IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

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 コラボ第2弾最終話です。是非とも楽しんで下さい。
 では、ムリエルさんに感謝を捧げまして...どうぞ!
 


決戦、総統・喪失者VS紫の魔王

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 声が、聴こえる。泣きそうで、それでも芯がある、そんな声が。暗闇の中で響弥は手を伸ばす。ひたすらに、愚直に、ただ声が聴こえる方向に。その声は自分が【絶護(絶対に護る)の誓い】を立てた人物の声だから。

 故に手を伸ばす。夢なのか走馬灯なのか区別は付かずとも、目も見えず手足の感覚が無くとも、声だけを頼りにして手を伸ばす。きっとその先に、あの子が居るハズという確信を抱いて--

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 『--.....ん。響弥くん、目を覚ましてッ!!』

 「そんなに叫ぶなよ。ったく、大袈裟だな舞原は」

 『大袈裟なんかじゃありませんよ!本当に、本当にッ...貴方はいつも無茶ばかり...』

 「...悪いな。だけど、今はルカを助けに行かなきゃな。アイツもアイツでそろそろ辛そうだし。サポート、頼んだぜ?」

 『....怪我したら、お説教ですからね』

 「おう」

 

 響弥はスラスターを噴かして再び戦場へと舞い戻る。逝ったのは前腕の装甲と内蔵されていたSEコンデンサ、まだ戦える。義手も動くし、眼も問題なく見える。後は自分で対応するだけだ。そう、自分自身の問題なのだ。

 スラスターの推進力と薬莢を激発させる勢いを利用し、通常では考えられない程の加速でサイコガンダムの頭へと到達すると空中で1回転して技を放つ。

 

 「更識流戦闘術弐ノ型参番【流紋撃】ッ!!」

 

 当たる寸前に当たる箇所をずらされた事により、特徴的なV字のアンテナの片方をへし折るだけに終わった。しかし、それだけでも充分な結果だった。頭の装甲は比較的胴体の装甲よりも薄い、それさえ分かってしまえば攻略の糸口は見えるのだ。

 

 「響弥、大丈夫なのか?」

 「まぁな。そんなに柔な身体してないんでな」

 「しかしどうする?あの装甲を抜くにはかなり集束した威力の武装が無ければ....」

 「手段は、ある。あの胸の砲口が飾りでないなら、アイツを完膚無きまでに破壊できる」

 「...そうか、それなら確かに...だが、それではお前に危険が及ぶぞ」

 「安心しろ、この機体とこの身体は俺の意思じゃ傷付ける事も出来ねぇ。舞原(アイツ)が居る限り、な」

 「ククッ、そうか。ならば安心だな。...奴のその攻撃は私が誘おう!その隙をお前は狙え!!」

 「おう!」

 

 ルカはイフリートナハトを飛翔させる。その先には響弥の意識を奪う程の威力を持つビームの砲口が。それでも臆さずにルカは進む。放たれたビームを身体を反らすという最小限の動作で回避したルカは投擲用の小型実体剣【コールドクナイ】を投げ、中指の砲口へと突き刺す。第2射の準備をしていた、という事はビームを充填していたという事だ。そこに剣を突き刺せば暴発する。その暴発の威力は異世界のMSと同等の威力。それならば、簡単に厚い装甲を破壊出来るだろう。

 まだルカの攻撃は終わらない。蹴りを受け流し、そのスラスターの出力に物を言わせてサイコガンダムの巨体を投げ飛ばしたのだ。地面に転がったサイコガンダムの身体を踏み台にして跳び、下方向--サイコガンダムの肘へと加速するだけにスラスターの推進力全てを使い、ナハトブレードを貫通させる。その後、ナハトブレードを引く抜くと内部にガトリング砲を連射する。これにより、シールドを装備していた腕ともう片方の腕、即ち両腕を破壊した。これで武装は胸のメガ粒子砲しか2人を撃墜出来る可能性がある武装が無い。其処まで来ればもう、王手を掛けたも同然だ。

 

 「今だ、響弥ァァァ!!」

 「オオォォォォァァァァッ!!」

 

 薬莢を2発、腕と脚で1発ずつ激発させて加速した響弥は【鬼百合】を構え、サイコガンダムの胸部に突撃した。全ISの中でも最高クラスの切断能力を誇る鬼百合はMSの装甲を容易く斬り裂く--訳ではなく、ビームの熱を纏わせて焼き斬っていた。ビームの熱にも耐えるその頑丈さと斬れ味が有って初めて出来る芸当だ。そして貫通する。更に響弥は方向転換し、義手の薬莢を全て激発させて技を再び放つ。

 

 「更識流戦闘術壱ノ型弐番【狂天双撃(きょうてんそうげき)全弾激発(フルバースト)】ッ!!」

 

 胸部は貫通、頭部のコックピットがある部分を粉砕されたサイコガンダムはゆっくりと膝を付き、爆発を起こす事無く何処かへと消えていった。爆発されたらされたで困るので有り難いという風に思った響弥だったが、だったら来るなよ、と思う事を責められるものか。

 

 「無理ゲーかと思ったが...案外クリア出来るもんだな」

 「不謹慎かも知れんが、楽しかったな」

 「ったく、バトルジャンキーかよ」

 「そう言うな」

 「ク、フフ....」

 「フ、ククク....」

 「「ハハハハハハハハ!!!」」

 「もう...走ってきたらこれですか」

 

 響弥とルカは一頻り笑った後に向き合い、別れの言葉を口にする。

 

 「さて、そろそろお別れの時間だな」

 「え?早いな、もう終わりか?」

 「その様だな。何故か解るんだ」

 「そっか....不謹慎だけど、楽しかったぜ、ルカ」

 「不謹慎だが、な」

 「ルカさんのMS、とても参考になりました。絶対に絶月をナハト以上の機体にして見せます!」

 「そうか。あぁ、私から1つ君にアドバイスだ」

 「なんですか?」

 

 ルカは雪菜の隣へと歩き、耳元で囁いた。笑いが若干混じった声で。

 

 「さっさと響弥に告白するんだな。アイツは遠回しなアピールじゃ気付かんぞ?それが私からのアドバイスだ」

 「....ッ!!」

 「では、さらばだ2人とも。また会えたら、また会おう」

 「あぁ、()()()

 「...それでは、()()()()()()()()

 

 ルカは響弥達の方向を見る事は無く、片手をヒラヒラと振って磨りガラスの様なオーロラへと歩いていった。そして戦闘の形跡がクレーターだけ残ったアリーナの中で、響弥は叫んだ。

 

 「サイコガンダム(あの機体)、最後の最後に仕事残していきやがったァァァァ!!」

 「.....ドンマイです、更識くん」

 

 これにて、また他の世界との話は幕を閉じる。はてさて、次はどんな世界とのストーリーになるのやら...


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