フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい!!お昼前投稿にこぎ着けました!thikuruです!


では早速!!最後までお付き合い、お願いします!!


14話 グレイの決断とシクルの言葉

 

めいっぱい泣いたシクルとルージュは、涙を流しきり、落ち着くと互いに見つめ、クスッと笑みを浮かべた。

 

「じゃ、エルたち呼ぼっか」

「あい!」

 

ルージュの返事を聞くとシクルは立ち上がり、1度テントの外に出て、エルザたちを呼ぶ。

 

「エルーお待たせーもういいよー」

「ん?あぁ…もういいのか?シクル」

 

どこかスッキリした様子のシクルはエルザのその言葉に、「うん!もう大丈夫!」と笑顔で答える。

 

エルザもその言葉を聞き、「そうか…」と笑みを浮かべ、ルーシィとハッピーを抱え、テントへと戻る。

 

未だ2人は縄に縛られたままだ。

 

「うー…シクルゥ…これ取ってぇ…」

ルーシィの涙ながらな訴えがシクルの耳に入る。ハッピーからも「取ってぇ…」との嘆きが聞かれるが………

 

シクルは苦笑を浮かべ首を横に振る。

 

「流石にそれは…ごめんね」

 

「「そんなぁああ………」」

ガクッと肩を落とし、俯くルーシィとハッピーを見て、「なんか…ほんとごめんね」と申し訳ない気持ちになるシクル。

 

だが、その背後に立つエルザの黒いオーラがあまりに怖く流石に助けられなかった…。

 

「(てかエル…本気でキレてる……)そ、それより………一体この島で何があったっていうの?ナツは見当たらないし…グレイもこんな傷…」

 

エルザのオーラに耐えきれず、シクルは咄嗟にまだ詳しく聞いていなかった今回の依頼の内容をルーシィたちに問いかける。

 

 

「あ…うん、実は………」

 

 

ルーシィの話では、この島は何年か前から夜になると月が紫になり、月から放たれる紫色の光が島の中心にある遺跡へと落ち始めたという。

 

その頃から村人達は夜になると姿が悪魔のようになり、外の世界へ行けず苦しんでいること。

 

今回の依頼はその月を破壊し、身体にかかった呪いを解いてもらいたいというものだと言う。

 

 

大まかにルーシィから内容を聞いたシクルとエルザ。

 

シクルはルーシィの話を聞き終えてから、空を見上げ、島を照らす紫色の月を見つめた。

 

「………おかしい…」

「…え?」

「シクルゥ…?」

シクルの呟きが聞こえたルーシィとルージュが首を傾げ、シクルを見つめる。

 

 

「…月が紫色になるなんて………普通ありえない…」

「え?でも確かに月は紫色になってるよ?」

シクルの言葉にハッピーは反論を出すが…

 

「確かに!今見えてる月は紫色だけど………違うの……確か……なにかあったはず………」

シクルはその何かを思い出そうと考えるが一向に思い出せる予兆はなく………

 

 

「兎に角、今日はもう遅い…今夜はこの村に一泊し、明日…グレイが目覚め、ナツを見つけ次第私がギルドに連れて帰る」

 

エルザの言葉に一同は一度解散し、各々村人が用意してくれたテントに入り、一夜を過ごすことに。

 

その夜…シクルは隣で眠るルージュを起こさぬ様テントを出ると村を少し離れた所に座り、空を眺める。

 

 

相変わらず、空に浮かぶは紫色に光る月…

 

「………(何だろう…あの月を見ると………モヤモヤする)」

 

 

この嫌な感じは………一体………

 

 

 

「眠れないのか?シクル…」

「っ!エル…」

 

空を見上げ、思考に浸っていると後ろから聞き覚えのある声が耳に入る。

シクルはふっと後ろを振り返るとはぁとため息をつき、再び空を見上げる。

 

「なんか………気になっちゃって…」

 

「あの月のことか…」

 

エルザの言葉に「うん…」と頷くシクル。

 

 

「……あ、ねぇエル…?」

シクルはふとあることを思い出し空を見上げていた視線を隣に腰掛けたエルザへと向ける。

 

「なんだ?」

 

「あのね、お願いがあるんだけど………」

 

そう言い、シクルが話し始めたお願いの内容にエルザは徐々に目を見張る。

 

 

「シクル…だがそれは……」

 

「ね?多分いい経験にもなると思うんだ…

 

ダメかな………?」

 

シクルの瞳には何か強い想いがあるようにエルザは見て取った。

はぁとため息をつき、エルザは苦笑を浮かべ、シクルを見る。

 

「仕方ない………いいだろう…だが、初めから私は許可しないからな」

 

「うん!ありがとう…エル…やっぱり優しいねエルは」

エルザの言葉ににっこりと満面の笑みを浮かべるシクル。

 

「お前の頼みならな…さて、そろそろ休もう…明日に響くぞ」

 

「あ、うん………」

立ち上がったエルザに手を引かれ、テントの中へと戻るシクル。

 

テントへ入る前にふっと空を見上げ、目を細める。

 

………紫の月………まさか…

 

「…まさか………ね」

 

 

 

シクルとエルザが島についた、翌朝、

 

朝日の光でグレイが目を覚ます。

 

 

「……っ…う…こ、ここは………」

 

「おはよ、グレイ…気分はどう?」

 

まだ痛む身体をゆっくりと起こしたグレイの視界に気を失う前はいなかったシクルとエルザの姿が目に入った。

 

「シクル!?それにエルザも…!!」

 

「…大体の話はルーシィから聞いた…

 

全く、お前はナツたちを止める側ではなかったのか…?」

 

エルザの言葉にぐぅの音も出ないグレイは顔を俯く。

 

「はぁ…呆れてものも言えんぞ」

 

「っ…ナ、ナツは?」

エルザのため息とその一言に一瞬息を呑むグレイは咄嗟にこの場に見えない桜色のことを聞く。

 

「ナツはここにはいないわ…多分どこかで迷子になってるか或いは…遺跡にいるか………」

 

グレイの質問に答えたシクルを見て、グレイは「そうか…」と呟く。

 

 

「兎に角、ナツを見つけ次第お前達を連れ私はギルドへ戻る」

エルザのその言葉を聞き、グレイはばっ!と顔を上げ、エルザを見て目を見張る。

 

 

「な…ギルドに帰るって…お前!この島で何が起きているのかルーシィから聞いたんだろう!?なら…!!」

 

「あぁ、聞いたさ………だがそれがどうした?

 

私の目的はギルドの掟を破った者を連れ戻すこと…あとはナツだけだ…ナツを見つけ次第私達は戻る……それ以外の目的などない」

 

 

エルザの言葉を聞き、ギロッと睨みつけるグレイ。その表情は険しく、どこか苦しげに見える…。

 

 

「この島の人たちの姿を見たんじゃねぇのかよ!?」

 

「見たさ」

 

「それを放っておけというのか!?」

 

「依頼書は各ギルドに発行されているんだ…正式に受理したギルドの魔導士たちに任せるのが筋というものだろう?」

 

どんなにグレイが説得を試みてもエルザの答えはただ、「連れて帰る」それだけだった。

 

グレイは我慢ができなくなり、拳を握りふるふると震わせる。

 

 

「………見損なったぞ、テメェ…」

 

「…なんだと?」

 

グレイの言葉を聞き、殺気がブワッ!と吹き荒れるエルザだがそれに怖気付くこと無く俯くグレイ。

 

 

「お前まで…ギルドの掟を破るつもりか?

見損なったのはこちらの方だぞ………」

 

確かにギルドのルールを破ったナツやルーシィ、グレイに非があるのは目に見えている。

 

 

グレイも心のどこかでそれを分かっている…だが………

 

 

「ただではすまさんぞ」

そう言いきり、グレイに剣を向けるエルザ。

 

 

「ちょ!エルザっ!!」

 

「それはやりすぎだよ!」

 

「シ、シクルゥ…!」

 

2人のやりとりを後ろで見ていたルーシィ、ハッピーとルージュはエルザの行動に慌てる。

 

が、シクルはじっとエルザとグレイを見つめていた。

 

 

剣を向けられたグレイは俯く顔を上げ、エルザの剣を握りしめ、押し返す。

 

 

「勝手にしやがれ!!これは!俺が選んだ道なんだよ!!やらなきゃならねぇ事があるんだ」

 

そう言い、グレイは剣を握る手を強める。

その手からは血が滴り始め…テントの床を赤い斑点が出来る。

 

 

グレイの引き下がらないと言った決意の見える瞳を暫く見つめ、エルザははぁと一つため息をつく。

 

そして、剣を握るグレイの手を軟らかに離させるとルーシィとハッピーを縛っていた縄を切る。

 

 

「「…へ?」」

「エルザ…?」

 

エルザはグレイを振り返り、呆れた瞳で言う。

「これでは話にならんからな…まずは仕事を片付けてからだ」

 

「で、でもぉ…他のギルドがこの依頼を受けたら…問題になっちゃうんじゃぁ?」

先ほどの他のギルドに任せろと言ったエルザの言葉を覚えていたルージュは恐る恐ると言った様子でエルザに問う。

 

すると…

 

「あぁ、それ?大丈夫大丈夫!この依頼、私が受けたから他のギルドが受けることはないよ」

ルージュの隣からヘラリと言った様子で言いきったシクル。

 

「「「えぇ!?」」」

「………シクル、自分から受けたのぉ?」

 

「そーだよ?それより…エルも意地悪だなぁ…

 

昨日言ったのに…この依頼、ナツたちにも手伝ってもらうって…」

 

シクルの困ったような笑みを見て、ふっと笑い、シクルを見返すエルザ。

 

「言っただろう………始めから許可など出したら反省しないだろう…それに、私はこいつの想いを聞きたかったのでな…少々試させてもらった」

 

2人の会話を聞き、ルーシィたちはぽかん…とその光景を見つめる。

 

 

「え…じ、じゃあ………最初から連れ戻す気はなかったってこと…?」

 

確認のため問いかけてくるルーシィに何を言っている?と言った様子で見返してくるエルザが口を開く。

 

「バカを言うな…私は初めからお前達を連れ戻す気でいた…だが、シクルがどうしてもお前らにこの依頼を完遂させ…経験させてやりたいと頼んできたのでな………仕方なくだ」

 

 

「とかなんとか言って…ホントはエルザだってルーシィたちを連れ戻す気は無かったんでしょ?」

 

クスクスと笑いそう言うシクルを見て、少し頬を赤らめそっぽを向くエルザの様子にルーシィとハッピーはほんのりと笑みがこぼれ、ルージュも嬉しそうにシクルを見上げる。

 

「お前ら………」

2人の様子にグレイもしてやられたと様子を隠さず、嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

不意に、シクルはグレイの方を振り返る。

 

「さて…と………グレイ?手見せて」

「あ、あぁ…」

シクルはグレイの傷ついた手を握ると、“歌魔法 治癒”でその傷を治す。

 

 

そして、回復させるとほんの少し、ギュッとその手を握る…。

 

 

「…シ、シクル?」

 

シクルの様子に戸惑い、首を傾げるグレイ。

 

 

 

「………グレイ…」

 

「お…おぅ?」

 

 

「………お願い…これだけは覚えておいて…

 

グレイが今………何を思い、何を悩んで…何に苦しんでいるのか………私にははっきりとは分からない………でもね?

 

 

あなたには仲間がいる………家族がいる………

 

 

グレイ………それを、忘れないで…?

 

周りをよく見て………お願い…」

 

そう言い、顔を上げたシクルの表情はどこか、切なく悲しげだった。

 

グレイはじっとその顔を見つめ…

 

 

「………分かった」

と、頷いた。

 

 

その答えにシクルは微笑み、「絶対だよ…」と、呟くとグレイの手を離し、エルザを振り返る。

 

「さて…エル………じゃあ、私たちはあのバカを探しに行きますか…!」

 

「あぁ…そうだな…」

シクルのニヤッとした笑みを見てエルザも同じくフッと笑みを浮かべる。

 

 

 

「…行くぞ!」

 

「「「「「おぉー!!!」」」」」

 

エルザの掛け声と共に、シクルたちは叫び、テントを飛び出し、問題の遺跡へと駆け出していく。

 

 

 

次回…敵の狙いが明らかに………

 

 

 

「…あ、そうそう!これ終わったらルーシィたちにはすっごく素敵な罰があるからね!!」

 

「「「ぬわにぃいいいい!?」」」

 

「え!?なに!?何なの!?」

 

「ふ………腕がなるな………」

 

 

シクルの爆弾投下にグレイ、ハッピー、ルージュは叫び、悲鳴をあげる。

 

その様子にルーシィは戸惑い、焦り、エルザはどこか楽しげに微笑むのだった………。

 

 

 

「楽しみだなぁー!」

 

「だから…!!

 

何なのよぉおおおおおおおっ!!!!!!」

 

 

 




はい!13話、如何だったでしょうか…やはりあまりにも自信がない………(汗)


恐らくは次回!!やっとナツさんが出てくるかと………

ほんのりナツと主人公の絡みも次回は入れようかと思ってます


では、最後までお付き合い、ありがとうございます!

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