IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

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消えない違和感

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 「おはようございます」

 

 そう言って私は教室に入る。皆さんはそんな私に口々に「おはよー」「ぐっもーにん」そう返してくれる。だけど何故だろう?何か足りない。大事な何かが。

 席に座って机と一体になっているパソコンを起動させて、カーソルを動かす。だけど何故だろうか?癖で動かした先には何のアプリも無い。

 

 「雪菜、何してるの?」

 「あ、シャルロットさん」

 

 良く分からない感覚に頭を捻っていると、【シャルロット・デュノア】さんが私の所に来てくれる。私は紆余曲折あってシャルロットさんと知り合ったの--あれ?紆余曲折って何が有ったんだっけ?誰かと一緒に行動してた様な....?

 

 「....シャルロットさん、私ってどうしてシャルロットさんと知り合ったんでしたっけ?」

 「え....?それは、雪菜が僕の男装を見破ったからでしょ。その時に色々あって友達になったんだよ?忘れちゃったの?」

 「いえ....確かにそうでしたね。すみません、ふと思っただけです」

 

 教室内を見回すと、殆ど全員が来ている事が分かります。来ていないのは本音さんくらいでしょうか?....何故、1番後ろの席に違和感が拭えないのでしょう。

 そもそも【設楽明日香(したらあすか)】さんの席は前まで1番前だったハズです。それなのにどうして1番後ろに居るのか分かりません。授業態度は至って真面目で、特に無駄話をしないという割と無口なタイプの設楽さんが席替えをしなければならない程の事をしでかすのでしょうか?私の記憶にはそんな記憶は無いのですが....

 

 「お前達、全員席に着け。出席を取るぞ、山田先生」

 「はい!先ず相川さん!」

 

 山田先生が出席を取り始めました。私は舞原でま行なので結構暇なんですよ。こっそりと授業の準備を始めようと引き出しに目を向けると、何故かさ行の出席に耳を傾けてしまいました。

 

 「じゃあ次は、さ.....設楽さん!」

 「はい」

 

 何故今山田先生は、「さ....」と言い掛けたのか分かりません。このクラスのさ行の人は設楽さんから始まり、「さ」から始まる人は居ないのに....まるで元々居たのに行方不明か自主退学した様な--

 行方不明....?何故か前の臨海学校がフラッシュバックしてきます。【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】と戦う専用機持ちの皆さん。織斑くん、篠ノ之さん、セシリアさん、鈴さん、シャルロットさん、ラウラさん。あれ?1人足りない....?嘘だ、このクラスの専用機持ちは4人、2組には1人しか居ないのに。何故かこのクラスに居た.....よう、な....

 

 「雪菜!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目覚めると私は真っ白いシーツが掛けられたベッドの上で、周囲を真っ白いカーテンで隔離されていました。中学や小学校なんてろくに通った事は有りませんが、この部屋は保健室だと分かります。上履きを履いてカーテンの外に出ると、菫先生が此方を振り向きました。

 

 「おや、目が覚めたのか雪菜?」

 「はい」

 「全く、勉強とかのし過ぎだ。過労と貧血だよ。早退届は出しておくから、今日は早く寝ておく事を勧めるよ」

 「有り難う御座います。では、部屋に戻りますね」

 「あぁ、寄り道はするなよ?」

 

 部屋に戻り、シャワーを浴びる。その時に見えたお腹の傷痕が蠢く様な、そんな気がしました。この傷痕が何かをしてはならない、早く何かをしろ。そう急かしている様にも思えて、気持ち悪くなって私は寝ている時に来ているジャージに着替えて布団に潜り込みました。自分の気配しかしないこの部屋に、慣れているハズのこの部屋に寂しさを覚えながら....


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