俺がふと言った桜という言葉に、アクアが反応し準備を始めて数日。アクアが準備が整ったということで、俺たちは集合を掛けられたのだが
「なぁアクア、これからどこに行くんだ?」
「は?そんなの決まってるでしょ!異世界よ!」
お前こそ何を言ってるんだと言いたくなったが、ぐっとこらえる。カズマを見ると、同じようなことを思っているのかだんまりだった。現在魔王討伐は俺たちのパーティーでなされ、アクアも天界に戻ってお仕事のはずなのだが、ほぼ毎日のように遊びに来ている。多分エリス様に仕事を押し付けているのだろう、クリスもなんか愚痴ってたし。だが異世界と言われ黙っていないものもいる、めぐみんだ
「異世界ですか?それはもしやここと同じように魔王の軍勢に困っており、私のような勇者に助けを
「お前は爆裂魔法撃って終わりだろうが」
「なにをー!!」
「仲いいねぇ...もう結婚しろよお前ら」
「「なんでそうなるんだよ(ですか)!?」」
息もぴったりなようで、ごちそうさまです!
「異世界というのはなんとなくわかるのだが、そもそも桜を見る花見とは何なのだ?」
話が進まないことでしびれを切らしたのであろう、ダクネスがアクアに尋ねる。まぁこっちに桜はないからな、そういうのも当たり前だろう
「それは行ってからのお楽しみよ!とりあえずダクネスは、その鎧脱いできてね」
まぁ突然集まれと言われたのだから当たり前だろう、ダクネスはフル装備だった。そんなダクネスの着替えが終わり、出発という状況になった
「それで、その異世界にはどうやって行くんだ?」
「はぁ...カズマは今の私の力を忘れたの?女神の能力戻ったんだから、これくらいお茶の子さいさいよ!」
そう言って指パッチンすると、俺たちの体が浮かび上がる。あぁ、なるほどね。門の魔法を使ったわけね。俺やカズマはよくお世話になった門の魔法、エリス様に迷惑をかけたのは今も心苦しいのだが。そして閃光に包まれ目を開けると、一面桜が咲いていた
「・・・」
どうやら桜並木になっているようで、あたりは桜の木だらけだった。風が吹き舞い散る桜の花びら、その幻想的な光景に心奪われる。しばらくそんな光景に放心していたが、俺たちが道の真ん中にいることに気が付いた。少し邪魔ではないだろうか、なので全員に声をかける
「おいカズマ、めぐみん、ダクネス、それとアク...っていねぇ...とりあえずここ道の真ん中だし、邪魔になるから移動しよう」
「あ、あぁ...」
他の二人も頷き従ってくれる、肝心なアクアだが宴会芸をやっていた。もうアイツは放っておこう、しかも普通に宴会芸するならまだしも、スキル使ってやってるのは明白なので放っておいた。どうせ腹がすいたら自発的に来るだろうし
「とりあえずここがどこかは置いておくとして、花見できる場所に移動しようぜ」
「まぁ、そうだな...」
アクアを見るカズマの目は死んでいた。まぁいつもならここで中止させるだろうが、出遅れていることもあるし、あいつがやめろと言って止まるような奴じゃないとわかっているのだろう。そして俺たちは適当な飲食物を買い、お花見ができそうなスペースを見つけた
「ここよさそうだな」
「ああ」
少し歩いたが、大きな桜の木を囲むように桜が生えてる場所を見つけた。俺たちはそこにレジャーシートを敷いて、お花見を始めることにした
「この場合俺達酒飲んでいいのか?」
「そもそも何歳に見られてるのかが不明、でもいいんじゃないか無礼講だし」
「なら私にも!」
「めぐみんはこっちでもあっちでも法律に引っかかるので却下」
「なんでですか!?」
「まぁまぁ気にするなめぐみん。それでこれがアクアが言っていた桜、という花なのか?」
ダクネスが手を広げると、そこに桜の花が一枚風に乗る
「そういうことだ。それでこの桜の花を見ながら宴会するのが、花見ってことだよ」
カズマの解説は、かなり間違っているような気がするが、口は挟まない。まぁ別にもう来ないとは断言できないが、どうせ来てもこういうときだけだろうしな
「それにしてもすごいですね...これならあなたが桜を見たいと言っていたのも頷けます」
めぐみんは俺に笑いながらそう言ってくる
「だろ?」
俺もめぐみんに笑いかける、こうやって舞い散る桜を見るのはいいものだしな。そして乾杯をしようとすると、アクアが文句を言いながらやってきた
「ちょっと私を置いて行くとはどういうことよ!」
「どういうことも何も。お前が勝手に離れたんだろうが!」
また喧嘩が始まるアクアとカズマ、相変わらず仲がいいのはいいのだが、こっちはさっさと乾杯してしまいたい。めぐみんが我慢できなさそうなので
「ほれアクア持て」
「ん?なによ」
「それじゃあカンパーイ!」
アクアとカズマは遅れたようだが、乾杯を済ませそれぞれまったりしていた。あるものは買ってきたものを食べ、あるものはゆっくりと桜を見て、あるものは宴会芸をし、あるものは飲んだくれていた。俺はというとゆっくり酒を飲みながら、料理を食べながら花見をしていた
「お前は花より食い物の典型だな」
「ふぁい?」
最初はあんなにいい笑顔ですごいと言っていたのに、今は買ってきたものをほおばっていた
「ふぃふれひですね
「飲み込んでから喋れ」
「失礼ですね、私だって花見はしていますよ?ですがこれがおいしいのがいけないと思うんですよ」
そりゃあある程度おいしくなきゃ、出店なんか出せないだろうしな
「まぁ幸せそうで何より」
「釈然としないんですが...」
そう言いながら食うのを再開しているあたり、ほんとちゃっかりしている。カズマは...今はそっとしておいた方がいいだろう、というより絡まれたらうざそうだ
ダクネスは...静かに桜に見入っていた。ああしていればいいとこのお嬢さんなんだが、実情を知っていると素直に喜べない。アクアは...相変わらず宴会芸をやっているようだ、女神の力が戻っても、そういうところは変わらないというかなんというか。俺は思わず苦笑し、桜を見上げる。相変わらず桜は風に煽られ宙を舞っているが、やはり綺麗だった
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その少年は一人で酒を飲んでいた。昼間にいた仲間たちの姿はない。それもそうだろう、一人は酔いつぶれ、一人は夜だからと言ってもう一人を連れてホテルに戻っている。もう一人は予想がつかない、なので少年は夜に一人で飲んでいた。大きな桜の木に背中を預けながら
「月見酒なんていうのも乙なものだね」
それはあの世界でもできること、違いがあるとすれば桜があるということだが。そもそも少年はあまり酒を飲まない方だった、向こうではどちらかと言えば面倒を見る方だ、そんな少年が飲めるわけはない。だからなのか今日はいつも以上に飲んでいる
「・・・まさか、こんな漫画みたいなことがあるなんてな」
少年が赤い盃に酒を注いでいると、桜の花びらがちょこんと乗っかる。そう、よくテレビや漫画であるあの状態だ。少年は苦笑しながら一気に盃を煽り、中に入っている酒を飲む
「はー...やれやれ」
そんな少年が背中を預けている桜の反対側から、足音が聞こえ始める。少年は気が付いているのか、気さくに声をかける
「お?来たか」
最後に誰が来たのかは皆さんにお任せします。なんか桜を見ていたらふと書きたくなったので深い意味はない、この主人公は名前決めてないのでご自分の名前にしてみてはいかかでしょうか
それではまた