黒いCANVASに色彩を   作:うぉいど
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女優さんに努力の結果を

あれから雨もすっかり止み、ゆうやけぞらが広がっていた。現在はびしょ濡れになっていた彩達にタオルを渡し、事務所に戻っている途中だ。

ここまでの道で彩と千聖は俺に話を振る場面こそあれど、2人で話しているところは無かった。
そんな時にふと彩が口を開いた。

「……雨、やんでよかったね」

会話の糸口をつかむものとしては最悪。だが、今この場では少なくとも効果を発揮したらしい。

「千聖は何故ここまで来たんだ?少なくとも、お前にプラスになる働きじゃないと思うがな。成功する確率も少なく、下手すれば更にファンの印象を下げ風邪を引き撮影や収録をキャンセルするかもしれない。それなのに、何故お前は来たんだ?」

ここまで問い詰めれば必然と千聖の口は開く。理由を話すために。

「あなたの事が……丸山彩という人間が分からないから来たのよ。同じ事をすれば、あなたがわかると思って」

千聖は彩に絞って話を続ける。

「千聖ちゃんから見た私は……どんな人間だった?」

おずおずと言った感じで、彩が千聖に尋ねる。千聖は少し呆れたような……そんな顔をしながら彩に答えた。

「私の目に映った……あなたは……丸山彩という人間は……」

千聖はここで少し何かを認めるような、千聖の中で何かが固まったような雰囲気を俺は感じた。

彩を通じて千聖も変わろうとしている。だんだんと変わっていっていたのは何も俺だけでは無かったのだ。

「夢に向かって、どこまでも愚直に突き進んでいく。愚直なのは『自分にはそれしかない』と思っているから。それを心のどこかで自覚したうえで、夢を叶えようともがき続けている……本当に、不器用な人ね」

「仰る通りです……」

お前が言うかと不意に口に出しそうになったが、千聖に怒られそうなのでここはグッと堪えておく。

……以前の千聖を知っている人間が見たらどう思うだろうか。彼女は変わっている。本人に自覚があるのかは分からないが。

千聖が感じた丸山彩という人間は、千聖にとっては愚の骨頂でしか無かったはずなのだ。だが今は、柔らかな笑みさえ浮かべている。これを変わったと言わずして何というのか。そのぐらい千聖は変わっていた。

「……でも、あなたらしさ何でしょうね……」

「私らしい……か。うん、そうなんだと思う。私は、私らしくアイドルを目指したい。後悔、したくないから。」

「……そろそろ事務所につくぞ」

無粋だと思ったが仕方ない。もう事務所も近いからな。

戻ったら、このネットの反応をこいつらに見せてやろう。
俺が持つスマホにはネットのとある書き込みがあった。それはPastel*Palette復活の兆しとなるだろう。

そして、その書き込みはこう書いてあった。

『大雨の中、チケットを手売りしているPastel*Paletteの彩と千聖を見かけた。誰もチケットは買ってなかったけど、すごい根性だな。見直した。』

『そマ?知らなかった……! 明日もチケット売ってるのかな?買いに行ってみようかな』

『口パクバンドかと思ってたけど、今は地道に努力してるんだな』

などの書き込みばかり。しかも、彩を研究生時代から応援している人も出てくるなどしている。

これらは彩の努力のおかげ。俺が嘲笑っていた努力の底力。それをこの目の前の少女はやってのけた。
こいつならきっと。俺の中でも何かが固まったような気がした。

俺も頑張らねば。そう感じ、3人で事務所へと急ぐこととした。

会議室で待ってるだろう、3人の所に向かいながら。

☆☆☆

「いやー高瀬さんたち遅いねー」

「案外戻ったら居るかもしれないッスよ?」

「そうですねー」

「君たち、ちょっといいかな」

「はい、なんでし……!?」

「イヴちゃん!?」

「カッ……あぁ……!?」

「東郷さん!イヴさんに何をするんですか!」

「いや、私の周りをチョロつくネズミ共を退治しようと思ってね。」

「何を……グッ!?」

「日菜さんッッ!!!」

「いやはや、脆いものだね。ちゃんと 鍛えてるのかい?」

「何を……カハッ……」

「……連れていけ、例の部屋にな」

「高瀬……しっかりと身の回りの女は対処しとかないとなぁ?ふははははははははははは!!!!!!!」



最後……何なの……?
え……。

もう、申し訳ないという気持ちでいっぱいです。ですが、東郷さんの元には賄賂を覆すものがない。だったら彩人の身の回りから排除するのは当然の心理かと私は思いました。人間追い詰められると何をするものか分かりませんからね。日菜、イヴ、麻也ゴメンね……。

ただし、これは次回くらいで終わるかと。しばしお付き合いください。

それでは、新たに評価をくださった ライカミングさん、天月龍夜さん ありがとうございます!

ではでは。感想、評価お待ちしております。