「初めまして、になるのかしらね。御機嫌いかが?赤羽響介くん?」
「あぁ、初めましてだな。そして機嫌はお前が来たせいで最悪だ」
「あら、連れないわね」
「知らねーよ。で、何の用だ?【
「勧誘よ、純粋にね」
使われていない馬小屋に寝転がる響介の目の前には、金髪の妙齢の美女が立っていた。彼女の名はスコール・ミューゼル、目的不明のテロ組織【亡国機業】の幹部である。真意を図らせない笑みを浮かべ、彼女は響介に話し掛ける。
「貴方の機体、そろそろ整備が必要じゃない?」
「まぁそうだな」
「だから私達が手を貸したいの。貴方のその力は此方にとっても喉から手が出る程欲しいものだからね」
「却下」
「....理由を聴かせて貰っても良いかしら?」
「お前らの思想を俺は知らない。俺は俺の目的の為だけに動く。だから俺が組織に属するのは俺の目的とその組織の思想が合致した時だけだ。
「...私達の目的は1つだけよ。世界を元の形に戻すこと、それだけ。女尊男卑なんて下らないものの無い、ありのままの世界を取り戻したいの」
「...へぇ。でも、何故行動に規則性を持たせない?正直言って、戦力を分散させるだけで何のメリットも無いだろうに」
「組織が広がり過ぎて、私達幹部だけじゃ管理し切れないのよ。下部組織やその傘下にまで及ぶと、幹部ですら把握出来てないわ」
「それ、組織として運営出来んのかよ....取り敢えず、思想は分かった、及第点だ。次は戦力だな。専用機はどれだけ保有してるんだ?」
「2機よ。前に貴方に【アラクネ】のコアを奪われたから、1機減ったの」
「量産機は?」
「かなりの数、としか言えないわね。少なくともIS学園以上の数は揃っているハズよ」
響介は考えていた。ひたすら、どちらの方が良いのか。野に下っている現状では自由に動ける代わりに整備が満足に出来ない。しかし、組織に属してしまえば装備の問題は解決できるものの次は組織の束縛という問題が現れる。響介個人では束縛が嫌なのだが、長期的な目で見れば組織に入る方が得なのは簡単に分かる。だから悩む。そして思い至る。
「...これからどんな事をするつもりだ?」
「【
「理由は?」
「【
「......OK、お前らの組織に入らせて貰う。条件は付けさせて貰うがな」
「条件?」
「条件その1、俺に舞台を任せない事。条件その2、目的の達成には協力するから単独行動を黙認する事。条件その3、作戦中は互いに無干渉を貫く事。これでどうだ?」
「その程度なら勿論良いわ。これから宜しく、響介くん」
「あぁ、宜しく頼むぜスコール」
彼は元の鞘には納まらず、違う巣へと旅立った。【御伽の国の破壊者】から、【亡国機業】へと。ただ目的は変わらず、1つだけ。ISを全てISを以て殲滅し、世界を変革へと導く事。彼は変わらない。何一つブレず、このままだろう。それほどに灯された篝火は強く、紅く燃えているのだ。響介の記憶を薪にして....