IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

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 今回は日常とネタ回かな。少しシリアスもあり?


第6章響介サイド 忌むべき存在
食事


 「...................」

 「お、お兄ちゃん?ご飯だよ、はい」

 

 突然だが、響介は我慢の限界だ。こめかみはピクピクと動き、無表情だが不機嫌オーラは全開である。目の前には皿が置かれているが、それを凝視して身動き1つしない。

 

 「ふふふ、嬉しいですかそうですか。そうでしょう、人間なら全員甘いものは大好きですからね!」

 「..................」

 

 その響介の目の前にはハンプティが薄い胸を張ってどや顔をしている。さあ、これから少し過去を振り返ってどうしてこうなっているのか説明しよう。

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 「いただきまーす!」

 

 一際大きい夏蓮の声に釣られて皆がその皿に盛られたものを食べる。フォークとナイフを両手に持った響介はフリーズしている。

 

 「....おい、これって....」

 「うん、キャロリーメイドだよ。チーズ味は嫌いだった?」

 

 そう、かの有名なキャロリーメイドだ。チーズ味とフルーツ味が並べられている。響介はその4本のキャロリーメイドを見て思い込む。

 

 (そうだ、この船には野菜が無いのか。海上だから仕方無ぇな。ガキじゃあるまいし、我儘ばっか言ってもしょうがねー。食うか)

 

 面倒なので手掴みでキャロリーメイドを食べる。まぁ美味しいが、口の中の水分が根こそぎ持ってかれる感覚に不快感を覚えながらラウンジでイチゴミルクを買い、ガブガブと飲み干す。これが1週間目である。

 

 

 

 

 

 

 【御伽の国の破壊者(ワンダーランド・カード)】の幹部は1週間目交代で炊事当番を回す。1週間目はジャバウォックであり、2週間目は夏蓮である。お盆に乗って運ばれてきたのはお湯が注がれたプラスチックの箱。出汁の香りが漂い、食欲をそそる。

 

 「はいお兄ちゃん、橙のきつね。アリスは?」

 「う~ん....ペユング焼きそばで良いかな」

 「じゃあ3分待ってね」

 

 今回も食材不足なのだろうと思い、温かいうどんを啜る。出汁の風味が広がってとても美味しい。やはりここ最近の技術の発展は凄いと思いつつ部屋に戻る。これが2週間目だ。

 

 

 

 

 

 3週間目、今週はアリスが当番である。運ばれてきたのは湯気を立てている炒飯。レンゲで少し掬ってみるがパラパラで中々本格的だ。それにしては炒めている音がしないと思い、アリスの方向を向くと衝撃的な光景が見えてしまった。

 

 「..........よし」チーン

 「.................」

 

 そう、レンチン術(レンジでチン)を使っていたのである。となれば、あの袋に入っているものは冷凍食品。響介は溜め息も何も吐かず、ただ上を向いて目頭を押さえていた。

 

 「響介、どうしたの?炒飯は嫌いだった?」

 「いや、大好物だよ....うん、美味そうだなぁ!頂きます!!」

 

 もうヤケクソである。好きな人を悲しませない為、声を喜色に染め上げて少し噎せながらも全てを掻き込んだ。何故か醤油とは違うしょっぱさがしたのは気のせいだろう。

 そして4週間目の始めに話は戻る。

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 「............」ブチッ!!

 「さぁ、それではいただきま--」

 「ぶるあぁぁぁぁ!!」

 

 奇声を上げて勢い良く、だが机は揺らさない様に立ち上がった響介を、皆が不思議そうな顔をして響介を見詰める。食には拘りをそれなりに持っている響介はキレた。

 

 「お前ら、いい加減にしてくれ!!もっとさ、栄養のあるものを食おうぜ!?」

 「キャロリーメイドは良いと思うよ。エネルギーも栄養も摂れる」

 「口の中乾くだろぉぉぉ!!?あと、最低限しか摂れねーよ!!」

 「カップ麺は凄いよね、美味しいし栄養もある」

 「うるせぇぇぇぇ!!身体に悪いもんもあるわ!!美味しいのは認めるけどな!?」

 「冷凍食品.....美味しくなかった?」

 「美味いけど!!美味いけどなんか違うんだよ!!いや、アリスを責めてる訳じゃねーぞ!?」

 「甘いもの食べてれば、人間生きていけますよ?」Σd(・∀・´)グッ!!

 「お前が1番駄目だぁぁぁぁ!!Σd(・∀・´)グッ!!じゃねーんだよ!甘いもん食ったら歯磨きしろよ!?」

 「あ、ご心配ありがとうございます」

 「はぁ....はぁ.....食材は有るのか?てか有るよな」

 「うん、有るよ。どうするの?」

 

 其処までアリスに言われると、響介は何となくタオルで前髪を上げてギャルソンエプロンを付けてニヤッと笑い、不適に言い放つ。

 

 「これから毎日、飯を作る」

 

 

 

  ~~ 少年料理中 ~~

 

 

 「はいお待ちィ!!たっぷり食え!」

 「わぁ....美味しそう。じゃあ食べるね、響介」

 「おう」

 「美味しそうなご飯の共にはやっぱりイチゴミルクを--」

 「緑茶を飲めぇぇぇぇ!!」

 「あぁぁぁぁ!!」

 

 騒がしい食卓に並ぶのは茄子の肉味噌炒めとピーマンの天ぷら、胡瓜の鯖味噌煮だ。1人を除いた全員の箸は止まる事を知らず、直ぐに大きい皿に盛ったハズの料理が消えていた。お代わりの料理も振る舞い、ご飯のお代わりも無くなった所で洗い物を始める。ちゃんと『御馳走様』と言ってから食器を持ってくる全員に感心しつつ皿を洗う。アリスと夏蓮から手伝いを申し出られたが、響介は準備から後片付けまでを自分で行う事が拘りなので丁重に断っていた。変わり者である。

 その間にも、ある1人の事を考える。あまり食べず、皆の食べっぷりを微笑んで眺めていた彼女の事を--

 

 「ウォック.......」




 いやぁ、お久しぶりです。本編の更新は結構久しぶりですね。違和感がある所が沢山有るかもですが、其処は大目に見といて下さい。

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