フェアリーテイル 月の歌姫   作:thikuru

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はい!!お昼の投稿となりました!


では早速…最後までお付き合い、お願いします!


9話 ナツVSエルザ そして

 

 

ララバイの一件から一夜明け、翌日…

 

 

シクルはルージュに起こされ、ギルドへと向かっていた。

 

「ンむぅ…なぁにぃー?ルージュ…私まだ眠いよぉ………」

「シクルもしかして忘れたのぉ?今日はアレがあるでしょぉ?」

 

ルージュの言う“アレ”を脳裏で考えるシクル。

 

「アレ………あー…もしかして、決闘の事?」

 

そう言えば昨日列車に乗る前にナツがエルザに挑んでたなぁ…と、昨日の出来事を思い出すシクル。

 

「…まさかほんとにやるの?」

「みたいだよぉ?ほら、みんな集まってるよぉ」

そう言いルージュの差した先には、沢山の人だかりがあった。

 

「ほんとだ…はぁ、今のナツがエルザに勝つなんて…まだ無理に決まってるのに………」

「………いつかは勝てるってことぉ?」

 

シクルの言葉を聞きルージュが首を傾げ、聞いてくる。シクルは「え?」とルージュを見る。

 

「だってぇ、シクル…ナツがエルザに勝つなんて“まだ”無理に決まってるってぇ…いつかは勝てるって思ってるんだよねぇ?」

 

「あー…うん、そりゃまぁ…ナツが強いことは認めてるし…いつかは勝てるって信じてるよ?」

 

…そう……ナツが真の力に目覚めた時………

 

その時は………きっと………

 

 

「あ!シクル!!ルージュ!!」

 

「お?」

人だかりの所へ着くと呼びかけられ、声のした方を振り返るとそこにはルーシィと他にグレイとハッピーがいた。

 

「おぉー、みんなお揃いだねぇ」

シクルは呑気に二ヘラと微笑みながらルーシィたちに近づく。

 

「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないよシクル!!どうしよう、ナツとエルザ本当に戦うなんて…」

 

「そんな心配しなくても大丈夫だよ、ルーシィ…やばくなったらどうせマスターが止めに入るだろうし…」

 

シクルの言葉に「でも…」と尚不安げなルーシィを見て苦笑を浮かべるシクル。

 

その時、人だかりから大きな歓声が聞こえてくる。

シクル達は人だかりを通り中央へと出る。

 

「ちょ、ちょっと!!本気なの!?2人とも!!」

 

未だに不安と心配があるのか声を上げるルーシィ。

その横に掛かる、大きな影がひとつ…

 

 

「本気も本気!!本気でなければ漢ではない!!!」

 

“漢”が口癖の男、ミラジェーンの弟である彼の名は“エルフマン”。

 

「エルザは女の子よ」

弟の言葉に苦笑を浮かべるミラ。

 

「だって、最強チームの2人が激突なんて…」

 

「最強だァ?なんだそりゃ」

ルーシィの言ったことが何のことか理解出来なかったグレイは怪訝そうな表情で聞いてくる。

 

「だって!あんたとナツ、エルザとシクルも!妖精の尻尾のトップ4でしょ!?」

ルーシィの言ったことにグレイは呆れた様子を見せる。

 

「はァ?くだんねぇ!誰がそんなこと言ったんだよ」

 

グレイの言葉がその場に響いた次の瞬間、ミラが両手で顔を覆い泣いた。

 

 

「あ!ミラちゃんだったんだ!?ご、ごめん!?」

 

「あー泣かしたー」

 

「あーぁ…最低だねぇ」

 

「グーレーイィー………」ズゴゴゴォ…

 

「ま、待てシクル!!不可抗力なんだ!!だから頼む!その黒いオーラを今すぐ消してくれぇっ!!」

 

シクルの背後に見える黒いものに怯えるグレイ。シクルは「次泣かせたら許さないからね」と言い、ミラの頭を撫で慰める。

 

「確かにナツやグレイの漢気は認めるが…“最強”と言われると黙っておけねぇな…

 

妖精の尻尾にはまだまだ強者が大勢いるんだ

…俺とかな!」

 

エルフマンの最後の言葉に誰も反応を見せないまま話が進む。

 

「女で最強だったらやっぱエルザだよね」

ケラケラと笑いながら言うシクル。

 

「最強の男と言ったらミストガンやラクサスがいるしなぁ」

 

「ギルダーツも外せないよね」

「だねぇ」

 

「へぇー…そうなのね」

ルーシィが意外と言った表情をするとククッと笑いグレイが更に続ける。

 

 

「まぁ、女最強と言ったらシクルもそれに入るしなぁ」

「え?私?」

「確かに、シクルはギルダーツと互角の実力を持ってるもんねぇ」

ハッピーの言葉に「そうなの!?」と驚きシクルを見るルーシィ。

 

「えぇ?いやぁ…私そんなに強くないよ?ギルダーツにだってまだちゃんと勝てたことないし」

 

「でも負けたこともねぇだろ?充分最強じゃねーか」

グレイの言葉にんんんと苦笑を浮かべると首を横に振りシクルは言う。

 

 

「でもやっぱり最強はいいや、うんエルザにあげる…なんかめんどくさそうだし」

「やっぱ最後はそれなんだねぇ」

シクルの相変わらずの返答にはははと乾いた笑いをもらすルージュ。

 

 

「私はただナツとグレイとエルザが1番相性がいいと思っただけよ?」

シクルに慰められ回復したミラが笑みを見せいう。

 

「あれ?仲が悪いのが心配とか言ってませんでした?」

それで昨日はついて行くはめになったのにぃと肩を落とすルーシィ。

 

「まぁ、何にせよ今回の決闘は、なかなか面白い戦いになりそうだな」

 

「そうかァ?俺はエルザの圧勝で終わると思うがな」

グレイはそう言うと中央の2人へと視線をやる。それを見てシクル達もナツとエルザへと意識を向ける。

 

 

「こうしてお前と魔法をぶつけ合うのは何年ぶりだろうか…」

目の前で構え立つナツを見て嬉しそうに口角をクイッと上げ笑っているエルザ。

 

「あの時はガキだった…けど今は違うぞ!!

 

エルザ!今日こそお前に勝つ!!!」

 

目をギンギンに輝かせ、闘志を燃やすナツ。

 

「良いだろう…私も本気でやらせてもらうぞ

 

久しぶりに自分の力を試したいと思っていたところだしな…」

 

そう言い、エルザは“炎帝の鎧”に換装する。

 

 

「すべてをぶつけて来い!!ナツ!!」

 

「炎帝の鎧!?耐火能力の鎧だよ!」

「エルザが本気だァ!」

 

「そりゃ本気すぎるぜエルザ!!」

 

「わぁお、相当本気なんだね、エル…(さぁ、どうする?ナツ………炎帝の鎧を纏ったエルザ相手ではあなたの炎の威力は半減してしまう…どう戦う?)」

 

 

面白そうにシクルが2人を眺めている横ではハッピーが賭けをナツからエルザに変えるとカナに言っており、ルーシィがそれに「薄情者!!」とつっこんでいた。

 

 

そして遂に2人の決闘が開始される。

 

まずやはり先制するのはナツだった。

炎を拳に纏いエルザに拳を向ける。

が、エルザもまた避け、隙を見てはナツに刀を向け、またナツも見た目に似つかない柔軟さで向かってくる刀を避ける。

 

 

 

「すごい…!」

「大分いい戦いになってるわねぇ」

ルーシィの感嘆の声とミラの嬉しそうな声がその場に響く。

 

 

「ヘヘ…やっぱつえぇなぁ…燃えてきたァ!」

 

「流石だな………来い、ナツ!!!」

 

 

2人の刀と拳がぶつかり合う。そう誰もが思ったその時ーーー

 

 

 

パァアアンッ!!!

 

 

「そこまで」

 

 

大きな音と共に現れたのはカエルの姿をした何かだった。

 

何事だ?と突然現れたカエルにその場の全員が目をやる。

 

 

「全員その場を動くな。私は評議会の使者である」

 

「評議会!?」

「なんでそんな奴がここに?」

「さぁ?また誰かなんかしたのか…?」

 

その場がざわざわとざわつく。

 

評議会からの使者はざわつきに気をとめることはなく、持っていた文書を読み上げ始めた。

 

 

「先日の鉄の森のテロ事件において、器物損害罪他11件の罪において………

 

 

 

エルザ・スカーレット並びに、シクル・セレーネの両2人を逮捕する。」

 

「…え?」

 

「………え、私?」

 

 

「な、なんだとぉおおおおおっ!?」

 

 

 

評議会の使者により、評議会へ連れていかれたエルザとシクル。

ギルド内はしん…と静まり返り、全員が暗い表情をしていた。

 

そんな中…

 

「だせぇー!!俺をここから出せー!!」

 

ただ1人、ナツだけが大声をあげ、暴れていた。

 

姿を小さくされ、コップの中で…

 

 

「だー!うっせぇなくそ炎!!少しは黙ってられねぇのか!?」

グレイがイライラを募らせ怒鳴るも「出せー!!」とナツは叫ぶだけだった。

 

 

 

一方、評議会の方ではーー

 

 

現在、エルザとシクルは別の牢屋に入れられていた。

 

シクルは外の光が届かない牢屋の中、天上を見上げぼぅっとしている。

 

「………はぁ…(こういう所は…慣れないなぁ……)早く帰りたい…」

 

 

…ここは嫌だ………“あの頃”を思い出してしまう………

 

 

シクルはふっと顔を俯き、はぁとため息を再びつく。

 

すると…

 

 

「…随分落ち込んでいるようだな?歌姫様?」

「っ!?」

 

シクルしか居ないはずの空間に男の声が響く。

シクルはばっと声のした方を向くと…

 

そこには青髪の顔に不思議な模様の描かれた男が………

 

「…ジーク………」

 

彼の名は“ジークレイン”

評議員の1人だがシクルは彼の瞳の奥に何か強大な黒いものを感じ取っていた…。

 

「こんな所まで何のようかしら?

ジーク…今はエルの裁判をしている最中でしょう?こんなところにいていいの?

 

評議会のお偉いさんのあなたが…」

 

シクルの言葉にフッと笑みを見せるジークレイン。

 

「冗談………アレは形式のみの裁判だ罪にはならない…それを分かって真面目に出席すると思うか?この俺が…」

ジークレインはそう話すと牢の鍵を開け、牢屋の中へと入ってくる。

 

そして、シクルの長い金の髪を一束掬い、撫でる。

 

 

「そんな怖い顔をするな………月の歌姫…

 

 

綺麗な顔が台無しだぞ…?折角面倒な場を抜け出し来たんだ…もっと楽しい表情をしないか…?」

 

ジークレインの言葉に更に眉間にシワを寄せるシクル。

 

「バカ言わないで、あなたにそんな事言われても嬉しくなんかないわ…どうせあなたも本体ではないんでしょう?

 

実体を持った分身さん………」

 

シクルが挑発的にその言葉を言い、ジークレインが更に深い笑みを見せた時ーーー

 

 

ドッゴォオオオオオン!!!!

 

 

 

地上の方から大きな音が地下まで響いてきた。

 

「…何?」

突然の事に不思議に思い音の発信源の地上を見上げ呟くシクル。

そして、掴んでいた髪を落とし、上をシクル同様見上げるジークレイン。

 

「………ほぅ、火竜が乱入してきたか…」

ジークレインの言葉に驚きの表情を見せるシクル。

 

「火竜…ナツ?」

 

「ふん………どうやら裁判は途中で中止になったようだな…俺もそろそろ戻らねぇと爺さん共にバレるか………」

ジークレインはそう言うと最後にシクルの方を振り返るとシクルの顎をグッと掴み無理矢理見つめさせる。

 

「ちょ…!!」

「いいか………俺は必ず“アレ”を使い自由を手に入れる…そしてお前も………

 

必ず、手に入れる………月の歌姫………

 

その力、必ず俺のものにしてやる………」

 

ジークレインの言葉にかっと目を見開き、次の瞬間ジークレインの手を払い除ける。

 

「あたしに触るな!!

あの子には手を出させない! あたしも…

 

お前のものになんかならない!!」

 

キッと睨みあげてくるシクルを愉快そうに笑い、「また会おう…」と最後に残し、去っていくジークレイン。

 

ジークレインが去った後、力が抜けたように地面に腰を落とし、膝を立て間に顔を埋め、ため息をつくシクル。

 

「………大丈夫…大丈夫…怖くない…大丈夫…」

 

 

数分間、そのままブツブツと何も考えず、1人で呟いているとガシャン!と牢の扉が開く音がし、顔を上げる。

 

 

顔を上げた先には、呆れが見られる表情のエルザと少しボロボロのナツがシクルと同じ牢屋に入れられていた。

 

「エル!ナツ!!」

 

「シクルか…すまん、こいつがいきなり乱入してきてな………」

 

「だァ!!シクル!!お前無事だったのか!?

てか、ンだよエルザ!?その言い方…まるで俺が悪いみてぇじゃねぇか!!」

 

文句を垂れるナツと疲れた様子のエルザは共に牢屋の地面に腰を下ろす。

 

「違いはないだろう…いいかナツ?今回のこれは形式のみの筈だったんだ」

「…形式?」

エルザの言葉に首を傾げるナツに溜息をつき説明を始めるシクル。

 

「いい?ナツ…つまり、本来ギルドを管理するのは評議会の役目…だけど、今回は私たちが解決しちゃったでしょ?

 

でも、それじゃあ面子が立たないから私たちを逮捕して保とう…て事なのよ

 

つまり今回のことは罪にはならない…分かった?」

 

「お、おおう………」

ナツがやっと納得した様子で頷く。

 

「全く…本来なら今日中に帰れたんだ…」

「あい…ごめんなさい」

エルザの呆れた様子での言葉に頭が上がらないナツ。

 

その様子のナツを見てクスッと笑みを見せるシクル。

 

「でも…私たちを心配して来てくれたんでしょ?ありがとね?ナツ」

 

「お、おおぅ…!」

シクルからのお礼とその笑みに顔を赤くしながら頷くナツ。

 

 

 

結局この日は1日牢屋に入れられ、翌日3人は無事釈放となった。

 

が、最後にシクルのみが評議員の所へと呼び出された。

 

 

「はぁ………何ですか?私エルやナツを待たせてるんですが…」

 

「何、話はすぐに終わる………

 

シクル…貴殿にある依頼を頼みたい」

 

議長が切り出した話。それを聞き、シクルは数秒議長をただ見つめると再びため息をつく。

 

 

「どうせ………私に拒否権なんかないんでしょ?めんどくさいけど…いいわよ…」

 

シクルの言葉に「感謝する」と答える議長。

 

 

「詳しくは後日直接ギルドへ使いをだす…それまで、ギルドで待機してくれ」

 

「…承知しました………では、失礼します」

 

 

一つ、一礼をし部屋を出ていくシクル。

その背後で評議員の中にいた一人、ジークが嫌な笑みを浮かべていることに薄々感づきながら…

 

 

 

部屋を出ると扉の前ではナツが待っていた。

 

 

「ナツ………いつ終わるか分からないから先に戻っていいって言ったのに」

「ンでだよ、いいだろ…俺が好きで待ってたんだ…それに、シクルだけで帰らせるとなんか…不安だかんな」

 

ナツの最後の言葉にむっとした表情を浮かべるシクル。

 

「ちょぉっとー?不安ってどういう事よ?」

「悪い意味じゃねぇぞ!?アレだアレ…あの、心配なんだよ!なんかあったら………俺が、困る…」

 

ナツの不安そうな表情を見てきょとんとした表情を浮かべたあとにっこりと微笑み、ナツの手をとる。

 

「うぉ!?シクル!」

「行くよ?ナツ…家に帰ろ!それと、待っててくれて…ありがと」

 

 

シクルの笑みを見て数秒ぼぅっとするとナツはニカッ!と太陽のような笑みを浮かべ、「おう!!」と返事を返し、シクルの握ってくる手をぎゅっと握り返した。

 

 

2人は手を握ったままギルドへと帰還するのであった…。

 

 

 





如何だったでしょうか?

誤字脱字などありましたら後ほど訂正させていただきます。

次の投稿は本日の夜か明日の朝になるかと思います。

では、最後までお付き合い、ありがとうございます!

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