活?シモンが…愚かな男?………あんたなんかに………あんたなんかにっ!
シモンを馬鹿にする権利なんかあるわけないっ!!!エルの!!エルの命もその身体も…エルのものだ!!!
あんたの夢のためになんか…使わせるもんか!!!あんたは絶対…許さない!!」
シクルは大声で、叫び、少し呼吸を荒くしながらジェラールを睨みつけ、そしてふっと後ろへと視線と意識を向け…
「ね?あなたも許せないよね…あなたは誰よりも…仲間を愛する人だもん………そんな所で、寝ていていいの?………立ちなさい、ナツ」
そう、告げた。その瞬間………
シクルの真横を何かがものすごい速さで通り過ぎる。
「黙れェッ!!!!!」
ドゴォッ!!!
「がっ!?」
シクルの真横を通り過ぎたのはナツだった。
ナツは憤怒に燃える重い重い拳をそのジェラールの顔へと叩きつける。
そして、バキッ!と何かを口に入れる…。
「なっ…貴様、まさかっ…!」
ナツの食べているものを見て、ジェラールとエルザは驚愕する。
「こいつ………!エーテリオンを…食ってやがる」
予想もつかない行動をしたナツに驚きが増すジェラールだが、すぐに首元を抑え、苦しみの声を上げ、地面を転がるナツを見て、愉快そうに再び笑い出す…。
「がっ!!あぁっ!」
「なんて馬鹿なことを!このエーテルナノには火以外の属性も融合されているんだぞ!?」
「その短絡的な考えが自らを自滅へと追い込むんだよぉ!!!」
2人の声とナツの呻き声を聞きながら、シクルは冷静に考え…そして………
ふっと、空を…空に浮かぶ月を見上げる。
「………少しは回復できたかな…」
ぽそっと呟くとナツへと手をかざし…
「………【我、月の守護の名の元に
汝、我が友の身を守りたまえ そして
その身に宿りし真なる力 解き放たん】
ナツの身体へと歌魔法をかける。
その瞬間、徐々に反発を起こしていたナツの魔力と身体とエーテリオンの膨大な魔力が融合を始め、馴染み始める。
「受け皿は作ったわ…(あとは…あなた次第よ、ナツ………)」
エーテリオンを取り込んだナツ………そしてその顔には………竜のような鱗が浮き出ていた。
「まさか…それは…ドラゴン・フォース!?」
ジェラールの驚きの声を聞かず、ナツはジェラールへ、猛攻撃を仕掛ける。
それを見届けた瞬間、シクルは力尽きたように膝をつき、倒れる。
「っ!!シクルっ!」
倒れるシクルの元へ、エルザが駆け寄ってくる。
「エ…ル………」
シクルの身体を抱き起こすエルザはシクルの身体にあるはずの膨大な魔力がほんの僅かにしか残っていないことに気づく。
「お前…!魔力がっ!!」
「あぁ……さっき、油断…しちゃって…あいつに、ほとんど…持ってかれて………月の力、吸収してた…ん、だけど………やっぱ歌魔法やるにはちょっと無理しすぎちゃったかな」
てへっと笑うシクル。
この場に来てから、月の光を喰らい、魔力へと変換していたシクル………だが、
歌魔法は本来膨大な魔力を使用する魔法故、枯渇していた魔力を少し回復するのみでは足りなかったようだ。
「馬鹿者…何故お前は………そんなに無茶を…
魔力が無い状態での歌魔法は身体に負荷がかかる…それはお前が一番よく知っている筈だろう………シクル」
弱い呼吸をするシクルを見下ろし、目が潤み始めるエルザ。
「ちょ…やめてよ………私、エルの涙は…もう、見ないって………決めてんだから………大丈夫………私は、死なない………ジェラールは、ナツが…なんとか、する…よ」
にっこりと微笑むとナツが暴れているであろう方向を向き、見つめる。
それに習い、エルザもナツとジェラールの戦いに目を向ける。
そこでは………
大穴空いた地面から“
「この速さでは追いつけまい!!!」
と、ナツに叫ぶ。だが………
グンッ!!!ダンッ!!!
両腕と両足、そして身体全体を使い、ジェラールの元へと超速度で飛翔するナツ。
その速度は流星を纏うジェラール以上。
「何っ!?」
その光景に驚き、ナツへと強力な魔法を放つも、ナツは器用に空中で躱し、ジェラールへと突っ込む。
「お前は自由になんかなれねぇ!!!自分を解放しろっ!!!ジェラァアアアアアルゥウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!」
そして…そのナツの怒声と共に………ナツの拳はジェラールを襲う。
「がぁあああああああああっ!!!!!」
「うぉぉおおおおおおおおおおっ!!!!!」
ジェラールはそのまま、楽園の塔の床を何枚も突き破り、倒れる。
そして、ジェラールに勝利したナツはダァンッ!と音を立て、シクルたちの前へと降り立つ…。
「ナツ………(あのジェラールを倒した……これで…これで、やっと…私の8年に及ぶ戦いは終わったんだ………)」
やっとみんなに………自由が………
ナツの逞しい後ろ姿を潤む目で誇り高そうに見つめるエルザ。そして、シクルもまた…身体をゆっくりと起こし、ナツを見つめ微笑む。
やっぱり………あなたは、強い………
心も………力も………ナツ………
やっぱり…あなたに似てるよ………イグニール
ナツの後ろ姿を見つめ、何処か懐かしい姿がダブって見えたシクル。
ふっとシクルたちを振り返る、ナツ。そして、小さく笑みを浮かべると、ガクッと膝から崩れ落ち………
「っ!!!ナツ!!」
前のめりに倒れるその身体を、咄嗟にエルザが走り、受け止めた。
エルザはナツの頭に手を回し、胸へと抱き寄せる。
「お前はすごいやつだ………本当に」
ありがとう………そう、エルザの呟きが聞こえたシクルはクスッと笑い、やっと終わったことに安堵する。
だが…………
ゴゴゴゴゴッ!!!
突然、楽園の塔全体が大きく揺れ始める。
「なっなんだ!?」
「これは………」
エルザとシクルは塔全体を見回し、目を見張る。
「塔が…暴走を始めているっ!?」
「くっ…元々こんな膨大な魔力を一箇所に留めるなんて不可能なんだ………!このままじゃ…塔が爆発する!!!」
シクルの告げたその言葉に、エルザは一瞬肩を揺らし、そして…ナツを抱え、シクルの元へと歩み寄る。
「………エル?」
「シクル………すまない…ナツを………頼む」
不思議そうに見上げるシクルに、ナツの身体を預けると、塔の壁へと近づく。
その行動を目にし、シクルははっとエルザが何をしようとしているか…理解する。
「ま…待って………だめ、エルっ!!!だめだ………そんなことっ!!!」
「シクル………これしか、方法がないんだ…だから………ここは私に任せろ…」
エルザは…その身を使い、塔と融合し、魔力の暴走を止めようと考えていたのだ。
だが、そんなことをすればエルザの死は確実………だから、シクルは声を荒らげ、止めるよう訴える…。
しかし、エルザは笑みを浮かべ、シクルを振り返り…任せた…と、告げる。
「やめて………そんな!他に方法があるはずだよっ!!!!エルっ!!!!!」
「…ん………シ、クル?」
シクルの叫び声に、意識が戻るナツ。
そして、シクルの見つめる方をゆっくりと見つめ、ナツも驚愕の表情となり、身体を起こしエルザを見つめる。
「おい…まさか、エルザ………お前っ!」
「目が覚めたか………ナツ、お前も…シクルと共に早く逃げろ…ここは、私が何とかする………」
徐々に塔の壁へと近づくエルザを見つめ、ナツとシクルは止めるよう声を上げるもエルザの足は止まらない。
「エルっ!!(そんな…そんなこと………!!
やっと…やっと自由になれたんだ!!!エルは………)」
死なせる訳にはいかないっ!!
「換装 龍鱗刀! 龍鱗 龍縛針」
シクルは即座に龍鱗刀を召喚するとエルザに向け、龍縛針を打つ。
「っ!」
龍縛針を打たれたエルザは体が動かなくなる。
「っ…シクル…なんの、真似だ!?」
「ごめん………エル…でも、やっぱりあなたが死ぬなんて………そんなこと、私が許せないんだ………」
シクルはそう告げると…右耳に装着している制御装置を外し、魔力を解放する。
ブワァ!と吹き荒れるシクルの魔力。
「っ!!」
「うぉっ!?」
すでにシクルの髪は銀色へと変化している。
シクルはすぅ…と目を閉じると…
「エルの命をこんな塔に…くれてやるくらいなら………」
「ま…まさか………シクル、お前!」
「お、おい…?」
シクルの足元に魔法陣が展開される。
「私が………この塔を止める!!」
その言葉と共に、魔法陣は銀色の眩い光を放つ。
「待てシクルっ!!ダメだ…それでは私の罪がっ!」
「エルに罪なんてないよ………エルは、もう十分…苦しんだ………これからは、ナツやグレイ…ルーシィ、ハッピー………ギルドの皆と、幸せに暮らすんだよ…こんな塔に縛られずに………ね?」
シクルとエルザの会話に、シクルがその身を呈し、この塔を止めようとしていることに気がつくナツ。
「お、おい、シクルっ!!!やめろって…そんな…お前がいなくなったら!!!ルージュはどうすんだよ!?」
ナツのその一言にシクルはピクッと肩を揺らす。
だが、シクルは…ふっと笑みを浮かべると…
「ナツ………ルージュのこと…お願い………
大丈夫………あの子は賢いから…分かってくれる」
「んな…おい…シクルっ!!!」
シクルを止めようとナツも動こうとするが、その瞬間塔の揺れが大きくなり、元々力の入らない足はすぐに崩れ落ち、倒れてしまう。
「ナツ………もう、時間だよ………」
シクルはそう告げるとナツとエルザの足元にも魔法陣を展開。
そして………
「ばいばい………ナツ…エル……ごめんね…
ごめん………こんな私を…許してね………
ナツ………………」
最後にナツが見たのは…笑みを浮かべながらも、涙が頬を伝うシクルの顔………
自身の身体を包み込む光に逆らおうとナツはシクルに手を伸ばし…
「やめろ…やめろっ!!!
シクルゥウウウウウウウウウウウウウ!!!!!」
ナツも涙を流し、声を上げる…だが、ナツの伸ばした手はシクルには届かず………
シクルの展開した魔法陣により、エルザとナツは塔の外へと転送される。
「………これで、大丈夫…」
シクルはぽつりと呟くと、頬を伝う涙を拭い…
足元の魔法陣を更に大きくする。
「ふぅ………
【我、聖なる月の名の下に
邪なる力を封じ 悪しきなる力 封印せん】
塔全体に“歌魔法 封印”を展開。
この塔自体にそれほど悪の力や邪なる力は秘められてはいないものの、色々と応用の利く魔法である。
さらに…
「【我、月の守護の名の下に
愛する者の身を包み その身を守らん】
いくら、封印の魔法を展開しても流石にこの膨大な魔力が外に漏れない保証はない…
保険のために、シクルは防御魔法を展開する。
そして…
「【我、月の加護の名の元に
月の道を創り 天へと汝を導かん】
最後に、この塔にある魔力を空へと向けて流すための道を“歌魔法 月の道”で作る。
シクルが1人塔に残った理由…それは、これ…“月の道”発動の為である。
この魔法は術者が発動したい場所から動かずに魔法陣を展開することにより使用可能となる…その為シクルはこの場から動くことは出来なかった…。
塔全体が暴走した魔力の封印しきれなかったものと月の道による輝きで一層光りだす。
シクルは目を瞑り、最後にーーー
「………ごめんね」
ドォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!
楽園の塔…………消滅ーーー。
如何だったでしょうか………恐らく次で楽園の塔篇終了です!
この章が終わりましたら次は少し番外篇を組み込み、B・O・Fへ行きたいと思います!
では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!