フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい!!朝の投稿にありつけました、ありがとうございます!


今回から楽園の塔篇を予告通り、スタート致します!


ほんの少し、主人公の力や能力を変えました!(追加してます)

具体的な説明は後書きにて、記載させていただきます

では、最後までお付き合い、お願いします!


第4章 楽園の塔篇
24話 星霊王とシクル


シクルが聖十の称号を受け取ってから数週間…妖精の尻尾では依頼の受注が再開されていた。

 

 

「皆ー!!今日から仕事の受注再開よー!

仮設のカウンターだけど…ガンガン仕事やろー!!」

 

ミラの掛け声と共に、「おー!!」と声を上げ、早速依頼書を受注し出ていく仲間達。

 

「何あれ…いつもはお酒飲んでしてるだけの癖に…」

やる気に満ちる面々を眺め、仮説のカウンターでジュースを飲み呟くルーシィ。

 

その隣でシクルもジュースを飲んで寛いでいる。

 

そして、仲間内を見渡し、ルーシィはふと首を傾げ、シクルに問いかける。

 

「そういえば…ロキが見当たらないけど…シクル、知ってる?」

 

ルーシィの問いかけにシクルはピクッと反応を一瞬見せ、すぐに平常心を取り戻し、首を横に振る。

 

「さぁ?私も最近見てないけど…どうして?」

 

「うん…この前のファントムとの戦闘の時、あたし鍵落としちゃって…ロキが拾ってくれたって話を聞いたからお礼言いたかったんだけど………」

 

そっかぁいないんだぁと呟くルーシィを見つめ、ふと疑問を持つシクル。

 

「ねぇ?ルーシィはいいの?」

 

「ふぇ?」

考え事をしていたルーシィは首を傾げ、シクルを見つめる。

 

「今月…もうお金ないんじゃない?家賃…」

シクルがそう言うとルーシィははっ!と我に返り立ち上がる。

 

「そーだったぁ!!あたし今月ピンチだったんだ!!ナーツーーーー!!!」

 

ルーシィはそう叫び、ナツを探し飛び出していく。

 

その後ろ姿を見つめ、はぁとため息をつくとシクルは立ち上がり、ミラに「ご馳走様ー」と言うと出掛ける。

 

ちなみにルージュは寝ていた為、ミラに預けた。

起きた時帰りが遅かったら先に家で待っていて、と伝言を伝え…

 

シクルは暫くマグノリアの外れにある森の中を歩いていた。

 

そして、奥の方まで歩き、進むと………

 

見知った男の弱々しい背中が見えてくる。

 

 

「………ロキ」

 

「っ!あぁ…シクルか…よく、ここが分かったね?」

シクルが声を掛けたのはルーシィの探していたロキ本人だった。

 

振り返ったロキの顔色の悪さを見て、シクルは顔を少し歪め、ゆっくりとロキの隣に歩み寄る。

 

そして、ロキの視線に合わせしゃがみ込むとその前髪を掻き分け、その瞳を見つめる。

 

「な…何だい?」

 

「ロキ………後、どれくらいなの?」

シクルの問いかけに「え…」と驚愕の表情を浮かべる。

それに構わず、シクルは再び問いかける。

 

次は、更に明確に………

 

 

「…その身体…もう、限界なんでしょ?

あと………何日持つの?ロキ………

 

 

ううん………レオ…」

 

久方ぶりに呼ばれたその名にロキはふっと弱く笑みを浮かべる。

 

「驚いたな…知ってたんだ?………いつから?」

 

「初めはなんとなく…確信はなかったけど…他とは違う気はしてた………確信を持てたのはルーシィの星霊を見てから…同じ気配、匂いがした………」

 

シクルの答えを聞き、ロキは乾いた笑い声を出し、そして………諦めた瞳をシクルへと向ける。

 

「ごめん…でも、このことは誰にも言わないでくれないか?僕が…星霊だということは…」

頼む…と、言うロキを見つめ、シクルは「…分かった」と頷いた…

 

「ありがとう…シクル………じゃあ、僕は行くよ」

そう言い、ロキはふらつきながらシクルの眼の前から去っていく。

 

その後ろ姿を見つめ、シクルはふぅ…と小さくため息をつくと、空を見上げる。

 

空には少し欠けた月が昇っていた…

 

「…なんで諦めてんのさ………ロキ」

 

 

私は絶対………仲間を無闇に消えさせたりなんか…させない。

 

 

ロキと別れ、暫く空を見上げるとルージュが待っているだろうと思い、ゆっくりと自宅へと戻る為足を運ぶ。

 

 

その時、視界に金の髪が揺らめき、知った匂いが通ったことに気づく。

 

「…ルーシィ?」

シクルの声にはっと気づいた様子のルーシィは、振り返ったその頬を涙で少し濡らしていた…。

 

「シクル…」

「どうしたの?なんで…泣いてるの?ルーシィ」

 

シクルは小さく微笑みながら、地面に腰掛けるルーシィの隣に座った。

ルーシィは俯き、嗚咽を耐えるとゆっくりと小さな声でシクルに語り始めた。

 

少し前にロキと会ったこと………

 

そこで、ロキの命があと少しだということ…

 

でも、結局それはロキの冗談でからかわれてたこと………

 

それが悲しくて、悔しくて、ロキの頬を平手打ちし、走って今、ここに至るという…。

 

ルーシィの話を聞いてシクルは深く、呆れたため息をつく。

 

「あーもぉ…(あのバカ…何やってんのよ)」

 

シクルは涙を流し、落ち込むルーシィを見て、その頭を撫でる。

 

「…シクル?」

 

「あー…まぁ、あのね?あんまりロキを責めないであげて?彼も…ほんとは苦しいんだよ…」

 

シクルの言葉の真意がいまいち良く分からないルーシィは首を傾げ、シクルを見つめる。

 

「んー…まぁ、なんて言うか…彼のほんとの心を………聞いてあげて?ルーシィなら…きっと…彼の声が聞こえる筈だから………」

 

 

「え………あ、う…ん?」

この時、ルーシィはその言葉の意味を考えるも結局分からなかった。

 

この後………まさか、ロキが妖精の尻尾を抜けてしまうなんてーーー

 

翌日ーーー

 

ギルドでやや不機嫌なオーラをだし、過ごしていたルーシィの下に慌てた様子でグレイが走ってきた。

 

 

「ルーシィ!大変だ!!ロキが…ロキが妖精の尻尾を出て行っちまった!!!」

 

「え…えぇ!?な…なんでっ!?」

グレイから告げられたロキの脱退にルーシィは立ち上がり、驚く。

 

「俺だって知らねぇよ!!けど!皆で今必死に探してんだ!!ルーシィ!なんか心当たりねぇか!?」

 

あいつここの所様子おかしかったからな…

と、呟くグレイを他所にロキのことを考える。

 

確かに…最近のロキはどこかおかしかった…昨日なんて尚更…

 

そう言えば………

 

自身の持つ鍵の一つ、“南十字座のクルックス”に昨夜頼んでいたロキと星霊魔導士についての情報とシクルの言った言葉を思い出す。

 

 

そして………一つの真実に辿り着く…。

 

「まさか………まさかっ!?」

ルーシィは思い当たる場所へと、ギルドを飛び出し走り出す。

 

 

ルーシィが向かった場所…そこは、ロキと関係のある星霊魔導士の墓…“カレン・リリカ”と言う女性のお墓の前だった。

 

そこには、弱々しい背中が今にも消えてしまいそうな状態で立っていた…。

 

「ロキっ…やっぱり…ここだったんだ」

 

「…ルーシィかぃ?どうして…ここへ?」

 

ロキは振り返ることなく、ルーシィに問いかける。

 

ルーシィは自身の推測を語り始める。

 

 

ロキは星霊…本当の名を“獅子宮のレオ”であり、以前は今は亡き“カレン・リリカ”の星霊であったこと…

 

それを聞いた時、ロキは乾いた笑みを浮かべ、初めてルーシィを振り返った。

 

「そうだね…僕は確かにカレンの星霊だった…そしてカレンが死んでから3年間…僕は星霊界に帰れずにいる…」

 

「3年!?まさか…1年でも有り得ないのにっ!?」

 

その事実にルーシィが驚愕し、目を見張っていると…ロキの身体から光が出始める。

 

「ロキっ…それっ!」

 

「あぁ……もう…限界なんだ…力が、出ない…」

ロキの諦めたような声…いや、もう、全てを諦めているロキの様子にルーシィはその肩をつかみ、必死に呼びかける。

 

「あたし!!助けてあげられるかもしれない…!教えて…帰れなくなった理由ってなんなの!?あたしが門を開けてみせる!!」

 

「無理だよ…僕はもう…星霊界へは戻れない…」

 

ロキは星霊としての掟を破ってしまい、門が開かなくなってしまったことを告げた。

 

 

だが、それでもルーシィは諦めず…

 

 

「いやっ…あたし、諦めない!!絶対助けるから!!」

 

「よせ…もう止めてくれ!!ルーシィ!」

 

ロキが止めるその声を聞かず、ルーシィはロキに抱き着く。

そして、ルーシィの身体はロキと同化し始めていた…。

 

 

「もういいんだ!!このままじゃ…君まで消えてしまう!!

 

これ以上僕に…罪を与えないでくれぇえええ!!!」

 

ロキのその悲痛な叫びにルーシィの瞳から涙が流れる…。

 

「何が罪よ!?そんなのが星霊界のルールなら…あたしが変えてやる!!」

 

 

その瞬間、ルーシィの身体から膨大な魔力が溢れ出る。

 

だが、それでも…星霊界を繋げる力はなくルーシィの身体から力が抜けていく…

 

 

そして、ルーシィの意識が途絶えかけた…その時………

 

 

「星霊界…ううん………

 

 

星霊王を呼ぶんだよね?力、貸してあげる」

 

 

 

透き通るような綺麗な声が響く…。

 

 

それは、ルーシィもロキも聞き覚えのある声…

 

「「っ…シクルっ!?」」

 

「やっほ!やっぱ気になって来ちゃったわ」

テヘッと笑みを見せると、シクルはルーシィとロキの肩に手を添え…呪文を唱え始める。

 

 

「【我、星霊王の門を開きし者

 

 

我が名 月の歌姫の名の下に その姿を現さん】

 

 

星霊王 召喚」

 

呪文を唱えている時、シクルの髪色が銀色へと変化…そして………

 

 

ズドォオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

大きな音と共に………星霊王…降臨…

 

 

「ま…まさ、か………」

 

「これって………」

 

「………ニッ」

 

現れた巨体を前に見上げ、ニッコリと笑みを浮かべるシクルの横では呆然と目の前の光景に目を見開くロキとルーシィがいた。

 

「「星霊王っ!?」」

 

 

《……久方ぶりだな…月の歌姫………》

 

「久しぶり、星霊王…まぁ、今日用があるのは私じゃないんだけどね」

シクルはそう言い、横にいるルーシィへと視線をやる。

 

 

ルーシィは未だに呆然とし、目の前の光景が信じられずにいた。

 

「な…なんで………シクルが…星霊王を呼べるのッ!?」

 

「んー?あー…それはまた後でね?今は………

 

 

もっとやるべき事があるでしょ?」

 

シクルのその言葉にはっと、ルーシィは我に返りロキを見る。

 

ロキは先ほどのように身体から光を放ち消えかかってはいるが、数分前から体の消滅が進んでいないように見えた…。

 

 

「レオのことは任せて…ルーシィはさっさと要件言っちゃいな?」

 

シクルの言葉に強く頷くと星霊王を見上げる。

 

 

そんなルーシィを見つめ、再び拒絶の声を上げるロキ…

 

「もういいルーシィ!!僕は誰かに許してもらいたいんじゃないっ…罪を償いたいんだ!!このまま消えたいんだ…!!」

 

ロキの言葉を聞いた時、ルーシィは目を見開き叫ぶ…。

 

「そんなの…だめぇえええええええええっ!!!!」

 

ルーシィが立ち上がり叫んだ瞬間、ルーシィの背後に星霊たちが現れる。

 

 

それは一瞬のことだったが契約している全星霊を呼んだことにより、魔力が一気に持っていかれるルーシィ。

 

「罪なんかじゃないわ!!仲間を思う気持ちは…罪になんかならない!!」

 

星霊たちは消え、ルーシィは前のめりに倒れそうになるが、その身体をシクルが受け止める。

 

「あたしの“友達”も…皆同じ気持ちよ…

 

あんたも星霊なら………ロキやアリエスの気持ちが、分かるでしょう!?」

 

怒声を上げるルーシィに慌て、声を上げるロキ。

 

「なんて無茶なことを!!一瞬とはいえ…死ぬ可能性だってあるんだぞ!?」

 

 

「ま、確かにルーシィの魔力じゃ身体が耐えられなかったかもしれないけど…私が死なせる訳ないでしょ?」

ロキの言葉を聞き、ふっと笑みを見せたシクルはフッと星霊王を見上げる。

 

「どう?星霊王………もういいんじゃない?獅子宮のレオは十二分に罪を償った………

 

そしてここには、こんなにも優秀な星霊魔導士がいる…彼女の思いを………無下にするなんて、出来ないわよね?」

 

 

シクルの言葉にうむと星霊王は頷くと…

 

ルーシィとロキを見て言った。

 

 

《古き友にそこまで言われては…間違っているのは、“法”やもしれぬな…》

 

「「っ!!」」

 

「…なら」

 

 

《うむ…同胞アリエスの為に罪を犯したレオ…そのレオを救おうとする古き友…その美しき絆に免じ、この件を“例外”とし、レオ……貴様に、星霊界への帰還を許可スル》

 

星霊王のその言葉にルーシィはニッ!と笑顔を浮かべ、ロキは首を横に振っている。

 

 

「いいとこあるじゃない!髭オヤジ!」

 

ぐっとルーシィが親指を立てると星霊王もまた、ニヒッと笑みを浮かべた。

 

《冤罪だ…星の導きに感謝せよ》

 

そう言い、星霊王は徐々にその姿を消していく…。

 

「ま、待ってください…僕は…僕は!」

 

消えていく星霊王にロキが必死で声を上げる。

が、星霊王はロキに視線をやると…ルーシィを指し、言う。

 

 

《…それでも、罪を償いたいと願うならば…

その友の力となり、生きていくことを命ずる…

 

それだけの価値がある友であろう…?

 

 

命をかけて、守るがよい》

 

星霊王はそう言うと最後にシクルへと視線をやり…

 

《そして、歌姫よ………》

 

「んー?なぁに?」

 

《…また、いつか…そなたの歌を、聴かせてくれ…そなたの声は…実に、落ち着く…》

 

星霊王にそう言われるとニッコリと笑みを浮かべ、「りょーかい」と答える。

 

その答えに満足を見せた星霊王は完全に消え、星霊界へと帰っていった。

 

 

こうして、ロキことレオは無事星霊界へと帰ることを許され、又、ルーシィの星霊として契約を交わし、力の回復の為星霊界へと戻った。

 

 

最後に、綺麗な笑みを浮かべ…

 

 

「でっ!?シクル!!!あなた、どーして星霊王を呼べるのッ!?そんな魔法聞いたことないわよ!?」

 

ギルドへ戻るとルーシィに問い詰められるシクル。

 

だが………

 

 

「ん?んー…ルーシィ…な・い・し・ょ♡」

 

口の前で人差し指を立てウィンクし、そう言った。

そして、シクルはルージュを連れ、ギルドを出て行く。

 

「なっ!ちょっと!?教えなさいよぉおおおおおおおおお!!!!」

その後ろ姿へ向け、ルーシィの叫び声が響くのであった…。

 

 

やっと訪れた平穏…だが、その時は………

 

 

刻一刻と迫っているのであった………

 

 

 

「………エルザ……シクル………さぁ………

 

 

 

楽しいゲームの始まりだ………」

 

 

 

 

 

余談ーーー

 

シクルがギルドを出ていった後、ギルド内では暫く男共が使い物にならなかったという…

 

一部のもの曰く、あんな顔みたら誰でもノックアウトだちくしょう!!とのことであった…はて、張本人は気づいているのやら……

 

 




はい!では少し追加の設定を早速説明させていただきます!


シクルは星霊王を呼び出すことが可能です。

これも歌魔法の一つである特定の歌を唱えると呼び出すことが可能。

他の星霊達も例外はないが本人は呼んだ後無理に門を開けるため、魔力がごっそりと持っていかれ疲労が溜まることから滅多なことがない限りは呼ばない。

と、こんな感じでございます!

では、また次回…今日の夜か又は明日の昼頃になるかと思います!
最後までお付き合い、ありがとうございます!

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