うまく出来るか不安いっぱいなのですが…どうか暖かいお心でお願いします!
では、最後までお付き合い、お願いします!!
17話 奇襲 怒れる妖精
海賊船に乗り、マグノリアの港へと帰還したシクルたち。
いつも通り、乗り物酔いを起こしたナツに苦笑を浮かべながらギルドへと歩き、帰る途中だった。
「そう言えばルーシィ?その報酬の鍵って何のやつなの?」
報酬の鍵を受け取ってからずっと手放さないルーシィを見てシクルが問いかける。
「これ?これはね、人馬宮のサジタリウスよ!」
「人馬だと!?」
ルーシィの言葉に反応を見せたナツの脳裏に過ぎるは…
馬の被り物被った人間………
「いやいや…こうじゃない?」
そしてそんなナツの隣で自身も脳裏で人馬の姿を想像するハッピーは…
見た目普通のケンタロス………
「………?」
グレイはあまりパッとしたイメージは思いつかず…。
「んー…どんなのだろぉ…シクル、なんか思いつくぅ?」
シクルの頭の上で悶々と想像するもこちらもいいイメージは思いつかないルージュ…
「さぁ…?あんまり良く分からないけど………というか、話ふったの私だけどさ?………いいの?そんな呑気にしてて…」
「え?」
シクルは「帰ったらアレが…」とナツたちに呟きながら前を歩くエルザへ視線を向ける。
「…ギルドへ戻ったら、お前達の処分を決定する」
エルザは普段と変わらず、途轍もない量の荷物を引きながら、ナツたちを振り返ると無表情で、そう告げた。
その言葉を聞いた瞬間、ナツたちは震える。
「ま、判断を下すのはマスターだけどねー…覚悟はしといた方がいいよ?」
ニシシッと面白げに笑うシクルを見てゾワッと背筋に嫌な寒気が走るグレイとハッピー、ルーシィ。
「ま、まさか…アレをやらされるんじゃ!?」
「アレって?」
「アレはいやだよぉおおおおお!!!」
「だからアレって何!?」
「アレはアレだよぉ…この世の終わりだよぉ…
シクルゥ…」
「ご、ごめんルージュ………流石に今回は助けられない………」
グレイやハッピーが恐怖に震え、
それを見てルーシィも恐怖する…
が何のことかわからず叫び、ルージュはシクルに助けを求めるが
シクルは首を横に振り………無理だと言う。
「へ!だーいじょうぶだって!!きっとじっちゃんなら、よくやったって褒めてくれるさ!!」
唯一、気落ちせず、ポジティブに考えていたナツ。
「あんた…どんだけポジティブなのよ…」
その様子にルーシィが呆れた目で見つめ、シクルも苦笑を浮かべ、ナツを見る。
が………
「いや…アレは確実だろう」
と、エルザの無慈悲な声が響く。
すると、笑顔だったナツの顔から次第に滝のような汗が流れ、恐怖で顔が歪む…。
「嫌だぁあああああああっ!!!!
アレだけはぁっ!!!アレだけはっ!!!
嫌だぁああああああああああああっ!!!!」
「だからアレって…何なのよぉおおおお!?」
ナツとルーシィが絶叫し、逃げ出そうとするナツをエルザが首根っこ掴み、逃がさず…
引きずられるようにし、ギルドへと歩を進める。
「あっはは…自業自得だよ………ナツ」
流石に助けられないよ…と苦笑を浮かべ、エルザとのやり取りを見ていたシクルはふと、周囲からの視線がおかしいことに気づく。
「…ねぇ?なんか………見られてない?」
「ん?あぁ…確かにな………」
シクルの言葉にエルザも頷き、ナツたちも周囲へと意識を回す。
「んだァ?」
「なんか…嫌な感じね?」
ナツとルーシィが怪訝そうな表情で言い、グレイやハッピーもそれに頷く。
「またギルドのみんなが何かしちゃったのかな?」
「しちゃったとしたらあたしたちだと思うけどなぁ…」
周囲の目を気にしながら、ギルドへと真っ直ぐ帰ると…次第にその姿が見えてきた…
そして………ギルドは普段の様子とは少し違っていた。
「んな…!?」
「んだこりゃあ!?」
「ひ、ひどい…」
「何これ!?」
「ギルドが…ボロボロだぁ…」
「これは…!」
「この…魔力…(まさか………)」
シクルたちの目の前には何本もの鉄の柱が壁に突き刺さり、ボロボロのギルドだった。
ナツやグレイは額に青筋を立て、エルザも拳を握って震わせている。
「何があったというのだ…」
「…ファントム」
シクルたちの背後から、弱々しくも、聞き覚えのある声が聞こえた。
シクルたちは振り返ると…
悲しく、悔しげな表情を浮かべたミラが俯き、立っていた。
「ファントム…だと?」
「悔しいけど………やられちゃったの…」
その名を聞き、ナツは更に表情を歪まさせ、シクルは笑顔のないミラの頭を撫で、慰める。
そして、ミラに案内され、ギルドの地下、仮酒場にやってくる。
部屋ではギルドメンバーが神妙な面持ちで集まっており、しーんと、普段では考えられないほど静まり返っていた。
すると、シクルたちの帰還に気づいたマカロフが酒を片手に手を上げる。
「よっ!おかえり!」
「マスター…!」
マカロフの呼びかけにシクルたちはすぐにその傍へと駆け寄る。
「ただいま…戻りました」
「じっちゃん!!酒なんか飲んでる場合じゃねぇだろ!?」
ナツの怒声が響く。が、マカロフは一瞬真剣な表情になり…
「おぉ…そうじゃった………お前たち!!勝手にS級クエスト何ぞに行きおってからに!!」
ギルド建物のことではなく、ナツたちが勝手にS級クエストへ行ってしまったことへの怒りが落ちた。
「え!?」
「はァ!?」
マカロフの言葉に、驚きの声を上げるルーシィとグレイ。
「罰じゃ!!今からお前達に罰を与える!!覚悟せいっ!!」
マカロフからの“罰”の言葉に、ナツたちはビク!と震え、身構える。
が、結局ルーシィを除いた者は頭に1発チョップをくらい、ルーシィはお尻を叩かれるという所謂、“セクハラ”で終わった。
そんなマカロフの様子にエルザは唖然とし、ほんの僅かに怒りを覚えたのか、テーブルをバンッ!!と叩き、マカロフへ鋭い目を向ける。
「マスター!!今がどんな事態か分かっているのですか!?」
「ギルドを壊されたんだぞ!?じっちゃん!」
エルザとナツの怒声を聞くも、マカロフは平然としており…
「ふん…まぁまぁ落ち着きなさいな…騒ぐほどのことでもなかろうに…ファントムだァ?誰もいないギルドを狙って何が嬉しいのやら…」
「…誰もいない?」
マカロフの言葉にシクルが首を傾げ、ミラを見やる。
ミラはシクルの視線を感じ、頷く。
「えぇ…幸いにも、やられたのは夜中で…誰もいなかったから怪我人はいないのよ」
「へぇ…(夜中に…?何が目的…?)」
「不意打ちしかできんような奴らに目くじら立てる必要はねぇ…放っておけぇ!」
マカロフはその言葉と共に、この話は終わりじゃ!と叫び、その後ナツたちからの抗議の声も一切聞かず、酒を飲み続けた。
そして、その夜………
ギルドにはマカロフとシクルのみが残っていた。
「マスター…どういうおつもりで?」
「なんじゃ…さっき言ったじゃろ?別にガキどもは誰も傷ついておらん…建物は、みなで力を合わせればまた作り直せる………騒ぐほどのことじゃあねぇ………そうじゃろ?」
「そうですけど…でも、今回の…普段と様子が違う気がするんです…」
シクルのその言葉にマカロフはピクッと眉を動かし、シクルを見つめる。
「………下手な詮索はよせ…これ以上、向こうが何もしてこねぇなら何も言うことはねぇじゃろ…」
何を言っても言葉を変えないマカロフにはぁとため息をつき、腰を上げるシクル。
「分かりました…そうですね。ギルド間での争いは禁じられている…それがマスターのお心なら、私はそれに従いますよ」
シクルはそう言うと、マカロフに背を向け、部屋の扉へと歩く。
そして、扉を開け出ていく間際…
「…でも………もし、誰かの血が流れるようなことがあれば………その時は規則に関わらず…やるつもりです…」
そう呟き、では…と、出ていくシクル。
去っていったその後を見つめ、マカロフは長いため息をつくのだった…。
ギルドを出たシクルはその足でルーシィの家へと向かった。
暫くは一人でいるのは危ないということで全員誰かと一緒に過ごしている。
シクルもまた、ナツやエルザに誘われていた為、ルーシィの家へと向かっているのだ。
コンコンッ
「ルーシィ、来たよー」
バタバタバタッ!!! ガチャー
「シクル!!いらっしゃい!!はぁ!良かった!!シクルは常識人でほんっと!良かった!!」
シクルの扉をノックする音と声に、走り、扉を開けてきたルーシィ。
それに目を点にしながらおぉう…と少し引いているシクル。
「さ!中に入って入って!」
ルーシィに押されるがままに部屋の中へと入っていくシクル。
ルーシィの部屋の中では…ナツが未だに唸っていた。
「くっそー!じっちゃんもミラもみんな!ビビってんだよ!!」
「だぁから、ちげぇだろ…」
「マスターも我慢しているんだ…ギルドを壊され、1番悔しいのはマスターだろう」
騒ぎ暴れるナツをグレイとエルザが止めている。
その様子を見つめ、ハッピーとルージュははぁとため息をついており、ルーシィと今しがた来たシクルも苦笑を浮かべた。
「それにしても…ファントムって酷いことするのね…前にもこんなことあったの?」
話を変えようとルーシィはシクルたちに問いかける。
「んー?いや…確かに今まで小さな小競り合いはあったけど…」
「こーいうのは無かったよねぇ」
シクルとルージュの言葉に「そうなんだ…」と頷くルーシィ。
「んがー!やっぱ納得いかねぇ!!じっちゃんもビビってないでやり返せばいいだろ!?
先に手出されたのはこっちなんだぞ!?」
「だーから!そういう問題じゃないでしょ!?それに、マスターもビビってる訳じゃないわよ…」
再び叫び声をあげるナツを宥めるシクル。
「シクルの言う通りだろ…かりにもじーさんは聖十大魔導の1人なんだぞ」
「…聖十大魔導?グレイ、聖十大魔導って?」
グレイの言ったその単語に聞き覚えのないルーシィは首を傾げ、問いかける。
「聖十大魔導と言うのは魔法評議会議長が定めた、大陸で最も優れた魔導士10人につけられる称号のことだ」
「ちなみにファントムのマスター、ジョゼもその1人よ」
ルーシィの問いかけに答えたエルザとシクルの言葉に、へぇと興味を示すルーシィ。
「ちなみに、シクルはその聖十大魔導筆頭候補の1人なんだよぉ」
「え!?そうなの!?」
ハッピーの隣でゴロゴロしていたルージュからの突然の告白にルーシィは驚きの目でシクルを見つめる。
「ちょ!それは言わなくていいでしょお!?
あ、あー…んまぁ………確かに何度か声は掛けられてるんだけど………ほら、色々集まりとかあってさ?め、めんどくさいじゃん?」
なはは…と笑うシクル。
「め、めんどくさいで最強の称号断るのって絶対シクルだけよ………」
「むぅ…だって最強なんて…興味無いもん!」
そう言ったシクルにはぁとため息をつき、「やっぱそれなのね…」と呟くルーシィに苦笑を浮かべながらも窓の外を見上げ、月のない空を見上げるシクル。
「………はぁ…(新月………月の光がない暗闇の夜………)」
………胸騒ぎがする………嫌な感じ………お願いだから………
「何も起こらないでよ…」
そう、そっと呟くシクル。
だが、その呟きは………願いは、翌日………破られることとなる………。
マグノリア広場にてーーー
「通してくれ、ギルドの者だ」
人だかりが集まる中をエルザが先導し、かき分ける。
そして………
「っ!!レビィちゃん…!」
「ジェット…ドロイ…!!」
「ファントム………!!」
シクルたちの目の前には、鉄の杭で腕を固定され、傷だらけの状態で木に括りつけられているレビィ、ジェット、ドロイの姿だった。
「ひ、ひど……」
「こんなのってぇ………」
3人の姿にハッピーとルージュの目には涙が浮かぶ。
そして、静かに3人へと近づくシクル…。
その手にはいつ換装をしたのか、十六夜刀が握られていた。
シクルは無言で刀を振るう…すると、レビィたちを捕まえていた鉄の杭が容易く壊れる。
レビィたちを順に支え、木に寄りかからせるとシクルは魔法陣を展開する。
「【我、月の加護の名の下に
愛する者の身を包み その身、回復させん】
治癒魔法で粗方の傷を治すシクル。
そして………
「………マスター………これでも、手を出さないと…?」
音もなく、静かにその場にやってきたマカロフを振り返ることなく告げるシクル。
その表情は………普段では考えられないほどの怒りが満ち溢れていた………。
そしてマカロフも………
「ボロ酒場までなら許せたんじゃがな………
ガキの血を見て黙ってる親はいねぇんだよ…」
怒りに震え、持っていた杖をボキッ!と折ると…
「戦争じゃ…」
と、宣言する。
妖精の怒りが、幽鬼に襲いかかる…
はい、今回はまだバトルパートなどはありません。
次回、バトルパートがあるかと思います!
では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!