フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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ギリギリ!!投稿できました!!


間に合ってよかったァ!!

では、最後までお付き合い、お願いします!!


26話 嵐の予感

 

その日の夜ーーー

 

 

 

シクルは1人、夜の海で空を眺めていた。

 

 

「…こんなゆっくりした日を過ごすのは…ほんと、久しぶりだなぁ………」

 

 

ふぅと息をつき、満月を見て、目を瞑る。

 

 

脳裏に浮かぶは今日、ナツやルーシィ達と沢山遊んだ記憶………

 

ナツとグレイが喧嘩をして………

 

エルザがそれをやりすぎの力で止めて…

 

ルーシィやハッピーはその光景を見て震え、

 

シクルとルージュは笑って………

 

 

「…楽しかったなぁ」

 

フフッと笑うシクル。 不意にーーー

 

 

 

“お前に幸せ等ないんだよ?なぁ…愛しの……”

 

 

「っー!!!」

急に蘇るその声にビクッと肩を揺らし、呼吸を荒らげる。

 

「っ…は………はぁ…ふぅ………」

 

呼吸を落ち着かせ、再び空を見上げると…満月が雲に隠れ、見えなくなっていた…

 

「………やだなぁ…(嫌な風………)」

 

これが起きると………あまりいいことは起きない………いつもそう…

 

「…お願いだから…当たらないでよ………」

そう呟き、ふっと顔を俯き、暫くぼぅっとしていると…

 

 

「シクルーーーーー!!!」

 

「ん?」

 

聞き覚えのある声に、シクルは顔を上げ、後ろを振り返る。

 

すると、そこには予想と違わずルーシィが走っていた。

ルーシィはシクルの前まで来るとシクルの手を握り、少し興奮気味に笑顔を浮かべ言う。

 

「今ね!ホテルの地下で皆とカジノで遊んでるんだ!!シクルも行かない?」

 

「カジノ?へぇ…エルも行ってるの?」

 

シクルが問いかけると「うんっ!」と頷くルーシィ。

きっとナツやエルザにシクルを探して連れて来るように等、言われたのだろう…

 

「分かった、私もカジノ少し興味あったから…行ってみようかな」

 

シクルはそう言うと、立ち上がり、ルーシィに引かれ、カジノルームへと向かった。

 

 

 

カジノに着くとシクルは目を輝かせた。

「すっごーい!!楽しそうだね!!」

「でしょ!!ね、シクルも遊ぼ!」

 

ルーシィの言葉に「うん!」とシクルも頷くとシクルはどのゲームで遊ぶか台を見回し、考える。

 

すると………

 

 

「おぉー!!!」

 

「ん?」

大きな歓声が響く。

シクルは不思議に思い、そちらへ行くと………

 

 

「エル?………うわ」

歓声の大元は仲間のエルザだった。

そして、エルザは今ポーカーゲームを行っているようで、その手元を見ると………

 

「ロイヤルストレートフラッシュ………えぐ」

 

しかもエルザの勝敗履歴を見ると………

 

20連勝はしているだろうその成績に………

 

 

「………新たな才能の開花…?」

と、苦笑を浮かべ、呟く。

 

シクルに続き、エルザの成績を見たルーシィも…驚いた表情を浮かべ、声を上げる。

 

「すごいエルザ!!」

 

「ふふん、今日はついてるな」

「とんでもなくね…」

 

エルザの言葉にシクルも賛同し、楽しんでいるエルザを見てほんわりと笑みを浮かべる。

 

 

「ディーラーチェンジだ」

不意に、エルザの対戦相手が褐色の肌をした若い男に変わった。

 

「良かろう。今なら誰が相手でも負ける気はせんぞ」

得意気に言うエルザにシクルとルーシィもクスクスと笑い、「だね」と答える。

 

「だったら…特別なゲームを楽しまないか?

賭けるのもコインじゃない」

 

エルザの言葉を聞き、目の前の褐色肌の若い男がニヤッと含み笑いを浮かべながらそう言い、5枚のカードをエルザの前に投げ出す。

 

 

そこには数字やマークではなくアルファベットでD・E・A・T・Hと示されていた。

 

「…これは(死?なんで…)」

 

シクルが脳裏でその単語の意味を考えていると…エルザの様子がほんの少しおかしいことに気づく。

 

相手を見て…少しだけ、震えていた………。

 

「命…かけて遊ぼ?………“エルザ姉さん”」

目の前の若い男にそう呼ばれるとビクッと肩を揺らすエルザ。

 

「まさか………ショウ?」

「………え?」

2人のやりとりに何を話しているのか分からない様子のルーシィと、何となく何かを察し、そしてほんの僅かに警戒を強めるシクル。

 

「久しぶりだね………姉さん」

 

「無事…だったの、か?ショウ………」

未だに目の前の若い男を見つめ、呆然としているエルザ。

 

ここまで動揺しているエルザなんて…

「…(初めて見た………)」

 

 

「無事?」

目の前の若い男の目つきがほんの少し変わり、その瞬間エルザが再び肩を揺らし、顔を俯く。

 

エルザの様子に只事ではないとシクルは思い、「エル…」と声をかけ、肩に手を置こうとした…その時ーーー

 

 

 

会場内の電気がすべて突然消え、暗闇が訪れた。

 

「え!?何!?暗っ!?」

「な!何が起きた!?」

 

エルザとルーシィの声が響く。

シクルもまた、警戒を強め、辺りに注意を回す。

 

すると…

 

パァンッ!!

 

「っ!!(銃声!?どこから…)」

突然響いた銃声音に驚きが隠しきれないシクルの耳に次に入ったのは………

 

 

「きゃあ!?」

ルーシィの悲鳴だった。

 

「「ルーシィ!?」」

エルザとシクルの声が被る。

 

シクルが悲鳴の聞こえた所へ駆け寄ろうとした時だ………

 

ゾワッーーー

 

背筋を何かが走る。

「っ!!(この感じ…魔法!?)」

 

背筋を走る何かを感じたものが魔法であると気づいたシクルはその瞬間、向けられる魔法を解除する。

 

 

そして、ルーシィの悲鳴が聞こえた後、徐々に暗闇はボンヤリと明るくなっていく…。

 

「ルーシィ!どこだ!?」

明かりがつき始めると近くにいたはずのルーシィの姿が見えず…シクルとエルザはその姿を探す。

 

目の前にいたショウという男の姿もなかった…。

 

2人でルーシィの名を呼び叫んでいると……

 

《エルザ!!シクル!!》

ルーシィの声が足元から響く…。

 

2人が足元を向くと…ルーシィがカードの中に閉じ込められていた。

 

「ルーシィ!?どうなっているんだ!?ショウはどこに…!!」

 

「なんでカード…?」

 

エルザは既に混乱で頭が回らない様子が見られ、シクルはルーシィのその姿に苦笑を浮かべていた。

 

「こっちだよ、姉さん」

 

エルザとシクルから少し離れたところからショウの声が聞こえる。

2人が振り返ると………そこに、ショウが立っておりその足元には………

 

 

床一面にカードが落ちており、その中に人が閉じ込められている光景が広がっていた…。

 

 

「なっ!?カードの中に人が!」

「これ…(さっきのあの感じはこれか…)」

 

心中で、気づくの遅れたら危なかった…と他人事のように考えるシクル。

 

「不思議?俺も魔法…使えるようになったんだよ」

驚愕が抜けないエルザにショウが語りかける。

 

ショウの“魔法”という言葉にはっと、ショウを見つめる。

「魔法…?お前、一体………」

 

エルザの問いかけに答えず、ショウは怪しげに笑っているだけ…すると、

 

「みゃあ」

 

ショウの隣に、いつの間にか猫のような少女がテーブルに座っていた。

 

「みゃあ…元気最強?」

その少女を見た瞬間、再びエルザが肩を揺らし、驚く。

 

「まさか…ミリアーナ!?」

ミリアーナと呼ばれた少女。その手に抱かれているそれを見た時、シクルも驚愕に目を見開く。

 

「え…ハッピー…ルージュ!?」

その手には眠っているのだろうか?抵抗もせず青毛と茶毛の猫が抱かれていた。

 

そしてその身体にはチューブのようなものが巻かれていた。

 

その姿を見た時、エルザは声を荒らげる。

「何をしている!?ルーシィも…ハッピーとルージュも!!私の仲間だ!!」

 

「みゃあ…仲間?」

エルザの叫びに目の前の2人が反応を見せる。

 

「俺たちだって…仲間だったでしょ?」

「っ…ぅ…あ…」

ショウのその言葉に数歩下がり、顔を青くしていくエルザ。

 

「姉さんが俺たちを裏切るまではね」

ショウのその言葉に…エルザは、俯き黙ってしまう。

 

そこに………

 

 

「そういじめてやるな…ショウ。ダンディな男は感情を隠すものだぜ…すっかり、色っぽくなっちまってヨ」

 

新たな声が届く。こちらも、エルザは知っているようで………

 

「そ…その、声は…ウォーリー…?」

 

「気付かねぇのも無理はねぇ…狂犬ウォーリーと呼ばれていたあの頃に比べ、俺も丸くなった方だ」

 

「お前も魔法を………」

 

 

「そう驚くことは無い」

またまた聞こえてくる新たな人物の声に…

 

「(てか…どんだけ出てくんのさ………)」

シリアスな場面なのにため息をつきたくなるシクルであった。

 

 

「コツさえ掴めば、誰にでも魔法は使える…なぁ?エルザ」

 

「お前は…シモン!?」

 

 

《エルザっ!!こいつらなんなの!?

 

姉さんって一体…どういうこと!?》

 

カードの中に閉じ込められているルーシィの叫びが響く。

その声にエルザはショウたちを見つめ、話し出す。

 

「…本当の弟ではない…かつての仲間たちだ」

エルザのその言葉にルーシィは目を見張る。

 

「仲間って…どういうこと!?エルザは幼い頃から妖精の尻尾にいたんでしょ!?」

 

「それ以前…ということだ。お前達がなぜここに…とにかく、ルーシィやハッピー、ルージュを解放してくれ…」

 

エルザのその言葉に…ショウたちは嫌な笑みを浮かべ口を開く。

 

「あんたを連れ戻しにサ」

 

「みゃあ」

 

「帰ろう…姉さん」

 

「まぁ、言うこと聞いてくれねぇとよぉ…」

 

ウォーリーはそう呟き、ルーシィに銃を向けた…

 

 

《ひぃいいっ!?》

ルーシィの悲鳴が響く。

 

「よ、よせ!!頼む!!やめてくれっ!!!」

エルザの叫びが響き…そして………

 

ウォーリーの、ルーシィに構えていた右手がその体から消え、離れ…

 

ニヤッと笑うウォーリー………

 

 

その、見つめる先はエルザの背後………

 

 

そして…

 

パァンッーーー

 

銃声が響いた………。

 

 

「っ!?」

 

《えっ》

 

「「「っ!?」」」

 

「何!?」

 

 

ショウやウォーリーたちの狙いはエルザの背後から銃弾…“睡眠薬”を撃ち込むことだった…

 

 

そしてそれは、成功した…そう、思った…

 

が………

 

 

 

エルザの背中は、守られていた………

 

 

「……ふぅ…私を無視して、やらせると思う?」

 

シクルの刀で銃弾は防がれていた………。

 

 

 

「シ、シクル…」

 

「エル、下がって…私の傍から離れないでね?」

唖然とするエルザにニッコリと優しく微笑み、そう言うとエルザを庇うようにショウたちと向き合う。

 

 

「…ほう…お前が、かの有名な…月の歌姫か?」

作戦を邪魔され、ほんの少しイラついている様子のウォーリーがシクルにそう問いかける。

 

シクルは刀を向け、睨み警戒を解かない。

 

「………エルをどうするつもり?」

ショウたちにそう問いただす。

 

 

が、そう簡単に答えるわけもなく…

 

「ふっ…言うわけ…ないだろ!!」

 

「みゃあ!!」

 

「ダンディーに…だぜ!」

 

「…大人しくしてもらおう」

 

 

4人からの一斉攻撃がシクルに向かう。

 

「シクルっ!!」

《危ないっ!!》

 

エルザとルーシィの声がシクルに響くも…

 

シクルは冷静にその動きを見つめ…

 

シュッ ヒュッ フッ サッ ダンッ

 

正確に、動きを見極め最小限の動きで避ける。

 

 

それが数分…続いた………。

 

「ちっ…鬱陶しいな…」

 

「みゃあー…当たらないよぉ!」

 

「流石に手間取るな…」

 

「…」

 

 

4人の方に疲労が見られ始める…

 

「…さぁ………エルのことは諦めて…目的を言う気にはなったかしら?」

 

シクルは息も上がらず、まだまだ余裕があった。

 

4対1の攻防を繰り広げるシクルを見つめ、不安そうなエルザ…

 

「…シクルっ」

 

 

シクルはエルザとの立ち位置を考えながらショウたちを相手していた。

 

離れすぎず、いつでも助けに回れるように…

 

 

このままいけば、向こうが折れ、諦めてくれる…そう、シクルは思いショウたちも僅かに諦めが出始めた………その時だった…

 

 

 

「クククッ………やめとけやめとけ…そいつの相手はお前らじゃ無理だ」

 

「「「「っ!?」」」」

 

「誰だ…?」

 

「………(新手?)」

 

 

一箇所、暗闇から一つの影が現れる…

 

それは、右眼を眼帯で覆っている赤眼の男…その腰には2本の刀が備えてある…。

 

 

 

その姿を見た時…シクルは嫌な汗が流れ、息を呑む…。

 

 

………こいつ………強い…とてつもなく………

 

 

 

「そいつの相手は………おいちゃんがやってやろうじゃん?ナァ?歌姫ヨォ………」

 

 

シクルの目の前に現れた男ーーー

 

 

 

男は、シクルを見つめ、怪しく嗤うと………

 

 

 

刀を一本手に持つ……そして、ほんの少し、振り抜いた………その瞬間ーーー

 

 

 

ブシュッーーー!!!

 

 

 

「っ!?つっ!!!」

突然、シクルの左肩と右脚から血が吹き出した。

 

「!?シクル!!!」

 

《なっ…何がっ!?》

 

 

エルザとルーシィは目の前で起きた光景が理解出来ず…シクルも、左肩を抑え、右膝を床につき痛みに耐えながら、目の前の男を睨み上げる…

 

 

「っっ………(動きが…見えなかったっ!)」

 

シクルは目の前で笑い、刀についた血を舐めとる男を見つめ、冷や汗が溢れる。

 

 

やばい………こいつ……ほんとに………

 

 

 

強いっ!!!

 

 

ゴクッ…と、息を呑む音がその場に静かに響く………

 

 




はい!!26話、終わりました!!


新キャラの名は次回かその次に出るかと………


では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!
次は明日の昼過ぎに投稿予定です!

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