Fate/GrandOrder GhostFriends (beta)   作:影色の烏

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alpha-2

ここが新しい住まい。そこそこ広いが、ある程度物が置ける程度。しかし、住めなくはない。それどころか何もないから、なんでも置ける。という意味ではとても住み心地が良いだろう。

だが、荷物の殆どが大きめのアタッシュケースで終わってしまうのだから、この広さは意味が無いといえるだろう。

敷いてある、腰ほどの高さのマットに腰掛けてみる。そこそこの柔らかさを持つらしい。寝心地は保証されるだろう。

…他には資料らしきものが入っている箱が幾らか金属製の棚に並べられている程度。足元にも幾らかあるらしい。

適当に退けておくが、別に必要ないと悟り、止めた。

………やることがなくなってしまった。

…大分と体が怠い。長旅で疲れたのだろうか。

取り敢えず寝心地を確認してみることにした。

 

 

 

………………………………………すごく気持ちがいい。心が洗われるようだ。と言うのは半分嘘だ。正直柔らかいだけで、寝心地はあまり良くない。普段から布団で寝ているせいだろうか。

ふと。資料に興味が湧いてきた。少しホコリを被っているこの部屋のものに興味が湧いたのだ。

試しに手に取ってみた。

……幻想種、ドラゴン、燕……色々と訳の分からない事が書いてある。恐らく、紙媒体の資料だろうか。

この世界にはよく分からないことが沢山あるし、これらを読んでも損は無いはずだ。

是非とも読ませてもらおう。

 

 

 

 

 

「おーい、もしもーし」

 

ふと、人に呼ばれ上を向いた。

 

「あのー、荷物、取りに来たんだけど……」

 

……そこには、何か頼りなくて胡散臭い変な髪型の変な髪の色をした情けなさそうな男が居た。

 

「うん、何か言いたそうだけど、別に僕は気にしないぞう」

 

「それで、何か?」

 

「あ、いや。うん。荷物をだね、出そうと思ってたんだけどね……まあ、いっか」

 

なるほど。この頼りなくて情けない男は、ここにある資料を回収しにきたらしい。まあ、一応人が住む訳だし、回収に来るのは当然。というか、言っていたし。

少し、名残り惜しいが、読むのは諦めよう。

取り敢えず、手伝いでもしてやるかな?

 

「あ、いいよいいよ。それ、読んでるんだったらさ、別に構わないよ。めんどくさ…じゃなくて、可哀想だからさ」

 

おい、今この男面倒臭いとか言おうとしたぞ。それに、こんな男に同情される義理はない。

 

「あっ、自己紹介が遅れたね。僕はロマニ・アーキマン。保険医だ。気軽にDr.ロマンと呼んでくれ」

 

……なんて、残念な渾名なんだ。いや、外人だからこういうのは普通なのか?いや、でも流石にそこまでセンスは悪くないだろ。

 

「何か君、毒を吐きたそうな顔をしてるね!僕にはよく分かるぞ!」

 

「知らないな」

 

「…………えっと、君は一般枠の月宮小詠くんだよね?」

 

「違います。人違いです」

 

「ええっ!?それじゃあ不審者じゃないか!?……って、冗談か」

 

腕に嵌めてるリングを触ったらと思ったら本人確認されてしまった。何それ便利。

俺にも欲しい位だが、正直ダサい気がする……。

 

「まあ、取り敢えず、読み終わったら、外に出しといてくれ。こっちで処理するから」

 

「だとしたら、もう出していいか?」

 

「あー、うん。いいよ」

 

「じゃあそこら辺の隅に置いてある奴」

 

「全体の6割分あるんじゃないか!?これ!!」

 

「速読は得意なんだ」

 

「え、でもそれじゃあ頭に入らないんじゃないか?」

 

「……質問していいか?」

 

「うん?まあ、僕の知ってることなら大抵答えてあげるよ」

 

「まあ、素朴な疑問なんだが、何で人類史はヤバいんだ?」

 

「……まあ、色々と、理由はあるんだけど」

 

「それと、ソロモン王はどうしたんだ?何故再び呼ばないんだ?」

 

「……どうして、それを?」

 

「やったんだろ?聖杯戦争とやらを。前所長は」

 

「まあ、うん」

 

「なら、何故ダヴィンチだけ召喚して、ソロモンも呼ばないんだ?システム上可能なんじゃないか?」

 

「……そうだね、確かに、システム上は可能だね、だけど……。いや、これにはすまないけど答えられないな。それにしても、驚いたな。あの書類にそんな事が書かれていたのか……」

 

「前所長が聖杯戦争に参加するという記録と、その時の召喚にソロモン王を召喚するつもりだと言うことだけだが。

まず、所長が聖杯戦争後に変わった事、そして施設増設に関する計画書に関する資料。この計画書は見つからなかったが、この研究所に金は余り回ってこないという事は色々な資料に載っていた。頓挫された計画書の多くが予算不足と書かれていたし。

だとしたら、前所長は聖杯戦争に参加し、無事にソロモン王を召喚し、無事に勝利を得て、無事に大金を手に入れるという願いを叶えたということになる。所長が長期休暇を出していた時期がある。ここのスタッフの日記があったから、恐らく長期的に休みを取った、ということは判明している。その間に何をしていたか。そこまでは書かれていなかった。

だが、それらは推理すれば自然と導き出されてしまう。そして、何より。ここに保管されていうということだ。必要そうな書類から、不要そうな書類まである。と言うことは、ここにある資料の殆どは全て事実ということになってしまう。違いますか?」

 

「………………はっ!凄く長い長文だったから、飛ばしてしまった!何故飛ばしてしまったんだろう!」

 

「で?」

 

「あ、ああ。まあ、合ってるよ。僕の口からは大それと言えないけどね。ここのスタッフの末端だからね」

 

「……そうか、そんな極秘な事だったのか。それは、何か…すみません」

 

「いやいや、君の様な人なら疑問を持ってしまうのは仕方ないと、僕は思うよ?まあ、きちんと答えてあげれないけど、敢えて言うなら、『それは不可能だった』……だからかな?」

 

「……ありがとございました」

 

「ううん、いいよいいよ。じゃあ、まずあれらを処理するから。あと、この事は絶対に他言しない様に。じゃないと……ね?」

 

「……分かりました」

 

どうやら、真面目に駄目な奴らしい。

まあ、別に深く追求する気は無いし。ただの好奇心からの質問だったからな。まあ、仕方ない。うん。

 

「所で、これ全部もう読んだんだよね?」

 

「まあ、そうだな」

 

「すごいね、早速タメ口だ!わーい!懐いてくれた!」

 

……喜ぶ所じゃないだろ。

 

「大人なんだからシャキッとしろ」

 

「あ、すみません。シャキッと頑張らせていただきます……」

 

しゅんっ、と萎えてしまった。まるで植物の様だな。

あっちの方が強いんじゃないか?まあ、観葉植物は弱そうだが。

雑草以下という訳か。ゴミめ。

 

「ちょっと凄い失礼な事を思ってるよね!?」

 

「そんな貴方は超能力者」

 

「魔術師だよ!あっ、いや、まあ、違うんだけども」

 

どっちだ。

しかし何故だろう。ロマンが相手だと、物凄く強気でいられる。

そうか、ロマンはこんなにも凄いやつだったんだ!!

 

「何だろう。初対面の人に舐められるって、こんなにも虚しいんだね」

 

「その感覚はお前限定だろうな」

 

「こふっ!?」

 

……倒れてしまった。少々弄りすぎたか。普段ならこんな事はしないが、今日は興が乗ったらしい。

自分で言っててなんだが、物凄くつまらないと思った。

それはともかく、今はこれをどうにかせねば。

取り敢えず他の職員を探せばいいか?

まず、コイツをおぶって、探し回るか。こいつ、ひょろひょろだし、大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

「ん?君は……というかその背中に背負っているのは……」

 

第一職員発見。というかこの人本当に職員?服装違うんだけど。

 

「初めまして」

 

「ああ、初めまして。所で、早速質問なんだけが、何故君がロマンを背負っているんだ?」

 

「こいつ何か、俺の部屋で倒れたんですけど」

 

「ああ、またか」みたいな顔されてますけど、大丈夫ですかね、この医者。

 

「どうせ、あれだろう?少し弄ったら、直ぐに倒れた感じの…」

 

「それです」

 

「ああ、やっぱりか……。そいつは少しメンタルが弱くてね。硝子のハートとか呼ばれてるんだ」

 

おっと、心は硝子だったか。

 

「まあ、どうせ直ぐに復活するさ。それより、自己紹介がまだだったね。私はレフ・ライノール。ここ、人理保障機関カルデアの顧問を務めて貰わせている。君は…」

 

またその便利腕輪か。ひみつ道具とこっそり呼ぼう。

 

「一般募集枠の…月宮くんか。今日のシュミレーションはどうだった?」

 

「いや、今日は、シュミレーションが無かったんです」

 

「ん?そうだったのか。それじゃあ、今日は待ちぼうけかい?」

 

「まあ、そんな所でしたね」

 

「ははっ、それは大変だったね。そして、そこにロマンか。そりゃ弄りたくもなる」

 

納得してくれたらしい。

 

「まあ、ロマンに関しては医務室へ連れて行けば良い。医務室へ案内しよう」

 

やれやれ。やっとこれを置きに行けるらしい。

正直この人は苦手だ。なんというか。人じゃない。

そういう風に感じ取れてしまう。

何がコイツを人間足らしめないのか。その正体は、今は分からないが、何れ確信を持てる時があるだろう。その時までは、この思いは秘めたままだ。

 

「それじゃあ、こっちだ」

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、ここだ。君もいつか世話になる時が来るだろうし、覚えておくといい」

 

「そうですね、ありがとうございます」

 

「いやいや、礼は良いんだよ。ここの一、職員として、君をサポートしたまでだからね」

 

「そうですか」

 

「ああ」

 

ニコニコと笑っているが、その笑みは俺にとっては、ホラーとしか受け取れない。理由の分からない相手。それがこいつだからだ。

まあ、今の所は敵意は無い、という事だけが、今分かることだ。

 

「帰り道は分かるかい?」

 

「大丈夫です。問題はありません」

 

「ははっ、そうかそうか。では気を付けて」

 

「ライノールさんも」

 

「レフで良い。又はレフ教授。そう呼んでくれ」

 

「分かりました。レフ教授、では」

 

「ああ」


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