◇ ◇ ◇ ◇
『やぁ響弥くん、おはよう。それで、私達の仲間になる気は起きたかい?』
「そんな訳有るかよ、さっさとIS学園に帰せ」
『そうしたいのは山々だが....一応私達はテロ組織なのでね、君を帰そうにも隠蔽やら大変なのだよ。そうだね....あと4日は待って欲しい。その途中で仲間になりたくなったら遠慮なく言ってくれ』
「ハッ、よっぽどの事でもそうはならねーよ」
目覚めると【
「響弥、入っても良い?」
「.....あぁ」
「私も居るよ!」
扉を開けた先に居たのは夏蓮とアリスだった。服は私服。と言うより、ユニフォーム的なのが決まってんのか?なんか共通の意匠が見えるっていうか何と言うのか....
勝手に俺のベッド(俺のでもないのだが)に座ると、凄く嬉しそうに夏蓮が話し始める。
「ねぇお兄ちゃん、どうして私達の仲間になってくれないの?」
「さぁな....少なくとも、テロ組織に加担する気にはならないな。どんな目的を掲げてるのかも知らないし」
「アインから聴かなかった...?私達の目的はISを使えない人を護る為に活動してるの」
「だからって....だからってテロ組織にならなくても...」
「....お兄ちゃん、知ってる?テレビみたいに正義の味方が悪を倒すなんて有り得ないって。悪はそれを上回る悪...『絶対悪』でしか、打ち倒せないって」
「そんなの....」
「.....響弥」
アリスは俺の手を握り、眼を見て言う。吸い込まれそうになるブルーの瞳は俺だけを見据え、その眼には俺以外の何も眼に映していない様にも見える。
「別に私達の仲間にならなくっても良いの。でも、これだけは覚えてて欲しい。私達は世界をメチャクチャにしたい訳じゃないんだよ。ただ平和な....IS乗れるかどうかで判断されるこんな最悪な世界を元の形に戻したい。ただそれだけなの」
「そんな--」
--ドゴンッ!!
そんな事を、俺はそう言おうとした。でも俺がそう言う前に人の身体の芯から震わせる様な振動が伝ってくる。俺はこんな音と衝撃を知ってる。これは....爆撃だ。恐らく、ISによる。此処が【
「響弥!?」「お兄ちゃん!?」
もう気付いた時には走り出していた。アイツらを、アイン達を助ける為に。
「アイン、何処だ?!」
叫びながらアイン達を捜す。もう家は調べたが、誰も居なかった。まだ昼前だ、アイン達はせっせと働いてるだろう。だけど、今のこの状態でそれは本当に最悪だ。
「アハハハハハハ!!最高よ!こんなに宝石が沢山!」
「ちょっとくらいちょろまかしてもバレないわよ。貰っちゃいましょ!」
「最高に最低よ、アナタ!」
「アナタもよ!」
「「アハハハハハハ!!!」」
最悪な奴等だ。顔を見れば各国の軍のIS乗りだった。最悪だ、なんで人を護らなきゃならない側の者がそんな事を...!!
いや、それよりも大事なのはアインだ。優先目標を間違えるな、菫先生も良く言っていた事だろ。
「..........うぅ」
「其処か!?」
燃えてる果樹のせいで聞き取りにくいけど、この声はアインのものだ。振り向いた所には倒れた木の下敷きになって呻くアインが居た。義手を差し込んで腕の筋肉を弾けさせるイメージを浮かべる。すると思考操作デバイスによって動かされた
「アイン、アイン!!」
「きょ、響弥かい....?」
「あ、あぁ!」
「もう、無茶して....此処は、危ないよ....」
「うるせぇ、もう喋んな!アリス達の所に連れてってやる!」
「エヘヘ....響弥の、お迎え会を、開こうとしてたのに....ゴメンね」
近くを見れば下手くそなアルファベットで【
「謝るな...これからやれば良いんだよ!」
「アハハ、それは厳しいなぁ....もう、手と足の感覚が無いんだ」
「弱気になってるからだ!」
「泣かないでよ響弥....僕達みたいな人でも、幸せを貰える世界を、創るんでしょ.....?」
「はぁ!?アホ言え、泣いてなんてねぇよ!これは...アレだ!お前が果物食わせるから、眼から果汁が出てるんだよ!」
「響弥、コレあげる....このペンダントは、僕が父さんと母さんから貰えた、初めてのプレゼントなんだ....僕を今まで、護ってくれた御守り....響弥が、使って...」
「馬鹿!こんな時にそんな大事な物を手放してんじゃねぇ!」
「響弥は、強い人....でも、優しい人だ....だから、泣いちゃうかもだよね....だ、から....御守り。それを、着けていれば僕が....
「おい!話を聴け!お前は死なねぇ、俺が助ける!」
「世界の、果てで....お前らが、笑える様に。俺が戦う事で、『幸せ』って言葉が....消える様に....良い言葉だよ。先に、逝って待ってる....ゆっくり、ゆっくりと....その夢を--」
「--アイン?おい、アインッ!!.....ぁっ...ぅあっ....クソッタレがァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
何故だ!?何故だ!?何故だ!?何故だ!?アイツらが何をしたと言う!?精一杯に生きていたじゃないか!誰よりも生きていたじゃないか!仲良く、そしてとても優しい子供たちだっただろう!何故お前達はそんな簡単に笑って人を殺せる!?なら俺が殺してやる!俺が、俺がこの手で!こんな500機にも満たない
--我が主人、貴方はどんな力を求める?
決まってる!世界を壊せる位の....理不尽な暴力を捩じ伏せられる程の圧倒的【力】!!俺にそれを寄越せ!
--それは鬼...いえ、修羅の道だ。それでも貴方はその道を歩むのか?我が主人。
その道が修羅の道だと言うのなら、俺はその修羅すら喰らい尽くす羅刹になってやる!だから寄越せ、俺に最高で最低な力を!
--それが貴方の願いなのならば、私は力を貸しましょう。私は貴方の相棒にして理解者、故に私は貴方に添い遂げよう。どんな事があって、どんな結末を迎えても。
記憶が
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
「アリス、相手は何機!?」
「10機くらい!でも、響弥が!」
「私が捜しに行く!だからアリスは--」
「その必要は無い、夏蓮」
「お、お兄ちゃん.....?」
夏蓮が彼を見間違える訳が無い。だが、彼が自分の兄だと確証を持つ事は何故か出来なかった。先程までの物腰柔らかな雰囲気はもう何処にも無い。
「アリス、お前はアインを頼む」
「きょ、響弥...はどうするの?」
「俺はアイツらを墜とす。....いや、殺す」
「な、なら私も--「夏蓮」え?」
「頼む。お兄ちゃんからの、頼み事だ」
「うん....え、今お兄ちゃんって自分で....」
「お前ら、俺はもう【更識響弥】なんて偽名じゃない。俺はこれからは--【赤羽響介】だ。行くぞ!」
それだけ言ってISを展開する。【絶月】のフォルムはどんどん変わっていく。装甲は
「アンタ、何処の機体?」
「この宝石は私達の目的は物よ。貴女にはあげないわ!」
「お前達は...此処で子供たちが働いていた事を知っていたのか?」
「...?勿論、知ってたわよ?ガキしかいないから、此処を襲ったんじゃない。どうせISに乗れないガキが死んだ所で事故死に出来るしね」
「.....黙れ」
その言葉を言い終えると、響介の質問に答えた女(以下女1)の後ろに何かが猛スピードで飛んでいった。警戒した女1は右手でライフルを構えようとする。だが、いつもの頼れる重みが無いと気付いた女1は自分の右手を見る。
「ひっ、ヒィィィィ!!わ、私の右手が!絶対防御は!?絶対防御はどうしたの!?」
「その程度の痛み.....アイツらが味わった恐怖と痛みに比べれば.....」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!」
響介の義手は変異していた。先程までの殴る事に特化した形状から、指は鋭利になって握りにくくなった。その代わりに貫通力が増した手刀に特化した形状に。簡単な話、響介は視認すら困難な速度で薬莢を激発させて手刀で突きを繰り出して女1の腕を貫き引きちぎっただけなのだ。
「よ、よくも!」
「【リンドヴルム】、【オルトヴルム】」
2本の槍を抜き放ち振り向き様に突き刺す。【絶月・災禍】の武装には進化した【ヤタノカガミ】が搭載され、ほぼ無尽蔵に擬似零落白夜を使える様になっている。ISの天敵を纏った槍は女2の腹部へと突き刺さる。更に響介は2槍を連結させる。
「【メイデンハーツ】」
両方に刃がある槍はまるで旋風の様に女2のIS装甲を斬り刻む。女2が恐怖で眼を閉じた瞬間、パンッという何かが炸裂する音と共に風切り音がして、何かが通り過ぎた感じがする。そして女2が再び眼を開けた時、女2が自分の下半身を見る事は無かった。
「ヒッ....こ、来ないで!宝石が欲しいならあげるわ!だ、だから命だけは!」
「.......聴こえるか?」
「な、なにが!?」
「燃える炎の音から聴こえる、子供たちの悲鳴が」
「き、聴こえるわ!」
「.................」
響介は【メイデンハーツ】を分割して背中に収める。そして後ろを向いて立ち去った--様にも思えたが、左手の【オルトリンデ】の剣を展開すると一気に振り抜く。女1の首から上は何処かへ転がっていった。
「.....俺にはそんな音、聴こえないね」
胸部にあるコアを無理矢理引き千切りながら取り出す。砕こうとも思ったが、すんでの所で思い留まり夏蓮の場所に戻っていく。
「お兄ちゃん....『醒めた』んだね」
「そう、なのか?なぁ、2人とも」
「どうしたの?」
「俺を、そしきに入れてくれないか?」
「ッ!!も、勿論だよ!ほ、報告に行ってくるね!」
慌てて駆けていった夏蓮を見送り、響介はその辺に落ちていたスコップで穴を掘ってアインの遺体を埋めた。
「祈りも無く、苦しみも無く、安らかに眠れ」
そしてドアの奥から現れた幹部全員と相対する響介。それから初めて自分の髪が真っ白になっている事に気付く。
『本当に良いのかね?もう戻れないかも知れないよ』
「そんな事、知った事じゃない。こんなクソッタレな世界を変える。その為に、俺を使ってくれ」
「勿論さ!でも、使って言い方はダメだねぇ。なぁハンプ!」
「全くその通りですよ。使う、なんて言い方ではありません」
「そうだよ!正確な言い方は--」
「一緒に戦おう。これで良いの」
「そうか...なら、一緒に戦ってくれ。じゃあ改めて....俺は赤羽響介、このクソッタレな世界を壊したいって男だ。そんな危険人物だが、それでも良いか?」
『逆に大歓迎さ。それでは響弥....いや、響介。君の2つ目の名前は【
「あぁ、俺には凄いピッタリな名前だな」
響介は足を踏み入れてしまった。戻れない深淵、罪の道に、自ら足を踏み入れた。ISを憎み、憎むISによって命を刈り取る死神になる道に。
更識響弥は消えた。取り戻せるのは、たった1人の少女の願いだけだろう。その少女すら、今はもう響介の事を覚えていないのだが....
【絶月・災禍】
見た目はガンダムOOのアヴァランチエクシアです。変更点はまず青い部分は黒に、白い部分は紅に、オレンジや黄色の部分は金色になっています。背中にあるウェポンラックには【オルトヴルム】、【リンドヴルム】という槍が2本セットされており、必要に応じて違う武器を入れます。あと、ガンダムフェイスは骸骨の仮面になってます。
響介(響弥)は白髪混じりの黒髪、紅みがかった眼から完全な白髪(銀髪)と紅い眼になってます。義眼も同様です。これはISに乗ってる時だけで、通常時はいつも通りの響介になります。近い内に【御伽の国の破壊者】サイドの紹介書くので、待っていて下されば幸いです。