今回は戦闘シーンはありません!恐らく次回になるかと!
では、最後までお付き合い、お願いします!
ギルドに帰還した瞬間に衝撃的な事実を告げられたシクルは普段では考えられないほどの大きな声で叫び声を上げていた。
「は?は………は?……ナツ…たちが…S級クエストに行ったァ?………え?ナツって…S級魔導士になったの?」
「な訳あるかぃ!!!勝手に行ったのじゃ!!ルーシィとルージュも連れてじゃ!!」
シクルの言葉に怒号を響かせるマカロフ。
「だ、だよね………わぁ………めんどくさ…何やっちゃってんのあのバカ………」
はぁと深い溜息をつき額に手を当て、呆れを露わにするシクル。
てか、ルージュも行っちゃってるのか…
「昨日、グレイが連れ戻しに向かったのだがな…戻って来ないということは一緒にクエストへ行ったのだろう………」
「えぇ…グレイもぉ?…ちなみに無くなった依頼書は?」
マカロフを見て聞くと…
「うむ…なくなったのは悪魔の島の依頼書じゃ…」
「悪魔の島………あぁ、だからルーシィもついて行ったんだ………」
確かあの依頼の報酬に金の鍵があった筈…黄道十二門………この世で同じものは一つとない、超レアな鍵…にしても………
「馬鹿なの?ほんとに………」
ほんとにあいつは想像の斜め上の行動するんだから…
「これから私もその悪魔の島へ行くんだ…シクル、疲れていると思うが………」
エルザの言葉を聞き、少し考えるシクル。
普段のシクルはこの様な状況でも首を縦には振らず、成り行きを見守るだけに留まるのだが………
シクルは、はぁとため息をつくとマカロフへと視線をやった。
「マスター…その依頼、まだ正式な受理は降りてないんだよね?」
「ん?あぁ…そうじゃが………」
「んじゃその依頼、私が正式に受けるよ」
「「「えぇっ!?」」」
誰も想像しなかったシクルからの申し出にギルド内から驚愕の声が響き渡る。
「シクル…良いのか?普段どんな依頼でもめんどくさがるお主が………」
驚いたのはマカロフも同じ。
驚きを隠さずシクルに再度確認をするマカロフにシクルは苦笑を浮かべ、答える。
「まぁ…確かにめんどくさいんだけど………
でも、ナツたちをほっとく訳にはいかないでしょ?
それに、ルージュもついて行ってるなら尚更めんどくさいなんか言ってられないよ」
シクルの答えに「そうか…」と、呟き少し考えるマカロフ。
「…分かった、いいじゃろ…この件、お主に任せよう…」
マカロフの返答を聞き、「ありがとう、マスター」と笑みを浮かべ言うとエルザを見つめるシクル。
「エルも行くよね?元々エルが行く予定だったんだし」
「あぁ、もちろんそのつもりだが…良いのか?本当に………」
まだ疲れているだろう…と呟くエルザの言葉を聞き二ヘラと笑うシクル。
「だーいじょうぶだってぇーちゃんと休息は取ってきてるから…それより、早く行かないとナツたちに何かあったら大変でしょ?」
シクルの言葉とその表情を見て後には引き下がらないな…と感じたエルザは1つため息をつき、シクルの肩に手を置いた。
「分かった…シクルがそう言うなら何も言わない…だが、本当に辛くなったら言うんだぞ?
………僅かに血の匂いがする…怪我をしているんだろ?」
エルザの確信めいた問いかけに一瞬目を見張るシクル。そして、すぐにふっと表情を戻すと苦笑を浮かべ参ったなぁ…と呟くシクル。
「んー…まぁ、怪我はしたけど…傷はもう評議会で治してもらったから大丈夫!問題なし!
それよりほら…早く行こ?」
そう言い、シクルはエルザの手を取り1度マカロフを見て「行ってきます」と声をかけ、ギルドを出て行った。
「…頼むぞ」
ハルジオンに着いた2人は早速船を出してもらうよう船乗りに頼むが…
「…ダメだねぇ、みんな怖がって悪魔の島…ガルナ島まで運んでくれないよ………」
船乗りたちはガルナ島の一言を聞くと怖がり、乗せてはくれなかった。
「エルー…どーする………て、エル?」
今後のことをエルザに聞こうとシクルは問いかけるが先ほどまで隣にいたはずのエルザの姿が見えない…。
「あれ?どこ行ったの?」
辺りを見回し、エルザを探す。
そして、エルザの特徴的な緋色の髪はすぐに見つけることが出来た…が
「ぇ゛………」
エルザはなんと港の裏手に定着していた大きな船…海賊船に乗り込み、船員たちをボロボロにしていた。
「………な、何やってるの…」
「あぁ、シクル…心優しい奴らがいてな…交渉をしたら乗せてくれるそうだ」
エルザは近寄ってきたシクルに笑みを見せ、答えるが…そのエルザの手には涙を流しボロボロの恐らく船長だろう者の姿が………
「う…うん………良かった…ね?(交渉って…脅しの間違いじゃ………ダメだ言ったらめんどくさそうだからやめとこ)」
結局エルザの交渉(脅し)の末、ガルナ島まで運んでくれる事になった。
「あ、あんたら…一体あの島に何の用なんだ…?あの島はみんな怖がって誰も近づかねぇってのに!」
舵を切っていた船長は震える声でシクルたちに問いかける。
が、船長に返ってきたのは…
チャキ…
「つべこべ言わず貴様は黙って船を操縦するんだ………」
首筋に剣先を向けられ、エルザの殺気が船長に返ってきた。
「ヒィ!!わ、分かりましたっ…!」
「エル…やりすぎだって………」
エルザのあまりの様子にシクルははぁとため息をつき、少し暗い表情を浮かべると空を見上げた。
………ルージュ…
暫く船を操縦すると、漸くガルナ島が見えてきた。
「あれか」
「みたいだね…(月が…紫?)」
シクルはガルナ島を照らす月を見上げ不思議に思う。
「紫色の月………何かで見た事が……(…何だっけ?えっと………月の………?)あー、思い出せない…ん?」
ずっと月を見上げていたシクルの目に空飛ぶ何かが映る。
「………ネズミ?」
「シクル…どうした?」
空を見上げネズミと呟いたシクルを不審に思ったのかエルザが問いかけるとシクルは空を指差し言う。
「あそこ…空にネズミが飛んでる」
「何?………わからん、シクルは目がいいからな…」
竜は全ての五感が通常の人よりも高く、視力もエルザより良いため、普通の人では見えない空に浮かぶネズミも見えるのだろう。
「…あ、落ちた」
ずっとネズミの動きを見つめていると突然、なにかが当たったのかネズミが落ちた。
「もしやそのネズミが落ちたところに奴らもいるかもしれんな…行くぞ、シクル」
「おっけー!」
話している間に船はガルナ島に着いており、2人は一気に船体から飛び降り、ネズミが落ちたであろう場所へと走った。
少し走ると森に差し掛かり、森の中も走り抜けていると少し開けた場所が見え、そこに2人見覚えのある金髪の少女と茶毛の猫が大きなネズミに襲われていた。
「っ!!ルーシィ!!ルージュっ!!!」
危ない、そう感じたシクルは一気に足を早め、ルーシィとルージュの前に立つ。
「換装 十六夜刀!!」
ギィイイインッ!
ルーシィたちとネズミの間に入り込み、瞬時に右手に握った刀でネズミの爪を受け止めきる。
「「え…シクルっ!?」」
ルーシィとルージュは突然のシクルの登場に驚いたがすぐに表情に笑みが浮かぶ。
「シクル!!来てくれたのね!!」
「まぁ…ね…来たのは私だけじゃないけど」
「え…?」
シクルはそう言うと刀で受け止めていたネズミを力いっぱい押し倒し、そして体勢の崩れたネズミは………
ドガッ!!!
回し蹴りを仕掛けてきた鎧の女騎士…妖精女王の攻撃により、戦闘不能となった…。
「エルザっ!!」
シクルが登場した時のように笑みを浮かべるルーシィだが………
ギロッ! 「………」
「ひぃ!?」
「あ………」
エルザの物凄い睨みと殺気に当てられ、ルーシィは悲鳴を上げ、ルージュはシクルを見た。
ルージュを見つめるシクルの表情は凄く悲しそうだった。
「…ルージュ………」
「シ…シクル………」
シクルは震えるルージュを暫く見つめてからはぁとため息をつくと、ルージュの頭を一回撫でてからルーシィに声を掛ける。
「ルーシィ…グレイとナツは?一緒じゃないの?」
「あ………ナツは分からない…グレイは…怪我しちゃって…」
ルーシィの言葉にそっか…と答えると震えるルージュを抱え、立ち上がる。
いつの間にかルーシィたちを追ってきたのか、ハッピーもこの場におり、既にエルザの手に捕まっていた。
ルーシィの言葉を聞きエルザへと視線をやるとエルザもシクルを見つめ、頷く。
「兎に角………まずグレイのところへ連れて行って…私が見るわ」
「わ…分かった………」
ルーシィに連れられ、シクルたちが来たのは簡易テントがいくつもある避難用の村だった。
ルーシィの話では少し前に空飛ぶネズミの落とした謎のゼリーに村を溶かされ、消滅してしまったとのこと。
シクルたちは負傷し、眠っているグレイがいるテントの中に入った。
眠るグレイの側に膝をつき、見下ろすシクル。
そして、悲しそうな表情を浮かべ、グレイの傷つき包帯の巻かれる頭を撫でる。
「…馬鹿ね、ほんと………」
シクルはそう呟き、1度手を離すと後ろで控えていたエルザたちを振り返る。
「少し深いみたいだけど…治せない傷じゃないわ」
「そうか………頼めるか?」
シクルの言葉を聞き、問い返すエルザににっこりと微笑み頷くシクル。
「な、治すって………?」
「ルーシィはまだ見たことなかったよね?」
疑問だらけのルーシィに説明を始めるハッピー。
そんな2人は今も尚エルザの手により、体を縄でグルグル巻きにされていた。
「シクルがなんで月の歌姫って呼ばれてるか…分かる?」
「そういえば…考えたことなかった………」
確かに以前戦った闇ギルドのメンバー等、時折シクルを“月の歌姫”と呼んでいるのを聞いたことはあったが気にしたことはなかった。
「シクルの歌は特別でね…歌で仲間の傷を回復したり、仲間の身を守ったり、何かを封印することや呪いみたいなのを解くことも出来るんだよ」
「何それ……そんな魔法あるの?」
「シクルの魔法ですぅ…月の滅竜魔法の魔力を歌に込めるとその歌に合わせた効力が発揮されるんですぅ…」
シクルをずっと見つめ、ハッピーに代わり、説明をするルージュ。
「へぇ………」
ルーシィはじっとシクルを見つめる。
「…よし………
【我、月の加護の名の下に
愛する者の身を包み その身、回復させん】
歌を唱え、グレイにシクルが両手を添えるとシクルの手から淡い銀色の光が輝き、次第にその輝きはグレイを包み込む。
そして、銀色の輝きがグレイの身体に染み込むように消えるとそれまで苦しげだったグレイの呼吸や表情は幾分か穏やかになっていた。
「…ふぅ………うん、とりあえずはこれで大丈夫…流石に流れた血は回復できないけど…傷はもう大丈夫だよ…後は目覚めるのを待つだけ」
そう言い、シクルはエルザたちの方を振り返る。
「わぁ!良かった…」
「あい!」
「流石だな…シクル」
エルザたちはシクルの言葉に喜び安堵し、声を上げるがルージュだけが未だに顔を俯き、暗い表情をしていた。
「………ルージュ」
「………」
シクルが呼びかけるもルージュからの返答はない。
シクルははぁとため息をつくとエルザを見る。
「エル…悪いけどほんの少しルージュと2人きりにさせて?」
「ん…分かった」
シクルの真意を受け取ったのか、エルザはルーシィとハッピーを連れテントを出ていく。
エルザたちが離れたのを確認し、シクルは深呼吸を一つしてからルージュを見つめる。
「さて…と………ルージュ、なんでギルドの決まりを破ったの?」
シクルの質問にルージュは答えず、ただ俯く。
「…ルージュ………私怒ってないよ?怒ってないから…教えて欲しいな…どうして、勝手にS級クエストに来たの?
言ったよね?S級クエストは常に危険と隣合わせ…ちょっとした判断ミスで死んじゃうこともあるって………」
「………だって…」
シクルがルージュの顔を覗き込み、話を続けると不意にルージュの口が開く。
「…なに?」
「だって………いつも………あたしは…ギルドに留守番で………あたしは、シクルの…相棒なのに………一緒に行けなくて………シクルにとってあたしは足でまとい……?頼りない?
シクルの力には……なれないのぉ…?」
そう言い、顔を上げたルージュの目にはたくさんの涙が浮かんでいた。
「ルージュ………」
「あたしだって………シクルの相棒だもんっ…
役に立ちたいのぉ!シクルを助けたいのぉ!
でも………いつもシクルは危ないクエストは一人で行っちゃって…いつも、大きなケガをして帰ってきて………いつか、帰ってこないんじゃないかって………不安で…だから、これを無事に完了したら………シクルもあたしを連れていってくれるんじゃって………」
そう言い、再び顔を下へ向け、涙を流し始めるルージュを見て悲しそうな表情を浮かべ、だが小さく微笑むとシクルはルージュを抱き上げる。
「………馬鹿ね…あなたは私の最高の相棒よ…
足でまといなんかじゃないわ…役に立たないなんて…思ったこと、一度もない………
私は、ルージュの思ってるほどまだ強くない…だからね?もし………S級クエストにあなたを連れて行って、もし守れなかったら……
あなたを失ってしまったら…そう思ったら、あなたには安全なギルドで私の帰りを待っていてほしいって…そう、思ったの………」
「ふぇ…シクルゥ………」
「ごめんね?
ちゃんと伝えておけば良かったね………
ルージュ………
私はね?あなたがギルドで帰りを待ってるって考えたら…どんな辛い状況でも乗り越えられる………あなたが待っているから、何が何でも帰らないとって…そう、思うのよ?
ルージュ………私の親友………すっごい、心配したんだから………ギルドに戻ってみたらいなくて………ナツたちとS級クエストに行ったって聞いた時………身体が震えた………
もしルージュに何かあったら…そう思ったら…怖かった………ルージュ………
無事で良かった………間に合って…ほんと、良かった………」
そう話したシクルの目にも涙が流れており、ルージュの顔を濡らしていた。
シクルの涙を見て心配を掛けてしまったことにさらに大粒の涙を流し、シクルの胸に抱きつく。
「ご、ごめん…ごめんなさぁいぃ…!」
「ルージュ………」
2人は十数分間、涙を流し続け、お互いの無事を喜んだ。
そして、再会の喜びを噛み締め、十数分後、涙の落ち着いた2人はエルザたちを呼ぶ。
この島の謎……問題………敵との戦闘が
今………始まろうとしていた………。
はい、如何だったでしょうか………むむむ(汗)
今回は主人公の能力がほんの少し、明らかになりました!
今後コレがだいぶ重要になるかと!!
そしてとりあえず次回、敵さんと戦闘があるかなと思います!
あぁ…戦闘シーンは苦手なのでドキドキしてます…少し投稿が遅くなるかもしれません…
遅くても明日の夜には投稿できるようにします!!
では、最後までお付き合い、ありがとうございます!