フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

31 / 75
はい!投稿致します、thikuruです!!


テンポ遅い気もする…むむむ………


とにかく、第27話…最後までお付き合い、お願いします!!


27話 攫われるエルザ 楽園の塔へ

目の前の男…相手を睨み、冷や汗が頬を伝うシクル。

 

 

「っ…(やばい…こいつ相手に、2人を庇ってじゃあ………分が悪すぎる!)」

 

 

だがエルザと離れすぎるともしもまた狙われた時…助けに行けない可能性がある。

 

「クククッ…やっぱ思った通りだなァ…あんたの血、最高にうめぇなぁ…」

狂気に狂ったかのような笑みを浮かべシクルに告げる男を見つめ、背筋が震える感覚のするシクル。

 

「…血に、美味しいもまずいもある訳?理解出来ない…」

シクルはそう言いながら、右足を庇いつつ立ち上がり、刀を構える。

 

「ほう?立つのか…」

 

「当たり前でしょ…私の後ろには…守らなきゃならない人がいるんだから」

 

「シ…クル」

シクルを見つめ、蒼白い顔がほんの少し回復しつつあるエルザ。

そして、その足元には心配の表情を浮かべたルーシィが。

 

「ククッ!守るべきものねぇ…じゃあ、もうちょっとおいちゃんと遊ぼうカ?」

男は笑いながらそう言いシクルへ、刀を向ける。

 

 

「おい、そろそろ時間が…」

男を見て、声を上げたのはシモンだった。

男は横目でシモンを見て、言う。

 

「わぁってるって…もうちょい楽しませてくれヤァ…久々に…楽しめそうなん………だ!」

語尾を荒らげると一気にシクルへと攻撃を仕掛けてくる男。

 

「!(来たっ…!)くっ!」ガキィンッ!!

一発目を防いでから、何度も刃が混じり合い、激しい刀が混じり合う音が10分ほど続いた。

 

その攻防の中、シクルは徐々に刀傷が増えていき、又男も少しずつ身体に傷を負っていた。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

「………ククッ…おいちゃんとここまでやり合えるやつは初めて見たなぁ………」

楽しげに不気味な笑みを浮かべる男。

 

 

「おい!もうほんとに時間ねぇぞ!」

 

「うっせぇなぁ…わぁってるっての…あーたく…楽しかったのになぁ…まぁ、外野がうるせぇし…これで終わりにするかァ………」

 

ショウの言葉にため息をつきながらもシクルを見つめ、再び刀を構えた時………

 

 

 

「……ーーーーーーーーー、だろ?」

「っ!?」

 

シクルにのみ聞こえる声で…男がそう囁いた…その瞬間、明らかに隙が生まれたシクル………

 

 

ザンッーーー

 

「あ………」

 

シクルは左肩から右胸にかけ、男の刀により斬り裂かれ……真っ赤な血が飛沫を上げた…。

 

「っ………シクルーーーー!!!!」

エルザの悲痛な叫びが響き、カードの中、ルーシィからもシクルを呼ぶ叫び声が響く。

 

 

パァンッ!!

 

「ぁ…」

シクルが倒れ、完全に油断していたエルザはウォーリーに背後から睡眠弾を撃たれ、倒れてしまう。

 

《エルザっ!!シクルっ!!

 

ちょっとあんた達!!エルザを離しなさいよ!!》

 

エルザを大柄な男が抱えるのを見てルーシィは怒声を上げるも、ショウたちは笑みを浮かべるのみ。

 

 

「やめとけやめとけ…カードの中じゃ、何も出来ないだろ?」

男がそう言い、そして倒れるシクルにふいっと目を向ける。

 

男は何を思ったのか…倒れるシクルに近寄り、その耳元に顔を寄せると………

 

 

「…あんたに誰かを守るなんて…出来ねぇよ」

その言葉にシクルは悔しさと惨めさで唇を噛み締める。

 

 

「姉さん…やっと、帰ってきてくれるんだね………」

ショウは抱かれているエルザを愛おしげに…だがどこか憎らしげに見つめ、そう呟く。

 

「“楽園の塔”へ…やっと………きっと、ジェラールも喜ぶよ」

 

ショウの言葉を聞き、朦朧とする意識の中、驚愕に揺れるエルザ。

「っ…(“楽園の塔”だと!?か…完成…して、いたのか…)」

心中で、そう呟いた後、すぐに意識を手放してしまったエルザ。

 

 

そのまま、消えていく姿をシクルは必死に身体に力を入れ、動こうとするが………

 

「つっ…!(痺れ…?まさかさっきの刀…毒でも仕込まれてたか………!)」

身体が痺れに襲われ、力が入らなかった。

 

 

《シクル!!シクル!しっかりして!!》

 

後方から、ルーシィの声が聞こえる。

 

…ルーシィ…………

 

「大、丈夫…(解毒は得意じゃないけど…この程度なら………)」

シクルは自身の身体中に魔力を巡らせると…

 

 

「…歌魔法(ソングマジック) 治癒(ヒール)

 

自身に治癒魔法をかけ、身体の傷を治し、粗方治し終え、毒も抜けた頃立ち上がり、ルーシィの閉じ込められているカードの元へと歩み寄る。

 

 

「待っててねルーシィ…今、出すから」

シクルのその言葉にルーシィは小さく頷き、シクルもその頷きに小さく頷くとカードに片手を添え………

 

 

「(多分これは結界か何かの一種……なら…)

【我、聖なる月の名の下に

 

その身に宿りし 邪なる力 光へと解放せん】

 

歌魔法(ソングマジック) 解除(ディスペル)

 

シクルが歌を唱え終わった時…カードが光だし、ルーシィが解放される。

 

 

「やったー!!出られたっ!!」

解放された瞬間ルーシィは喜び、シクルに笑みを浮かべた。

 

「良かった…これが通じて…」

ほっと一息つくと、シクルは真剣な表情を浮かべる。

 

「とにかく、今はグレイやナツを探そう!」

「うん!!」

シクルのその言葉にルーシィも頷き、残りの2人を探し始める。

 

ちなみに、この時解放されたのはルーシィのみ。

 

シクル曰く…「この場の全員に歌魔法をかけたら魔力がごっそり持ってかれちゃう!!」

との事で、ことが収まり次第解除するとの事だった………。

 

そして、すぐにグレイを見つけるも…

 

「そ、そんな…グレイ………」

2人の目の前にいるのは気を失い倒れるグレイだった。

ルーシィは慌ててグレイに駆け寄り、声をかける。が、シクルは目の前のグレイに違和感を覚え…

 

「…あれ?もしかして………」

ある結論にシクルが思い立つ…その瞬間…

 

ボキッと嫌な音を立て、グレイの腕が取れた。

「ぎゃああああああっ!?」

 

その後はルーシィのおかしいくらいの悲鳴と叫びが続き、グレイの取れた腕をくっつけようとするのにまた別のところをもぎ取ってしまい、終いには関節のつき方がおかしいグレイが出来上がり、ルーシィは泣き叫ぶ…

 

「………プフッ……アハハハハハっ!!」

必死に笑いを堪えていたが、ルーシィの様子に耐えきれず、笑い出すシクル。

「ふぇ…?」

 

「クククッ…!!ル、ルーシィ…そ、それ…グレイじゃないよ……ププッ」

「え!?」

シクルに指摘され、ばっとグレイを振り返ると…

 

「え…え!?溶け…これ氷!?」

グレイの体は徐々に溶け始め、そこでやっと目の前のグレイは氷で作られた造形魔法であると気づくルーシィ。

 

「え…あれ?じゃあ、本物のグレイはどこに!?」

そう叫び、再びグレイの姿を探そうとするルーシィの後ろから、「ここです…」と言う、女の声が聞こえる。

 

「え…」

「ん?」

 

声のした方を振り返ると…

「え!?あなた…ファントムの!?」

元ファントムのエレメント4、“ジュビア”がいた。

その腕にはグレイも抱えられ…

 

ジュビアの話によると、先ほどの襲撃の際危険に陥ったグレイを自身の水の中に隠し、守ったとのことだった。

 

何故かこの時ルーシィとシクルに対し敵対心剥き出しであったようだ………。

 

「とにかく!次はナツを見つけないと…」

シクルが敵対心剥き出しのジュビアを置いておき、まだ見つけていないナツを探そう…そう言った時だった………

 

 

少し離れた場所から大きな火柱が上がり…

 

「いってぇええええええええ!!!!!」

ナツの叫びが轟いた…。

 

「「ナツっ!!」」

シクルとルーシィがナツの元へと駆け寄る。

 

ナツは2人に気づくとうがー!と唸りながら叫び続ける。

「普通口ん中に鉛玉なんかぶち込むかよ!?あァ゛!?痛えだろ!?ヘタすりゃ大怪我だぞっ!?」

 

「普通の人ならアウトだって…」

 

「流石ナツ………」

 

「俺…段々こいつがバケモンになるんじゃねぇかと最近思うんだが………」

 

ルーシィ、シクル、グレイと続くがナツはそれらを華麗に無視し、うぉおおお!と唸ると

 

 

「あんの四角やろぉおお!!ハッピーとルージュ攫いやがってぇ!!!」

 

逃がすかゴラァ!!と叫びながら、走り出すナツ。

 

「あ!ちょ、ナツ!!待ってってば!!!」

 

「今はあいつを追うぞ!」

 

「え!?ナツに任せて大丈夫なの!?」

 

ルーシィの驚く声に、ナツを追い走りながらグレイは「あいつは鼻はいいからな」と言い、納得させる。

 

 

 

そして、エルザの捜索をナツに任せて数時間後………

 

現在、シクルたちは舟に乗り、まさに海のど真ん中に佇んでいた…。

 

 

「……おい………ここどこだよッ!?」

グレイの絶叫が虚しく海に反射し、響く…

 

「ジュ、ジュビアたち…迷ってしまったのでしょうか?」

グレイの隣でオロオロとするジュビア。

 

「ね、ねぇ…ちょっとナツ………ほんとにこっちで合ってるの…?」

ルーシィは隣に座っているナツに声をかけるも…

 

「お…おぉ………お…うぷ」

舟に乗り込んだ直後から乗り物酔いを起こしていた。

そして………

 

 

「うっぷ………気持ち悪い…」

薬のなかったシクルも乗り物酔いを起こしていた。

 

「てか何でシクルも酔ってるの!?」

 

「いや…酔い止め薬………部屋に置いてきちゃって…うぷ」

ルーシィに説明をしながらも吐き気を堪えるシクルにルーシィははぁとため息をつきながらその背をさする。

 

「だァっ!!しっかりしろよこのクソ炎!!

 

テメェの鼻を頼りに来たんだぞ!?」

ナツに怒鳴りながらその身体を揺するグレイ。

 

「うぷ…ゆ、らすなぁ……酔うぅぅ………」

 

「グレイ様の期待を裏切るなんて信じられませんね」

情けないナツの姿にジュビアは呆れる様子。

 

 

「クソ!!俺達がのされてる間に…エルザが連れてかれちまうなんて…しかも、ハッピーやルージュまで!」

 

グレイの悲痛な声を聞き、ふと、乗り物酔いを忘れシクルは先程戦った男のことを考える…。

 

 

…あいつなんで………“アレ”を知っていたの?

 

 

アレは………あの時………捨てた筈………

 

シクルは首を横に振り、嫌な考えを消し去る。

 

「ホントですね…まさかエルザさんほどの人がやられてしまうなんて………」

シクルの脳裏から男が消えた時、ジュビアのぽつりとした呟きが流れる…。

 

その時…苛立っていたグレイの冷たい殺気がジュビアに襲う。

 

「やられてねぇよ…エルザの事よく知らねぇくせに勝手な事言ってんじゃねぇ」

 

「ご…ごめんなさい………」

グレイの睨みにビクッと肩を揺らし、怯えが見えるジュビア。

 

「ちょっとちょっと!!グレイ!!落ち着いてよ!」

「ジュビアに当たっても何ともならないでしょーよ…」

 

ルーシィとシクルが止め、「わ、わりぃ…」と、グレイが小さく謝る。

「い、いえ………」

 

 

「でも…何だかんだ私達もエルザのこと…ちゃんとよく知らない………」

ぽつん…と、ルーシィの悲しい呟きが響く…。

 

「あいつら…エルザの昔の仲間だって…言ってた………ねぇ?私達だって…エルザのこと、全然わかってなかったよ………」

ルーシィの辛そうな表情に乗り物酔いを忘れ、シクルがルーシィの頭とジュビアの頭に手を乗せ、撫でる。

 

 

「2人とも…そんな顔しないで?

大丈夫………これから知っていこう?

 

エルやハッピー…ルージュを助けて…

また残りの時間、リゾートで遊ぼ?それで、いっぱい楽しんで思い出作って………ゆっくり…今までのこと…知っていこ?」

 

シクルのその言葉にルーシィとジュビアはコクと小さく頷き、うっすらと笑みを浮かべた。

 

ルーシィとジュビアが頷き、グレイも落ち着きを見せた頃………

 

海のど真ん中に大きな大きな…塔が見えた………

 

 

 

「…塔?」

 

「あれが…“楽園の塔”か」

 

「随分大きいですね…」

 

「見た目不気味だね………(塔自体が凄い魔力を………)」

 

「うぷ………?」

 

 

シクルたちは、塔を目の前に見上げる。

 

 

「…行くぞ、エルザを助けに!」

 

「ハッピーとルージュもね!」

 

「はい!」

 

「…ぅぷ」

 

「エル………」

 

 

シクルは別れる前のエルザを思い出す…

 

凄く………怯えていた………

 

 

目を瞑り、シクルはぎゅっと拳を握る…

 

 

“…あんたに誰かを守るなんて…出来ねぇよ”

 

 

違う………守る…絶対……守ってみせる………

 

 

「エルを助けなきゃ………絶対、守るんだ…」

 

 

あの子に涙は似合わない………

 

もう、私の前で………

 

 

「涙は流させない………」

 

 




はい!!27話、終わりです!

えっと…番外編なのですが、この楽園の塔が終わり次第、4.5章として1つ作成しようかと検討中です!

では、次回は早くて本日の夜には出来るかと思います!遅くても明日の昼前!

では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。