Fate/GrandOrder GhostFriends (beta)   作:影色の烏

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「っ!」

 

……俺はどうなった?あの後、ここは…カルデアか?

……違うな。森だ。何故か俺は今、森にいる。

……確か、レイシフト、とかだったか?あの話通りなら、俺は今特異点Fとやらに居ると思うのだが。

特異点Fというのはもしや森なのか?こんな風に考えてしまうことになったのだから、もう少し話を真面目に聞いてても良かったのやもしれない。

兎に角、今は慎重に、隠密行動を行うべきだろう。木々のある所に獣あり。そう教えられてきた。少なくとも、己の経験則にもそうある。獣に襲われるのはごめんだ。

 

 

少し歩くて気付いたことがある。

どうやらこの森、所々燃えてるらしい。

どうして燃えてるのかはこの際、置いておくとして、問題は獣が既に居ないのでは?というものだ。

もしそうなら万歳だ。そう思い、気が緩む。

 

そして後悔した。

 

「▅▅▅▅▅▅!!!!」

 

獣の咆哮。すぐさまそれと感知した。

不味い、生き残っていたのが居たのか。それに、この声の大きさ。非常に不味い。

 

『ドタドタドタ』

 

更に今、此方に牙を向かんと走ってくる音も聞こえる。

 

三十六計逃げるに如かず。

 

その言葉を思い出した俺は、遅くとも逃げ始めた。

走った、何処とも知らぬ出口を探して。

 

「▅▅▅▅▅▅▅ーーーー!!!!!!!!」

 

追いつかれた。当然だ。何せ遅かったのだから。手遅れだったから。

 

だからと言って生きるのを諦める訳では無い。

あのまま死ねばこうして苦しい想いをせずに済んだのに。だが、こうして生きている以上、生き延びようと思えるのは仕方のないこと。

…そういうえば、その張本人の悪魔のような少女、略して悪女と呼ぼうか。彼女はどこだ?少なくとも先程まで声が聞こえていたはずだが。

 

「▅▅▅ー!!!」

 

「あ」

 

少し忘れてしまっていた。少しの間、考え事をしてしまった。

隙きを作ってしまった。

 

人だった。その獣の形は。

更にそれはとてつもなく大きく、俺にただただ、絶望を与える。

俺には今絶望しか見えなかった。

 

だからこそ光を求めた。

 

足掻こうとした。

 

「▅▅▅▅▅▅▅ーーーーー!!!!!!」

 

案の定駄目だった。虚しくもそこら辺の枝で殴りつけようとする小さな生存本能は、獣の偉大さにかき消された。

 

息はあった、だが、もう立ち上がろうとは思えなかった。

だが、体は自然と立ち上がってしまった。

心は半ば折れたが、その半分は未だ諦めていなかった。幸い遠くに飛ばされたらしく、獣の気配は少し遠くに感じる。

 

天からの恵みだろうか。ふと見た場所に女性の焼死体らしきものが有った。

お得意の降霊術を発揮するところである。幾らの霊で足りるだろうか。

だが、今はそんなに多くは喚べないだろう。せいぜい、多くて三人程度。そしてそれを肉壁にして、俺はのうのうとこの森を抜けて…。

……そんな事を考えている場合ではない。今は行動を起こすのが先だ。

急いでそこらに有った棒を手に取る。

そしてそれを死体に刺し、唱える。

 

「我、願わくば汝の力を借りんとする。

汝これに応えよ。

我、善を傍観する者。

我、悪を咎めぬ者。

されど、今ここに真理は問わず。

汝に再び目覚める時を告げよう。

覚醒せよ。

そしてその力を我に貸せ」

 

そう唱え終わった時、突如風が吹き荒れた。

おかしい。ここに来て失敗したのか?ああ、俺の人生はもう終わったか。

そう悲観し、風から目を守るために閉じられていたまぶたを持ち上げると、そこには人が居た。

 

「なっ…」

 

何だ?そう言おうとした次の瞬間。その人が口を開いた。

 

「問おう、お前が私の主で良いな?」

 

開いた口が塞がらない。まさにその通りだった。

分かるのは、俺の儀式は失敗し、替わりに何かしらの儀式が成功してしまったということだ。

 

「おい、早くうん、とでも言わんか」

 

「え?あ、はい…」

 

「…よし、それで良い。これで契約完了だ」

 

契約?どうやら俺はヤバイものに手を出したらしい。

 

「…おい、主。もしや今危機的状況ではないか?」

 

「え?あっ…」

 

そうだ。すっかり忘れていたが、俺はあのよく分からないのに追いかけられ、逃げている途中だった。

このよく分からない状況に混乱したせいですっかり忘れてしまった。

 

「やはりそうか。空気が違う。今のここは戦場のそれと同じだからな。まあ、私の初陣くらい、マトモに相手してやるか」

 

「お前、戦えるのか?」

 

「ん?ああ、まあな。故郷では負け知らずだったからな」

 

…よく見ると、槍のようなモノを持っているが…。

 

「黒いローブか。それで動きにくくないのか?」

 

「む、よくそんなことが気になるな」

 

「あ、いや、今のは侮辱ではなく…」

 

「いや、違う。よくもまあ私の言った事が信じれたなと―――退け、主よ。話はこの後だ」

 

そう言って、俺の前に出る彼女の背中のそれは歴戦の戦士のそれであるのだ。

 

「▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」

 

やはり、先程の獣のデカさは尋常ではない。だが、今気付いたが、彼女もまた、大きかった。相手をするのに無理のない大きさだ。

 

「ああ、これは…思ったより……。弱そうだな」

 

待て、彼女は今なんと言った?弱い?あれが?

まさか。贔屓目に見ても、お世辞だったとしても。強がったとしても。

俺は、アレを『弱い』だなんて言わないし、思わない。

 

「………」

 

「…ん?」

 

「▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅ーーーーーーーーー!!!!!」

 

あ、怒ってる。激おことかいうやつだ。今にも食ってかからんばかりの怒りがこちらに伝わってくる。

そして当事者は変なことでも言ったか?とでも言いたげな、疑心的な顔をしている。

 

「おっと、ようやく強く見えてきおったな。獣を相手にするのは、ちと酷ではあるがなあ」

 

などと言いながら、その顔は実に面白そうだと笑っている。

 

「▅▅▅▅!!!!」

 

振り下ろされたその一撃、俺なら避けることも叶わず、ただただ、天国か地獄。どちらに落ちるかなどと考えさせられるだろう。

だが彼女は違った。

それをまず、持ち前の槍で横に逸らした上でその槍を心臓に一突きにした。

 

そうなのだと、仮定するまでにかなりの時間を要した。

それ程呆気なかったのだ。そして、早すぎたのだ。

 

「…おい、もう終わったぞ」

 

「…………」

 

まだ、現実を飲み込めていなかった。受け入れきれなかった。

俺の許容範囲を大いに越している。

彼女は何者なのか。そもそも、声で女だと判断しただけで、男かもしれない。なんなら性がないのかもしれないし、両性なのかもしれない。

はたまた――

 

「おい!!」

 

「っ!?……あ、ああ。すまん。受け入れきれなくてな…」

 

「まあ、無理もない。それはそうと、次が来るぞ」

 

「何――」

 

「▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅ーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

先程殺されたはずなのに、何故か再び起き上がろうと、こちらを殺しかかろうと、倒れていたながらも、その赤い野獣の目はこちらを睨んでいた。

 

「ば、馬鹿な…自己蘇生だと…!?」

 

つい零れる本音。俺の常識を初めて超えた。

降霊術の派生の様なものであれば。死にたてホヤホヤの死者を生き返らせる事は可能だ。だが、それは術者の力があっての事。そして、どんなに頑張っても術者は己を生き返らす事は不可能である。

しかし、世界は広かった。こんなことも可能なのだな。

 

「んーむ、なるほど。そういう感じの仕掛けか」

 

そして彼女は何やら一人で納得している様子だ。

 

「どういう事だ?」

 

「さあな」

 

「おい」

 

「まあ、そう慌てるな。これが終わったら説明してやる。さあて、もう起き上がる頃だ。寝起きはさぞ悪いだろうな」

 

「▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅ーーーーーー!!!!!!」

 

「安心しろ、主。コイツを殺し切るまで仕事をしてやる」

 

「…………なあ」

 

「ん?」

 

「名は?」

 

「んー。それも後で構わないか?今からこいつの遊び相手をしなければならんからな」

 

「▅▅▅」

 

「おう、どうした?遅いぞ」

 

獣が殴り掛かるより先に、彼女は刺し終えていた。

 

「▅▅▅▅……」

 

「…む、まだ死んでいないな」

 

まだ、死んでいないのか。それを俺が言う暇も与えず彼女は獣の首を刎ねていた。

 

「……まだ死なぬ、か」

 

槍の矛先に着いた血を振って払い落とした彼女は悪態をついていた。

 

「まだ死なないのか…?」

 

「ああ、どうもそうらしい。こいつは恐らく幾つもの命を持っているのだろう」

 

「▅▅▅▅……」

 

「ではもう一度、死ね」

 

彼女はもう一度喉元目掛けて槍を穿った。

が、それは何かによって弾かれた。

 

「なっ…」

 

勿論獣はそれを好機と見て、彼女を跳ね飛ばした。

そして殺しにかかろうと彼女に飛びついた。

が、それを間一髪な所で回避した。

 

「………なるほどな。どんどん分かってきたぞ、お前の事が」

 

どうやら先程のからくりについて思う所があるらしい。

 

「主、魔力を使わせてもらうぞ」

 

「……」

 

正直何の事か検討がつかない。だが、それに身を任せればいいと、心では分かっていた。

 

「分からんか、主。ならば少しばかり目を閉じていてくれ。安心しろ。今度はきっかり殺す。例え不死だろうがなんだろうが殺す。何回でも。何世紀かかろうとも」

 

「……分かった」

 

そう返事した瞬間、段々と意識が薄れていく。

 

「…ありがとう主、私を信じてくれて。今後はマスターと、真面目に呼ばせて貰うぞ」

 

「▅▅▅▅!!!!!」

 

「…すまんな、今の私ではお前の言語を解することはできん。今の私に出来ることはマスターの信頼に十二分に応えてやることのみ」

 

………何か言っている気がするが、眠気で理解できない…。

 

「主、少しばかり辛抱していてくれ……。

さて我が名を名乗ろう!聞け!かつての英雄よ!!

この名を聞いて恐れ慄くが良い!!今はそれを許そう。

我が名は――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「■■■■■!!!!!」


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