さて、それでは稲葉さんとのコラボ、最終回であります。では、どうぞ!
「危ねぇなぁ....」
「ナ、ナニ!?」
届く事は無かった。何故なら、響弥が刃を片手で握って止めていたからだ。しかし絶月の姿と似ている所はあるが、その姿は全く別物だった。黒い素体に紅いライン、ギリシャ文字のΦを象った仮面。それは遠く、此処とは違う世界で人間の命と夢を護った戦士、ファイズの姿と同じ。いや、ソレそのものだ。
「反撃開始、ってな!」
片手を脱力しつつ振る。それと同時に走り出し、胸を殴る。楯無達の攻撃では身動ぎ1つしなかった鎧がよろけ、たたらを踏む。その致命的な隙をファイズが見逃すハズもなく、更に膝蹴りを加える。ファイズが鎧を引き付けている内に楯無と本音はレベル3に変身する。
「大・大・大変身!」
『アガッチャ!ぶっとばせ突撃!ゲキトツパンチ!ゲキトツロボッツ!!』
「第3術式!」
『ド・ド・ドレミファソラシド!OK!ドレミファビート!!』
更に強力になった2人はそれぞれ攻撃を繰り出す。エグゼイドは強化された拳でのパンチ、ブレイブはリズムに乗って斬撃を。レーザーは後ろでガシャコンスパローを繋げて光の矢を牽制として連射している。しかしファイズが参戦しても目立った傷は付いていない。
響弥は脚に残っている全弾を腕に移動させ、ナノスキンを弾けさせる。ファイズになっているので分からないが、中では義手は本来のオルニウムブラックになり、威力を上げる為に吸気口が空気を吸い込んでいる。ファイズは全力で踏み出し、ある技を模倣する。
「行くぜ...ベルリンの、赤い雨ェェェッ!!」
研ぎ澄まされたナイフの様にピンと伸ばした手刀が、腕の薬莢を全弾激発させた勢いによって凄まじい勢いで胸に突き立てられる。少しの間だけ拮抗したが、鎧に当たった
そしてとうとう鎧に皹が入り、胸部のプレートが砕ける。甲冑は後ろに飛び退き、鎧を脱ぎ始める。その中から出てきたのは甲冑。だが、先程までの甲冑とは違ってスマートで、かなり動きが速そうな印象を受ける。剣も大剣から腰に差してあるサーベルになっており、此方はスピードファイターという事だろう。
「ァァァァアアアッ!!」
「クソ速いな...なら、付き合ってやるぜ!10秒間だけな!」
響弥は右手に装着されていた腕時計――ファイズアクセルからミッションメモリーを抜き、ファイズフォンに装着する。
『Complete』
胸部のプレートが開き、紅いラインの色が銀に変わる。仮面の黄色の部分は紅く染まり、絶月の【月】と同じ機体色へと変わる。重心を低くして腰を落とし、走りやすい体勢になると響弥はファイズアクセルの赤いボタンを押す。
『Start-Up』
次の瞬間、響弥の姿が全員の前から掻き消える。何故なら今響弥が変身したのは仮面ライダーファイズ【アクセルフォーム】、普段の動きの速さを通常の1000倍にまで拡張する仮面ライダーの数ある速度特化フォームの中でも最高クラスの速度を誇るフォームだ。
ファイズはベルトの左側に装着されているデジタルカメラ--ファイズショットにミッションメモリーを差し込む。
『Ready』
体勢を低く、脚を執拗に殴り続ける。既に薄くなっていた装甲はそれだけで皹が入り、破片が溢れてくる。とても簡単に砕けているが、相手はマネキンでも何でもない。生きている...のかは分からないが、意思を持っているれっきとした【敵】だ。
脚を粉砕されては敵わないと脚を振り上げてファイズを追い払おうとするが、義眼の思考速度の加速機能により加速された思考が振り上げてくる脚を捉え、避ける。更に後ろや横に移動して戦闘に於いて攻撃や防御、回避に至るまでの全てに使う部位である『脚』を殺す。
『3』
アクセルフォームの制限時間は10秒。その間に脚を殺さねば、圧倒的な速度で次は響弥達が殺されるだろう。故に止まらない。ひたすらに脚を殴り、壊す。剣が振り下ろされる?今の響弥には当たらない。逃げられる?追い付けない道理は無い。
『2』
あと2秒。もう脚は壊れていると言っても良い程にボロボロだ。それでも響弥は攻めの手を緩める事は無く、まだ攻めている。既に殆ど動けない甲冑は響弥を追い払おうと円形に剣を薙ぎ払う。
「ッ、オオオオォォォォォォッ!!」
『ExceedCharge』
大きくジャンプし、ファイズショットにエネルギーが充填させる。まだ装甲をぶち抜く威力は無いが、体重と重力を使ってのパンチはサーベルを粉砕し、最後と思われるプレートに皹を入れるには充分だった。
『Time-Out』
『Reformation』
「よし、脚は殺した!お前ら、全員攻めろッ!!」
アクセルフォームが強制解除されると同時に響弥は全員に号令を掛ける。それと同時に飛び込んでくる、この世界でも何処までも愚かな白い影が響弥の眼に見えてしまった。
「うおおおぉぉ!!喰らえ、零落白夜ッ!!」
「チッ...言っちゃ悪いが、この世界の方が
『任せて』
「...ん?う、うわぁぁぁ!!」
横から撃たれた簪の必殺技が一夏の白式を直撃する。凄まじい威力に吹き飛ぶ一夏を見て響弥は顔色を青くする。恐らく、自分がやった事の命知らずさを思い知ったのだろう。
『何処かの誰かが死ぬ1歩手前まで追い込んでくれたお陰で参戦は出来ないけど、これくらいは出来る。さ、鈴とラウラも準備万端みたいだよ。早く決めた方が良いと思う』
「...ありがとよ。さぁてとお前ら!もう決めるぞ!」
「ならば私からッ!!ベルリンのぉぉぉ...赤い、雨ェェッ!!」
「序でに私もね!レッグラリアートッ!」
ラウラが真上に吹き飛ばし、鈴が地面に叩き落とす。土煙が晴れ、甲冑が次に見たのはカラフルな光だった。
『ExceedCharge』
『『『キメワザ!!』』』
先ず虚が光を纏った右足を振り上げて空中へと弾き飛ばす。次に本音が手に装着されている拳を発射する。完全にロケットパンチである。そしてガシャコンソード踏み台にして跳んだ楯無は真下の甲冑に踵落としを放つ。その勢いのまま下に落ちる甲冑に、紅い円錐の光が突き刺さる!
「祈りも無く、苦しみも無く、ただ安らかに眠れ。....デュノア社、副社長の残骸よ」
「ァァ....イヤ、ダ。モ、ウ、シニタク...ナ....」
円錐ごと甲冑を貫通し、甲冑の後ろの地面に着地する。その甲冑にはΦの文字が浮かび、灰になって消え去った。この世から甲冑が、デュノア社副社長の並々ならぬ怨念が存在したという非科学的な存在は、この世界から消え去ったのだ。それと同時に、響弥と雪菜の身体が透け始める。
「お、なんだこりゃ。舞原、此方に来い!」
「もう居ます。更識くんの考える事なんて簡単に分かりますよ」
「ぬぉ、なんか複雑だな。...さて、楯無」
「なに?」
「お前は後悔すんなよ。...ま、筋金入りのシスコンのお前がそんな事はしないだろうがな。--あばよ」
「では、さようなら」
「え、ちょっと待っ--」
響弥達は一方的に別れの言葉を告げると消えてしまった。嵐の様に現れ、好き放題した後に消える。正に閃光の様だ。
「...まぁ、悪い人じゃなかったわよね、皆?」
「えぇ、そうですね」
「そうだよね~、友達になれたら良かったな~」
「友達かは分かんないけど、戦友にはなれたんじゃないのか?」
「そ、拳を交えて、良い勝負が出来たならもう友達よ!」
「...プッ、そういう暑苦しいの、嫌いじゃないよ」
これで、違う世界の話は終わりを告げる。恐らくもう2度とこの世界と響弥側の世界が交わる事は無いだろう。何時かは忘れてしまうかも知れない。それでも今、此処にいる少女達が願うのは嵐の様に現れた少年の未来を、願っていた...