フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい!!投稿出来ました!!

thikuruでございます!!


むむむ…むむむむむ…なんだかこれでいいのか?感があるのですが…

とりあえず、最後までお付き合い、お願いします!


15話 デリオラ復活 グレイの涙

村を出たシクルたちは遺跡に向かう途中、グレイから敵の情報と目的を聞いていた。

 

 

「なるほど…つまりその零帝…否、リオンは

嘗てお前の師匠でもあったウルが命をかけ封印した怪物、デリオラの封印を解き………自身の手でそれを破壊…

 

そして、師を超えることを望んでいるのか…」

 

「あぁ」

 

エルザの言葉に頷くと、グレイは足を止めることなく遺跡を睨みつける。

 

「確かに…ウルは俺達の前からいなくなった………けど、ウルはまだ生きてるんだ…」

 

「生きてる…(グレイの師匠ということは氷の魔導士………恐らく“絶対氷結(アイスドシェル)”)」

 

グレイの話を聞き、シクルたちは自然を走る足を速める。

 

そして、ふと遺跡を見つめると、少し傾いていることに気づく。

 

 

「遺跡が傾いてる…?」

 

「恐らくナツだろう…」

 

「なるほど…あれなら月の雫(ムーンドリップ)はデリオラのいる地下まで届かないってわけね…(こういう時ほんと頭の回転早いわよね…)」

 

 

その回転の速さをなんで普段にいかせないのかしら…と、心の奥深くでシクルは愚痴りながらも足を進めると、目の前を仮面をつけた民族の集団がシクルたちの道を塞いだ。

 

 

「っー!くそ!こっちは急いでるっつぅのに!!」

目の前に立ち塞がった集団に愚痴を零すグレイ。

 

その横で、シクルも小さく舌打ちをし、強行突破に入ろうと腰を低くした時…

 

 

目の前に緋色が揺らいだ。

 

 

 

 

「…エル?」

 

「行け…ここは任せろ………グレイ

 

 

お前はそのリオンとやらと決着をつけてこい」

 

小さく背後を振り返ったエルザの瞳は、信頼に満ち溢れ、グレイが負けることを1ミリも疑ってはいなかった。

 

 

「っ!!サンキュー!エルザ!!」

エルザに礼を言うとその横を通り、遺跡へと走るグレイ。

その後ろ姿を見送り、エルザはシクルの方を振り返る。

 

 

「シクル…お前もグレイを追え

恐らく、遺跡にはナツもいるはずだ…頼む」

 

 

シクルはその言葉にニッ!と笑みを見せる。

 

「りょーかいっ!!行くよ!ルージュ!」

「あい!!」

 

シクルの掛け声にルージュは翼を出し、シクルの背を掴むと飛び上がり、上空から遺跡へと向かった。

 

 

 

上空から遺跡へと向かったシクルとルージュはグレイが到着する前に遺跡へと辿り着いた。

 

 

「…ありゃ?グレイより早く着いちゃったね」

 

「ほんとだぁ…」

 

「んー…まいっか!早く行こ!ナツ見つけなきゃ!!」

シクルの言葉に「あい!」と頷くとルージュはシクルの頭に乗り、シクルは走り出した。

 

 

遺跡の中へと入り、暫く地下への道を走っていくシクル。

 

「んー………大分ナツの匂いが近づいてはいるんだけど…(てかこの匂い…香水?)」

竜同等の嗅覚でナツの居場所を探すシクルだが別に香る、香水の匂いが捜索を邪魔していた。

 

「シクルゥ…ナツの居場所分からないのぉ?」

「んー………この辺だと思うんだけど…」

 

 

シクルが辺りを見回すと…

 

 

「ほっほっほっ!!」

 

「待てやコラぁああああっ!!!」

 

シクルの後ろから聞いたことのある叫び声が聞こえた。

 

シクルとルージュは一斉に振り返り…

 

 

「「ナツ!!!」」

 

 

漸く、探し人の桜色、ナツを見つけた。

 

 

「んぉ!?シクル!?何でここにいんだァ!?」

 

「あんたが勝手にS級クエストなんかに来ちゃったからでしょぉ!?私だけじゃないわ、エルザも来てるわよ!!」

 

シクルの怒声にビクッ!と肩を震わせるナツ。

「んなにィ!?エ、エルザも来てんのか…」

 

「来てるわよ!すっっっごい!!!怒ってるわよぉ…」

 

 

 

「っ………!!そ、それよりシクル!!

 

そいつ捕まえんぞ!!!」

 

 

「…そいつ?」

ナツの指差す先を見ると変な仮面を被った小さな老人の姿が…だが………

 

 

「…この匂い…(香水の匂いはこいつから…でもこの匂いは………)」

 

 

微かに香ったその匂いに覚えがあるシクル

 

「追うぞ!!」

 

「シクル、ナツ見失っちゃうよぉ!」

「んぇ?あ、うん!!」

 

ナツとルージュの声に我に返ったシクルはナツと共に仮面の老人を追う。

 

 

………一体………何が目的?

 

 

 

老人を追う中、シクルはナツに追いつき隣を走る。

 

「ナツ…アレ誰?」

 

「俺が知るかよ!!けど、あいつの魔法で折角傾けた遺跡を元に戻しやがったんだ!」

 

「遺跡を…!?」

「直しちゃったってことぉ?」

 

 

それは…“失われた魔法(ロストマジック)”………

 

時空の魔法………“時のアーク”!?

 

 

「やっぱり………」

「んぁ?シクル、どーした?」

シクルの小さく呟く声が聞こえたナツが問いかける。

 

シクルは「ううん、何でもない…」と答えると何も話さなくなる為、ナツは不思議に思いながらもさらに問いかけることは無かった。

 

 

………時のアークを使えるのは………

 

 

私の知る限り………あの人だけ………

 

 

 

「ほっほっほっ」

 

「「っ!?」」

 

 

2人が依然、仮面の老人を追っていると突然目の前から姿が消える。

 

「消えたァ!?」

 

「どこ行ったのぉっ!?」

 

「恐らくデリオラのいるところよ!」

 

 

 

シクルの言葉通り、仮面の老人は地下深くに隠されていたデリオラの所にいた。

 

 

「いよいよか………」

 

「見つけた!!」

 

「うひゃあ!?お、おっきいよぉ…!?」

 

「とりあえず燃えとけぇ!!」

 

 

 

氷に覆われた怪物、デリオラを見上げニヤニヤと笑っている仮面の老人の真上に飛び上がり、火を纏った拳を振り下ろすナツ。

 

 

「火竜の鉄拳っ!!!」

 

ナツの拳をひょいっと軽い様子で避ける仮面の老人。

「避けられちゃったよぉ!」

 

「ほっほー愉快な言葉ですな…しかし、何故ここがお分かりに?」

 

「けっ!俺達は鼻がいいんだよ!」

 

「ましてや、女の香水の匂いがするんだから…尚更、あとを追うのは容易かったわよ?

 

…あなた、一体何者?」

 

シクルの探りを入れるような鋭い眼差しに怖気付くこと無く、笑みを絶やさない仮面の老人。

 

 

「ほっほっほっ…私はね、どうしてもデリオラを復活させねばなりませんのよ…」

 

「へっ!やめとけやめとけ!もう無理だ」

笑う仮面の老人にニヤッと笑みを見せ言い切るナツ。

 

「ほぉ?何故無理と?」

ナツの言葉に興味を示した仮面の老人はそう問いかける。

 

 

すると…

 

ビシッ!!と仮面の老人に指を差し、ナツは高らかに言いきる。

 

「グレイがあいつをぶっ飛ばす!!

俺がお前をぶっ殺す!!百万回な!

 

それで終わりだ!この野郎!!」

 

「お?それなら私の出番はない訳だ?やったね!」

 

「シクル…こんな時にめんどくさがらないでよぉ…」

 

 

ここに来てめんどくさがりが発動したシクルにため息をつくルージュ。

 

 

 

「ほっほっほっそう上手くいきますかな?」

 

仮面の老人がそう言い、背後を振り返った時…

 

デリオラの氷に紫の光…“月の雫”が降り注いでいた。

 

 

 

「「え!?」」

 

「なにィ!?上で儀式やってる奴がいるのか!?」

 

ナツは月の雫が降り注ぐ天上を見上げ、睨みシクルは愉快そうに笑っている仮面の老人を睨みつける。

 

 

「ほっほっほっ…たった1人では月の雫の効果は弱いのですが…既に十分な月の光が集まっております………

 

あとはきっかけさえ与えてしまえば…」

 

 

 

仮面の老人がそう呟いた時ーーー

 

 

ピシッ!!

 

 

「っ!」

 

「氷に亀裂がぁ…!!」

 

「くそ!頂上にいる奴を何とかしねぇと!!」

 

そう叫び、何とか頂上へ行こうと来た道を戻ろうとするナツだが…

 

その道を仮面の老人が天上の岩を落とすことにより、塞ぐ。

 

「んなっ!」

 

「逃がしませんぞ…私を追ってきたのはミスでしたね…火竜君に月の歌姫よ………」

 

「このやろ…!」

 

「ナツ!!」

仮面の老人に突っ込もうとしたナツをシクルが咄嗟に呼び止める。

 

「んぐ!なんだよ!?」

 

 

「そいつは任せるよ…!私は………上のヤツを何とかしてくる!!」

「っ!?出来んのか!?」

 

ナツの問いかけにニッ!と微笑み、「もちろんっ!!」と答えたシクル。

 

「ほっほっほっ!行かせるわけないでしょう!!」

仮面の老人はそう言い、手を構えるとシクルの立つ真上の天上を崩す。

 

「っ!シクル!!」

 

 

ナツが慌てて声を上げる。

が…シクルはニヤッと笑みを浮かべ…

 

 

「忘れてない…?

私は2つの属性を持つ滅竜魔導士………

 

 

月と光の滅竜魔導士だってことを………」

 

 

「っ!!」

 

 

そう呟いたシクルの体は一瞬で金色の光に包まれる。

 

そして………

 

 

 

「はぁあっ!!光竜の…劍角!!!」

シクルは光の速さで天上を突き破り、遺跡の外、上空へと飛び上がった。

 

 

ドドドドドゴォオオオン!!!!

 

 

光の速さで動くシクルは仮面の老人やナツの目ですら追えず、崩れ落ちる岩を避け、天上を突き破っていく。

 

そして………

 

 

ドォオオオオオンッ!!!

 

満月の輝く上空に飛び上がるシクルの姿…

 

 

「…!!ルージュ!!!」

 

「あいっ!!」

 

 

シクルの掛け声と共に、ルージュはシクルの作り出した弓、月光弓を構える。

 

 

「行くよぉ!ムーンライト・アロー!!」

 

ルージュの放った光の矢は寸分狂わず、儀式を行っている人物に刺さる。

 

 

「ノォオオオオオオッ!?」

 

奇妙な雄叫びを上げ、倒れる儀式を行っていた人影………その人物が倒れると儀式の光は消え、月の雫も消える。

 

シクルとルージュは顔を見合わせ安堵する。

 

が………

 

 

 

グォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

地鳴りのような雄叫びが響く…。

 

 

 

「ひぃやぁ!?」

「っ!?今のは…!(まさか…!)」

 

 

 

雄叫びが聞こえたのは地下深く、デリオラのいる場所から…シクルは再び光を身体に纏い、超速度で地下へと降り立つ。

 

 

すると………

 

 

 

「…う、そ………!?」

 

「ふ…復活してるぅ…!?」

 

シクルとルージュの目に映るは大きな雄叫びをあげ氷が完全に解けたデリオラの姿ーーー

 

 

 

「シクル!!」

「っ!ナツ!!」

 

デリオラの下方からナツのシクルを呼ぶ声が響く。

 

「行くぞ!!まだ終わってねぇ!!こいつぶっ飛ばすぞ!!」

 

「ナツ…おっけー!!」

ナツの言葉に大きく頷き、構えるシクル。

 

だが………

 

 

「待て!!お前らでどうにか叶う相手じゃねぇ!!!」

2人を止める声…グレイの声がその場に響いた…。

 

声のした方を振り返ると腹に傷を作ったグレイが立っており、その足元には恐らくグレイの言っていた“リオン”だろう男が倒れていた。

 

 

不意に…グレイがある構えをとる………

 

それを見たシクルは目を見張り、驚愕する。

 

 

 

「な…グレイ!?まさか………やめなさい!!!」

 

その構えは………

 

 

 

絶対氷結(アイスドシェル)!!!」

 

その呪文と共に、グレイの周りに膨大な魔力が集まる…

 

 

その光景を見たリオンは堪らず叫ぶ。

 

「よ、よせグレイ!!!あの氷を溶かすのにどれだけの時間がかかったと思ってるんだ!?

 

 

同じことの繰り返しだぞ…いずれ氷は溶け、再びこの俺が挑む!!!」

 

 

「これしかねぇんだ!!

 

今やつを止められるのは…これしかねぇ!!」

 

リオンに怒鳴り、更に魔力を高め、標準をデリオラへと合わせるグレイの前に立ち塞がるようにナツが立つ。

 

そして、魔法陣を展開するグレイへとシクルもゆっくりと…だが、確実に近づき…

 

 

ついにグレイの目の前へと辿り着く。

 

 

「お、おいシクル…!?それ以上入ってくるな!お前まで凍っちま………」

 

 

 

パァアアアンッ!!!!

 

「っ……!?」

 

グレイの怒鳴りを遮り、響く乾いた音…

 

シクルが思いっきり、グレイへと平手打ちしたのだ…。

 

 

グレイの頬を平手打ちしたシクルの手は氷始め、徐々に体全身が氷を纏い始める。

 

が、シクルはその状態を構うことなく………

 

 

「………で………ふざけないで!!!

 

言ったでしょう!?あなたは1人じゃないって!!!周りを見なさいって!!!

 

あなたは1人で戦ってるんじゃない!!!

 

みんながいる!!仲間がいる!!家族がいるのよ!?どうして………どうして………

 

 

私たちを………頼ってよ………

 

1人で抱え込まないでっ!!!グレイ!!!」

 

「シクル………」

 

 

ポロポロと涙を流すシクルを見て、グレイは目を見開き唖然とする。

 

 

「………あの時、死んで欲しくねぇから止めたのに…俺の声は届かなかったのか………?」

 

「っ!?…ナツ………」

 

 

デリオラを見上げるナツの隣にいつの間にかシクルも並び立つ…そして………

 

 

「大丈夫…グレイの苦しみは………痛みは………

 

 

仲間が…家族が、癒してくれる………」

 

 

そう言い、ふっと小さくグレイを振り返る、シクルの姿がグレイの目には嘗ての師匠、ウルと重なった。

 

 

「俺は最後まで…諦めねぇ!!!」

 

「!!だめだ…避けろぉおおおっ!!!」

 

ナツとグレイの叫び声が響く…

 

ナツとデリオラの拳が交わる…そう、誰もが思った。

 

その時………

 

 

ピシ!!ピシピシ!!ガラガラガラッ!!

 

「っ!?んだァ!?」

突然、亀裂が入り、拳から全身が崩れ落ちるデリオラ…

 

 

そう………デリオラは既に死んでいたのだ…

 

ウルの氷の中で………既にその命を終わらせていた………

 

 

「すっげぇ………すっげぇな!!お前の師匠!!!」

 

崩れ落ちたデリオラの残骸を見つめ、ニッ!と背後で俯いていたグレイを振り返り、満面の笑みを見せるナツ。

 

シクルもナツにならい、近寄ってきたルージュを抱き上げるとグレイの方を振り返る。

 

 

グレイは俯き、目元を手で覆っていた…

 

 

 

「ありがと……ございます…師匠………」

 

 

これで…グレイの暗い闇は消え去った…

 

海に溶けて帰っていくウルの氷と共に流されるかのように…グレイを苦しめていた長年の闇が消えていく………

 

 

 

「………良かったね…グレイ………」

 

 

涙を流すグレイを見つめ、柔らかく微笑むシクル。

 

 

 

次回………悪魔の島………完結………

 

 

島の人々の呪いは…如何に………?

 

 




あっれぇー…?前回ナツとの絡みを入れます的なことを言ってますが………すいません、あまり無いですね………


次!!次は必ず!!!

すいません!!悪魔の島ってどうしてもグレイがメインのお話なので…

次回はちゃんとナツとのラブを入れようかと思います。
では、最後までお付き合い、ありがとうございます!!!

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